頭頸部がん

「頭頸部(とうけいぶ)がん」と聞いて、あまり聞き慣れないと感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。しかし、このがんは、私たちが日々「当たり前」に行っている食事や会話、呼吸といった、生きていく上で最も大切な機能が集まる顔から首全体に発生する病気です。

日本では毎年多くの方が頭頸部がんと診断されており、もし罹患すれば、食べ物が飲み込みにくい、声が出にくい、首にしこりがあるなど、生活の質に大きく影響する症状が現れることもあります。

私たちはその不安に寄り添いたいと考えています。早期発見・早期治療が非常に重要なこの病気について、その概要から具体的な症状、原因までをこの記事で詳しく解説します。ご自身の健康を守るための一歩として、ぜひ最後までお読みください。

頭頸部がんの概要

皆さんは「頭頸部(とうけいぶ)がん」という病気をご存じでしょうか。もしかしたら、あまり聞き慣れない言葉かもしれませんね。頭頸部がんは、脳や眼球(がんきゅう)を除いた、顔から首全体にかけての広いエリアに発生するがんの総称です。私たち医師は、皆さんが普段通りに生活を送る上で、これらの部位がどれほど大切かを知っています。

このエリアには、私たちが生きていく上で欠かせない、とても重要な器官がたくさんあります。例えば、

  • 鼻腔(びくう)や副鼻腔(ふくびくう)
  • 鼻の奥にある空気の通り道や、その周りの空間です。
  • 匂いをかいだり、呼吸をしたりする役割があります。
  • 口腔(こうくう)
  • 舌(した)や歯ぐき、上あごなど、口の中全体を指します。
  • 食べ物を味わい、飲み込み、おしゃべりする大切な場所です。
  • 咽頭(いんとう)
  • 食べ物や空気が通る「のど」の奥の部分です。
  • 食べ物を胃に送り、空気を肺に送る働きをしています。
  • 喉頭(こうとう)
  • 声を出す「声帯(せいたい)」がある、大切な器官です。
  • 私たちが話したり歌ったりするために使います。
  • だ液腺(だえきせん)
  • 食べ物の消化を助けるだ液(つば)を作る場所です。
  • 口の中をきれいに保つ役割もあります。

もし頭頸部がんができてしまうと、これらの大切な器官の働きが妨げられてしまいます。そうすると、「食べることがつらくなる」「声が出にくくなる」「呼吸がしづらくなる」といった、毎日の生活に大きく影響する症状が現れることがあります。そのため、不安に感じられる方も多いことでしょう。

日本では、毎年多くの方が頭頸部がんと診断されています。どの年齢の方にも発症する可能性がありますが、早期に発見し、適切な治療を始めることが非常に大切です。気になる症状があれば、決して一人で抱え込まず、早めに専門の医療機関へご相談ください。私たち医師は、皆さんの健康をサポートするため、いつでもお手伝いしたいと考えています。

頭頸部がんの種類

頭頸部がんは、お顔から鎖骨の上あたりまでの広い範囲にできる、さまざまながんの総称です。私たち医師は、この場所には食べたり、話したり、呼吸したりといった、皆さんの生活に欠かせない大切な器官がたくさんあることを知っています。

そのため、がんができた場所によって、その種類や、体に与える影響も大きく変わってきます。ここでは、がんがどの部位に発生するかによって、どのように呼び名が変わるのかを見ていきましょう。

