肝がん

健康診断で肝臓の数値を指摘されたり、お酒を飲む習慣があったりしても、「自覚症状がないから大丈夫」と思っていませんか?肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、異常があってもなかなかSOSを出しません。気づかないうちに、深刻な病気が進行している可能性もゼロではないのです。

肝がんの原因はウイルスだけではありません。肥満や糖尿病など、あなたのすぐそばにある生活習慣も大きなリスクとなります。さらに近年の研究では、約12,000人の大規模調査から、治療効果や生存期間を左右する意外な要因として「筋肉の量」が重要であることがわかってきました。

この記事では、肝がんの正しい知識と、自分や家族の健康を守るために今すぐできることを、最新の知見を交えて解説します。手遅れになる前に、あなたの肝臓と向き合ってみませんか。

肝がんの概要

肝臓は栄養をためたり、毒を分解したりする大切な場所です。 ここにできる、わるいできもの(がん)を「肝がん」と呼びます。

肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、病気になっても気づきにくいです。 そのため、健康診断などで偶然見つかることが少なくありません。 肝がんの多くは、長い間続いている肝臓の病気が原因となります。

肝がんの主な原因

ウイルス性肝炎<br> B型やC型肝炎ウイルスが、 ずっと体の中にいることが原因です。

アルコール性肝障害<br> 長期間、お酒を飲みすぎることが原因です。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) お酒を飲まないのに、 肥満や糖尿病が原因で肝臓に脂肪がたまります。

最近の遺伝子を使った特別な研究では、興味深いことがわかっています。 健康について学ぶ機会が多い人ほど、肝がんの原因になる脂肪肝や、 慢性肝炎になりにくいという結果がでました。

これは、健康知識があると肥満や血糖値、コレステロールなどを、 自分で管理しようと意識しやすくなるためと考えられています。 肝臓の健康は、日々の生活習慣と深く関わっているのです。

肝がんの種類

「肝がん」と一言でいっても、でき方によって大きく2種類に分けられます。 どこからがんが発生したかで、治療法も変わるため大切な分類です。

  • 原発性肝がん
  • 肝臓の細胞そのものが、がん細胞に変わってしまうタイプです。
  • 日本で「肝がん」という場合、ほとんどがこの原発性肝がんを指します。
  • そのうち9割以上は、肝臓の主な働きを担う「肝細胞」ががんになる、「肝細胞がん」です。
  • 転移性肝がん
  • 胃や大腸など、ほかの臓器にできたがんが肝臓へ移動してきたものです。
  • この場合、もとになったがんの性質を持つため、そのがんに合わせた治療を行います。

がんの種類を問わず、治療の効果には患者さん自身の体の状態が影響します。 特に、治療を乗り越えるための体力、つまり筋肉の量が重要です。

近年の研究では、筋肉が減ってしまう状態(サルコペニア)が、 がんの治療経過に関わることがわかってきました。

体の状態

わかりやすい説明

サルコペニア

年齢や病気で筋肉の量が減ってしまう状態

サルコペニア肥満

筋肉は少ないのに、脂肪はやたらと多い状態

約12,000人の肝がん患者さんのデータを分析した大規模な研究があります。 この研究では、サルコペニアやサルコペニア肥満の状態だと、 そうでない場合に比べて生存期間が短くなったり、 治療後にがんが再発しやすくなったりすることが示されました。

がんの治療と同時に、筋肉を保つための栄養管理や、 無理のない範囲での運動も、とても大切になるのです。

肝がんの原因

肝がんができる一番の原因は、肝臓が長い間傷つけられることです。 この状態が続くと「慢性肝炎」や「肝硬変」という病気になります。 これが、がんが発生しやすい土台を作ってしまうのです。

肝臓を傷つける主な原因には、以下のものがあります。

  • 肝炎ウイルスの感染 B型やC型肝炎ウイルスが、ずっと体の中にいる状態です。 特にB型肝炎の人が、他のがん治療で免疫を抑える薬を使うと、 ウイルスが再び活発になる(再活性化)ことがあるため注意が必要です。 台湾の研究では、もともとのウイルス量が多い人ほど、 再活性化の危険性が高まると報告されています。
  • お酒の飲みすぎ 長い間、お酒をたくさん飲み続けると肝臓に大きな負担がかかります。 これがアルコール性肝炎や肝硬変を引き起こし、 肝がんのリスクを高めることになります。
  • 生活習慣の乱れ 肥満や糖尿病が原因で、肝臓に脂肪がたまることがあります。 これを「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼びます。 この状態も肝硬変や肝がんへと進む可能性があります。

これらの原因は一つだけでなく、複数重なることで、より危険性が高まります。 日々の生活習慣を見直し、定期的に検査を受けることが大切です。

肝がんの症状

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、とてもがまん強いのが特徴です。 病気ができても、かなり進むまでSOSのサインを出してくれません。 そのため、症状がないまま健康診断などで見つかることも多いのです。

