「お腹の赤ちゃんが腎臓が腫れていると指摘された」「原因不明のわき腹の痛みが続く」こんな経験はありませんか?もしかすると、それは腎臓から尿がうまく流れなくなる「水腎症」のサインかもしれません。
水腎症は、お腹の中の赤ちゃんから大人まで、誰にでも起こりうる病気です。特に赤ちゃんの場合は自覚症状がないことがほとんどですが、ある報告では予防薬を飲んでいても15%以上が尿路感染症を経験するとされており、決して油断はできません。
この記事では、水腎症とはどのような病気なのか、その原因や症状、最新の治療法までを詳しく解説します。ご自身やお子さんの状態を正しく理解し、不安を解消するために、ぜひお役立てください。
水腎症の概要
水腎症とは、腎臓で作られたおしっこがうまく流れず、腎臓の中にたまってしまう状態を指します。
通常、おしっこは腎臓で作られた後、以下の順で流れます。
- 腎盂(じんう) おしっこを集める場所
- 尿管(にょうかん) 腎臓と膀胱をつなぐ管
- 膀胱(ぼうこう) おしっこをためる袋
このおしっこの通り道のどこかが狭くなったり、ふさがったりすると流れがせき止められてしまいます。その結果、行き場を失ったおしっこが腎盂にたまり、腎臓が内側からパンパンにふくらんでしまうのです。
この病気はお腹の中にいる赤ちゃんから大人まで、どの年齢でも起こる可能性があります。特に、生まれる前の超音波検査で腎臓のふくらみを指摘され、水腎症と診断される赤ちゃんは少なくありません。
生まれる前に見つかった水腎症は、症状が出てから見つかるものとは少し性質が違うと考えられています。研究によると、出生前に水腎症と診断された赤ちゃんは男の子に多い傾向があると報告されています。
多くの場合、赤ちゃん自身に症状はないため、尿路感染症を防ぐ抗菌薬を使いながら、注意深く経過を見ていくこともあります。状態は一人ひとり異なるため、まずは専門の医師に相談することが大切です。
水腎症の種類
水腎症は、いつ、どこに、どのような原因で起こるかによって、いくつかの種類に分けられます。
この分類は、これからどのような治療が必要になるかを考えるうえで、とても大切な情報になります。
主に、水腎症は「先天性」と「後天性」の2つに大きく分けられます。
- 先天性水腎症(せんてんせいすいじんしょう) 生まれつきおしっこの通り道に狭い部分があったり、形に問題があったりして起こる水腎症です。
お子さんの水腎症で最も多い原因の一つが、「先天性腎盂尿管移行部狭窄症(せんてんせいじんうにょうかんいこうぶきょうさくしょう)」です。
これは腎臓とおしっこを膀胱へ運ぶ尿管のつなぎ目が、生まれつき狭くなっている状態を指します。
治療方針は、尿路の広がり具合を点数化する評価方法などを用いて慎重に決めていきます。
多くの場合、すぐに治療はせず、定期的な検査で注意深く経過を見ていきます。
しかし、腎臓の働きが悪くなったり、感染を繰り返したりする場合には手術を検討することもあります。
- 後天性水腎症(こうてんせいすいじんしょう) 生まれた後に、何らかの病気やけがが原因で尿路がふさがれたり、狭くなったりして起こる水腎症です。
また、症状が起こる場所によっても、以下のように分類されます。
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種類
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特徴
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片側性水腎症
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左右どちらか片方の腎臓だけに起こるタイプです。
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両側性水腎症
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左右両方の腎臓に起こるタイプです。
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水腎症の原因
水腎症は、おしっこの通り道が狭くなったり、ふさがれたりして起こります。原因は、生まれつきのもの(先天性)と、成長の過程で起こるもの(後天性)に分けられます。
お子さんの水腎症で最も多い原因の一つが、「尿管腎盂結節閉塞(にょうかんじんうけっせつへいそく)」です。これは、腎臓とおしっこを膀胱へ運ぶ管のつなぎ目が、生まれつき狭くなっている状態を指します。
ただし、多くの場合、すぐに手術が必要になるわけではありません。定期的な検査で注意深く経過を見守ることで対応できるケースがほとんどです。
一方、大人の場合は、以下のようなさまざまな病気が原因となります。
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主な原因
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具体的にどうなるの?