  • 口腔(こうくう)がん
  • 口の中にできるがんのことです。
  • 舌(した)や歯ぐき、頬(ほお)の内側の粘膜(ねんまく)などに発生します。
  • 食べたり話したりする上で、とても大切な場所です。
  • 咽頭(いんとう)がん
  • のどの奥にある「咽頭」という部分にできるがんです。
  • 食べ物や空気が通る「のどの道」であり、場所によって呼び方が変わります。
  • 鼻の奥に近い場所を「上咽頭」、口の奥を「中咽頭」、食道に近い場所を「下咽頭」と呼びます。
  • 喉頭(こうとう)がん
  • 声を出す声帯(せいたい)がある「喉頭」という部分にできるがんです。
  • 私たちが声を出したり、歌ったりするのに不可欠な場所です。
  • 鼻腔(びくう)・副鼻腔(ふくびくう)がん
  • 鼻の穴の奥の空間や、その周りの骨の中にある「副鼻腔」にできるがんです。
  • 鼻で息をしたり、匂いを感じたりする役割があります。
  • 唾液腺(だえきせん)がん
  • だ液(つば)を作る腺(せん)にできるがんです。
  • 耳の下にある「耳下腺(じかせん)」によく見られます。
  • だ液は食べ物の消化を助け、口の中をきれいに保つ大切な働きをします。
  • 甲状腺(こうじょうせん)がん
  • のどぼとけの下あたりにある「甲状腺」という臓器にできるがんです。
  • 甲状腺は、体の成長や元気さを保つためのホルモンを作っています。

このように、頭頸部がんは、発生する場所によって、いろいろな種類があります。もし、体調の変化を感じたときに、ご自身のどこに異変があるのかを知ることは、適切な医療につながる大切な一歩となります。

頭頸部がんの原因

頭頸部がんがなぜ発生するのか、皆さんは気になりますよね。私たち医師も、がんの予防のために、どのような原因が関係しているかを日々研究しています。様々な要因が重なり合うことで、がんのリスクが高まると考えられています。

特に大きな原因として知られているのは、以下の2つです。

  • たばこ
  • たばこに含まれる有害な化学物質は、体の細胞の「設計図」ともいえる遺伝子を傷つけてしまいます。
  • この傷が積み重なることで、細胞ががん細胞に変化する危険性が高まります。
  • 毎日たばこを吸う方は、吸わない方に比べてがんになるリスクが大幅に上がることがわかっています。
  • お酒
  • お酒を飲むと、体の中で「アセトアルデヒド」という体に悪い物質が作られます。
  • この物質も、たばこと同じように細胞の遺伝子を傷つけ、がんの発生につながります。
  • 特にお酒を飲んだ時に顔が赤くなる方は、アセトアルデヒドを分解する力が弱い傾向があり、より注意が必要です。

たばことお酒は、それぞれが頭頸部がんの原因となりますが、両方を習慣的に楽しむ方は、その危険性がさらに高まります。まるで悪いものが掛け算されるように、がんになるリスクが何倍にもなってしまうので、私たちは特に注意してほしいと考えています。

最近では、「ヒトパピローマウイルス(HPV)」というウイルスへの感染も、頭頸部がんの中でも特に「中咽頭がん」の原因として注目されています。このウイルスは、女性の子宮頸がんの原因としても知られていますが、男性も感染することがあります。

その他にも、以下のような生活習慣や環境が、がんのリスクを高める可能性があります。

  • 熱すぎる食べ物や飲み物
  • 頻繁に熱いものを食べたり飲んだりすることで、口の中やのどがやけどのような状態になり、細胞に慢性的な刺激を与え続けます。
  • これが長期間続くと、がんのリスクを高めることがあります。
  • 栄養の偏った食生活
  • バランスの悪い食事は、体の抵抗力を弱め、細胞が傷つきやすくなる原因となります。
  • お口の中の悪い状態
  • 歯みがきを怠りがちで、お口の中が不衛生な状態が続くと、細菌感染や慢性的な炎症が起こり、がんの発生に関わることがあります。
  • 合わない入れ歯や、とがった虫歯が口の中を常に刺激している場合も、がんのリスクとなることがあります。

私たち医師は、皆さんがこれらの原因を知ることで、日々の生活の中で「できること」を見つけて、がんの予防に取り組んでほしいと願っています。健康的な生活習慣を心がけることが、何よりも大切なのです。

