小児外反扁平足

お子さんの足を見て、「土踏まずがない」「かかとがハの字に曲がっている」と心配になったことはありませんか。その状態は「小児外反扁平足」と呼ばれ、実は歩き始めのお子さんの多くに見られる、成長過程の一つの姿です。

ほとんどは4歳頃までに自然と改善するため過度な心配は不要ですが、ごくまれに専門的な治療が必要なケースも隠れています。「よく転ぶ」「すぐに疲れたと訴える」といったサインは、足が助けを求めているのかもしれません。放置すると、将来の足トラブルにつながる可能性も指摘されています。

この記事では、小児外反扁平足の原因やご家庭でできる見分け方、そして治療法までを詳しく解説します。大切なお子さんの健やかな成長を見守るために、まずは正しい知識を身につけ、足の状態を正しく理解することから始めましょう。

小児外反扁平足の概要

お子さんの足を見て、「土踏まずがなくて足の裏が平らだ」と感じたり、「かかとが外側に傾いてハの字になっている」と心配になったりしたことはありませんか。

この2つの状態が同時に見られる足のことを「小児外反扁平足」と呼びます。 具体的には、以下のような特徴を持つ足の状態を指します。

状態

説明

扁平足(へんぺいそく)

足の裏にあるアーチ(土踏まず)が潰れてしまい、

足の裏全体が地面についている状態です。

外反足(がいはんそく)

体重がかかった時に、かかとの骨が外側を向き、

「ハの字」のように傾いてしまう状態です。

歩き始めの幼児期には、多くのお子さんにこの外反扁平足が見られます。 これは、足の骨や関節を支える筋肉、じん帯がまだ十分に発達していないためです。 成長とともに足の機能がしっかりしてくると、4歳ごろまでには自然に土踏まずが形成され、かかとの傾きも改善することがほとんどです。

お子さんの外反扁平足の多くは、体重をかけた時にだけ足が平らになる「柔らかいタイプ」です。 そのため、座ったり寝たりしている時には土踏まずがあるように見えることもあります。

しかし、お子さんが頻繁に転ぶ、長時間歩きたがらない、すぐに「足が疲れた」と言うなどの様子が見られる場合は、一度専門の医師に相談することをおすすめします。

小児外反扁平足の種類

お子さんの外反扁平足は、足の「やわらかさ」によって、大きく2つのタイプに分けられます。 どちらのタイプなのかで、その後の経過や治療の必要性が大きく変わってくるため、見極めることがとても重要です。

ほとんどを占める「やわらかいタイプ(弛緩性外反扁平足)」

お子さんの外反扁平足のほとんどは、こちらの心配の少ないタイプです。 足の関節がやわらかく、ぐにゃぐにゃと動くのが特徴になります。

  • 特徴
  • 座っている時など、体重がかかっていない状態では土踏まずが見えます。
  • しかし、立ち上がって体重がかかると、土踏まずが潰れて平らになります。
  • 原因
  • 成長の過程で、骨と骨をつなぐ靭帯(じんたい)という組織がまだやわらかいためです。
  • 骨を支える筋肉も発達途中なので、体重を支えきれずに足が変形します。
  • 多くの場合、4歳頃から成長とともに筋肉や靭帯がしっかりしてきます。
  • それに伴い、自然と土踏まずが作られていくことが期待できます。

まれに見られる「かたいタイプ(強剛性外反扁平足)」

こちらはごくまれなタイプですが、専門的な診断や治療が必要になることがあります。 足の関節の動きが硬く、変形が固定されているのが特徴です。

  • 特徴
  • 体重をかけている時も、かけていない時も、常に土踏まずがありません。
  • 足首の関節が硬く、動かしにくい状態になっています。
  • 原因
  • 生まれつき足の骨の形が違っていたり、骨同士がくっついていたりすることが原因です。
  • 具体的には、「先天性垂直距骨」や「足根骨癒合症」といった病気が隠れている可能性があります。

お子さんの足がどちらのタイプか見分けるために、以下の表を参考にしてみてください。

種類

やわらかいタイプ(弛緩性)

かたいタイプ(強剛性)

見られる頻度

非常に多い

まれ

体重をかけない時

土踏まずが見られる

土踏まずがない

体重をかけた時

土踏まずがつぶれる

形はあまり変わらない

足の関節の動き

やわらかく、よく動く

かたく、動きにくい

このように、同じ外反扁平足でもタイプによって状態は全く異なります。 もし、お子さんの足が「かたいタイプ」かもしれないと心配になった場合は、早めに専門の医師にご相談ください。

