年のせいだと諦めていた息切れやむくみ、なかなか治らない手足のしびれ。その不調、もしかしたら心臓に「アミロイド」という特殊なたんぱく質がたまる「心アミロイドーシス」のサインかもしれません。かつては非常に珍しい病気と考えられていましたが、近年の研究で高齢者の心不全の原因として決して少なくないことがわかってきました。
この病気の発見が難しいのは、心臓の症状より先に、手足のしびれや腰痛といった一見関係のないサインが現れることがあるためです。実際、骨の検査を受けた方の約100人に1人に、この病気の疑いが偶然見つかったという報告もあります。
この記事では、見逃されがちな心アミロイドーシスの原因や症状、最新の治療法までを詳しく解説します。ご自身の体からのサインに気づき、早期発見につなげるためにも、ぜひご一読ください。
心アミロイドーシスの概要
心アミロイドーシスは、特殊なたんぱく質である「アミロイド」が、心臓の筋肉のすき間にたまってしまう病気です。
アミロイドがたまると、しなやかだった心臓の壁が硬く厚くなります。その結果、心臓がうまく膨らんだり縮んだりできなくなってしまいます。全身に血液を送るポンプの力が弱まり、「心不全」という状態になります。
以前は非常に珍しい病気と考えられていました。しかし、検査技術が進歩したことで、特にご高齢の方の心不全の原因として、決して少なくないことがわかってきています。
心不全は、心臓のポンプ機能の状態によって、いくつかの種類に分けられます。
- ポンプ機能が保たれている心不全 (HFpEF)
- ポンプ機能が少し低下した心不全 (HFmrEF)
- ポンプ機能が低下した心不全 (HFrEF)
これまでは、ポンプ機能が保たれているHFpEFの患者さんに多いと考えられていました。しかし最近の研究では、ポンプ機能が低下したHFrEFやHFmrEFの患者さんにも、高い割合でこの病気が隠れていると報告されています。
ある研究では、トランスサイレチン型心アミロイドーシスの患者さんのうち、約4割がポンプ機能の低下したタイプ(HFmrEF、HFrEF)だったことが示されました。
このことから、心不全の種類にかかわらず、心アミロイドーシスの可能性を考えることの重要性が高まっています。
心アミロイドーシスの種類
心アミロイドーシスは、原因となるたんぱく質によって、いくつかの種類に分けられます。どの種類かによって治療法がまったく異なるため、タイプを正しく見極めることがとても重要です。
主に、次の2つのタイプがあります。
1. ALアミロイドーシス 私たちの血液の中には、体を守る「抗体」という兵隊さんがいます。この抗体の一部である「免疫グロブリン軽鎖」が、異常にたくさん作られてアミロイドに変わってしまうのがこのタイプです。血液の病気が背景にあることが多いのが特徴です。
2. ATTRアミロイドーシス 肝臓で作られ、栄養などを運ぶ役割を持つ「トランスサイレチン(TTR)」というたんぱく質が原因です。このたんぱく質が、もろく不安定になってバラバラになり、アミロイドとして心臓にたまってしまいます。
ATTRアミロイドーシスは、さらに2つのタイプに分けられます。
- 野生型(ATTRwt) 主に年齢を重ねることが原因で起こります。遺伝とは関係なく、特にご高齢の男性に多く見られる傾向があります。
- 遺伝性(ATTRv) 生まれつき、トランスサイレチンが壊れやすい設計図(遺伝子)を持っていることが原因です。
複数の研究をまとめた報告によると、ATTR型の患者さんはAL型の患者さんよりも、平均して9歳ほど高齢であることが示されています。
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種類
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原因になるたんぱく質
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こんな特徴があるよ
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ALアミロイドーシス
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血液の「抗体」の一部
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血液の病気が関係している
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ATTRアミロイドーシス
(野生型/ATTRwt)
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肝臓の「運び屋」たんぱく質
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年齢を重ねることが主な原因
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ATTRアミロイドーシス
(遺伝性/ATTRv)
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肝臓の「運び屋」たんぱく質
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遺伝子の変化が原因
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このように、同じ心アミロイドーシスでも原因は様々です。正しい検査でタイプを特定し、一人ひとりに合った治療を選ぶことが、回復への第一歩となります。
心アミロイドーシスの原因
心アミロイドーシスの直接的な原因は、アミロイドという異常なたんぱく質です。このアミロイドが心臓の筋肉のすき間にたまってしまうことで起こります。
アミロイドのもとになるたんぱく質の違いによって、原因は大きく2つに分かれます。
- ALアミロイドーシス 血液の中で体を守る抗体を作る「形質細胞」という細胞の異常が原因です。この細胞が、抗体の部品である「免疫グロブリン軽鎖」を過剰に作り出してしまいます。
- ATTRアミロイドーシス 主に肝臓で作られる「トランスサイレチン(TTR)」というたんぱく質が原因です。このタイプは、さらに2つに分けられます。
- 遺伝性(ATTRv) 生まれつきTTRを作る遺伝子の設計図に変化があるタイプです。そのため、不安定でアミロイドになりやすいたんぱく質が作られてしまいます。
- 野生型(ATTRwt) 遺伝子に変化はなく、主に年齢を重ねることが原因です。TTRの構造がもろくなり、アミロイドとして心臓にたまってしまいます。
特に野生型は、ご高齢の男性に多く、自覚症状がないまま進行することも少なくありません。
実際に、複数の研究結果をまとめて分析した信頼性の高い報告があります。それによると、骨折などを調べる骨の検査を受けた方のうち、約1.1%で偶然この病気の疑いが見つかったとされています。これは約100人に1人の割合です。
こうした偶然の発見は、特にご高齢の男性に多い傾向がありました。このように、原因は遺伝的なものから加齢に伴うものまで様々です。気づかないうちに病気が隠れている可能性も考えられます。
心アミロイドーシスの症状
心アミロイドーシスは、心臓の病気ですが、そのサインは心臓だけに現れるとは限りません。むしろ、体のあちこちに「あれ?」と思うような症状が出ることが特徴です。
