喉頭がん

長引く声がれや、のどの違和感。「いつものこと」と見過ごしていませんか?それは、私たちが生きていく上で欠かせない「声」を出す機能を失いかねない、「喉頭がん」のサインかもしれません。

日本では年間約5,100人が診断され、特に男性に多いこの病気。喫煙と飲酒の習慣が重なると、発症リスクはどちらの習慣もない人と比べて約39倍にも跳ね上がるという衝撃的なデータも報告されています。

しかし、原因はそれだけではありません。近年の研究で、喉頭がんのリスクには「お口の衛生状態」という意外な習慣も関係していることがわかってきました。この記事では、喉頭がんの症状や原因、進歩する治療法までを詳しく解説します。ご自身の体を守るために、ぜひ読み進めてみてください。

喉頭がんの概要

喉頭(こうとう)がんとは、のどぼとけの辺りにある、 「喉頭」という場所にできるがんのことです。

日本では1年間で約5,100人の方が診断される病気です。 特に男性に多く、女性と比べると10倍以上も多いとされます。 50代から増え始め、60代以降に発症のピークを迎えます。

喉頭は、私たちが生きていく上で欠かせない、 次の3つの大切な役割を担っています。

  • 呼吸の通り道 肺に空気を送る気管の入り口としての役割です。
  • 誤嚥(ごえん)の防止 食事の際、食べ物や飲み物が気管に入らないよう、 フタをする働きがあります。
  • 声を出す機能 喉頭の中にある声帯という部分を震わせて声を出します。

喉頭がんの主な原因は喫煙や飲酒と考えられています。 しかし近年の研究では、お口の中の衛生状態も、 発症リスクと関係があることがわかってきました。

複数の研究結果を分析した報告によると、 口の中を清潔に保つ習慣が、リスクを下げる可能性があります。 具体的には、以下の習慣が推奨されています。

  • 1日に2回以上、歯をみがくこと
  • 年に1回以上、歯医者さんで口の中をチェックしてもらうこと

口の中が不潔な状態は、慢性的な炎症を引き起こしやすく、 それが、がんの発生につながる可能性も指摘されています。 喉頭は命に関わる大切な器官のため、 日々の生活習慣を見直すことが予防の第一歩です。

喉頭がんの種類

喉頭がんは、がんができる場所によって、 大きく3つの種類に分けられます。

がんができた場所によって、症状の出方や、 治療の方法が大きく変わってくるためです。 そのため、どの種類のがんかを正確に知ることが大切です。

種類

がんができる場所

特徴

声門(せいもん)がん

声を出す「声帯」とその周り

・喉頭がんの中で最も多い(約70%)

・声がれが出やすく、気づきやすい

・比較的、他の場所へ広がりにくい

声門上部(せいもんじょうぶ)がん

声帯よりも上の部分

・のどの違和感や飲み込みにくさが出る

・首のリンパ節に転移しやすい

声門下部(せいもんかぶ)がん

声帯よりも下の部分

・初期症状が出にくく、進行しやすい

・首のリンパ節に転移しやすい

がん細胞を詳しく見ると、そのほとんどは、 喉頭の表面をおおう粘膜から発生する、 「扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん」という種類です。

どの種類の喉頭がんなのかを正確に診断することは、 適切な治療方針を決める上で非常に重要です。 近年では治療法も進歩しています。

例えば、一度治療した後にがんが再発した場合でも、 諦める必要はありません。 経験豊富な医師が患者さんの状態を慎重に見極めれば、 口からレーザーでがんを取り除く手術も選択肢の一つです。 この方法は、放射線治療などで再発した場合でも、 有効な治療法となり得ることが研究で示されています。

喉頭がんの原因

喉頭がんがなぜ起こるのか、その原因は一つではありません。 しかし、特定の生活習慣が深く関わっていることが、 多くの研究から明らかになっています。

主な原因は「喫煙」と「飲酒」の二つです。 タバコやお酒に含まれる有害な物質が、のどの粘膜を傷つけ、 長期間にわたって刺激し続けることが引き金となります。

特に注意が必要なのは、この二つの習慣が重なる場合です。 リスクは単純な足し算ではなく、掛け算のように急増します。 複数の研究結果を分析した報告では、衝撃的なデータが示されました。 お酒をたくさん飲み、タバコも多く吸う人は、 どちらの習慣もない人と比べて、喉頭がんになるリスクが、 約39倍にも高まることが報告されているのです。

また、喫煙や飲酒以外に「お口の中の環境」も、 喉頭がんのリスクと関係があることがわかってきました。

▼喉頭がんのリスクを高める可能性があること

  • 5本以上の歯が抜けたままになっている 歯がない状態を放置すると、お口の環境が悪化しやすくなります。
  • 歯周病や歯ぐきからの出血がある お口の中の慢性的な炎症が、がんの発生に関わる可能性があります。

反対に、お口の中を清潔に保つ習慣は、 喉頭がんのリスクを下げることが期待できます。 具体的には、1日に2回以上歯をみがくことや、 年に1回以上、歯科医院で口の状態をみてもらうことです。

一方で、遺伝的な要因が直接の原因となることは、 今のところはっきりとはわかっていません。 例えば、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアのDNAと、 喉頭がんのリスクとの直接的な関係は確認されていません。

喉頭がんを予防するためには、禁煙や節酒はもちろん、 毎日の丁寧な歯みがきでお口を清潔に保つことが、 非常に大切であると言えるでしょう。

喉頭がんの症状

喉頭がんの症状は、がんができる場所によって現れ方が異なります。 声がれのような分かりやすいサインが出ることもあれば、 気づきにくい症状から始まる場合もあり、注意が必要です。