しかし、がんが進行してくると、体は様々なサインを出し始めます。 これらのサインは、がん自体や、もともとある肝臓の病気が原因です。

【肝がんの進行でみられる主なサイン】

  • 全身にあらわれるサイン
  • なんとなく体がだるい(倦怠感けんたいかん) 肝臓が栄養を作ったり、毒を分解したりする力が弱まるためです。
  • 食欲がない、理由なく体重が減る 消化を助ける働きも落ちてしまい、栄養をうまく吸収できません。
  • お腹にあらわれるサイン
  • お腹がパンパンに張る 「腹水(ふくすい)」というお水が、お腹の中に溜まることが原因です。
  • お腹の右上あたりに、硬いしこりが触れる、または痛みがある がんが大きくなり、周りの臓器を圧迫するために起こります。
  • 見た目にあらわれるサイン(黄疸おうだん)
  • 皮膚や白目の部分が黄色くなる 肝臓が処理しきれなくなった「ビリルビン」という黄色い物質が、 血液中に増えてしまうために起こります。
  • 尿の色が濃い茶色になる
  • 便の色が白っぽくなる

特に注意してほしいサインが、筋肉の量が減ってしまうことです。 これは「サルコペニア」と呼ばれ、ただ痩せるのとは意味が違います。 治療の効果にも関わる、見逃してはいけない重要なサインなのです。

これらの症状に気づいたときは、自己判断せずにご相談ください。 早めに原因を突き止め、適切な対応をとることがとても大切です。

肝がんの検査・診断

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、がんができてもすぐには気づきません。 そのため、健康診断などで肝臓の異常を指摘され、検査を受ける方も多いです。

肝がんが疑われる場合、がんの有無や進行度を正確に知る必要があります。 そのため、いくつかの検査を組み合わせて、総合的に判断していきます。

  • 血液検査
  • 肝臓の働き具合や、がん細胞が作り出す特別な物質を調べます。
  • この物質を「腫瘍マーカー」と呼び、AFPやPIVKA-IIなどがあります。
  • 最近の研究では、性ホルモンも肝がんのリスクに関わることがわかっています。
  • 特にテストステロンやSHBGという物質の値が高いと、危険性が高まります。
  • この傾向は、男性やB型肝炎ウイルスに感染している方で強くみられます。
  • 画像検査
  • 超音波(エコー)検査
  • 体の外から超音波をあて、肝臓の内部を画像で確認します。
  • 体への負担が少なく、手軽に行えるため最初の検査としてよく用いられます。
  • CT検査・MRI検査
  • 体を輪切りのように撮影し、がんの正確な位置や大きさを調べます。
  • がんの数や、周りの血管への広がりなども、より詳しく確認できます。
  • 生検(せいけん)
  • 画像検査だけでは診断が難しい場合に、最終確認として行われる検査です。
  • お腹から肝臓に細い針を刺し、組織の一部を直接取り出します。
  • 採取した組織を顕微鏡で調べて、がん細胞がいるかどうかを確定させます。

これらの検査結果を総合的にみて、最終的な診断を下します。 症状がないうちから定期的に検査を受けることが、早期発見にはとても大切です。

肝がんの治療

肝がんの治療法は、一つだけではありません。 がんの大きさや数、体のどのくらいに広がっているかに加えて、 肝臓自体の元気さ(肝予備能)も、とても大切になります。 そして、患者さん自身の体力も、治療を選ぶ上で重要なカギです。

主な治療の選択肢

肝がんの治療は、がんを直接やっつける方法が中心です。 がんの状態や肝臓の元気さに合わせて、最適な方法を選びます。

治療法

わかりやすい説明

手術(肝切除術かんせつじょじゅつ)

がんのある部分の肝臓を、外科的に切り取る方法です。

穿刺局所療法(せんしきょくしょりょうほう)

体の外からがんに針を刺し、ラジオ波の熱でがんを焼きます。

肝動脈化学塞栓療法(TACE)

がんの栄養血管に薬を入れ、兵糧攻めにする治療です。

薬物療法

飲み薬や点滴で、がんの成長を抑えたり、免疫の力を高めます。

肝移植

病気の肝臓を、健康な肝臓とまるごと取り替える治療法です。

治療を乗り越えるための「体力」

どの治療法を選ぶにしても、治療の効果には体が大きく関わります。 特に、治療という大きな戦いを乗り越えるための体力が重要です。 この体力のもとになるのが「筋肉」です。

近年の研究では、筋肉が減ってしまう状態(サルコペニア)だと、 治療後の経過に影響が出ることがわかってきました。 約12,000人もの肝がん患者さんのデータを分析した大きな研究では、 サルコペニアの人はそうでない人に比べて、 残念ながら生存期間が短くなる傾向が示されました。 治療と同時に栄養をしっかり摂り、筋肉を保つことが大切です。

背景にある病気の管理も重要

肝がんの原因がB型肝炎ウイルスの場合は、特に注意が必要です。 薬物療法を行うと、眠っていたウイルスが再び暴れだすことがあります。 これを「再活性化」と呼び、肝臓に大きなダメージを与えかねません。

台湾で行われた研究では、これを防ぐために予防の薬を飲むことで、 安全に治療を進められることがわかっています。 もともとのウイルス量が多い人ほど、再活性化のリスクが高まるため、 治療開始前からしっかり対策をとることが非常に大切なのです。 ご自身の状態に合った治療を選ぶため、医師とよく相談しましょう。