子宮内膜ポリープ

不正出血や過多月経、あるいは不妊といった、デリケートな悩みを抱えていませんか。その不調の原因は、もしかしたら子宮の内側にできる「子宮内膜ポリープ」かもしれません。これは決して珍しい病気ではなく、妊娠や出産が可能な年代の女性の約10人に1人に見られると言われています。

ほとんどは良性のできものですが、放置すると不妊の原因となったり、ごくまれに悪性のものが隠れていたりすることもあるため注意が必要です。原因は女性ホルモンの影響だけでなく、最近の研究では子宮内の環境も関係することがわかってきました。

この記事では、子宮内膜ポリープの詳しい症状や原因、検査、そして最新の治療法について解説します。ご自身の状態を正しく理解し、不安を解消するための一歩としてぜひお役立てください。

子宮内膜ポリープの概要

子宮内膜ポリープとは、子宮の内側をおおっている膜から、キノコのように盛り上がってできる良性のできものです。 この子宮内膜は、妊娠したときに赤ちゃんを育てるための、ふかふかのベッドのような役割を持つ大切な組織です。

多くの場合は症状がありませんが、不正出血や不妊の原因となるため、注意が必要な病気の一つです。 子宮内膜ポリープには、以下のような特徴があります。

  • 大きさや数 1cmに満たないものから数cmになるものまで様々で、1つだけではなく複数できることもあります。
  • できる人 妊娠や出産が可能な年代の女性の約10人に1人に見られ、決して珍しい病気ではありません。

ポリープができる詳しい仕組みはまだ研究段階ですが、女性ホルモンの影響などが関係していると考えられています。 また、最近の研究では、子宮の中にいる細菌たちの集まり(子宮内マイクロバイオーム)も関係する可能性が指摘されています。 ポリープがある方では、健康な方と比べて子宮内の細菌の種類が多く、そのバランスも異なっていることが報告されています。

ほとんどは良性のできものですが、ごくまれに悪性のものや、子宮体がんの初期症状として見つかることもあります。 そのため、気になる症状がある場合は、婦人科で相談することが大切です。

子宮内膜ポリープの種類

子宮にできるポリープは、できる場所によって主に2つの種類に分けられます。 子宮の「奥」にできるものと、「出口」にできるものです。 見た目は似ていても、その性質や治療法が大きく異なるため、正しく区別することが重要です。

  • 子宮内膜ポリープ 子宮の奥側(体部)にできます。不正出血や不妊の原因になることがあるため、注意が必要です。ごくまれに悪性のものが隠れている場合があるため、多くは切除して詳しく調べることになります。
  • 子宮頸管ポリープ 子宮の出口側(頸部)にできます。悪性であることは極めてまれで、出血などの症状がなければ、治療をせずに様子を見ることも多いポリープです。

特に子宮内膜ポリープは、良性か悪性かを見極めることが非常に大切です。 そのため、ポリープを切除した際には、その組織を顕微鏡で詳しく調べる「病理組織検査」を行います。

この検査では、良性のポリープであっても、炎症などの影響で「ホブネイル上皮」という、少し特殊な見た目の細胞が見つかることがあります。 最近の研究では、この良性のホブネイル上皮が、がんの診断で使われる特定の目印(ナプシンAというマーカー)に反応する場合があることがわかっています。

本来、このマーカーが陽性だと悪性のがんを疑うきっかけになります。 しかし、良性のポリープでも反応することがあるため、専門の医師が他の検査結果などとあわせて、良性か悪性かを慎重に判断しています。 ご自身の状態を正しく知るためにも、気になる症状があれば婦人科を受診しましょう。

子宮内膜ポリープの原因

「どうして自分にポリープができたのだろう」と、不安に思うかもしれません。 子宮内膜ポリープができるはっきりとした仕組みは、まだ完全にはわかっていません。 しかし、いくつかの要因が複雑に関係しあって発生すると考えられています。

女性ホルモンの影響

最も大きな原因とされているのが、女性ホルモンのバランスの乱れです。 特に「エストロゲン(卵胞ホルモン)」というホルモンが深く関わっています。

エストロゲンには、妊娠に備えて子宮内膜を厚くする働きがあります。 このホルモンが過剰になったり、ホルモンバランスが崩れたりすると、子宮内膜が部分的に異常に厚くなり、ポリープができてしまうのです。

子宮の中の環境も関係する

ホルモンの影響だけでなく、子宮の中の環境もポリープのできやすさに関係します。

  • 子宮の中の炎症 出産や流産などがきっかけで子宮内に炎症が起こると、ポリープが発生する原因になることがあります。
  • 子宮の中の細菌バランスの変化 最近の研究では、子宮の中にいる細菌のバランス(マイクロバイオーム)の乱れも、ポリープの発生に関係する可能性が指摘されています。 ポリープがある方はない方と比べて、子宮内の細菌の種類が多く、そのバランスが異なっていることが報告されています。
  • その他のリスク要因 ・年齢(特に40歳以上の方に多くみられます) ・肥満(ホルモンバランスに影響しやすいため) ・高血圧 ・乳がんの治療で使われるお薬の一部