小児外反扁平足の原因

お子さんの外反扁平足の原因は、ほとんどが病的なものではありません。 これは、赤ちゃんが成長していく過程で見られる、ごく自然な姿なのです。 主な原因は、足の骨格を支える筋肉や靭帯(じんたい)が未熟なことです。

歩き始めのお子さんの足は、骨がまだ軟骨に近く、とても柔らかいです。 また、足の裏の脂肪も多いため、土踏まずがはっきりと見えません。 この未熟な足で体を支えると、体重で土踏まずが簡単につぶれてしまいます。 同時にかかとの骨が「ハの字」のように外側に傾き、外反扁平足の状態になります。

これらに加え、外反扁平足になりやすくなる要因もいくつかあります。

  • 遺伝的な体質 ご家族に関節が柔らかい方がいる場合、その体質を受け継いでいることがあります。 全身の関節が柔らかいと、足の関節も不安定になりやすい傾向があります。
  • 運動不足 外で遊ぶ機会が減ると、足の裏や指の筋肉が十分に発達しないことがあります。 土踏まずを支える筋力が弱いと、アーチが潰れやすくなってしまいます。
  • 体重の増加 お子さんの体が大きくなるにつれて、足にかかる負担も増えていきます。 特に肥満傾向にある場合は、足のアーチへの負荷が大きくなるのです。

ごくまれに、以下のような生まれつきの病気が原因となっていることもあります。

原因となる病気の例(まれなケース)

特徴

ダウン症候群などの全身の病気

全身の筋肉や関節が柔らかいため、

足の構造が不安定になりやすい傾向があります。

先天性垂直距骨(せんてんせいすいちょくきょこつ)

生まれつき足の骨の形に特徴があり、

硬くて土踏まずが作られにくい状態です。

そのほかの神経・筋肉の病気

体の動きや発達に関わる病気が、

足の変形に影響している場合もあります。

このように、多くは成長に伴う自然な状態です。 しかし、気になる様子が見られる場合は、背景に病気が隠れていないかを確認することも大切です。

小児外反扁平足の症状

小さなお子さんは、足に痛みや違和感があっても、それを上手く言葉で表現できないことが少なくありません。 そのため、周りの大人がお子さんの足の状態や行動の変化に気づいてあげることが、とても大切になります。 症状は、座っている時よりも、立ったり歩いたりして足に体重がかかった時に、はっきりと現れるのが特徴です。

見た目でわかる足の変化

まず、お子さんの足を後ろから見て、以下のような特徴がないか確認してみましょう。

  • 土踏まずが潰れている(扁平足) 立った時に、足の裏の内側にあるアーチ(土踏まず)が潰れて、 足の裏全体が地面にべったりとついて平らに見えます。
  • かかとが「ハの字」に傾いている(外反足) お子さんの後ろからアキレス腱を見ると、 かかとの骨が外側に「ハの字」のように傾いて見えます。

行動や様子からわかるサイン

見た目の変化だけでなく、お子さんの普段の様子にも症状のサインは隠れています。 ご家庭で簡単にできるチェックリストで確認してみてください。

【お子さんの様子でわかるチェックリスト】 ☐ 歩き方がペタペタしていて、よく転ぶ ☐ 長い距離を歩きたがらず、すぐに「疲れた」「抱っこして」と訴える ☐ 運動した後や夜中に、ふくらはぎや足の痛みを訴えることがある ☐ 新しい靴を履いても、かかとの内側だけがすぐにすり減ってしまう

これらのサインは、足のアーチがクッションの役割を十分に果たせず、体に負担がかかっている証拠かもしれません。 足のバランスが崩れると、その影響は足だけにとどまらず、膝や股関節、腰の痛みにつながることもあります。

また、この状態が成長しても続くと、将来的に足の親指が曲がってしまう外反母趾(がいはんぼし)など、別の足のトラブルを引き起こす可能性も指摘されています。 気になるサインが見られたら、一度専門の医師に相談することをおすすめします。

小児外反扁平足の検査・診断

お子さんの足について「もしかして?」と心配になったら、まずは専門の医師に相談しましょう。 病院では、お子さんの足の状態を正しく知るために、いくつかのステップで丁寧に調べていきます。

