なんとなく体がだるい、喉が異常に渇く。その症状、単なる水分不足だと軽視していませんか?実はそれは、血液中の塩分濃度が異常に高まる「高ナトリウム血症」という危険な状態のサインかもしれません。血清ナトリウム濃度が正常値の範囲を超え、145mEq/L以上になると診断されるこの病気は、特にご自身で不調を訴えにくい赤ちゃんやご高齢の方で注意が必要です。
軽症では倦怠感程度ですが、進行すると意識がもうろうとし、脳が縮んで脳出血を起こす危険性も。ある研究では、特定の患者さんで死亡率を高めることも報告されています。この記事では、高ナトリウム血症の3つの種類と原因、見逃してはいけない症状、そして正しい治療法までを詳しく解説します。大切なご自身やご家族を守るために、ぜひご一読ください。
高ナトリウム血症の概要
高ナトリウム血症とは、血液中の塩分(ナトリウム)の濃度が、 異常に高くなった状態を指します。
私たちの体は、水分と塩分の絶妙なバランスで健康を保っています。 しかし、このバランスが崩れることで高ナトリウム血症が起こります。
血液検査で測る「血清ナトリウム濃度」が、 正常とされる範囲(約135~145mEq/L)を超えて、 145mEq/L以上になった状態が該当します。
これは、体内の水分が不足しているか、 あるいは塩分を過剰に摂取したときに起こります。
特に、ご自身で不調を訴えることが難しい、 生まれたばかりの赤ちゃんやご高齢の方は注意が必要です。
- 赤ちゃんの場合 新生児高ナトリウム血症性脱水(NHD)という、 脱水を伴う重篤な状態になることがあります。 近年の研究では、お母さん側の複数の要因が、 このリスクに関係することがわかってきました。 – お母さんの授乳に関する知識やスキル – 乳首の問題や、母乳が出にくいといったトラブル – 出産時の合併症など
- ご高齢の方の場合 年齢を重ねると、のどの渇きを感じにくくなります。 また、腎臓が尿を濃縮し、 体内の水分を保持する力も低下しがちです。 そのため、ご自身が気づかないうちに水分不足に陥りやすいのです。
軽症ではのどの渇きやだるさを感じる程度ですが、 重症化すると意識がもうろうとすることもあるため、 早期に原因を特定し、適切に対処することが大切です。
高ナトリウム血症の種類
高ナトリウム血症は、体の水分と塩分のバランスが、 どのように崩れたかによって3つの種類に分けられます。
どの種類にあたるかを見極めることで、 原因や治療法を正しく判断することができます。
1. 水分も塩分も減るタイプ(細胞外液量減少型) 体から水分と塩分の両方が失われますが、 特に水分の失われるスピードが速い状態です。 下痢や嘔吐、大量の汗などが原因で起こります。
特に赤ちゃんがこのタイプになることがあり注意が必要です。 母乳を飲む量が足りずに脱水状態になるのが主な原因です。 近年の研究では、お母さん側の要因も関係するとわかっています。 – 授乳に関する知識やスキル 母乳をうまく飲ませる技術などが関係します。 – 乳房のトラブル 乳首の問題や母乳の出にくさも一因です。 – 出産時の合併症 出産時のトラブルがリスクになることもあります。
2. 水分だけが減るタイプ(細胞外液量正常型) 体の中にある塩分の総量は変わらないまま、 水分だけが不足してしまっている状態を指します。 水分を十分に飲めていない場合や、 発熱、尿がたくさん出る病気などが原因になります。
3. 塩分が増えすぎるタイプ(細胞外液量増加型) 水分も増えますが、それ以上に塩分を体に取り込みすぎた状態です。 これは、3つのタイプの中では比較的まれなケースです。 塩分の濃い点滴や、海水をおぼれて飲んでしまうことなどが原因です。
これら3つのタイプを、下の表にまとめました。
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種類
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体の水分量
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体の塩分量
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水分も塩分も減るタイプ
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大きく減る
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少し減る
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水分だけが減るタイプ
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減る
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変わらない
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塩分が増えすぎるタイプ
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増える
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大きく増える
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ご自身の状態がどのタイプかを正しく診断し、 適切な治療を受けることが非常に重要になります。
高ナトリウム血症の原因
高ナトリウム血症は、体の「水分」と「塩分」のバランスが、 崩れることで起こります。
原因は、大きく分けて2つのパターンがあります。 それぞれの原因について、詳しく見ていきましょう。
1. 水分が足りなくなる場合
体内の塩分の量はそのままで、水分だけが減ってしまう状態です。 これが、高ナトリウム血症の最も一般的な原因になります。
- 体から水分が失われすぎる 下痢や嘔吐、発熱による大量の発汗などが原因です。 尿がたくさん出すぎてしまう「尿崩症」という病気も、 水分が失われる原因の一つになります。
- 水分を十分に補給できない ご高齢で喉の渇きを感じにくくなっている場合や、 意識がはっきりせず、自分で水分をとれない状態です。 特に赤ちゃんの場合、注意が必要です。
近年の研究では、お母さんの授乳スキルや乳首の問題、 母乳が出にくいといったトラブルが、 赤ちゃんの脱水リスクを高めることがわかっています。
