ガストリノーマ
市販薬では改善しない胸やけや、何度も繰り返す胃の不調に悩まされていませんか?その頑固な症状、実は胃酸の分泌を異常に促す「ガストリノーマ」という珍しい腫瘍が原因かもしれません。
この腫瘍は主に膵臓や十二指腸にでき、発見された患者さんの90%以上に治りにくい消化性潰瘍が見られます。さらに、その半数以上が悪性(がん)であり、小さくても転移する可能性があるため早期の対処が重要です。
本記事では、ガストリノーマの詳しい症状から遺伝との関係、そして進化を続ける最新の治療法までを解説します。ご自身の症状と照らし合わせ、正しい知識を得るきっかけにしてください。
ガストリノーマの概要
ガストリノーマとは、胃酸の分泌をうながすホルモン「ガストリン」を、異常にたくさん作り出してしまう腫瘍(しゅよう)のことです。
この腫瘍は、主に食べ物の消化を助ける膵臓(すいぞう)や、胃の出口にある十二指腸にできることが多く、膵神経内分泌腫瘍(PNET)というグループに分類されます。
ガストリノーマは比較的まれな病気ですが、近年の研究でその発生率は増加傾向にあると報告されています。
この病気の主な特徴は、以下のとおりです。
- 過剰な胃酸分泌
- ガストリンが過剰になることで、胃酸が大量に分泌され続けます。
- その結果、治りにくく再発しやすい消化性潰瘍(かいよう)や、胸やけを起こす逆流性食道炎、下痢などを引きおこします。
- 腫瘍の性質
- ガストリノーマの半数以上は悪性(がん)です。
- 腫瘍が小さくても肝臓やリンパ節などに転移する可能性があり、注意深く調べる必要があります。
- 治療の考え方
- 治療の基本は、手術で腫瘍を取りのぞくことです。
- 治療法は進化を続けており、患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療計画が重要になります。
- そのため、経験を積んだ専門家がチームを組み、総合的に治療方針を決めていくことが不可欠です。
ガストリノーマの種類
ガストリノーマは、その発生の背景によって大きく2つの種類に分けられます。
遺伝が関係するかどうかで、腫瘍の特徴や治療を考える上でのポイントが異なります。 ガストリノーマと診断された方のうち、約4〜5人に1人は遺伝が関係します。
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種類 |
散発性ガストリノーマ |
多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)に伴うもの |
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特徴 |
遺伝とは関係なく、単独で発生します。ガストリノーマの大多数を占めるタイプです。 |
遺伝性の病気「MEN1」の一つの症状として発生します。 |
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割合の目安 |
全体の約75〜80% |
全体の約20〜25% |
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腫瘍のでき方 |
膵臓や十二指腸に、一つだけできることが多いです。腫瘍は2cm以上と比較的大きい傾向があります。 |
十二指腸に、1cm以下の小さな腫瘍が複数できることが多いです。他の臓器に腫瘍ができることもあります。 |
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治療のポイント |
腫瘍そのものを手術で取り除くことが基本です。 |
他の腫瘍の状態もふまえた総合的な判断が必要です。治療方針の決定は非常に複雑になることがあります。 |
散発性ガストリノーマ
遺伝とは関係なく、偶然に発生するタイプで、ガストリノーマの約4人に3人がこのタイプにあたります。
多くの場合、膵臓や十二指腸に腫瘍が一つだけできます。 治療は、手術で腫瘍を完全に取り除くことを目指します。
多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)に伴うガストリノーマ
MEN1は、体の様々な場所に腫瘍ができやすくなる遺伝性の病気です。 この病気の一つの症状として、ガストリノーマが発生することがあります。
MEN1が背景にある場合、腫瘍が複数できやすいという特徴があります。 そのため、どの腫瘍から治療すべきか、手術が最善かなど、治療方針の決定は非常に複雑です。
実際に、専門家の間でも治療戦略が議論の的となるほど、慎重な判断が求められます。 ガストリノーマだけでなく、他の腫瘍の状態も考慮した総合的な治療計画が不可欠です。
ガストリノーマの原因
ガストリノーマがなぜできてしまうのか、 その根本的な原因はまだ完全には解明されていません。
しかし、発生の背景によって、 大きく2つのタイプに分けられることがわかっています。 それは、遺伝が関係するかどうかという違いです。
遺伝が関係するタイプ
ガストリノーマと診断された方のうち、 約4〜5人に1人は遺伝的な要因が関係しています。
このタイプは「多発性内分泌腫瘍症1型」、 通称「MEN1」という病気の一つの症状として現れます。
- 多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)とは
- 遺伝子の変化が原因となり、
- 体の様々な場所にホルモンを作る腫瘍が
- できやすくなる病気のことです。
MEN1が原因の場合、他の臓器の腫瘍も考慮する必要があり、 治療方針の決定は非常に複雑になることがあります。 専門家の間でも治療戦略が議論されるほど慎重な判断が求められます。
遺伝が関係しないタイプ
もう一つは「散発性(さんぱつせい)」と呼ばれるタイプです。 ガストリノーマの大多数(約4人に3人)がこちらにあたります。
これはMEN1のような特定の遺伝的な背景とは関係なく、 偶然に発生するものを指します。
なぜこのタイプの腫瘍ができてしまうのか、 その詳しい仕組みはまだ研究段階にあります。