特に、喫煙と飲酒の習慣が重なる方はリスクが高まります。 ある研究では、お酒をたくさん飲みタバコも多く吸う人は、 どちらの習慣もない人と比べ、喉頭がんのリスクが、 約39倍にも高まるという衝撃的な結果が報告されています。 日常のささいな変化を見逃さないことが、早期発見の鍵です。

がんができる場所ごとの主な症状の違いを、以下に示します。

がんの種類

主な初期症状

進行した場合の症状

声門がん

(声帯にできるがん)

・2週間以上続く声がれ

(ガラガラ声、かすれ声)

・声がれが悪化する

・息苦しさ、血の混じったたん

声門上部がん

(声帯より上にできるがん)

・のどの違和感、異物感

・食べ物を飲み込むときの痛み

・首のしこり

・声がれ

・呼吸がしにくくなる

声門下部がん

(声帯より下にできるがん)

・初期はほとんど症状がない

・声がれ

・進行してからの息苦しさ

喉頭がんの中で最も多い「声門がん」は、声帯にがんができます。 そのため、声帯がうまく振動せず、声がれが初期から現れます。 風邪や声の出しすぎと間違えやすいですが、 2週間以上治らない場合は、専門医への相談をおすすめします。

声門上部がんでは、飲み込むときの痛みや違和感が主な症状です。 声門下部がんは、初期症状がほとんどなく発見が遅れやすいです。 気になるサインがあれば、自己判断せずに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

喉頭がんの検査・診断

喉頭がんが疑われる場合、いくつかの検査を段階的に行います。 目的は「がんかどうか」を確定し、その進行度を正確に知ることです。 これらの情報をもとに、最適な治療方針を一緒に考えていきます。

まず、医師が症状や生活習慣について詳しくお話を伺います。 声がれはいつからか、喫煙や飲酒の習慣はあるか、などです。 この時、生活の質(QoL)に関する質問票を使うこともあります。

QoLとは、その人らしい生活が、どのくらい快適に送れているか、 という「生活の満足度」を測るための指標のことです。 ある研究では、頭頸部がんの患者さんの82%が、この質問票を 「心配事を医師に伝えるのに役立つ」と感じたと報告しました。 口では伝えにくい不安も、質問票なら伝えやすいかもしれません。

次に、のどの状態を直接観察する「喉頭内視鏡検査」を行います。 鼻から細いカメラを入れ、がんの有無や大きさ、声帯の動きを 隅々まで確認する検査です。

確定診断と進行度を調べる検査

内視鏡でがんが疑われる部分が見つかった場合、 診断を確定させるために、より詳しい検査へと進みます。

▼確定診断のための検査

  • 生検(せいけん) 病変の一部をわずかに採取し、顕微鏡で詳しく調べます。 がん細胞がいるかどうかを確定するための大切な検査です。

▼がんの広がりを調べる検査

  • CT検査 X線で体の断面を撮影し、がんの大きさや深さ、 首のリンパ節への転移がないかなどを調べます。
  • MRI検査 磁石と電波の力で、がんの広がりをより詳しく見ます。 周りの組織へのがんの食い込み具合の確認に役立ちます。
  • PET-CT検査 がん細胞が糖分を多く取り込む性質を利用した検査です。 全身への転移がないかを一度に調べることができます。

これらの検査結果を総合的に判断し、最終的な診断と、 がんの進行度である病期(ステージ)を決定します。

喉頭がんの治療

喉頭がんの治療は、がんの進行度やできた場所、 患者さんの体の状態や希望などを総合的に考えて決めていきます。 治療の選択は、その後の人生を左右する大切な決断です。

主な治療法には次の3つがあり、これらを組み合わせることもあります。 ただがんを治すだけでなく、声などの大切な機能を守り、 治療後の「生活の質(QoL)」をどう保つかも重要です。

  • 放射線治療
  • 外科手術
  • 化学療法(抗がん剤治療)

放射線治療

体の外から放射線をあてて、がん細胞を攻撃する治療法です。 メスを使わないため、喉頭の形や声を出す機能を残せる可能性が高いです。 特に早期のがんであれば、この治療だけで治ることも期待できます。

外科手術

がんを直接取り除く方法で、進行度によって方法が異なります。

  • 喉頭温存手術 がんが比較的小さい場合に、声を出す機能を残しながら、 がんの部分だけを切り取ります。 口からレーザーでがんを取り除く手術(経口腔レーザー顕微手術)は、 体への負担が少ない方法です。
  • 喉頭全摘手術 がんが大きく広がっている場合に、喉頭全体を取り除く手術です。 声を出す機能は失われますが、別の方法で声を出す訓練をします。

一度治療した後にがんが再発した場合でも、諦める必要はありません。 ある研究では、口からレーザーでがんを取り除く手術が、 再発時の有効な選択肢となり得ることが示されています。 ただし、経験豊富な医師が慎重に判断することがとても大切です。

化学療法

抗がん剤の点滴や飲み薬で、がんの増殖を抑える治療です。 放射線治療と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。 手術の前にがんを小さくする目的で使われることもあります。

がんの進行度(一例)

主な治療法

早期のがん

放射線治療

喉頭温存手術(レーザー手術など)

進行したがん

化学療法と放射線治療の組み合わせ

喉頭全摘手術など

治療を進める上で、不安を感じるのは当然のことです。 ある研究では、頭頸部がんの患者さんの82%が、 質問票を使うことで心配事を医師に伝えやすくなったと報告しました。 気になることは何でも医師や看護師に相談してください。