小児糖尿病

「糖尿病」と聞くと大人の生活習慣病をイメージしがちですが、実はお子さんにも起こりうる病気です。最近、お子さんがよく喉の渇きを訴える、おしっこの回数が増えた、たくさん食べるのに痩せてきた、といった変化はありませんか?それは「小児糖尿病」のサインかもしれません。

実は、お子さんの糖尿病で最も多いのは、生活習慣とは異なる原因で発症する「1型糖尿病」で、全体の約3分の2を占めるといわれます。このタイプは症状が急激に現れることが多く、治療が遅れると危険な状態に陥ることも。感染症の流行で受診が遅れ、重症化するケースも報告されています。

この記事では、小児糖尿病の種類ごとの原因や見逃してはいけないサイン、そして最新の治療法まで詳しく解説します。お子さんの健やかな成長を守るために、正しい知識を身につけましょう。

小児糖尿病の概要

小児糖尿病は、お子さんや思春期の若い方がかかる糖尿病のことです。 食事でとった糖分は、体を動かすための大切なエネルギーになります。

この糖分をエネルギーとして使う細胞に届けるのが、インスリンです。 インスリンは、細胞のドアを開ける「カギ」のような役割をしています。 小児糖尿病は、このインスリンというカギがうまく働かない病気です。

カギが足りなかったり、うまく鍵穴に合わなかったりします。 すると糖分が細胞に入れず、血液の中にあふれてしまいます。 この血糖値が高い状態が続くと、体の様々な場所に影響が出ます。

治療が遅れたり中断したりすると、危険な状態になることがあります。 これを「糖尿病ケトアシドーシス(DKA)」と呼びます。 感染症の流行などで病院に行きにくい状況が続いた結果、このDKAを発症するお子さんが増えたという報告もあります。 お子さんの体調で気になることがあれば、早めに相談してください。

小児糖尿病の種類

「こどもの糖尿病」とひとくくりにされがちですが、原因は一つではありません。 主に「1型糖尿病」と「2型糖尿病」に分けられます。 また、非常にまれなタイプの糖尿病もあります。

1型糖尿病

自分の体を守るはずの免疫が、なぜか勘違いをしてしまいます。 インスリンを作る膵臓(すいぞう)の細胞を攻撃し、壊してしまう病気です。 その結果、インスリンをほとんど、あるいは全く作れなくなってしまいます。 お子さんの糖尿病では最も多く、全体の約3分の2を占めるといわれます。

2型糖尿病

肥満などの生活習慣や、ご家族からの遺伝的な影響が関係します。 インスリンは作られていますが、その効きが悪くなっている状態です。 これを「インスリン抵抗性」と呼びます。 食生活の変化などから、近年はこの2型糖尿病のお子さんが増えています。

種類

主な原因

体の中の状態

1型糖尿病

免疫の勘違いで、インスリンを作る細胞が壊されること

インスリンがほとんど作れない

2型糖尿病

肥満などの生活習慣や、遺伝的な要因

インスリンが効きにくい(インスリン抵抗性)

その他のまれな糖尿病

このほか、生まれつきの遺伝子の変化で起こる糖尿病もあります。 これを「単一遺伝子異常による糖尿病」と呼び、全体の5%ほどを占めます。 若年発症成人型糖尿病(MODY:モディ)などがこれに含まれます。

このタイプは1型や2型と間違われやすく、診断が難しいことがあります。 同じ家族の中でも症状の出方が違う場合があるためです。 糖尿病の種類によって治療法も変わるため、正確な診断がとても重要です。

小児糖尿病の原因

小児糖尿病の原因は、糖尿病の種類によって全く異なります。 主に「1型」「2型」、そして「まれなタイプ」の3つに分けられます。

1型糖尿病の原因

自分の体を守るはずの免疫が、なぜか勘違いをしてしまいます。 インスリンを作る膵臓の細胞を攻撃し、壊してしまう病気です。 これを「自己免疫」と呼びます。

なぜ免疫がこのような勘違いをするのか、詳しい原因はまだ不明です。 生まれつき1型糖尿病になりやすい遺伝的な体質のお子さんがいます。 そこにウイルス感染などがきっかけとなって、発症すると考えられています。

2型糖尿病の原因

インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が主な原因です。 ご家族に糖尿病の方がいるといった、遺伝的な要因が関係しています。 それに加え、食べ過ぎや運動不足といった生活習慣が大きく影響します。

最近の研究では、ご家族の病気に対する理解も重要だとわかっています。 保護者の方の知識が十分でなかったり、経済的な問題があったりすることも、お子さんの生活習慣に影響を与え、発症の一因となる場合があります。

その他のまれな原因

ごくまれに、生まれつき特定の遺伝子に変化があって起こる糖尿病もあります。 これは「単一遺伝子異常による糖尿病」と呼ばれています。 小児糖尿病全体の約5%を占めると報告されています。

若年発症成人型糖尿病(MODY:モディ)などが代表的です。 1型や2型と症状が似ているため、間違われやすいのが特徴です。 同じ家族の中でも症状の出方が違うため、診断が難しいことがあります。

