心臓腫瘍

心臓に「かたまり」ができる心臓腫瘍をご存知でしょうか。心臓から直接発生するものは5000人に1人以下と非常にまれですが、実は、他の場所のがんが心臓に転移してくるケースは、その30~40倍も多く発見されます。決して他人事とは言えないかもしれません。

この病気の本当に怖い点は「良性」という言葉にあります。「良性」と聞くと安心しがちですが、腫瘍が心臓の動きを妨げることで、息切れや心不全、場合によっては突然死を引き起こす危険性も報告されているのです。

この記事では、その見過ごされがちなサインや腫瘍の種類、そして治療法について詳しく解説します。ご自身や大切な人を守るため、心臓からの静かな警告を見逃さないための知識を深めていきましょう。

心臓腫瘍の概要

心臓腫瘍とは、心臓の筋肉や組織の一部が、 異常に増えることでできる「かたまり」のことです。 このかたまりには、がんである「悪性腫瘍」と、 がんではない「良性腫瘍」の2つのタイプがあります。

心臓腫瘍は、どこで発生したかによって、 大きく2つの種類に分けられています。

  • 原発性心臓腫瘍 心臓そのものから発生する腫瘍のことです。
  • 転移性心臓腫瘍 肺や乳房など、体の他の場所でできたがんが 心臓に移動(転移)してきたものです。

それぞれの腫瘍には、次のような特徴があります。

種類

特徴

原発性心臓腫瘍

・発生は非常にまれで、5000人に1人以下です。

・約7〜8割が「良性腫瘍」です。

転移性心臓腫瘍

・原発性の30〜40倍も多く見られます。

・すべてが悪性腫瘍(がん)です。

原発性心臓腫瘍の多くは良性ですが、 「良性」という言葉で安心することはできません。 腫瘍が大きくなると心臓の動きを邪魔して、 血液の流れを妨げ、心不全などを引き起こすからです。

また、原発性腫瘍の中には非常にまれな種類もあります。 例えば「成熟心筋細胞の過誤腫」という腫瘍は、 医師の間でもまだあまり知られていません。 この腫瘍は息切れなどの症状で始まり、 時には突然死につながる可能性も報告されています。 そのため、早期発見と正確な診断が非常に大切なのです。

心臓腫瘍の種類

心臓にできる腫瘍は、心臓から生まれた「原発性」と、 他の場所から引っ越してきた「転移性」に分けられます。 それぞれに、いくつかの種類があります。

原発性心臓腫瘍

心臓そのものから発生する腫瘍のことです。 これには、がんではない「良性」と、がんである「悪性」があります。 心臓にできる腫瘍の多くは良性腫瘍です。

主な良性腫瘍 良性でも、できた場所や大きさによっては、 心臓の働きを邪魔するため、注意深く見る必要があります。

  • 粘液腫(ねんえきしゅ) 大人の良性腫瘍では、最も多く見られる種類です。
  • 横紋筋腫(おうもんきんしゅ) 赤ちゃんや子どもに最も多く見られる腫瘍です。
  • 成熟心筋細胞の過誤腫(かごしゅ) とても珍しい腫瘍で、医師の間でもまだあまり知られていません。 息切れのような、他の病気でも見られる症状が出ます。 時には突然亡くなる原因になることも報告されています。 また、がんとの区別が難しく、詳しい検査が必要になります。

主な悪性腫瘍

  • 血管肉腫(けっかんにくしゅ) 心臓にできる悪性腫瘍の中で、最も多い種類です。
  • 悪性リンパ腫 血液のがんの一種が、心臓にできることもあります。

転移性心臓腫瘍

肺や乳房など、体の他の場所でできたがんが、 血液の流れに乗って心臓に移動してきたものです。 こちらはすべて悪性腫瘍(がん)です。 実は、心臓から発生する原発性腫瘍に比べて、 30〜40倍も多く見つかります。

心臓腫瘍の原因

心臓にできる「かたまり」である腫瘍は、 どこから来たかによって原因が大きく異なります。 心臓から生まれた「原発性」と、 他の場所から移ってきた「転移性」の2つです。

原発性の心臓腫瘍は、心臓の細胞が異常に増えることで発生します。 なぜ細胞が勝手に増え始めるのか、 はっきりとした原因はまだわかっていません。 これは、原発性の腫瘍ができること自体がとても珍しいためです。

一方、心臓にできる腫瘍のほとんどは転移性です。 これは、肺や乳房など他の場所にできたがん細胞が、 血液の流れに乗って心臓にたどり着き、 そこで再び増え始めることで起こります。