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尿路結石
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尿の成分が固まった石が、おしっこの通り道に詰まって流れをせき止めます。
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腫瘍(がんなど)
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腎臓や膀胱、その周りの臓器にできた腫瘍が尿管を圧迫し、道を狭くします。
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前立腺肥大症
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男性特有の病気で、大きくなった前立腺が尿道を圧迫し、おしっこの出が悪くなります。
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炎症や手術の影響
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感染症で尿管が腫れたり、手術の影響で尿管が狭くなったりすることがあります。
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また、腎臓やまわりの病気に対する治療の影響で、一時的に尿管がむくむこともあります。これにより軽度の水腎症が起こる場合がありますが、多くは時間の経過とともに自然に改善していきます。
水腎症の症状
水腎症は、はっきりとした症状がなかなか現れない病気です。 特にお母さんのお腹の中にいる時の超音波検査で発見された場合、赤ちゃん自身に症状がないことがほとんどです。
しかし、症状がないからといって、安心はできません。 近年の研究によると、生まれる前に水腎症と診断された赤ちゃんは、症状がなくても尿路感染症を起こすことがあると報告されています。 ある報告では、予防のためにお薬を飲んでいても、15%以上の赤ちゃんが尿路感染症を経験したとされています。 これは、おしっこがたまることで、細菌が繁殖しやすくなるためです。
水腎症の程度や年齢によっては、次のようなサインが見られます。 お子さんやご自身の様子と比べてみましょう。
【水腎症のサイン チェックリスト】
- 痛み わき腹や背中に、鈍い痛みや急な激しい痛みを感じます。 たまったおしっこで腎臓が風船のようにふくらみ、 腎臓を包む膜が引っ張られるために起こります。
- お腹の症状 吐き気やおう吐、お腹の張りを感じることがあります。 腎臓の腫れが大きくなると、 お腹にしこりのようなものを触れる場合もあります。
- 尿の変化 尿に血が混じり、ピンク色や赤色に見えることがあります(血尿)。 これは、圧迫されて傷ついた腎臓から出血するためです。
- 全身の症状 熱が出ることがあります。 これは尿路感染症を合併しているサインかもしれません。 特に小さなお子さんでは「食欲がない」 「なんとなく元気がない」といった変化も重要なサインです。
生まれる前に腎臓の腫れを指摘されたお子さんは、症状がなくても慎重な経過観察が必要です。 何か気になる変化があれば、自己判断せずに早めに医師へ相談しましょう。
水腎症の検査・診断
水腎症が疑われる場合、まずお腹にゼリーをぬり、超音波(エコー)をあてる検査を行います。
この検査は痛みもなく、体に負担が少ないため、診断の第一歩としてとても大切です。 お腹の中の赤ちゃんの腎臓の腫れを見つけるのも、この超音波検査です。
特に小さなお子さんの場合、この検査で腎臓の「厚み」を詳しく測ることが重要になります。 腎臓の厚みが十分に保たれていれば、腎臓の働きも良好である可能性が高いからです。
最近の研究では、超音波で測った腎臓の厚みが一定の基準を満たしていれば、腎臓の機能が十分に保たれていることが多いと報告されています。
これにより、放射線を使ったり、お子さんにストレスを与えたりする可能性のある詳しい検査を、本当に必要な場合にだけ行う判断の助けになります。
超音波検査でさらに詳しい情報が必要だと判断された場合は、以下のような検査を追加で行います。
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検査の種類
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どのようなことを調べるか
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CT検査・MRI検査
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体の断面を撮影して、尿路が狭くなっている原因(結石や腫瘍など)を詳しく調べます。
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尿検査・血液検査
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尿路に細菌がいないか(感染)、腎臓の働きが悪くなっていないかを確認します。
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核医学検査
(腎シンチグラフィ)
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左右の腎臓が、それぞれどのくらいの割合で働いているかを数字で詳しく評価します。
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これらの検査結果を総合的にみて、水腎症の程度や原因を正確に診断し、今後の治療方針を丁寧に決めていきます。
水腎症の治療
水腎症の治療で一番大切な目標は、腎臓の働きをしっかりと守ることです。 おしっこの流れを邪魔している原因を取り除き、流れをスムーズにします。 治療の方法は、水腎症の程度や原因、年齢によって一人ひとり違います。
症状がなく、腎臓の働きが十分に保たれている場合は、すぐに治療しません。 定期的に検査をしながら、注意深く様子を見守る「経過観察」を行います。 特に小さなお子さんの場合、体の成長とともに自然に良くなることも多いのです。
ただし、ただ待つのではなく、超音波検査で腎臓の状態をしっかり確認します。 最近の研究では、この超音波で腎臓の厚みを測ることが重要だとわかっています。 例えば、腎臓の厚みが5mm以上ある場合、腎臓の働きが良いサインとされています。 これにより、体に負担のかかる詳しい検査が必要かどうかの判断に役立ちます。
一方で、腎臓の働きが悪くなったり、痛みや感染を繰り返したりする場合には、積極的な治療が必要です。
- 薬物療法 尿路感染症を防ぐために、抗菌薬というお薬を使うことがあります。
- 処置・手術 原因を取り除き、おしっこの流れを元に戻すための治療です。
- 尿管ステント留置術 尿管の狭い部分に「ステント」という細い管を入れ、おしっこの通り道を確保します。
- 腎盂形成術 腎臓と尿管のつなぎ目が狭い場合に、その部分を広くつなぎ直す手術です。
また、新しい治療法の研究も進んでいます。 動物を対象とした研究ですが、「ヒストトリプシー」という特殊な超音波を使う治療法があります。 この治療による尿管への影響は一時的であり、安全な治療法となる可能性が示されています。 将来は、腎臓の中心部にできた腫瘍の治療などに応用できるかもしれません。