大腸ポリープ

「症状がないから大丈夫」——。そう思っているあなたのお腹の中で、気づかないうちに静かな異変が起きているかもしれません。健康診断などで見つかることの多い「大腸ポリープ」は、実は放置すると大腸がんに進行する可能性を秘めた、「がんの芽」とも呼ばれる存在です。

多くの場合、自覚症状がないまま育つため、発見が遅れがちになります。しかし、早期に発見し適切に切除すれば、大腸がんは高い確率で予防できる病気でもあります。この記事では、ポリープの種類や原因、体に負担の少ない最新の治療法までを徹底解説。ご自身の状況と照らし合わせ、大切な健康を守るための第一歩にしてください。

大腸ポリープの概要

大腸ポリープとは、大腸の内側をおおう粘膜の一部が、いぼのように盛り上がってできたものです。多くの場合、とくに症状はありません。そのため、健康診断の便潜血検査で陽性となり、精密検査でみつかることがよくあります。

大腸ポリープは、その性質によって大きく2つの種類に分けられます。将来がんになる可能性があるかどうかで区別することが重要です。

ポリープの種類

特徴

腫瘍性ポリープ

時間をかけて大きくなり、その一部ががんになる可能性があります。大腸がんの「芽」ともいえるため、みつかった場合は切除することが推奨されます。

非腫瘍性ポリープ

基本的にはがんになる心配はほとんどありません。しかし、一部にがん化するリスクがあるタイプも存在するため、医師による慎重な判断が必要です。

ポリープを切除する方法には、電気メスで焼き切る方法(ホットスネア)や、電気を使わずに切り取る方法(コールドスネア)などがあります。複数の研究結果を分析した報告によると、それぞれに長所と短所があることがわかっています。

電気を使うホットスネアは、ポリープを完全に取り除きやすく再発しにくいという長所があります。その一方で、まれに処置後の出血や腹痛などの合併症が起こる可能性が少し高くなります。電気を使わないコールドスネアは、処置時間が短く体への負担が少ない点が長所です。

どちらの方法を選択するかは、ポリープの大きさや形、場所を医師が内視鏡で丁寧に観察し、患者さんにとって最も安全で確実な方法を判断します。

大腸ポリープの種類

大腸ポリープとひとくちに言っても、いくつかの種類があります。 性質によって「腫瘍性ポリープ」と「非腫瘍性ポリープ」に分けられます。 将来がんになる可能性があるかどうかが、大きな違いです。

ポリープの性質による分類

分類

ポリープの種類

特徴

腫瘍性ポリープ

腺腫(せんしゅ)

良性のポリープですが、大きくなる過程でがんになる可能性があり、「大腸がんの芽」とも呼ばれます。

がん

最初から悪性のものとして発生したポリープです。

非腫瘍性ポリープ

過形成性ポリープ

炎症性ポリープ など

基本的にはがんになる心配は少ないとされています。しかし、一部に例外もあるため油断はできません。

特に注意が必要なのは、腫瘍性ポリープの「腺腫」です。 時間をかけて大きくなるにつれて、がんへと変化するおそれがあります。 内視鏡検査でこの腺腫を見つけて切除することが、大腸がんの確実な予防につながります。

また、遺伝が関係する特殊なポリープも存在します。 例えば「家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)」という病気では、多数のポリープができ、がん化するリスクが非常に高くなります。 この場合、大腸をすべて取り除く手術を行うことがあります。 しかし、手術で作られた便の通り道(パウチ)に、まれに新しいポリープやがんができる可能性も指摘されています。 手術後も定期的な内視鏡検査で注意深く観察を続けることが、非常に大切です。

ポリープの見た目による分類

ポリープは、その見た目の形によっても分けられます。

  • 有茎性(ゆうけいせい)ポリープ
  • キノコのように茎(くき)があるタイプです。
  • 無茎性(むけいせい)ポリープ
  • 茎がなく、平べったい形や、なだらかに盛り上がっているタイプです。

医師は内視鏡検査でこれらの性質や形をしっかりと見極めます。 そして、それぞれのポリープに合った最も適切な治療法を選択するのです。

大腸ポリープの原因

大腸ポリープができるはっきりとした原因は、まだ一つにはわかっていません。 しかし、生まれ持った体質と日々の生活習慣が合わさって発生すると考えられています。

大腸の病気には、様々な要因がからみあう「多因子性の炎症性疾患」があります。 ポリープの発生も、遺伝的な要因に加えて、以下のような生活習慣が「炎症」を引き起こし、リスクを高めるとされています。

【ポリープのリスクを高める生活習慣】

  • 脂肪の多い食事 お肉や揚げ物中心の食生活は、腸内環境を悪化させ、大腸の粘膜に負担をかけることがあります。
  • 食物繊維の不足 野菜や果物が少ないと便通が悪くなり、有害な物質が腸内に長くとどまる原因になります。
  • 過度な飲酒や喫煙 アルコールやタバコは、体の中で細胞を傷つける「炎症」を引き起こすことが知られています。
  • 運動不足 体を動かさないと腸の動きも鈍くなり、体全体の代謝にも影響を与えてしまいます。

これらの生活習慣によって引き起こされる慢性的な炎症が、ポリープ発生の引き金になると考えられています。 近年の研究では、天然由来の成分の中にも、がん細胞の増殖に関わる炎症の目印(炎症マーカー)を減らす働きを持つものがある、という報告もあります。

