「子宮が裏返しになる」という、にわかには信じがたい状態を引き起こす「子宮内反症」をご存知でしょうか。これは非常にまれな病気ですが、不正出血や下腹部の違和感といった、決して珍しくない症状の裏に隠れている可能性があります。
ほとんどはお産の直後に起こりますが、お産と関係なく10代から閉経後の女性まで、幅広い年代で発症するケースも報告されています。そして、その場合の原因は決して軽視できません。海外の報告では、原因の約6割は子宮筋腫などの良性のできものですが、約3割は悪性の腫瘍、つまり「がん」であるという衝撃的な事実が明らかになっています。
この記事では、子宮内反症の詳しい症状や原因、そして最新の治療法までを解説します。見過ごしやすいサインからご自身の体を守るために、ぜひ最後までご覧ください。
子宮内反症の概要
子宮内反症とは、子宮が裏返しになってしまう、非常にまれな状態です。 普段は体の内側にある子宮の壁が、外側に出てきてしまいます。
この病気は、発生するタイミングによって大きく2つに分けられます。
- 産褥期(さんじょくき)子宮内反症
お産の直後に起こるものです。
- 非産褥期(ひさんじょくき)子宮内反症
お産とは関係なく起こるものです。
ほとんどはお産の直後に起こりますが、お産と関係ない時期にも注意が必要です。 お産と関係なく発症する場合、平均年齢は46歳前後と報告されています。
しかし、10代の若い方から閉経後の方まで、幅広い年代で起こる可能性があります。 原因で最も多いのは子宮筋腫という良性のできもので、約6割を占めます。
一方で、原因の約3割は悪性の腫瘍、つまり「がん」であることもわかっています。 若い方でも、悪性の腫瘍が原因で発症し、診断が難しいケースも報告されています。
不正出血や下腹部の違和感など、いつもと違う症状があれば放置しないでください。 原因を正確に調べることが、ご自身の体を守るためにとても大切です。
子宮内反症の種類
子宮内反症は、子宮がどのくらい裏返ったかの「程度」で分類されます。 また、いつ起きたかという「時期」によっても分けられます。 それぞれの種類で、状態や原因が異なるため注意が必要です。
程度による分類
子宮が裏返ってしまった深さによって、主に3つの段階に分けられます。
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種類
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状態
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子宮陥凹(しきゅうかんおう)
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子宮のてっぺん(子宮底)が、内側に少しくぼんだ状態です。
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不全子宮内反症
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子宮は裏返っていますが、子宮の出口までは達していません。
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全子宮内反症
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子宮が完全に裏返り、子宮の出口から外に出てしまうこともある状態です。
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このうち不全子宮内反症は、体の外からは見えない状態です。 そのため、子宮筋腫など他の病気と間違われることもあります。 正確な診断には、超音波検査やMRI検査がとても重要になります。
時期による分類
子宮内反症は、発生する時期によっても2つに分けられます。
- 産褥期(さんじょくき)子宮内反症 お産の直後に起こるタイプで、子宮内反症のほとんどがこれにあたります。
- 非産褥期(ひさんじょくき)子宮内反症 お産とは関係なく起こる、非常にまれなタイプです。
非産褥期の子宮内反症は、慎重に調べる必要があります。 原因の約6割は子宮筋腫などの良性のできものです。 しかし、約3割は悪性の腫瘍、つまり「がん」が原因と報告されています。
このタイプは、膣の腫瘍や子宮頸部の腫瘍と見た目が似ています。 そのため、診断が難しく、専門医による慎重な検査が求められるのです。 不正出血などの症状があれば、すぐに専門医に相談しましょう。
子宮内反症の原因
子宮内反症が起こる原因は、大きく2つに分けられます。 お産の直後に起こる場合と、お産とは関係ない場合に起こる場合です。 それぞれの原因について、詳しく見ていきましょう。
お産のときに起こる原因
子宮内反症のほとんどは、お産のときに起こります。 主に、子宮の筋肉の状態や胎盤のトラブルが関係しています。
- 子宮の筋肉のゆるみ
双子などで子宮が大きく伸びたり、複数回のお産を経験したりすると、子宮の筋肉がゆるみやすくなります。
- 胎盤の問題
「癒着胎盤(ゆちゃくたいばん)」という、胎盤が子宮の壁に強くくっつきすぎている状態も原因です。 胎盤がはがれる前に、へその緒を強く引っ張ってしまうことでも起こりえます。
- お産の進みかた
お産が非常に速く進んだ場合や、お腹の上から子宮の底を強く押す処置がきっかけになることもあります。
