交通事故やスポーツでの激しい衝突、あるいは高齢者の転倒。様々な場面で起こりうる「下腿骨骨折」は、ひざと足首の間にある、体を支える重要な骨の骨折です。骨が皮膚を突き破る「開放骨折」になる危険性もあり、決して軽視することはできません。
治療法はギプスでの固定から、骨を金属で固定する手術まで多岐にわたります。近年では、3Dプリンターで骨の模型を作って手術計画を立てるなど、治療技術は大きく進歩しています。この記事では、骨折の種類や原因から最新の治療法までを解説します。後遺症なく回復するための知識を深めましょう。
下腿骨骨折の概要
「下腿骨骨折」とは、ひざと足首の間にある「すね」の骨折です。 すねは、体を支える大切な2本の骨でできています。
- 脛骨(けいこつ) 体重をしっかり支える、太くて丈夫な「柱」のような骨です。
- 腓骨(ひこつ) 脛骨の隣で足首の動きを助ける、細い「添え木」のような骨です。
この骨折は、交通事故やスポーツ中の激しい衝突など、 とても大きな力が加わったときに起こりやすいのが特徴です。
また、脛骨は皮膚のすぐ下にあるため注意が必要です。 折れた骨が皮膚を突き破ってしまう「開放骨折」になりやすく、 傷口から細菌が入り感染症を起こす危険もあります。
治療は骨折の状態で大きく変わり、ギプスで固定するだけのこともあります。 一方で、骨のズレが大きい場合は手術が必要になります。
特に骨が粉々になったり、骨の一部が失われたりする重症例では、 失われた部分を人工の材料で補う再建手術も選択肢となります。 このように治療法は、軽いものから専門的な手術まで幅広いです。
下腿骨骨折の種類
すねの骨折は、どの骨が、どこで、どのように折れたかで、 いくつかの種類に分けられ、治療法も大きく変わります。
骨が折れた場所によって、主に3つに分けられます。
- 脛骨高原骨折(けいこつこうげんこっせつ) ひざ関節に近い部分で起こる骨折です。 関節の動きに影響が出やすいため、正確な治療が重要です。 最近は、体への負担をできるだけ減らす手術が増えています。 これは「低侵襲(ていしんしゅう)手術」と呼ばれます。 傷を小さくし、回復を助ける治療法が選ばれることが多いです。
- 骨幹部骨折(こっかんぶこっせつ) すねの真ん中あたりで折れる、比較的よく見られる骨折です。
- 足関節周辺の骨折 足首に近い部分で起こる骨折です。 特に、歩き始めのお子さんが転んだときに起こりやすい、 「幼児骨折(トドラー骨折)」という特殊な骨折があります。 いくつかの研究報告によると、この骨折の場合、 ギプスで固定しなくてもきれいに治ることがあります。 固定による不快感などを考え、あえて固定しないこともあります。
また、骨の折れ方によっても、以下のように分類されます。
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骨折の状態
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特徴
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開放骨折
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折れた骨が皮膚を突き破り、外に飛び出した状態です。<br>細菌が入る危険があり、急いで治療する必要があります。
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粉砕骨折
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骨が複数の破片に、バラバラに砕けてしまった状態です。
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疲労骨折
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スポーツなどで同じ場所に繰り返し小さな力が加わり、<br>骨にひびが入ってしまう骨折です。
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このように、下腿骨骨折と一言でいっても種類はさまざまです。 骨折の種類を正確に見極め、一人ひとりの状態に合った治療を、 選ぶことが後遺症なく回復するためにとても大切になります。
下腿骨骨折の原因
すねの骨が折れる原因は、一つだけではありません。 年齢や骨の強さによって、骨折のしやすさは変わります。 原因は主に2つのパターンに分けられます。
一つは、一度にとても大きな力が加わるケガです。 骨が耐えられる限界を超えた強い衝撃で折れてしまいます。
- 交通事故やスポーツでのケガ 車との接触や、ラグビーのように激しくぶつかるスポーツで起こります。
- 高い場所からの転落 階段や脚立から落ちたときの強い衝撃が原因です。
- 転倒 つまずいて転んだとき、すねを強くひねったり打ちつけたりして折れます。
特にご高齢の方は注意が必要です。 骨がもろくなる「骨粗しょう症」という状態だと、 家の中でのささいな転倒でも骨折につながりやすくなります。
もう一つは、小さな力が繰り返し加わって起こる骨折です。 「疲労骨折」とも呼ばれ、骨に少しずつダメージがたまります。 長距離のランニングやジャンプの多いスポーツで起こりやすいです。 部活動などで急に練習量が増えたときも注意が必要です。
また、小さなお子さんの場合は、大人とは少し違います。 歩き始めの幼児が転ぶなど、ごく軽いケガで骨折することがあります。 これは「幼児骨折(トドラー骨折)」と呼ばれています。
最近の研究では、この幼児骨折はギプスで固めなくても、 きれいに治ることが多いと報告されています。 ギプスによる不快感などの問題を考えると、 あえて固定しない治療が選ばれることもあります。
下腿骨骨折の症状
すねの骨を折ると、体はさまざまなサインを出して異常を知らせます。 骨折した場所には、強い痛みや腫れ、あざが見られることがほとんどです。 骨がずれると、足が明らかに曲がって見えることもあります。