2. 塩分(ナトリウム)をとりすぎる場合
水分の量以上に、体の中の塩分量が過剰になる状態です。 これは、比較的まれなケースといえます。
- 医療的な処置 治療のために、塩分の濃い点滴を行った場合に起こります。
- 薬の影響 お薬の副作用として起こることもあります。 例えば、重い病気の治療で使われるコルチコステロイドは、 高ナトリウム血症のリスクを高めることが報告されています。
高ナトリウム血症の症状
高ナトリウム血症の症状は、体が水分不足に陥っているサインです。 症状の現れ方は、塩分濃度がどれだけ速く高くなったかによります。 最初は軽い症状から始まるため、見逃さないように注意が必要です。
ご自身やご家族に当てはまる症状がないか、確認してみましょう。
初期にあらわれやすい症状
– 異常にのどが渇く – なんとなく体がだるい(倦怠感) – やる気が出ない、ぼーっとする(無気力)
これらの症状は、ご自身では気づきにくいこともあります。 しかし、この状態が続くと、より重い症状につながる恐れがあります。
進行した場合にあらわれる重い症状
– 意識がぼんやりして、話が混乱する – 体がぐったりして力が入らない(脱力感) – 筋肉がピクピクとけいれんする – 呼びかけに反応しなくなるなどの意識障害
これらの重い症状は、血液の塩分濃度が高くなりすぎた結果、 脳の細胞から水分が奪われて、脳が縮んでしまうことで起こります。 脳が縮むと血管が傷つき、脳出血などを起こす危険もあります。
特に、事故で頭を強く打った(外傷性脳損傷)患者さんの場合、 高ナトリウム血症は、その後の経過に大きく影響します。 ある研究では、高ナトリウム血症を発症した患者さんは、 死亡率が高まったり、入院期間が長引いたりすると報告されています。
ご高齢の方や、ご自身で水分をとることが難しい方は、 周りの方が「いつもと様子が違う」と感じたら、 すぐに医療機関へ相談することが非常に大切です。
高ナトリウム血症の検査・診断
高ナトリウム血症の診断は、主に血液検査で行います。 血液中の塩分(ナトリウム)の濃度を測り、 その値が基準の「145mEq/L」を超えると診断されます。
診断が確定したら、次に「なぜ塩分濃度が高くなったのか」 という原因を突き止めるための、詳しい検査に進みます。
【主な検査の流れ】
- 1. 問診と診察 まずは、患者さんの状態を詳しくお聞きします。 下痢や嘔吐がなかったか、水分はとれていたか、 普段飲んでいるお薬などを確認します。
特に、重い感染症などの治療で使われるステロイド薬は、 副作用で高ナトリウム血症になることが研究でわかっています。 お薬手帳は、原因を探る大切な手がかりになります。
- 2. 血液検査 血液中の塩分の濃度(血清ナトリウム濃度)を正確に測り、 高ナトリウム血症の診断を確定させます。
- 3. 尿検査 おしっこの量や濃さ、含まれる塩分の量を調べます。 この結果から、腎臓の働きに問題があるのか、 あるいは単に体の水分が足りないのか、原因を探ります。
高ナトリウム血症は、他の病気やケガが引き金になることもあります。 例えば、事故で頭を強く打った(外傷性脳損傷)患者さんの場合、 高ナトリウム血症が起こりやすく、注意深い管理が必要です。
ある研究では、高ナトリウム血症になると入院期間が長引くなど、 その後の経過に影響することが報告されています。 そのため、いくつかの検査を組み合わせて原因を正確に特定し、 一人ひとりに合った治療につなげることが非常に重要です。
高ナトリウム血症の治療
高ナトリウム血症の治療は、崩れてしまった体の「水分」と「塩分」のバランスを、 正常な状態に丁寧に戻すことを目指します。 治療の基本は、足りなくなった水分を安全に補給することです。
水分補給が治療の基本
治療で最も大切なことは、失われた水分を体に補うことです。 どのように水分を補うかは、患者さんの状態によって決まります。
- 口から水分がとれる場合 意識がはっきりしていて、ご自身で飲める場合は、 水やお茶などを飲んで水分を補給します。
- 口から水分がとれない場合 意識がもうろうとしている時などは、点滴で水分を補います。 主に「5%ブドウ糖液」という液体を使います。 これは、体の中に入ると水と同じ働きをするためです。
ゆっくり慎重に治療する理由
治療では、血液の塩分濃度を急激に下げてはいけません。 長い時間をかけて塩分濃度が高くなった場合、 脳の細胞はその状態に慣れようと変化しています。
そこで急に濃度を下げると、脳がむくんでしまう「脳浮腫」という、 命に関わる危険な状態を引きおこす可能性があるのです。 そのため、1日に下げる濃度には目安があり、慎重に治療を進めます。
原因となっている病気の治療も重要
水分補給と同時に、高ナトリウム血症を引きおこした、 根本的な原因への治療も非常に大切です。
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原因の例
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治療で注意すること
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重いケガ
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頭を強く打った(外傷性脳損傷)場合、高ナトリウム血症は、
その後の経過に影響することが研究でわかっています。
そのため、特に厳密な水分と塩分の管理が行われます。
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お薬の影響
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重い病気の治療で使うステロイド薬などが原因で、
高ナトリウム血症のリスクが上がることがあります。
その場合は、お薬の見直しも慎重に検討されます。
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他の病気
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体が酸性に傾くアシドーシスという病気の治療では、
高ナトリウム血症を起こしにくいお薬が選ばれることがあります。
また、精神疾患の治療(電気けいれん療法)などでも、
より慎重な水分管理が求められます。
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