例えば、子宮頸がんが心臓に転移することは極めてまれです。 しかし、ひとたび心臓に転移すると、 その後の病気の見通しが非常に厳しくなることが報告されています。

また、がんを患っている方は、腫瘍の転移とは別の注意点もあります。 がん自体やその治療の影響で、 心臓や血管の病気を発症するリスクが高まることがわかっています。 そのため、がんの治療中は心臓の状態にも気を配ることが大切です。

心臓腫瘍の症状

心臓腫瘍の症状は、できた場所や大きさで様々です。 はっきりした特徴がないことが多く、腫瘍が小さい間は、 何も症状が出ないことも珍しくありません。

しかし、腫瘍が大きくなると心臓の働きを邪魔して、 次のようなサインが現れることがあります。

心臓のポンプ機能が邪魔される症状

腫瘍によって血液の流れが妨げられると起こります。

  • 息切れ、呼吸困難 少し動いただけでも息が苦しくなることがあります。 研究報告でも、心臓腫瘍の主な症状として、 呼吸困難や胸痛は多くみられることがわかっています。
  • 疲れやすさ、むくみ 全身に十分な血液を送れなくなるため、 だるさを感じたり、足がむくんだりします。
  • 動悸・不整脈 心臓の電気信号が乱れて、脈が飛んだり速くなったりします。
  • めまい・失神 脳への血流が一時的に足りなくなることで起こります。 まれに、失神したことがきっかけで病気が見つかることもあります。

腫瘍のかけらが飛んでしまう症状(塞栓症)

腫瘍の一部がはがれて血液の流れに乗り、 体の別の場所にある細い血管を詰まらせる症状です。

  • 脳梗塞(のうこうそく) 脳の血管が詰まると、手足の麻痺が起きたり、 ろれつが回らなくなったりします。

体全体に現れる症状

腫瘍そのものが原因で、体全体に影響が出ることもあります。

  • 発熱
  • 体重の減少
  • 関節の痛み
  • だるさ

これらの症状は、心臓腫瘍以外の病気でも見られます。 しかし、気になる症状が続く場合は自己判断せず、 必ず医療機関に相談するようにしてください。

心臓腫瘍の検査・診断

心臓腫瘍は、息切れなどの症状が他の病気と似ています。 そのため、診断が難しく、慎重に調べる必要があります。 他の病気の検査で、偶然見つかることも少なくありません。

診断の中心となるのは、心臓の様子を画像で見る検査です。 特に「成熟心筋細胞の過誤腫」のような珍しい腫瘍は、 がん(悪性腫瘍)との区別が難しいことが報告されています。 そのため、複数の検査で多角的に調べることが重要です。

  • 心エコー検査(心臓超音波検査) 体に負担の少ない超音波で、心臓の動きや形、 腫瘍の有無などをリアルタイムで観察する基本の検査です。 ある研究では、心臓の腫瘍はこの検査で発見されることが 最も多いと報告されています。
  • CT検査・MRI検査 心エコー検査で腫瘍が見つかった後、 さらに詳しく調べるために行われる検査です。 体の断面を画像にすることで、腫瘍の正確な場所や、 周りの組織との関係を立体的に把握できます。 良性か悪性かを見分けるための重要な情報を得られます。
  • その他の検査 必要に応じて、がん細胞の活動を調べるPET検査や、 腫瘍の一部を採って顕微鏡で調べる生検を行うこともあります。

このように、一つの検査だけでなく、 複数の結果を総合的に判断して診断を確定していきます。

心臓腫瘍の治療

心臓にできた「かたまり」である腫瘍の治療法は、 その種類によって大きく変わってきます。 良性か悪性か、心臓から生まれた「原発性」か、 他の場所から移ってきた「転移性」かで方針が決まります。

良性腫瘍の治療

息切れなどの症状がある良性の腫瘍は、 手術で取り除くのが基本的な治療です。 手術で完全に取り除ければ、多くは完治が期待できます。

しかし、腫瘍の場所や大きさによっては手術が難しいこともあります。 その場合は、まれに心臓移植が必要になるケースも報告されています。

悪性腫瘍(がん)の治療

悪性の腫瘍、つまりがんの場合は治療がより複雑になります。

  • 心臓からできたがん(原発性) 手術で完全に取り除くことが難しい場合が多いです。 そのため、お薬(化学療法)や放射線を使って、 病気の進行を遅らせることを目指します。
  • 他の場所から来たがん(転移性) もとになったがん(原発巣)の治療が中心です。 例えば子宮頸がんの心臓転移のように、 確立された治療法がなく、予後が厳しいのが現状です。

心臓全体を考えた治療

がんを患っている方は、腫瘍とは別の注意点があります。 がん治療で使うお薬が、心臓に影響を与えることもあるからです。

しかし、たとえがん治療中であっても、 心臓の血管を広げるカテーテル治療などから、 がんでない人と同等の効果を得られることがわかっています。 そのため、腫瘍だけでなく心臓全体の健康を考えた治療が大切です。