精索水腫
おむつ交換やお風呂の時間、お子さんの足の付け根にぷよぷよしたふくらみを見つけて、「これって何だろう?」と不安に思った経験はありませんか。痛みはないようだけど、左右で大きさが違う…。その症状、男の子の赤ちゃんによく見られる「精索水腫(せいさくすいしゅ)」かもしれません。
これは、お母さんのお腹の中にいたときの名残で水がたまってしまう状態で、多くは成長とともに1〜2歳頃までに自然に治ることが期待できます。しかし、ごく稀に注意が必要なケースや、鼠径ヘルニアなどよく似た他の病気が隠れている可能性もゼロではありません。
この記事では、精索水腫の正しい知識からご家庭でできるチェックポイント、最新の治療法までを詳しく解説します。大切な我が子の体のサインを見逃さないために、まずは正しい知識で不安を安心に変えていきましょう。
精索水腫の概要
精索水腫(せいさくすいしゅ)とは、男の子の足の付け根あたりにできる、ぷよぷよした水のふくろのことです。体と「たまご(精巣)」をつなぐ「精索(せいさく)」という管のまわりに、お腹の中からしみ出た液体がたまってしまう状態を指します。
赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるとき、精巣はお腹の中から今の場所へと移動してきます。その通り道になった部分がうまく閉じないと、そこへお腹の水が流れ込み、ふくらみができるのです。
- 症状
- 足の付け根(鼠径部)に、やわらかいふくらみができます。
- 痛み
- 基本的には痛みをともなうことはありません。
- 発見のきっかけ
- おむつ交換やお風呂のときに、保護者の方が気づくことが多いです。
よく似た状態に「陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)」があります。これは液体がたまる場所が少しだけ違います。
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病名 |
液体がたまる場所 |
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精索水腫 |
精巣につながる管(精索)のまわり |
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陰嚢水腫 |
精巣(睾丸)そのもののまわり |
最近では、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときの超音波検査で、陰嚢のふくらみとして発見されることもあります。ある研究報告では、このようなふくらみは妊娠後期に見つかることが多く、特に陰嚢水腫は左右両方に見られる傾向があったとされています。
痛みなどの強い症状は出にくいですが、ふくらみや左右差に気づいたら、一度医療機関へ相談することをおすすめします。
精索水腫の種類
精索水腫は、水のふくろが「お腹の中とつながっているかどうか」によって、大きく2つの種類に分けられます。それぞれのタイプで、原因や特徴が少し異なります。
1. 交通性(こうつうせい)精索水腫
主に赤ちゃんや子どもに見られるタイプです。お腹の中と水のふくろが、細いトンネルでつながっている状態を指します。
もともと精巣(たまご)は、赤ちゃんがお母さんのお腹にいるとき、お腹の中から今の場所へと移動してきます。その通り道(腹膜鞘状突起:ふくまくしょうじょうとっき)は、生まれる頃には自然に閉じるのが一般的です。
しかし、この通り道が閉じずに残ってしまうことがあります。すると、お腹の中にある液体がそのトンネルを通って流れ込み、ふくらみができるのです。これが交通性精索水腫です。
- 特徴
- 立ったり、泣いたりしてお腹に力が入ると、ふくらみが大きくなることがあります。
- 朝は小さく、活動する夕方から夜にかけて大きくなる傾向があります。
- ポイント
- 多くは1〜2歳までにトンネルが自然に閉じて治ることが期待できます。
2. 非交通性(ひこうつうせい)精索水腫
主におとなに見られるタイプです。お腹の中とつながるトンネルは、すでに完全に閉じています。
このタイプでは、精巣のまわりを包む膜から作られる液体の量と、体が吸収する量のバランスが崩れることで、液体がたまってしまいます。けがや炎症がきっかけになることもありますが、はっきりとした原因がわからないことも多いです。
- 特徴
