外陰がん
デリケートゾーンのしつこいかゆみや痛み、ふと触れたときの小さなしこり。誰にも相談できず、一人で悩んでいませんか?実は、その症状が「外陰がん」という病気のサインかもしれません。
外陰がんは、診断される方の平均年齢が70歳とご高齢の方に多いものの、近年はHPVウイルスの影響もあり若い世代にも見られるがんです。普段は見えにくい場所のため変化に気づきにくく、発見が遅れやすいという特徴があります。
この記事では、ご自身でできる症状のチェック方法から、がんの原因、そして最新の治療法までを詳しく解説します。大切なご自身の体を守るため、まずは病気について正しく知ることから始めましょう。
外陰がんの概要
外陰(がいいん)がんは、女性のデリケートゾーンにできるがんです。 具体的には、腟の入り口のまわりにある以下の部分に発生します。
- 大陰唇(だいいんしん) 太ももの付け根の近くにある、ふっくらとした皮膚の部分です。
- 小陰唇(しょういんしん) 大陰唇の内側にある、薄いひだ状の皮膚です。
- 陰核(いんかく) 小陰唇の上部にある、小さな突起の部分です。
- 会陰部(えいんぶ) 腟の入り口と肛門の間にある部分です。
女性のがん全体で見ると、外陰がんは比較的まれな病気です。 しかし、普段あまり見ない場所のため、変化に気づきにくい傾向があります。 診断される方の平均年齢は70歳と、ご高齢の方に多いがんです。 一方で、最近では若い女性に発症するケースも報告されています。
特に、持病の治療で免疫力が低下している方は注意が必要です。 例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)などの治療を受けている方です。 免疫力が低下すると、HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染しやすくなります。 このウイルスは、子宮頸がんだけでなく外陰がんの原因にもなります。 ある研究では、SLEの患者さんはHPV関連のがん予防が不十分な場合が多いと指摘されています。 ご自身の体の小さな変化にも目を向け、かかりつけ医に相談することが大切です。
外陰がんの種類
外陰がんは、発生した細胞の種類によって、いくつかの顔つきに分けられます。 がんの種類によって進行の速さや治療方針が大きく異なるためです。 ご自身の状態を正しく知ることが、適切な治療への第一歩となります。
外陰がんの中で最も多いのは「扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん」です。 これは全体の約90%を占めており、皮膚の表面を覆う細胞から発生します。
次に多いのが「メラノーマ(悪性黒色腫)」で、全体の約5%に見られます。 皮膚の色を作る細胞(メラノサイト)が、がん化したものです。 いわゆる「ほくろのがん」と同じ種類で、転移しやすい性質があります。
残りの約5%は、汗などを出す腺細胞からできる腺がんなど、まれな種類のがんです。
また、がんになる手前の「準備段階」といえる状態があります。 これを「外陰上皮内腫瘍(がいいんじょうひないしゅよう)(VIN)」と呼びます。 異常な細胞が皮膚の表面にとどまっている段階で、がんの芽のような状態です。 VINは、原因によって2つのタイプに分けられます。
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VINのタイプ |
主な特徴 |
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HPV関連型 |
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因です。<br> 比較的若い方に多く、がんになる可能性があります。 |
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HPV非関連型 |
HPV感染とは関係なく、長引く皮膚の炎症などが背景にあります。<br> ご高齢の方に多く、がんになりやすいため治療が行われます。 |
特にHPVは、子宮頸がんだけでなく外陰がんの原因にもなるウイルスです。 がんになる前のVINの段階で発見できれば、がんへの進行を防ぐことも期待できます。 ご自身の体の小さな変化を見逃さず、気になることがあれば専門医に相談しましょう。
外陰がんの原因
外陰がんが発生する原因は一つではありません。 主に、次の2つのルートがあると考えられています。 ご自身の年齢や体の状態と照らし合わせてみましょう。
一つは、ウイルスの感染がきっかけとなるものです。 ヒトパピローマウイルス(HPV)という名前を聞いたことがあるでしょうか。 このウイルスは子宮頸がんの原因としても知られています。 性交渉によって感染し、外陰部にすみついてしまうことがあります。 HPVが原因の外陰がんは、比較的お若い方に多いのが特徴です。
もう一つは、長い間続く皮膚の炎症や病気が原因となるものです。 例えば「硬化性苔苔癬(こうかせいたいせん)」という病気があります。 これは、外陰部の皮膚が白く硬くなってしまう状態です。 このような慢性的な刺激が、がんを引き起こすと考えられています。 こちらは、ご高齢の方に多い原因とされています。
その他にも、外陰がんになりやすくなる要因がいくつか報告されています。
- 免疫力の低下 体を病気から守る力が弱っている状態です。 持病の治療などで免疫力が下がると、HPVを体の外に追い出しにくくなります。 ある研究では、全身性エリテマトーデス(SLE)という病気の患者さんで、 HPVに対する予防が不十分な場合が多いと指摘されています。