骨折したときに現れる主な症状は、以下のとおりです。
- 激しい痛み 骨折した部分に、立っていられないほどの激しい痛みが走ります。 少しでも動かしたり、体重をかけようとしたりすると、痛みはさらに強くなります。
- 腫れとあざ 骨折した部分からの出血で、すねがパンパンに腫れあがります。 時間とともに、内出血によって皮膚が紫色や青色に変わります。
- 足の形の変化 骨が大きくずれてしまうと、足が普段とは違う方向に曲がったり、 短くなったりしたように見え、見た目にも異常がわかります。
- 歩けない 痛みと不安定さで、自分の足で体重を支えることができなくなります。 そのため、立ったり歩いたりすることは困難です。
また、骨折の強い衝撃で、骨の近くにある神経や血管が傷つくこともあります。 その結果、足先にしびれを感じたり、触られた感覚が鈍くなったりします。 治療がうまくいった後でも、膝の周りにしびれが残ることは珍しくありません。
最近の研究では、手術の方法によって、このしびれの回復の速さや、 しびれを感じる範囲に違いが出ることが報告されています。 これは手術の際に、皮膚のすぐ下にある細い神経が影響を受けるためです。
小さなお子さんの場合は、痛みを言葉でうまく伝えられないことがあります。 「急に歩かなくなった」「足を引きずるようになった」などの変化は、 骨折を知らせる大切なサインかもしれないので、注意深く観察してください。
下腿骨骨折の検査・診断
すねの骨折が疑われる場合、病院ではまず詳しくお話を聞きます。 「いつ、どこで、どのようにケガをしたのか」を教えてください。 その後、医師が目で見て、やさしく触って骨の状態を確かめます。
【診察で確認する主なポイント】
- 痛みの場所や強さ どこが一番痛いか、どのくらい痛いかを確認します。
- 腫れやあざの状態 骨折による内出血で、どのくらい腫れているかを見ます。
- 足の形の変化 骨がずれて、足が曲がったりしていないかを確認します。
- 皮膚の傷 骨が皮膚を破っていないか(開放骨折)を慎重に調べます。
次に、骨の状態を正確に知るために、写真をとる検査をします。 骨折の診断では、主に2つの画像検査が使われます。
1. X線(レントゲン)検査 骨折の診断で、まず初めに行う基本的な検査です。 骨が折れているか、どのくらいずれているかを確認します。 ほとんどの骨折は、このレントゲン検査で診断できます。
2. CT検査 骨折が関節に及んでいたり、粉々に砕けていたりする場合に行います。 レントゲンより詳しく、骨を輪切りにしたような画像が見られます。 これにより、骨折の様子を立体的に把握できます。
最近では、このCT検査のデータをさらに活用する技術が進んでいます。 データをもとに、3Dプリンターで骨の実物大の模型を作るのです。 手術前に模型で骨のズレを直し、使う金具の大きさも決められます。
ある研究報告によると、この方法で手術の準備をすると良い結果が出ています。 手術時間が短くなり、体からの出血量も少なくなったとされています。 事前にしっかり計画を立てることで、手術の精度が高まるのです。 体への負担を減らし、より安全な治療につながると期待されています。
これらの検査結果をすべて合わせて、一人ひとりに最適な治療法を決めます。
下腿骨骨折の治療
すねの骨折の治療は、骨のズレの大きさや折れた場所で決まります。 年齢や普段の活動量も考え、最適な方法を選びます。 治療法は大きく2つに分けられます。
- 手術をしない「保存的治療」
- 手術で治す「手術的治療」
骨のズレがほとんどなければ、ギプスなどで固定する保存的治療を行います。 骨が正しい位置でくっつくまで、安静にして待つ方法です。
一方、骨のズレが大きい場合や、骨が粉々になっている場合は手術が必要です。 手術で骨を正しい位置に戻し、金属でしっかり固定します。
手術をしない「保存的治療」
骨のズレがごくわずかな場合に選ばれる、体に負担の少ない治療法です。 ギプスやシーネという取り外しのできる固定具を使います。 骨折した部分をしっかり固定し、骨が自然にくっつくのを待ちます。
治療中は、骨折した足に体重をかけないことがとても大切です。 松葉杖などを使い、骨がくっつくまで足への負担を避けます。
手術で治す「手術的治療」
骨が大きくずれたり、皮膚を破って骨が飛び出したりした場合に行います。 骨を正しい位置に戻して固定し、後遺症を防ぐことが手術の目的です。
昔は、骨折部分を大きく切開して手術するのが一般的でした。 しかし、この方法は筋肉などへのダメージが大きく、回復に時間がかかります。 ある研究では、こうした従来の手術は合併症のリスクも指摘されています。
そのため最近では、体への負担をできるだけ減らす手術が増えています。 これは「低侵襲(ていしんしゅう)手術」と呼ばれます。 小さな傷で手術を行うため、回復が早いのが特徴です。
手術の方法には、主に次のようなものがあります。
- 髄内釘(ずいないてい)固定術 骨の内部に、芯となる金属の棒(釘)を通して固定する方法です。 体の内側から骨をしっかり支えることができます。 ひざの近くを少し切って釘を入れますが、その切り方にも工夫があります。 最近の研究では、切り方を縦にするか横にするかで、 手術後のしびれの回復の速さに違いが出ることが報告されています。
- プレート固定術 骨折部分の横に、金属の板(プレート)をあててネジで固定します。 骨を外側からがっちりと支える方法です。
さらに、より安全で正確な手術を行うための技術も進んでいます。 CT検査のデータから、3Dプリンターで骨の実物大の模型を作るのです。 手術前にこの模型で練習することで、手術の精度が格段に上がります。 ある研究では、この方法で手術時間や出血量が減ったと報告されました。
また、交通事故などで骨の一部が失われた重症例では特別な手術も行います。 失われた部分を人工の骨で補う「再建術」という選択肢もあります。 どの治療法が最適か、医師が詳しく診察した上で判断します。