このように、原因が遺伝によるものか、そうでないかによって、 その後の検査や治療計画が大きく変わるため、 原因を突き止めることは非常に重要です。
ガストリノーマの症状
ガストリノーマは、胃酸を出すよう命令するホルモンを、 異常に多く作り出す腫瘍です。
そのため、胃の中では常に大量の胃酸が作られ続け、 様々な症状を引きおこします。
代表的な症状は、胃や十二指腸の壁が、 強力な酸によって傷つけられてしまう「消化性潰瘍」です。
ガストリノーマによる潰瘍は、 市販の薬ではなかなか良くならず、次のような特徴があります。
- 治りにくく、何度もくり返す 普通の胃薬では抑えきれないほどの胃酸が原因です。
- 複数個所にできることがある 胃や十二指腸のあちこちに潰瘍ができてしまいます。
- 珍しい場所にできる 普通の潰瘍ができにくい十二指腸の奥や、 さらに先の空腸という場所にできることもあります。
実に、ガストリノーマと診断された患者さんの、 90%以上にこの消化性潰瘍が見られます。
また、潰瘍のほかにも、 増えすぎた胃酸が原因で起こる症状があります。
- 下痢 大量の胃酸が腸を直接刺激することで起こります。 食べ物の消化を助ける酵素の働きも悪くするため、 油っぽい便(脂肪便)が出ることもあります。
- 胸やけ(逆流性食道炎) あふれるほどの胃酸が食道へ逆流することで、 胸のあたりに焼けるような不快感を引きおこします。
これらの症状は、一般的な胃の不調にも見られます。 しかし、なかなか治らない場合は、 専門の医師に相談することが重要です。
ガストリノーマの検査・診断
ガストリノーマが疑われる場合、検査は大きく2つのステップで進みます。 それは「腫瘍がいるかどうかの確認」と、「どこにいるかの場所探し」です。
ステップ1:腫瘍がいるかどうかの確認(存在診断) まず、症状の原因が本当にガストリノーマなのかを血液検査などで調べます。
- 血液検査
- 食事をしない状態で採血し、血液中の「ガストリン」というホルモンの量を測ります。
- これは診断の基本となる最も重要な検査です。
- 正常な値の10倍を超えるような非常に高い数値だと、ガストリノーマの可能性が高まります。
- 胃の中の酸性度を調べる検査
- 胃の中がどれくらい酸っぱいか(酸性度)を調べます。
- 大量の胃酸が出ているため、ガストリノーマの患者さんの胃は強い酸性(pHが2未満)になっています。
- 刺激試験
- 体に特定の物質を注射して、ガストリンの数値がどう変化するかを見る検査です。
- 診断をより確実にするために行われます。
ステップ2:腫瘍の場所を探す検査(局在診断) 腫瘍の存在が確実になったら、次は画像検査で体のどこに隠れているかを探します。 腫瘍の場所を正確に見つけることは、手術などの治療方針を決める上で欠かせません。
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検査方法 |
特徴 |
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CT検査 |
X線で体の断面を撮影します。薬(造影剤)を注射して、腫瘍をよりはっきりと見つけやすくします。 |
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超音波内視鏡(EUS) |
胃カメラの先に超音波装置をつけ、胃や十二指腸の中から膵臓などを詳しく観察します。小さな腫瘍を見つけるのが得意な検査です。 |
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SASIテスト |
腫瘍に栄養を送っている血管を見つけるための特殊な検査です。カテーテルという細い管を使い、腫瘍がある場所を推定します。 |
これらの検査結果を総合的に判断し、診断を確定します。 近年の研究では、ガストリノーマを含む神経内分泌腫瘍の治療は進化を続けています。 しかし、その判断は非常に複雑で、専門家の間でも議論されるほどです。 そのため、消化器内科、外科、放射線科など、経験豊富な専門家がチームを組み、一人ひとりに最適な治療法を検討することが極めて重要になります。
ガストリノーマの治療
ガストリノーマの治療には、大きく2つの目標があります。 一つは腫瘍そのものを取り除くこと、もう一つは、 過剰な胃酸が引き起こすつらい症状を抑えることです。
治療の基本は、手術で腫瘍を完全に取り除くことです。 ガストリノーマを含む神経内分泌腫瘍の治療において、 手術は今も中心的な役割を担っています。
近年、治療法は進化を続けており、 患者さん一人ひとりの状態に合わせた選択肢が増えています。
主な治療法
- 手術(外科治療)
- 腫瘍を根本から取り除くことを目指す治療法です。
- 周りのリンパ節や、肝臓など他の場所に転移があっても、
- 取りのぞくことで症状やその後の経過が、
- よくなると期待できる場合は、一緒に手術をします。
- お薬での治療(薬物療法)
- 主に2つの目的でお薬を使います。
- 胃酸の分泌を抑える薬
- プロトンポンプ阻害薬(PPI)などを使います。
- 大量に出すぎる胃酸を強力に抑え、
- つらい潰瘍や下痢の症状を改善します。
- 腫瘍の成長を抑える薬
- ホルモンの分泌や腫瘍が大きくなるのを、
- 抑える効果が期待できるお薬(ソマトスタチンアナログ製剤)や、
- 腫瘍の増殖を抑える抗がん剤などを使います。
- その他の治療
- 肝臓への転移に対しては、特別な治療を行うことがあります。
- 例えば、腫瘍に栄養を送る血管を詰まらせたり(肝動脈化学塞栓術)、
- ラジオ波という熱で腫瘍を焼き固めたりする方法です。
どの治療法を選ぶかは、腫瘍の大きさや場所、転移の有無で異なり、 その判断は非常に複雑です。 治療法の進化により、進行した状態でも手術の役割は変化していますが、 その効果が見過ごされている可能性も指摘されています。
そのため、消化器内科、外科、放射線科など、 経験豊富な専門家がチームを組んで、 一人ひとりに最適な治療方針を慎重に決めることが不可欠です。