種類

主な原因

1型糖尿病

免疫の勘違い(自己免疫)。遺伝的な体質に環境要因が加わる。

2型糖尿病

インスリンが効きにくい状態。遺伝的な要因に生活習慣が加わる。

まれな糖尿病

生まれつきの遺伝子の変化(単一遺伝子異常)。

小児糖尿病の症状

小児糖尿病の症状は、その種類によって現れ方が大きく異なります。 特に「1型糖尿病」は急に症状が出ることが多く、注意が必要です。 お子さんのささいな変化を見逃さないことが、とても大切になります。

1型糖尿病のサイン

1型糖尿病では、数日から数週間で次のようなサインが目立ちます。 これは、インスリンというカギが作れなくなるために起こります。

  • おしっこの量や回数が増える 血液にあふれた糖を、おしっことして体の外に出そうとします。 そのためトイレが近くなったり、夜中に何度も起きたりします。 一度おむつが外れたのに、おねしょがぶり返すのもサインです。
  • のどが渇き、たくさん飲む たくさんおしっこをすると、体の中の水分が足りなくなります。 それを補うためにのどが渇き、ジュースなどを大量に飲みます。
  • たくさん食べるのに痩せる 食事でとった糖分をエネルギーとして使えないためです。 体は代わりに筋肉や脂肪を分解するので、体重が減ってしまいます。
  • 疲れやすい・だるそう 体を動かすエネルギーが足りず、元気がなくなります。 以前よりぐったりしていることが増えたら注意が必要です。

2型糖尿病のサイン

一方、2型糖尿病は症状がほとんどないか、あっても軽いことが大半です。 症状の進み方もゆっくりなため、気づきにくいのが特徴です。 学校の尿検査などで、偶然見つかることも少なくありません。

注意が必要な危険なサイン

治療が遅れると、「糖尿病ケトアシドーシス」という危険な状態になります。 吐き気や腹痛、息が果物のような甘酸っぱい匂いがするのは要注意です。 感染症の流行で受診をためらうと、この状態で発見されることもあります。

また、まれに遺伝子の変化で起こる糖尿病もあります。 このタイプは、同じ家族でも症状の出方が違うことがあります。 1型や2型と間違われやすいため、「いつもと違うな」と感じたら、早めに小児科へ相談しましょう。

小児糖尿病の検査・診断

お子さんに糖尿病が疑われる症状があれば、病院で検査を行います。 診断で大切なのは、血液中の糖分(血糖値)が高い状態が続いているかです。 主に、血糖値と糖尿病のタイプを調べる検査があります。

血液中の糖分を調べる検査

まず、血液中の糖分がどれくらいあるかを直接調べます。

  • 血糖値検査 血液中の糖の濃度を測る、最も基本的な検査です。 朝ごはんの前に測る「空腹時血糖値」と、いつでも測れる「随時血糖値」があります。
  • ヘモグロビンA1c(HbA1c)検査 過去1〜2ヶ月間の、血糖値の平均点がわかる検査です。 学校の成績表のように、普段の血糖の状態を知ることができます。

検査の種類

糖尿病と診断される目安

空腹時血糖値

126mg/dL以上

随時血糖値

200mg/dL以上

ヘモグロビンA1c

6.5%以上

糖尿病のタイプを調べる検査

糖尿病と診断されたら、次にその種類を特定します。 なぜなら、1型と2型では治療法が全く異なるからです。

  • 自己抗体検査 血液検査で、自分の体を攻撃する物質がないか調べます。 この「自己抗体」が見つかれば、1型糖尿病の可能性が高くなります。

最近の研究では、典型的な1型や2型に分けられないお子さんもいます。 これを「非定型糖尿病」と呼び、全体の1〜6.6%いるとの報告もあります。 そのため、複数の検査を組み合わせて慎重に診断を進めることが重要です。

小児糖尿病の治療

小児糖尿病の治療は、お子さんの成長に合わせて長く続けていくことが大切です。 治療の基本は、食事や運動といった生活習慣の見直しです。 それに加えて、糖尿病のタイプに合わせた治療をおこないます。

1型糖尿病の治療

体の中でインスリンがほとんど作られないため、注射で補う治療が必要です。 インスリンは、食事でとった糖分をエネルギーに変えるための大切なカギです。 このカギがないと細胞がエネルギー不足になるため、必ず補給しなければなりません。

  • インスリン注射(1日頻回注射) 1日に数回、食事のタイミングなどに合わせて注射をする方法です。
  • インスリンポンプ療法 お腹などに付けた小さな機械から、体にインスリンを送り続ける方法です。

2型糖尿病の治療

まずは食事療法と運動療法から始め、生活習慣を整えることが基本です。 それでも血糖値のコントロールが難しい場合は、お薬を使います。 メトホルミンという飲み薬や、インスリン注射などが選択肢になります。

治療を支えるチームの力

治療をうまく進めるには、お子さん本人だけでなくご家族の支えが欠かせません。 ご家族が病気を正しく理解し、前向きに支えることが血糖コントロールの安定につながる、という研究報告もあります。

また、お子さんが成長して大人の病院へ移る時期も非常に重要です。 この移行期に専門家から切れ目のない支援を受けることで、その後の血糖コントロールが良好になるという研究結果も出ています。 医師や栄養士、心理士など専門家チームが、お子さんとご家族を支えます。