喉頭乳頭腫
長引く声がれや喉の違和感を、「いつものこと」だと軽く考えていませんか。その症状、もしかすると声を出すための大切な器官「声帯」に、カリフラワーのような腫瘍ができる「喉頭乳頭腫(こうとうにゅうとうしゅ)」が原因かもしれません。発生頻度は10万人に2〜3人と非常に稀な病気です。
この病気の最も厄介な点は、腫瘍のほとんどが良性であるにもかかわらず、ウイルスが原因で何度も再発を繰り返す「難治性」であることです。症状が悪化すると、声が出しづらくなるだけでなく、息苦しさを引き起こし、特に小さなお子さんの場合は呼吸困難につながる危険性もあります。
この記事では、喉頭乳頭腫の原因から具体的な症状、そして合併症リスクの低い最新の治療法までを詳しく解説します。あなたや大切な人の健康を守るため、まずはこの病気について正しく知ることから始めましょう。
喉頭乳頭腫の概要
喉頭乳頭腫(こうとうにゅうとうしゅ)は、のどの奥にあります。 声を出すための大切な器官「声帯(せいたい)」の周りに発生します。 カリフラワーのような、表面がぶつぶつしたイボ(腫瘍)ができる病気です。
この腫瘍は、ほとんどの場合で良性であり、がんになることはまれです。 しかし、最も大きな特徴は、治療をしても繰り返し再発しやすい点にあります。 研究報告でも「難治性の稀な疾患」とされており、治療が難しい病気の一つです。
発生頻度は10万人に2〜3人ほどとされ、非常に珍しい病気といえます。 主な治療法は手術で腫瘍を取り除くことですが、何度も手術が必要になることも少なくありません。
この病気の主な特徴を以下にまとめます。
- できる場所 声を出すための器官である「声帯」やその周り
- 腫瘍の見た目 表面がデコボコしたカリフラワーのような形をしている
- 病気の性質 基本的には良性だが、ウイルスが原因で再発を繰り返しやすい
- 治療の中心 手術でできものを取り除くことが主な治療法となる
腫瘍が大きくなると声帯の動きを妨げ、声がれの原因となります。 さらに進行すると、息がしにくいといった呼吸の症状を引き起こします。 特に小さなお子さんの場合は、呼吸困難につながる可能性もあり注意が必要です。
喉頭乳頭腫の種類
喉頭乳頭腫(こうとうにゅうとうしゅ)は、主に発症する年齢によって分けられます。 「若年性(じゃくねんせい)」と「成人性(せいじんせい)」の2つのタイプです。 ご自身の症状がどちらのタイプに近いかを知ることは、病気の理解に役立ちます。
若年性喉頭乳頭腫
- 発症する年齢 主に4歳から6歳ごろのお子さんに見られます。
- 特徴 子どもの喉(のど)は大人よりも狭いという特徴があります。 そのため腫瘍(しゅよう)が少し大きくなるだけでも息が苦しくなります。 「ゼーゼー」といった喘鳴(ぜんめい)が出やすいのもこのタイプです。
成人性喉頭乳頭腫
- 発症する年齢 30代から50代の大人に発症することが多いです。
- 特徴 主な症状は声がれで、若年性に比べて呼吸困難は少ない傾向です。 しかし声を使う仕事や日常生活に支障をきたすことがあります。
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種類 |
主な発症年齢 |
主な症状の特徴 |
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若年性 |
4歳〜6歳ごろ |
呼吸が苦しくなりやすい |
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成人性 |
30代〜50代 |
声がれが中心となる |
どちらのタイプも、治療は手術で腫瘍を取り除くことが基本です。 近年、手術の安全性に関する信頼性の高い報告がされました。 これは、複数の研究結果をまとめて分析したものです。
その報告によると、手術の方法によって合併症のリスクが異なります。 CO2レーザーを用いた手術の合併症率は16%でした。 一方、他の手術方法ではより低い数値が示されています。 例えば、マイクロデブリッダーは3%、KTPレーザーは4%でした。 この結果は、より安全な手術法を選ぶ上での参考になります。
どの治療法が最適かは、専門の医師による正確な診断が不可欠です。 気になる症状があれば、まずは医療機関に相談しましょう。
喉頭乳頭腫の原因
この病気の主な原因は、ウイルスの感染です。 「ヒトパピローマウイルス(HPV)」という名前のウイルスが原因です。 HPVには100種類以上もの型があり、ありふれたウイルスです。 中でも「6型」と「11型」への感染が、発症に関わっています。
ただし、HPVに感染した誰もが発症するわけではありません。 多くの場合、体にもともと備わっている免疫の働きで抑えられます。 ではなぜ、一部の人だけが発症するのでしょうか。 それには、以下のような要因が引き金になると考えられています。
発症や悪化に関わる要因
- 免疫力の低下 疲れやストレス、他の病気などで体の抵抗力が落ちた状態です。 免疫の働きが弱まると、体内でウイルスが活発になります。
- 遺伝的な要因 生まれつき、HPVに対して体の反応が起こりやすい人もいます。 家族に同じ病歴がある場合は、その可能性も考えられます。
- 喉(のど)への刺激 喫煙や過度な飲酒は、のどの粘膜に直接ダメージを与えます。 粘膜が持つバリア機能が弱まり、ウイルスが増殖しやすくなります。
この病気の原因となるウイルスは、体から完全にはなくなりません。 そのため、治療後も繰り返し再発しやすいという特徴があります。 ある研究報告でも「難治性の稀な疾患」とされており、治療が難しい病気です。 手術が主な治療ですが、再発を抑えるための補助的な治療も研究されています。