心臓にあらわれる症状
心臓にアミロイドがたまることで、ポンプの働きが弱まり、「心不全」や「不整脈」の症状が出ます。
- 息切れ、むくみ 以前は平気だった坂道や階段で、息が切れるようになります。ある研究では、この病気の患者さんは運動中に呼吸の効率が悪くなることが報告されています。そのため、疲れやすさを感じやすくなります。
- 動悸、めまい、失神 脈のリズムが乱れる不整脈もよく見られます。ある研究報告によると、自覚症状がなくても患者さんの半数以上で、一時的に脈が速くなるタイプの不整脈が見つかったそうです。
心臓以外にあらわれる症状
心臓の症状より先に、次のようなサインが現れることも少なくありません。これらは診断の重要な手がかりとなります。
【見逃したくない体のサイン・チェックリスト】 □ 両手がしびれる、指先の感覚がおかしい(手根管症候群) □ 腰や足が痛んで、長く歩くのがつらい(脊柱管狭窄症) □ 立ち上がったときにクラっとする(立ちくらみ) □ 下痢や便秘をくり返す □ ぶつけた覚えがないのに、あざができやすい
これらの症状が心臓の病気と結びつきにくいため、診断が遅れる一因にもなっています。複数当てはまる場合は、専門の医療機関にご相談ください。
心アミロイドーシスの検査・診断
心アミロイドーシスが疑われる場合、いくつかの検査を組み合わせて総合的に診断します。
原因がはっきりしない心不全や、心臓の壁が厚くなる心肥大をきっかけに、詳しい検査に進むことが多くあります。
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検査の種類
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どんなことを調べるの?
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心エコー検査
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超音波を使い、心臓の形や動き、壁の厚さなどを確認する基本的な検査です。
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血液・尿検査
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ALアミロイドーシスの原因となる異常なたんぱく質が、血液や尿に隠れていないかを調べます。
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心臓MRI検査
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心臓の筋肉の状態をより詳しく画像で評価します。特殊な撮影で心筋の性質を調べることで、今後の見通しを予測するのに役立つと報告されています。
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核医学検査
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ATTRアミロイドーシスの診断に特に役立ちます。薬を注射し、心臓にアミロイドがたまっているかを確認します。
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心筋生検
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確定診断のために行われます。カテーテルで心臓の筋肉の一部を直接採り、顕微鏡でアミロイドを確認します。
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偶然の発見から診断につながることも
ATTRアミロイドーシスの診断で力を発揮する核医学検査は、もともと骨の病気を調べるためにも使われます。
そのため、骨折などを調べる検査を受けた際に、偶然この病気のサインが見つかることがあります。
複数の研究をまとめた信頼性の高い報告によると、そうした方のうち約1.1%で病気の疑いが見つかったとされています。これは約100人に1人の割合です。特にご高齢の男性に多い傾向がありました。
このように、思いがけないきっかけで病気の可能性がわかることも少なくありません。検査結果を総合的に判断し、どのタイプかを正確に見極めた上で、一人ひとりに合った治療方針を決定していきます。
心アミロイドーシスの治療
心アミロイドーシスの治療には、2つの大きな目標があります。まず、アミロイドがこれ以上作られるのを防ぐことです。そして、今ある心臓の症状を和らげ、生活を楽にすることです。原因となるアミロイドの種類によって、治療法は全く異なります。
原因に直接アプローチする治療
病気の進行を食い止めるため、原因に合わせた治療を行います。
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種類
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主な治療法
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治療のポイント
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ALアミロイドーシス
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・化学療法
・自家造血幹細胞移植
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血液の病気が原因のため、異常なたんぱく質を作る細胞の働きを抑える治療が中心です。
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ATTRアミロイドーシス
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・TTR安定化薬
・核酸医薬
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肝臓で作られるたんぱく質が原因です。たんぱく質がバラバラにならないよう安定させる薬や、作られる量を減らす薬を使います。
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心臓の症状を和らげる治療
原因への治療と並行して、心臓のつらい症状を軽くすることも重要です。
- 心不全の治療 息切れや足のむくみといった症状に対し、お薬を使って心臓の負担をできるだけ減らします。
- 不整脈の治療 動悸やめまいなどを引き起こす不整脈の管理も大切です。特に、野生型ATTR心アミロイドーシスでは注意が必要です。ある研究では、患者さんの半数以上で、より危険な不整脈につながる可能性のある脈の乱れが見つかったと報告されています。そのため、状態に応じてペースメーカーなどの治療を検討することがあります。
治療方針を決めるために
今後の見通しを立て、より良い治療を選ぶためには、心臓の状態を正確に把握することが欠かせません。心臓MRI検査では、心臓の筋肉の性質を詳しく評価できます。この検査結果は、将来の病状を予測する重要な手がかりとなり、治療方針を決める上で非常に役立つことがわかっています。