まれに遺伝によってポリープができやすい方もいますが、多くは遺伝的な要因と生活習慣による炎症が複雑に影響しあってポリープはできるのです。

大腸ポリープの症状

大腸ポリープは、初期の段階ではほとんど自覚できる症状があらわれません。 そのため、知らないうちにポリープができて大きくなっていることがよくあります。

しかし、ポリープがある程度の大きさになると、次のようなサインが出ることがあります。 ご自身の体調を振り返り、当てはまるものがないかチェックしてみましょう。

【大腸ポリープの症状チェックリスト】

  • 便に関するサイン
  • 便に血が混じる、または拭いた紙に血がつく(血便)
  • 便に鼻水のようなドロッとした粘液が混じる(粘液便)
  • 健康診断の便潜血検査で「陽性」と判定された
  • 便が鉛筆のように細くなった
  • 便秘と下痢をくり返すようになった
  • 排便後も便が残っている感じがする(残便感)
  • おなかの不調
  • おなかが張って苦しい感じがする(腹部膨満感)
  • 原因がよくわからない腹痛がある
  • おならの回数が増えたり、においがきつくなったりした

これらの症状は、ポリープが大きくなり、便の通り道を邪魔することで起こります。 また、硬い便がポリープの表面をこすって出血し、血便の原因にもなります。

ポリープがある部分の粘膜では、体の中の小さな火事のような「炎症」が起こりやすくなります。 近年の研究では、こうした慢性的な炎症が、がん細胞の増殖に関わる可能性も指摘されています。 腹痛やおなかの不快感は、この炎症が原因で起きる場合もあるのです。

ただし、これらの症状は痔(じ)など他の病気でもみられるため、自己判断は禁物です。 気になる症状が一つでも続く場合は、早めに専門の医療機関へご相談ください。

大腸ポリープの検査・診断

大腸ポリープは、初期のうちは自覚できる症状がほとんどありません。 そのため、検査によって早期に発見し、対応することが非常に重要です。 検査の目的は、ポリープの有無を確認することです。 そして、もし見つかった場合に、がんになる可能性があるかを調べます。

大腸ポリープを調べる検査には、いくつかの種類があります。 どの検査があなたに合っているか、医師と相談して決めましょう。

検査の種類

検査の概要

便潜血検査

便に血液が混ざっていないかを調べる、体に負担の少ない検査です。健康診断で広く行われますが、陽性の場合は精密検査が必要です。

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

肛門から細いカメラを入れ、大腸の内部を直接すみずみまで観察します。ポリープを直接見られるため、最も正確な診断が可能です。

CTコロノグラフィ

CTを使って、お腹の中を撮影し大腸の立体的な画像を作る検査です。内視鏡検査が難しい場合などに行われることがあります。

これらの検査の中で、特に重要とされているのが大腸内視鏡検査です。 ポリープを見つけるだけでなく、その場で組織を採って調べたり(生検)、切除したりすることもできます。 ポリープを切除する際には、スネアという金属の輪を使います。

複数の研究結果を分析した報告によると、電気で焼き切る方法(ホットスネア)と、電気を使わない方法(コールドスネア)では、それぞれ長所と短所があることがわかっています。 医師はポリープの状態をみて、最も安全な方法を選択します。

また、遺伝によってポリープが非常にできやすい病気の方もいます。 そのような場合は、大腸をすべて取り除く手術を行うことがあります。 手術後も、便の通り道に新たなポリープやがんができる可能性が指摘されており、定期的な内視鏡検査で観察を続けることが非常に大切です。

症状がなくても、年齢などのリスクに応じて検査を受けることが、大腸がんの確実な予防につながります。

大腸ポリープの治療

大腸ポリープの治療は、主に内視鏡(大腸カメラ)を使っておこないます。 がんになる可能性のあるポリープを検査の段階で切除することが、将来の大腸がんを防ぐ最も確実な方法です。

治療法はポリープの大きさや形、場所などから慎重に判断します。 大腸の病気の中には、手術をしない「保存的治療」が有効なケースもあります。 しかし、がん化するおそれのあるポリープは、内視鏡で取り除くことが基本です。

主な内視鏡治療の方法

ポリープの特徴に合わせて、主に以下の3つの方法から選択されます。

  • ポリペクトミー 茎のあるキノコのような形のポリープに使われる方法です。 スネアとよばれる金属の輪をポリープの根元にかけ、電気を流して焼き切ります。
  • 内視鏡的粘膜切除術(EMR) 平坦で茎のないポリープに使われる方法です。 ポリープの下の層に液体を注入して盛り上げ、スネアをかけて焼き切ります。
  • 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) EMRでは切除がむずかしい大きなポリープや、ごく早期のがんが対象です。 専用の電気メスで、病気の場所を少しずつ剥ぎ取るように切除します。

切除方法の選び方

ポリープを切除するスネアには、電気を使う方法と使わない方法があります。 多くの研究結果を分析した報告によると、それぞれに長所と短所があることがわかっています。

治療法

メリット

デメリット・注意点

ホットスネア(電気で焼く)

・ポリープを完全に取りきりやすい

・治療後の再発が少ない傾向

・まれに治療後の出血や腹痛、

穿孔(穴があくこと)が起こりうる

コールドスネア(電気を使わない)

・治療時間が短い

・体への負担が少なく安全性が高い

・ポリープの大きさや形によっては

適用がむずかしい

治療後も定期的な検査が大切

一度ポリープを切除しても、安心はできません。 体質によっては再びポリープができるため、治療後も定期的な内視鏡検査がとても大切です。 特に、遺伝的にポリープができやすい病気(家族性腺腫性ポリポーシスなど)の方は注意が必要です。 大腸の手術後も、まれに新しいポリープやがんができる可能性が報告されています。 継続的な検査が、将来のがんからあなたの身を守るために不可欠なのです。