「体に虫がいる気がする…」そんな不快なかゆみや原因不明の腹痛に、心当たりはありませんか。寄生虫は遠い国の病気だと思われがちですが、実は加熱不十分な食べ物などを通じて、誰にでも感染する可能性があります。
しかし、本当に注意すべきは、症状の原因が実際の寄生虫ではないケースです。英国の専門外来の報告では、寄生虫症を疑って受診した人の半数以上(55.7%)が、実際には感染していない「妄想性寄生虫症」だったという驚きのデータも。
この記事では、本当の寄生虫症から、意外な「思い込み」が引き起こす症状まで、その原因と正しい対処法を詳しく解説します。あなたの不調の本当の原因を見つける一助となれば幸いです。
寄生虫症の概要
「寄生虫」と聞くと、少し怖いイメージがあるかもしれません。 自分には関係ない、遠い国の病気だと思っていませんか。 しかし、寄生虫は私たちのすぐ身近な環境に潜んでいます。 食べ物や水、土などを通じて誰でも感染する可能性があります。
寄生虫症とは、他の生き物の体の中や表面にくっついて、 栄養をもらいながら生きる「寄生虫」が原因で起こる病気です。 寄生虫には、主に2つのタイプがいます。
- 原虫(げんちゅう) 顕微鏡を使わないと見えない、とても小さな生物です。
- 蠕虫(ぜんちゅう) ミミズのように細長い形をした生物を指します。
これらの寄生虫が体に入ると、お腹の痛みや下痢、 栄養がうまく取れないなどの症状を引き起こします。
また、少し特殊なケースとして、妄想性寄生虫症があります。 これは、実際に寄生虫に感染していないにもかかわらず、 「皮膚の下を虫が這っている」と強く感じてしまう状態です。 ある研究レビューでは、特定のお薬が原因の可能性を指摘しています。 例えば、ADHDの治療薬を服用しているお子さんで、 このような虫がいるような感覚が報告されたことがあります。
処方されたお薬を中止すると、症状が消えることがほとんどです。 このように、寄生虫症には実際の感染症だけでなく、 お薬に関連して起こる症状まで幅広く存在します。 まずは、どのような病気なのかを知っておくことが大切です。
寄生虫症の種類
寄生虫には、とてもたくさんの種類がいます。 大きく分けると、私たちの体の「中」にすむものと、 「外」、つまり皮膚や毛にすむものに分けられます。 それぞれどんな特徴があるのか、見ていきましょう。
体の中にすむ寄生虫
体の中にすむ寄生虫は、主に大きさで2つに分かれます。
- 原虫(げんちゅう) 顕微鏡を使わないと見えない、非常に小さな生物です。 汚染された水や食べ物を通じて、体の中に入り込みます。
- 蠕虫(ぜんちゅう) ミミズのような形をした、いわゆる「むし」の仲間です。 お刺身で有名なアニサキスも、この蠕虫の一種です。
体の外にすむ寄生虫
体の外側、特に皮膚や「毛」にすみつく寄生虫もいます。 その代表的なものが「シラミ」の仲間である「ケジラミ」です。
ケジラミは、まれに「まつ毛」に寄生することがあります。 これを「眼瞼毛ジラミ症(がんけんけじらみしょう)」と呼びます。 まつ毛の根元で血を吸うため、まぶたに激しいかゆみを引き起こします。
この症状は、ただのまぶたの炎症(眼瞼炎)とよく似ています。 そのため、寄生虫が原因だと気づかれないことも少なくありません。 放置すると角膜炎などを起こすため、早期の治療が大切です。
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分類
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主なすみか
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代表例
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原虫
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体の中(腸や血液など)
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マラリア原虫、赤痢アメーバ
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蠕虫
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体の中(腸など)
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回虫、アニサキス、条虫(サナダムシ)
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外部寄生虫
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体の外(皮膚や毛)
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ケジラミ、シラミ、ダニ
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寄生虫症の原因
寄生虫が私たちの体に入るルートは、主に3つあります。 原因を知ることで、日常生活での予防に繋げられます。 それぞれの感染経路を具体的に見ていきましょう。
食べ物や飲み物から(経口感染)
寄生虫やその卵がついた食べ物や水を口にすることで感染します。 私たちの食生活に身近な場面にも、危険は潜んでいます。
- 加熱が不十分な食べ物 生のお魚に含まれるアニサキスが有名です。 また、加熱が足りない豚肉などが原因で、 有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう)に感染することもあります。