- お腹の中とつながっていないため、1日の中でふくらみの大きさが大きく変わることはあまりありません。
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種類 |
交通性 |
非交通性 |
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主な対象 |
赤ちゃん・子ども |
おとな |
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原因 |
お腹とつながるトンネルが閉じない |
水の生産・吸収のバランスが崩れる |
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大きさの変化 |
変わりやすい |
あまり変わらない |
精索水腫の原因
精索水腫がなぜ起こるのか、その原因は年齢によって大きく異なります。「子どもの場合」と「大人の場合」に分けて、詳しく見ていきましょう。
子どもの場合:生まれつきの体のつくりが関係
赤ちゃんや小さなお子さんの精索水腫は、ほとんどが生まれつきの体のつくりによるものです。
もともと精巣(たまご)は、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときに作られます。そして、生まれる前に、お腹の中から今の場所(陰嚢)まで移動してきます。このとき、「腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき)」という、お腹と陰嚢をつなぐ通り道が一時的にできます。
通常、この通り道は赤ちゃんが生まれる頃には自然に閉じてしまいます。しかし、何らかの理由でこの道が閉じずに残ってしまうことがあるのです。すると、開いたままの道を通って、お腹の中の水分が精索の周りに流れ込み、水のふくろ(精索水腫)ができます。
最近の研究報告では、赤ちゃんがお腹の中にいる妊娠後期に、超音波検査でこのふくらみが見つかることも多いとされています。
大人の場合:水分のバランスの乱れが関係
大人の精索水腫は、子どもとは原因が異なります。多くの場合、精索の周りで作られる水分の量と、体が吸収する量のバランスが崩れてしまうことが原因です。
はっきりとしたきっかけがわからないことも多いですが、以下のような病気やけがが原因で起こることもあります。
- 陰嚢内の炎症
- 精巣炎や精巣上体炎など
- けが
- 陰嚢を強くぶつけるなどの外傷
- 手術の影響
- 鼠径ヘルニアや精索静脈瘤の手術後など
- 精巣の腫瘍
- 精巣にできた、できものが原因となることもあります
このように、大人の場合は他の病気が隠れている可能性も考えられます。気になるふくらみがあれば、原因を特定するためにも早めに受診することが大切です。
精索水腫の症状
精索水腫の主な症状は、男の子の足の付け根あたりに現れる、ぷよぷよとした柔らかいふくらみです。多くの場合、痛みや熱を持つことはなく、皮膚が赤くなることもないため、お子さん自身が不快感を訴えることはほとんどありません。
診察室では、おむつ交換やお風呂の時間に保護者の方が「あれ?片方だけ大きいかな?」と、左右の大きさの違いに気づいて受診されるケースがほとんどです。
1日のなかで大きさが変わることも
特にお腹の中と水のふくろがつながっている「交通性」というタイプでは、1日のなかでふくらみの大きさが変わることがあります。
- 時間による変化
朝起きたときは小さく、日中に活動する夕方から夜にかけて大きくなる傾向があります。 - 行動による変化
赤ちゃんが泣いたり、トイレでいきんだりしてお腹に力が入ると、ふくらみが一時的に大きくなります。
これは、寝ている間は液体がお腹の中に戻りやすく、立ったり動いたりすると重力で足の付け根に液体が移動してくるためです。
こんな症状は要注意!すぐに病院へ
ほとんどはふくらみだけの症状ですが、他の病気が隠れているサインかもしれません。以下のリストに当てはまる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
【注意が必要な症状チェックリスト】
- □ ふくらみがカチカチに硬い
- □ 押すと痛がる、急に泣き出す
- □ 吐き気やおう吐がある
- □ 熱が出ている
- □ ふくらんでいる部分の皮膚が赤い