頭頸部がんの症状

私たち医師は、皆さんの「いつもと違う」という体のサインを、決して見逃さないでほしいと強く願っています。頭頸部がんの症状は、がんができた場所によって、本当にさまざまな現れ方をします。顔から首にかけてのこの大切なエリアには、食べたり、話したり、呼吸したりといった、毎日を元気に過ごすための機能がたくさん集まっているからです。ここにがんができてしまうと、それらの機能がうまく働かなくなり、日常生活に大きな影響が出ることがあります。

具体的な症状を、部位ごとに見ていきましょう。

  • 口の中の症状
  • 舌や歯ぐき、頬の内側の粘膜に
  • 硬いしこりや、なかなか治らないただれが見つかることがあります。
  • 食事の時に痛みを感じたり、食べ物が飲み込みにくくなったり、
  • うまく話せなくなったりすることもあります。
  • 普段の口内炎とは違い、「いつもと違う」と感じる変化に注意が必要です。
  • のどの症状
  • 声がかすれたり、声質が変わったりすることがあります。
  • 飲み込むときに、食べ物や飲み物がひっかかる感じがする、
  • のどに何か詰まっているような違和感が続く場合もあります。
  • 軽い風邪やのどの炎症と間違えやすいので、症状が長く続く場合は特に注意が必要です。
  • 鼻や顔の症状
  • 鼻血が繰り返し出やすくなったり、鼻がつまったりすることがあります。
  • 顔のあたりに痛みを感じたり、腫れが出たりする場合もあります。
  • 「いつもの鼻炎かな?」と思っても、症状が続くときはご相談ください。
  • 耳の症状
  • 耳鳴りが続いたり、聞こえにくくなったりすることがあります。
  • 耳の奥に原因不明の痛みを感じることもあります。
  • これは、がんが耳の近くにできているサインかもしれません。
  • 首の症状
  • 首にしこりや腫れが見つかることがあります。
  • これは、がんがリンパ節に転移して大きくなったサインかもしれません。
  • 自分で首を触ってみて、「いつもと違うな」と感じたら、早めに医療機関を受診してください。

これらの症状は、風邪や他の一般的な病気でも見られることがあります。しかし、もし上記のような症状が2週間以上長く続いたり、だんだん悪くなったりする場合は、決して一人で抱え込まずに、早めに耳鼻咽喉科など専門の医療機関を受診してください。早期に発見し、適切な治療を始めることが、病気を克服するために何よりも大切です。私たち医師は、皆さんの不安な気持ちに寄り添い、最善のサポートを提供したいと考えています。

頭頸部がんの検査・診断

皆さんが「あれ?いつもと違うな」と感じた体の変化は、私たち医師にとってとても大切なサインです。頭頸部がんは、早期に発見して治療を始めることで、良い結果につながることが多い病気です。そのためには、気になる症状があれば、ためらわずに私たち専門医に相談してください。

私たちは、皆さんの体を詳しく調べることで、体の奥に隠れたがんの存在を見つけ出します。

まずは詳しくお話を聞かせてください

病院に来て最初にすることは、「問診」です。

  • 問診
  • いつからどんな症状があるのか
  • 痛みはどのくらいか
  • 普段の生活で困っていることはないか
  • など、詳しくお聞きします。
  • 皆さんの話が、私たち医師にとって診断の手がかりになります。

その後、私たち医師が皆さんの体の状態を直接確認する「診察」を行います。

  • 視診
  • 口の中やのど、首のあたりを注意深く観察します。
  • 赤みや腫れ、ただれなどがないかを確認します。
  • 触診
  • 首の周りを優しく触って、しこりや腫れがないかを確かめます。
  • 痛みがないかなども確認します。
  • これらの診察で、がんの可能性がある場所を見つけ出します。

体の奥をさらに詳しく見る検査

診察でがんが疑われる場合や、より詳しく調べたい場合は、いくつか精密な検査を行います。

  • 内視鏡検査
  • 細いカメラを鼻や口から入れて、のどの奥や声帯の状態を直接観察します。
  • 小さながんも見つけることができる、とても大切な検査です。
  • 画像診断(CT検査・MRI検査)
  • 体の中を輪切りにしたような、詳しい写真が撮れる検査です。
  • がんの大きさや、どのくらい広がっているかを確認できます。
  • リンパ節など、周りの臓器への影響がないかもわかります。
  • PET検査
  • がん細胞は、活動が活発な特徴があります。
  • この活動を特殊な光で示してくれる検査です。
  • がんがどこにあるのかを、よりはっきりと教えてくれます。