- 喫煙の習慣 タバコに含まれる有害な物質が、がんの発生に関係します。
- 過去の性感染症の経験 過去にかかった性感染症が、外陰部の粘膜に影響を与える可能性があります。
特にHPVは、ワクチンで感染を予防できる可能性があります。 HPVワクチンは、若いうちに接種することががん予防につながります。 しかし、様々な理由で接種率が低いのが現状です。 ご自身やご家族の健康のために、正しい知識を持つことが大切です。
外陰がんの症状
外陰がんのサインは、ご自身で気づける変化として現れることが多いです。 しかし、他の皮膚の病気と似ているため、見過ごさないことが大切です。 デリケートな場所の変化は、誰かに相談しにくいかもしれません。 それでも、ご自身の体を守るために、ぜひ変化に目を向けてみてください。
気になる症状があれば、セルフチェックをしてみましょう。
【外陰部のセルフチェックリスト】
- かゆみ なかなか治らない、薬を塗っても長引くかゆみがある
- 痛みや熱感 ヒリヒリとした痛みや、触ると熱っぽさを感じる
- しこり・いぼ 皮膚の下に、コリコリと硬いしこりや、いぼのようなものができている
- ただれ じゅくじゅくして治りにくい「ただれ」や「潰瘍(かいよう)」がある
- 色の変化 皮膚の色が部分的に白っぽく、または赤や黒っぽく変わっている
- 皮膚の硬化 皮膚がゴワゴワと厚くなったり、硬くなったりしている
- 出血・おりもの 不正出血や、普段と違う水っぽいおりものがある
はじめは、かゆみや小さなしこりなど、軽い症状だけのことも少なくありません。 しかし、がんが進行すると、ただれが大きくなって出血することがあります。 排尿のときにしみるような、強い痛みを感じるようになることもあります。
このような痛みや出血といったつらい症状は、治療で和らげることが可能です。 ある研究では、婦人科のがんによる痛みや出血に対して、 放射線で治療を行うことで症状が改善したと報告されています。 具体的には、痛みの約70%、出血の約55%が和らいだとされています。
これらの症状が一つでも当てはまるからといって、必ずがんとは限りません。 ですが、体の変化は重要なサインです。自己判断はせず、 少しでも気になる変化があれば、早めに婦人科や皮膚科を受診しましょう。
外陰がんの検査・診断
デリケートゾーンのしこりやかゆみで、病院に行くのは勇気がいるかもしれません。 しかし、がんかどうかをはっきりさせることが、治療への大切な第一歩です。 外陰がんの診断は、いくつかの検査を組み合わせて慎重に行われます。
まず、医師が目で見て確認する「視診」が行われます。 そして、手で触ってしこりの有無や硬さを確かめる「触診」をします。 このとき「コルポスコープ」という拡大鏡を使い、詳しく観察することもあります。
がんの疑いがある場合、診断を確定させるために最も重要な検査があります。 それが「生検(せいけん)」という、組織を少しだけ切り取る検査です。 採取した組織を顕微鏡で詳しく調べ、がん細胞の有無や種類を正確に知ります。 この検査では、がんの顔つきまでわかるため、治療方針を決めるのに役立ちます。
生検でがんと診断されたら、次にがんの広がりを調べる検査に進みます。 CT検査やMRI検査といった画像検査で、他の臓器への転移がないかを確認します。 これらの検査結果をもとに、がんの進行度を示す「病期(ステージ)」が決まります。
【外陰がんの病期(ステージ)】
- I期 がんが外陰部だけにとどまっている状態です。
- II期 がんが尿道や腟、肛門など、近くの組織に広がっている状態です。
- III期 足の付け根にあるリンパ節に転移している状態です。
- IV期 骨盤の中や、さらに遠くの臓器にまで転移している状態です。
このように正確な診断は、今後の治療方針を決める上で非常に重要です。 例えば、痛みや出血といったつらい症状が確認された場合を考えてみましょう。 症状をやわらげるための放射線治療なども選択肢の一つになります。 ある研究では、婦人科のがんが原因の痛みや出血に対して、 放射線治療を行うことで症状が改善したと報告されています。 具体的には痛みの約70%、出血の約55%が和らいだとされています。 診断によって体の状態を正しく知ることが、適切な治療につながるのです。
外陰がんの治療
外陰がんの治療は、がんの進行度や種類、そして患者さんご自身の体の状態を考えて、いくつかの方法を組み合わせて行われます。 主な治療の柱は、手術、放射線療法、化学療法の3つです。
1. 手術 がんを直接取り除く、最も基本となる治療法です。 がんの広がりが小さい場合は、がんの部分だけを切除します。 進行している場合は、がんが転移しやすいリンパ節も一緒に取り除くことがあります。 手術で形が変わった部分には、見た目や機能を整える再建手術も可能です。
2. 放射線療法 高エネルギーの放射線を当てて、がん細胞を攻撃する治療です。 手術で取りきれないがんを小さくしたり、再発を防いだりする目的で行います。
また、進行したがんによる痛みや出血は、生活の質を大きく下げてしまいます。 このようなつらい症状を和らげる目的で放射線治療が行われることもあります。 ある研究では、婦人科のがんによる痛みの約70%、出血の約55%が、 この治療によって和らいだと報告されており、有効な選択肢の一つです。
3. 化学療法(薬物療法) 抗がん剤というお薬を使って、全身のがん細胞の増殖を抑える治療法です。 手術が難しい場合や、放射線療法と組み合わせて治療効果を高めるために行われます。
これらの治療法をどのように組み合わせるかは、患者さん一人ひとりで異なります。 がんの状態や年齢、健康状態、そしてご本人の希望を総合的に考え、 医師とよく話し合いながら、その方に合った治療計画を立てていきます。