これらの症状は、腸がはまり込んでしまう「鼠径ヘルニア嵌頓(かんとん)」や、炎症が起きているサインの可能性があります。ふくらみに気づいたら、まずは一度ご相談ください。
精索水腫の検査・診断
精索水腫が疑われる場合、お子さんの体に負担が少ない簡単な検査で診断します。痛みを伴うことはほとんどないので、保護者の方もご安心ください。主に、医師が直接確認する「診察」と、機械を使った「検査」を組み合わせて行います。
1.医師による診察(視診・触診)
まずは、ふくらみの状態を直接見たり、手でやさしく触ったりして確認します。精索水腫の場合、表面がなめらかで、水風船のような弾力のあるふくらみに触れるのが特徴です。お子さんが怖がらないように、丁寧に行います。
2.光を使った簡単な検査(透光性試験)
診察室を少し暗くして、ふくらみにペンライトのような光を当てます。これは「透光性試験(とうこうせいしけん)」と呼ばれる、とても簡単な検査です。
- 光が透ける場合
ふくろの中身が液体(お腹の水)だけなので、光が赤く透けて見えます。この場合、精索水腫の可能性が非常に高いと判断できます。 - 光が透けない場合
中身が腸(鼠径ヘルニア)や腫瘍など、液体以外のものの可能性があります。
3.超音波(エコー)検査
お腹の赤ちゃんを見るときと同じ、体に優しい検査です。皮膚にゼリーを塗り、その上から小さな機械を当てて、ふくろの中を画面に映し出して詳しく観察します。この検査で、次のような大切なことがわかります。
- たまっている水の正確な量
- 精巣(たまご)の大きさや形に異常がないか
- 鼠径ヘルニアや精巣腫瘍など、他の病気が隠れていないか
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検査方法 |
どんなことをするの? |
何がわかるの? |
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透光性試験 |
ふくらみに光を当てる |
中身が水かどうか(光が透けるか) |
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超音波検査 |
ゼリーを塗って機械を当てる |
水の量、精巣の状態、他の病気の有無 |
これらの検査によって、精索水腫かどうかを正確に診断します。特に超音波検査は、他の病気を見逃さないために非常に重要な検査です。気になるふくらみがあれば、まずは一度ご相談ください。
精索水腫の治療
精索水腫の治し方は、お子さんの年齢や症状によって変わります。 急いで治療が必要になることは少ないので、まずは安心してください。 お医者さんとよく相談しながら、一番良い方法を選んでいきましょう。
治療には、主に次の4つの方法があります。
- 様子を見る(経過観察)
- 針をさして水を抜く(穿刺吸引)
- 薬で袋をくっつける(硬化療法)
- 袋を取りのぞく手術(手術療法)
様子を見る(経過観察)
1歳くらいまでの赤ちゃんの場合は、これが治療の基本になります。 体の成長とともに、お腹とつながる水の通り道が自然に閉じるからです。 そのため、手術などを急がずに、定期的にふくらみの状態を確認します。
針をさして水を抜く(穿刺吸引)
ふくらんだ部分に細い針をさして、たまっているお水を抜く方法です。 体への負担は少ないという良い点がありますが、水のたまる袋は残ります。 そのため、数か月すると、またお水がたまってしまうことが多いです。
薬で袋をくっつける(硬化療法)
まず針でお水を全部抜いた後、袋の中に特別なお薬を入れます。 このお薬で袋の内側をくっつけ、お水がたまらないようにします。 手術をしたくない場合に選ばれることがあります。
ある研究では、この方法で約79%の方の症状が改善したと報告されています。 お薬が体に吸収される心配も少なく、安全に行える治療とされています。
袋を取りのぞく手術(手術療法)
お水がたまる原因になっている袋そのものを、手術で取りのぞきます。 原因を根本からなくすため、再び水がたまることはほとんどありません。 最も確実な治療法と言えるでしょう。
手術の方法も、より安全になるように進歩しています。 例えば、手術後に傷口に管を入れないほうが、腫れなどのトラブルが少ない、 という研究報告もあります。
どの治療法を選ぶかは、お子さんの状態を総合的に見て判断します。 気になることがあれば、何でもお医者さんに相談してくださいね。