診断の決め手となる生検

これらの検査でがんが強く疑われる場合に、最終的な診断のために行うのが「生検」です。

  • 生検
  • がんが疑われる部分の組織を、ごく少量だけ採取します。
  • この組織を顕微鏡で詳しく調べ、がん細胞がいるかどうかを確認します。
  • 生検によって、がんの種類や悪性度も特定できます。
  • この検査の結果で、がんであるかどうかの確定診断が下されます。

これらの検査を組み合わせて、皆さんの頭頸部がんに最適な治療方法を決定していきます。検査について不安なことがあれば、いつでも遠慮なく私たち医師や看護師にご相談ください。私たちは、皆さんの健康を全力でサポートいたします。

頭頸部がんの治療

頭頸部がんの治療は、皆さんの心の中に不安がよぎるかもしれませんね。私たち医師は、がんの種類や大きさ、どこまで広がっているか、そして皆さんの体の状態を詳しく見て、最適な治療計画を考えていきます。これは、患者さん一人ひとりに合わせた「オーダーメイド」の治療と言えるでしょう。

主な治療方法には、次の3つの柱があります。

  • 手術
  • がんそのものを取り除く治療です。
  • 放射線治療
  • 放射線をがんに当てて、がん細胞を攻撃する方法です。
  • 薬物療法
  • お薬を使って、がん細胞の増殖を抑える治療です。

手術

手術は、がんがある場所を直接切り取り、がん細胞を体からなくすことを目指します。頭頸部という場所は、食べたり話したり、呼吸したりする大切な機能がたくさん集まっています。そのため、私たち医師は、がんを取り除くことはもちろん、皆さんのその後の生活の質をできるだけ保つように努めます。

手術の範囲によっては、見た目や声、食べ物を飲み込むことに一時的な影響が出ることがあります。しかし、その後には、これらの機能を回復させるためのリハビリテーションも大切になります。手術はがんの根治を目指す、非常に重要な治療の一つです。

放射線治療

放射線治療は、特殊な光線のような「放射線」を、がんがある場所にピンポイントで当てる治療です。この放射線ががん細胞を傷つけ、がんを小さくしたり、なくしたりする効果があります。手術が難しい場合や、手術と組み合わせて行うことで、より治療効果を高めることができます。

放射線治療は、数週間にわたって毎日、または週に数回通院して受けることが一般的です。治療中は少し疲れを感じやすくなることもありますので、無理なく過ごすことが大切です。

薬物療法

薬物療法は、抗がん剤などのお薬を、点滴や飲み薬で体の中に取り入れる治療です。これらの薬は、体全体に広がったがん細胞や、目には見えない小さながん細胞にも働きかけます。

近年では、がん細胞だけを狙って攻撃する「分子標的薬」や、皆さんの体がもともと持っている「免疫の力」を強くして、がんを攻撃させる「免疫チェックポイント阻害薬」といった新しいタイプのお薬も使われるようになりました。これにより、副作用を抑えながら、より効果的にがんを治療できるようになってきています。私たち医師は、皆さんの病状に合わせた最適なお薬を選んで治療を進めます。

これらの治療法は、一つだけで行うこともあれば、いくつか組み合わせて行うことも多くあります。例えば、手術の後に再発を防ぐために放射線治療や薬物療法を行うなど、皆さんの体の状態やがんの種類、そしてがんの進み具合によって、最適な治療計画は変わります。治療について疑問や不安なことがあれば、いつでも私たち医師や医療スタッフに遠慮なくご相談ください。私たちは、皆さんが安心して治療に臨めるよう、全力でサポートいたします。