このように、ホルモンの影響だけでなく、体質や生活習慣、子宮内の環境など、さまざまな要因が重なって子宮内膜ポリープは発生すると考えられています。

子宮内膜ポリープの症状

子宮内膜ポリープは、症状が何もないことが珍しくありません。 会社の健康診断や他の病気の検査で、偶然見つかる方も多いです。

しかし、もし症状が出る場合は、体が送る大切なサインです。 ご自身の体調に、以下のような変化がないか確認してみましょう。

  • 不正出血 月経(生理)以外の出血や、おりものに血が混じる、 性行為のあとに出血するといった症状です。 月経が8日以上だらだらと長く続くこともあります。
  • 月経(生理)の変化 経血の量がとても多くなる「過多月経」が見られます。 レバーのような血のかたまりが、たくさん出ることもあります。
  • 妊娠に関するお悩み なかなか妊娠できない「不妊」や、 残念ながら流産を繰り返してしまう原因になることもあります。

これらの症状で最も多いのが「不正出血」です。 ポリープは、子宮の内側にできたキノコのような柔らかいできものです。 そのため、何かの刺激で表面が傷つき、出血しやすくなります。

そして、気になる症状があるときに最も心配になるのは、 「がんではないか」ということだと思います。 子宮内膜ポリープのほとんどは良性のできものです。

しかし、ごくまれに悪性のものや、将来悪性になる可能性のあるものが、 ポリープの中に隠れていることがあります。 そのため、ポリープを切除して細胞を詳しく調べることが大切です。

最近の研究では、良性のポリープの細胞が、 がんの診断で使う特別な目印に反応してしまうことがあるとわかっています。 専門の医師は、このようなケースも考えながら慎重に判断しています。

自己判断で「大丈夫だろう」と放置せず、気になるサインがあれば、 必ず婦人科を受診して、専門の医師に相談してください。

子宮内膜ポリープの検査・診断

不正出血などの気になる症状で婦人科を受診すると、まずはお体の状態を詳しく調べるための検査を行います。 どのような検査をするのか、不安に思う方もいるかもしれません。 ここでは、主な検査方法についてわかりやすく解説します。

  • 経腟(けいちつ)超音波検査 ちつから細い器具を入れ、超音波で子宮の様子を映し出す、婦人科の基本的な検査です。 最近では、子宮を立体的に観察できる3D(三次元)超音波検査を行うこともあります。 この3D超音波検査は、ポリープの形や正確な位置をより詳しく把握できるため、診断の精度を高めてくれます。 また、子宮筋腫など、似たような症状を起こす他の病気との区別にも役立ちます。
  • ソノヒステログラフィー(子宮内腔造影検査) 超音波検査でポリープが見えにくい場合などに行われる、より詳しい検査です。 細い管を使って子宮の中に生理食塩水を少しずつ入れ、子宮の中を優しく広げます。 こうすることで、ポリープの形や大きさを、よりはっきりと観察することができます。
  • 子宮鏡検査 細いカメラを子宮の中に入れて、ポリープを直接目で見て確認する検査です。 ポリープの有無や状態を確かめ、診断を確定させるために非常に重要な検査となります。 検査の痛みをできるだけ少なくするため、様々な工夫がされています。 例えば、なるべく細いカメラを使ったり、子宮を広げるお水の圧力を弱くしたりします。 検査の前には、医師から検査内容や痛みを和らげる方法について詳しい説明がありますので、不安な点は遠慮なく質問してください。 もし検査中に痛みを感じた場合は、絶対に我慢せず、すぐにスタッフに伝えることが大切です。
  • 組織検査(生検) 子宮鏡検査の際に、ポリープの一部を採取して、顕微鏡で詳しく調べる検査です。 この検査によって、ポリープが良性か、ごくまれに悪性の細胞が隠れていないかなどを判断します。 安心して治療を進めるために、とても大切な検査です。

子宮内膜ポリープの治療

子宮内膜ポリープが見つかった場合、すぐに治療が必要とは限りません。 ポリープの大きさや症状、そして妊娠を希望されるかなどを考えます。 あなたに合った方法を、一緒に相談しながら決めていきましょう。

主な選択肢には、「様子を見る」「お薬の治療」「手術」があります。 症状がなかったり、ポリープがとても小さかったりする場合、 定期的な検査で変化がないか、注意深く様子を見ることもあります。

お薬による治療

不正出血などの症状を一時的に軽くする目的で、ホルモン剤を使います。 低用量ピルなどのお薬で、ポリープの成長をおさえたりします。 しかし、ポリープをなくす根本的な治療にはならないことも多いです。

手術による治療

不正出血が続いてつらい場合や、不妊の原因と考えられる場合、 ポリープを取りのぞく手術が、より良い選択肢となることがあります。 手術には、主に次の方法があります。

手術の方法

内容

特徴

子宮内容除去術(そうはじゅつ)

子宮の中を、先の曲がったスプーンのような器具でこすり取ります。ポリープを内膜ごと取りのぞく方法です。

昔から行われている方法です。しかし、ポリープを直接見ずに処置するため、取り残す可能性があります。

子宮鏡下手術(しきゅうきょうかしゅじゅつ)

子宮の中に細いカメラを入れます。モニター画面で子宮の中を直接見ながら、ポリープだけを正確に切除します。

正常な子宮内膜を傷つけにくいです。そのため、体への負担が少ない方法です。日帰りや短い入院で治療ができます。

ポリープの再発を防ぐために

ポリープは、手術で取りのぞいても残念ながら再発することがあります。 再発を防ぐために、ホルモンを放出する子宮内避妊具(LNG-IUS)が有効です。 子宮の中に装着し、お薬を少しずつ出し続ける小さな器具です。 ある研究では、この方法が再発を有意に抑えることが示されました。

一方で、一部の飲み薬のホルモン剤については、再発予防の効果が はっきりと確認されていない、という研究結果もあります。 どの治療法がご自身に最も合っているか、一緒に考えていきましょう。