喉頭乳頭腫の症状
喉頭乳頭腫の症状は、腫瘍ができた場所や大きさによって変わります。 最もよく見られるのは、声がかすれる「嗄声(させい)」という症状です。 これは、声帯の正しい振動が腫瘍に邪魔されるために起こります。
最初は軽い声がれでも、腫瘍が大きくなるにつれて症状は悪化します。 だんだんとガラガラした声になり、長く話すと疲れやすくなります。 腫瘍がさらに大きくなると、空気の通り道である気道を狭くします。 そのため、息を吸う時に「ゼーゼー」という音がすることがあります。
特に小さなお子さんは、もともと喉が狭いため注意が必要です。 腫瘍が少し大きくなるだけで、呼吸が苦しくなる危険があります。 以下のような症状がないか、ご自身の状態と比べてみてください。
【喉頭乳頭腫の主な症状チェックリスト】
- 声がかすれる、ガラガラする 声帯にできた腫瘍が、正常な振動を妨げることで起こります。
- 声が疲れやすい 無理に声を出そうとすることで、喉の周りの筋肉が疲れてしまいます。
- 呼吸がしにくい、息苦しさを感じる 腫瘍が空気の通り道をふさぎ、呼吸の妨げになることがあります。
- 息を吸う時に「ゼーゼー」という音がする 喘鳴(ぜんめい)と呼ばれ、気道が狭くなっているサインです。
- しつこい咳が続く 喉の違和感や刺激によって、咳が出やすくなることがあります。
- 食べ物や飲み物が飲み込みにくい 喉に何かが詰まっているような違和感を伴うこともあります。
これらの症状は生活の質を大きく下げますが、治療で改善が期待できます。 ある研究報告では、治療によって声の状態が良くなることが示されています。 気になる症状が続く場合は、早めに専門の医療機関を受診しましょう。
喉頭乳頭腫の検査・診断
声がかすれる、息がしにくいなどの症状で受診すると、まず問診を行います。 いつから症状があるか、どんなことで困っているかを詳しくお聞きします。 その上で喉頭乳頭腫が疑われる場合、次の検査で診断を進めていきます。
のどの中を直接見る検査
- 喉頭鏡検査(こうとうきょうけんさ) 鼻からカメラのついた細い管(ファイバースコープ)を入れます。 のどの奥にある声帯やその周りを直接観察する、大切な検査です。 腫瘍の有無、大きさや数、どのくらい広がっているかを確認します。
病気の正体を突き止める検査
- 生検(せいけん) 喉頭鏡でできものが見つかった場合、その一部を少しだけ取ります。 取った組織を顕微鏡で詳しく調べ、診断を確定させる検査です。 この検査で、良性であることや原因のウイルス(HPV)の種類もわかります。
生検で組織を取る時や、診断と同時に治療を行うこともあります。 その際には、マイクロデブリッダーやレーザーといった器具が使われます。 どの器具を使うかは、病気の状態や病院の設備によって異なります。
近年、これらの器具の安全性について、信頼性の高い報告がされました。 複数の研究結果をまとめて分析したものです。 それによると、CO2レーザーを使った場合、約16%で合併症がみられました。 一方、マイクロデブリッダーでは3%、KTPレーザーでは4%でした。 より安全な方法を考える上で、こうした情報も参考にします。
これらの検査結果を総合的に判断し、今後の治療計画を立てていきます。
喉頭乳頭腫の治療
喉頭乳頭腫の治療目標は、2つあります。 声がれや息苦しさといった症状を和らげること。 そして、この病気の特徴である再発をできるだけ抑えることです。
治療の基本は、声帯にできた腫瘍を取り除く手術です。 しかし、原因のウイルスは体からなくならないため、手術だけでは不十分なこともあります。 その場合は、お薬を組み合わせた治療で再発を防ぎます。
手術療法
この治療の目的は、声や呼吸の邪魔をしている腫瘍を取り除くことです。 手術は、のどの奥を見ながら行うため、体に大きな傷は残りません。 主に、以下のような方法が用いられます。
- マイクロデブリッダー できものを細かく削りながら、同時に吸い取るための器具です。 正常な組織へのダメージを抑えやすいという特徴があります。
- KTPレーザー、CO2レーザー 特定の種類の光(レーザー)を当てて、腫瘍を焼き切ったり蒸発させます。
どの方法を選ぶかは、腫瘍の大きさや場所によって変わります。 近年の信頼できる研究報告では、これらの手術の安全性が比較されました。 その結果、合併症が起こる割合はCO2レーザーで約16%でした。 一方、マイクロデブリッダーでは3%、KTPレーザーでは4%と低い数値でした。 より安全な方法を選ぶ上で、こうしたデータも参考にしながら治療法を決めます。
お薬を使った治療
手術を繰り返しても再発が止まらない場合に、補助的に行われます。 手術と組み合わせることで、次の手術までの期間を延ばすことを目指します。
- ベバシズマブ(製品名:アバスチン®)の局所注射 腫瘍が大きくなるためには、栄養を送るための新しい血管が必要です。 このお薬は、その「栄養の道」ができるのを邪魔する働きがあります。 手術の際に、腫瘍があった場所の粘膜に直接注射して使います。 多くの研究をまとめた報告でも、その効果と安全性が示されています。
再発を防ぐための治療
手術やお薬の治療に加えて、再発を予防するために以下の方法も行われます。
- ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン この病気の原因であるウイルスの活動を抑えるためのワクチンです。 ワクチンを接種することで、再発するまでの期間を延ばす効果が期待できます。
どの治療法が最適かは、患者さん一人ひとりの状態によって異なります。 担当の医師とよく相談し、ご自身に合った治療計画を立てることが大切です。