ステップ1:くわしくお話を聞く「問診」

まず、保護者の方からお子さんの普段の様子について、くわしくお話を聞きます。 これは診断のための、とても大切な手がかり集めになります。

  • お子さんの様子について 転びやすい、すぐに「疲れた」と言うなど、気になる行動はありますか。
  • いつから気になっているか 足の形や歩き方が気になり始めた時期を教えてください。
  • これまでの成長について 生まれた時や、これまでの成長・発達で何か気になることはありましたか。
  • ご家族について ご家族に、足の形や痛みで困っている方がいるかどうかも参考にします。

ステップ2:足の動きをじっくり見る「診察」

次に、医師がお子さんの足を直接見て、触って、状態を確認します。 座っている時、立っている時、歩いている時で足の形がどう変わるかを観察します。

状態

チェックする主なポイント

座っている時

体重がかかっていない時の土踏まずの形や、

足首の関節のやわらかさを見ます。

立っている時

体重で土踏まずが潰れるか、

かかとが「ハの字」に傾くかを確認します。

歩いている時

歩き方のクセや、足首が内側に倒れすぎていないかを観察します。

つま先立ち

つま先立ちをした時に土踏まずが現れるかを見ます。

(やわらかいタイプか、かたいタイプかを見分ける大切なポイントです)

ステップ3:足の中を詳しく見る「画像検査」

見ただけではわからない、足の骨や関節の状態を詳しく調べるために、写真をとる検査を行います。

  • レントゲン(X線)検査 足全体の骨の形やバランス、関節の状態を詳しく確認できます。 生まれつき骨の形に特徴がないかなどを調べるのに役立ちます。
  • 超音波(エコー)検査 小さなお子さんの骨はまだ軟骨の部分が多く、レントゲンに写りにくいことがあります。 その場合、超音波を使って骨や軟骨の状態を鮮明に観察します。

これらの結果を総合的にみて、外反扁平足かどうか、またその原因や程度を判断し、お子さんに合った方針を決めていきます。

小児外反扁平足の治療

お子さんの外反扁平足は、多くの場合、成長とともに自然と良くなっていきます。 そのため、基本的には特別な治療を急がず、定期的に通院していただきながら、足の成長をじっくりと見守る「経過観察」が中心となります。

しかし、お子さんの様子によっては、足の成長を少し手助けする治療が必要になることもあります。 例えば、以下のようなサインが見られる場合は、より積極的な治療を検討します。

  • 頻繁に転んでしまう
  • 足の痛みを繰り返し訴える
  • 長い距離を歩きたがらず、すぐに「抱っこ」を求める

治療は、体にメスを入れない「保存療法」という方法から始めるのが一般的です。

保存療法(手術をしない方法)

保存療法は、足の裏の筋肉を育てたり、特別な道具を使ったりして、足にかかる負担を減らし、正しい成長をうながす方法です。

運動療法 足の裏にある筋肉を鍛え、土踏まずのアーチをしっかり作る力を育てます。 ご家庭で遊びながらできる、以下のような運動がおすすめです。

– タオルギャザー運動 床に広げたタオルを、足の指の力だけでたぐり寄せる運動です。 – 裸足での運動 芝生や砂浜など、少しでこぼこした場所を裸足で歩くと、 足の裏の筋肉が自然と鍛えられます。

装具療法 お子さんの足に合った特別な道具を使い、歩き方をサポートします。 装具は骨の形を完全に治すものではありませんが、 痛みを和らげ、正しい足の形に導く効果が期待できます。

– インソール(足底装具) 靴の中に入れる特別な中敷きです。 内側のアーチを優しく持ち上げ、土踏まずの役割を助けます。 – ハイカットシューズ 足首までしっかり固定できる靴です。 かかとが内側に倒れ込むのを防ぎ、安定した歩行を支えます。

手術療法

保存療法を続けても症状の改善が見られない場合や、生まれつき骨の形に原因がある「先天性垂直距骨」などのごくまれなケースでは、手術が検討されることがあります。 手術が必要かどうかは、レントゲン検査などで骨の状態を詳しく調べ、お子さんの将来のことも考えて慎重に判断します。

治療の目的は、お子さんが足の痛みを感じることなく、元気に走り回れるようにすることです。 気になることがあれば、どんな小さなことでもご相談ください。