- 汚染された水や野菜 寄生虫の卵に汚染された井戸水や、 よく洗っていない野菜なども原因になり得ます。
- 汚れた手指からの感染 トイレの後や土いじりの後、手を十分に洗わないと、 指についた卵が口から入ってしまうことがあります。
皮膚から直接入ってくる(経皮感染)
一部の寄生虫は、幼虫が直接皮膚を突き破って侵入します。 例えば、鉤虫(こうちゅう)という寄生虫は、 汚染された土の上を裸足で歩くことなどで感染します。
人や物との接触による感染
体の表面にすみつく寄生虫もいます。 代表的なものが、寝具やタオルの共有でうつるケジラミです。 まれにまつ毛に寄生し、激しいかゆみを引き起こすことがあります。
この状態は、ただのまぶたの炎症(眼瞼炎)と間違われやすく、 診断が遅れることもあるため注意が必要です。 放置すると、角膜炎などの合併症につながる恐れがあります。
思い込みが原因となる場合
実際に寄生虫はいないのに、「体に虫がいる」と強く感じ、 かゆみなどの症状が出てしまう「寄生虫妄想」という状態もあります。 これは他の病気や、特定の薬が原因で起こることもあります。 気になる症状があれば、自己判断せず専門医に相談しましょう。
寄生虫症の症状
寄生虫が引き起こす症状は、実にさまざまです。 原因となる寄生虫の種類や、体のどこにいるかで大きく変わります。 お腹の不調から、皮膚のトラブル、全身のだるさまで、 体のあらゆる場所にサインが現れる可能性があります。
代表的な症状を、3つのタイプに分けて見ていきましょう。
- お腹の症状 下痢や腹痛、吐き気、食欲不振などがよく見られます。 生の魚介類を食べた後のアニサキスによる激しい腹痛は、 その代表的な例として知られています。
- 皮膚の症状 強いかゆみや赤いブツブツ、みみずばれのような跡が現れます。 寄生虫の幼虫が皮膚の下を移動することで起こる症状です。
- 全身の症状 発熱や筋肉痛、原因不明の体重減少などが起こります。 寄生虫に栄養を奪われることで貧血になったり、 お子さんの場合は成長が遅れたりすることもあります。
一方で、少し特殊なケースとして「妄想性寄生虫症」があります。 これは実際に寄生虫はいないのに、「体に虫がいる」と強く信じ込み、 激しいかゆみなどを感じてしまう状態です。
これは妄想性障害の一種と考えられています。 近年の研究では、新型コロナウイルス感染症にかかった後に、 この症状が新たに出たという症例も報告されています。
このような状態の治療は、一つの診療科だけでは難しい場合があります。 英国のある専門外来の報告では、感染症の専門医と精神科医が協力する、 統合的なアプローチが有効であると述べられています。 気になる症状があれば、まずは専門の医療機関に相談することが大切です。
寄生虫症の検査・診断
「体に虫がいるかも?」という不安を感じたとき、 医療機関では原因を突き止めるための検査を行います。 症状や、どの寄生虫が疑われるかによって検査は異なります。 まずは体の中に寄生虫がいる「証拠」を探すのが基本です。
主に行われる検査
- うんちの検査(便検査) 寄生虫の卵や体の一部が便に混じっていないか、 顕微鏡を使って詳しく調べる、最も基本の検査です。
- 血液検査 体が寄生虫と戦うために作った物質(抗体)がないか、 アレルギー反応で増える白血球(好酸球)がないか調べます。
- 画像検査 超音波(エコー)検査などでお腹の中を見て、 アニサキスのような寄生虫がいないか確認することもあります。
検査で見つからない場合
これらの検査をしても、寄生虫が見つからないこともあります。 しかし、かゆみなどの症状が続くと、 「絶対に虫がいるはずだ」と強く感じてしまうことがあります。
実際に寄生虫はいないのに、いると強く信じ込む状態を、 「妄想性寄生虫症」と呼びます。 英国の専門外来の報告では、寄生虫症が疑われた方のうち、 半数以上(55.7%)がこの状態だったとされています。
このような場合、寄生虫の専門医と心の専門医が協力する、 統合的なアプローチが有効であることが分かっています。 原因がはっきりしない症状でも、あきらめないでください。 まずは専門の医療機関に相談することが、解決への第一歩です。
寄生虫症の治療
寄生虫症の治療は、まず原因を正確に突き止めることが大切です。 体の中に寄生虫がいる場合と、いない場合で治療法は異なります。 それぞれのケースについて、詳しく見ていきましょう。
寄生虫が「いる」場合の治療
検査の結果、体の中に寄生虫がいることがはっきりとわかった場合、 その寄生虫に合わせた「抗寄生虫薬」というお薬を使って治療します。 寄生虫の種類によって効くお薬が違うため、自己判断は危険です。 必ず医師の診断を受け、処方されたお薬を正しく飲みましょう。
寄生虫が「いない」のに症状がある場合
一方で、つらい症状があるのに検査では寄生虫が見つからない、 というケースも少なくありません。 「体に虫がいる」という強い思い込みによって、 かゆみなどの症状が出てしまうことがあるのです。
これは「妄想性寄生虫症」と呼ばれる、心の病気の一つです。 この場合、寄生虫を退治するお薬を飲んでも効果はありません。 心の状態を整えるための、抗精神病薬などが治療に用いられます。 他の病気や普段飲んでいるお薬が原因で起こることもあります。
英国の専門外来の報告では、寄生虫症が疑われた方のうち、 半数以上(55.7%)がこの状態だったとされています。 感染症の専門医と心の専門医(精神科医)が協力する、 統合的なアプローチが有効であることがわかっています。 原因がはっきりしない症状でも、あきらめずに相談してください。