お産以外で起こる原因
お産と関係なく起こることは非常にまれですが、注意が必要です。 子宮にできた「こぶ」のようなものが、主な原因となります。 海外の報告では、原因の約6割が子宮筋腫という良性のできものです。
しかし、約3割は悪性の腫瘍、つまり「がん」が原因とされています。 特に、子宮頸部などにできた大きな腫瘍が原因となることがあります。
悪性の腫瘍が原因の場合、体の状態にも影響を及ぼすことがあります。 腫瘍の影響で血液が固まりやすくなり、「血栓症」という病気を引き起こす可能性も指摘されているのです。
血栓症とは、血の塊が血管に詰まってしまう危険な病気です。 若い方でも、悪性の腫瘍が原因で発症することが報告されています。 不正出血など、いつもと違う症状があれば専門医に相談しましょう。
子宮内反症の症状
子宮内反症は、いつ起こるかによって症状の出かたが大きく異なります。 お産の直後に起こる場合と、お産とは関係ない時期に起こる場合です。 それぞれのサインを見逃さないことが、ご自身の体を守るためにとても重要です。
お産の直後に起こる主な症状
お産の直後に発症する場合、急激で激しい症状があらわれるのが特徴です。
- 下腹部の激しい痛み 子宮が裏返ることで、強い痛みが急に起こります。
- 大量の性器出血 胎盤がはがれた場所から、止まらないほどの出血が続きます。
- ショック状態 出血や強い痛みにより、顔色が悪くなる、冷や汗をかく、意識が遠のくなど、命に関わる危険な状態になることがあります。
お産と関係ない時期に起こる症状
お産と関係なく発症する場合、症状は比較的ゆっくりあらわれます。 数か月にわたって続く不正出血や、おしっこが出にくいなどの排尿トラブルがみられることがあります。
この場合の症状は、子宮筋腫や骨盤臓器脱といった他の病気と似ています。 そのため、ご自身で判断せず、専門医による正確な診断が不可欠です。
注意すべき、非常にまれな症状
非常にまれですが、命に関わる危険なサインがあらわれることがあります。 原因となっているできものの影響で、血液が固まりやすくなることがあるためです。 その結果、脳の血管に血の塊が詰まる「脳静脈洞血栓症」を引き起こすのです。
この場合、けいれん発作や意識がもうろうとすることが最初の症状として報告されています。 思春期や若い女性でも、原因のわからない不正出血や頭の症状がある場合は、子宮の病気が隠れている可能性も考えて検査することが大切です。
子宮内反症の検査・診断
子宮内反症の診断は、まず詳しい問診から始まります。 いつから、どのような症状があるのかを丁寧にお聞きします。 特にお産の直後は、激しい痛みや大量出血などの症状からこの病気を疑います。
診断を確定するため、次のような診察や検査を組み合わせて行います。
視診と内診(目で見て、指で触れる診察)
子宮が完全に裏返り、体の外に出ている場合は目で見て診断がつくことがあります。 しかし、大きな子宮筋腫やポリープなどと見た目が似ているため注意が必要です。 内診では、普段はないはずの柔らかい塊に触れることで異常に気づきます。 同時にお腹を触ると、いつもの位置にあるはずの子宮がなく、くぼんでいることで診断の手がかりになります。
画像検査
超音波(エコー)検査は、診断に非常に役立つ検査です。 お腹や腟から超音波をあて、子宮が特徴的な「U字型」に見えるかで判断します。 特にお産と関係ない時期に起こる場合は、診断が難しいことが少なくありません。 子宮筋腫や悪性の腫瘍など、他の病気と見分けるためにMRI検査も重要です。 海外の報告では、術前のMRI検査が診断の確定に役立ったとされています。
診断を確定するための追加検査
超音波やMRIでも診断がはっきりしない場合もあります。 その際は、お腹に小さなカメラを入れる「腹腔鏡検査」で直接観察します。 あるいは、組織の一部を採って調べる「生検」で診断を確定することもあります。 このように、正確な診断のためには、段階的に検査を組み合わせることが大切です。
子宮内反症の治療
子宮内反症の治療は、一刻を争う緊急事態です。 治療の大きな目標は、次の3つにまとめられます。
- 子宮を正しい位置に優しく戻すこと(整復)
- 大量の出血とショック状態から命を守ること
- 再び同じことが起こらないようにすること(再発予防)
治療は、まず医師が手を使って元に戻す方法から試みます。 それで難しい場合は、手術による治療へと進みます。
医師の手で元に戻す治療(用手的整復術)
まず試みられるのは、医師が手を使って子宮を元の位置に戻す方法です。 お産の直後に起きた場合は、多くがこの方法で対応できます。
このとき、子宮の筋肉の緊張を和らげる薬を使い、整復しやすくします。 子宮がリラックスした状態になることで、優しく元に戻せるのです。
手術による治療
手で戻す治療が難しい場合や、お産と関係なく発症した場合は手術が必要です。 手術には、お腹の傷が小さい「腹腔鏡手術」とお腹を開く「開腹手術」があります。
海外の報告では、まず腹腔鏡手術で試し、難しい場合は開腹手術に切り替えて成功した例もあります。
原因を取り除くための手術
お産と関係なく起こる場合、原因の治療がとても重要です。 海外の研究では、原因の約3分の1が悪性の腫瘍だったと報告されています。
そのため、原因によっては子宮を元に戻すだけでなく、子宮全体を取り出す「子宮摘出術」が必要になることも少なくありません。 どのような治療法を選ぶかは、患者さんの年齢や原因などを総合的に考えて慎重に決定します。