透析

顔や手足のむくみ、少し動いただけの息切れ、なんとなく続く体のだるさ。もし、こんな不調を「いつものこと」と見過ごしているなら、注意が必要です。そのサインは、沈黙の臓器と呼ばれる腎臓からの、見逃してはならないSOSかもしれません。

腎臓の機能が大幅に低下すると、人工的に血液をきれいにする「透析治療」が必要になります。日本で透析を始める原因の第1位は「糖尿病性腎症」で、高血圧が原因のケースも増加傾向にあります。これらは自覚症状がないまま静かに進行するため、気づいたときには手遅れということも少なくないのです。

この記事では、透析とは何か、その原因や症状、そしてご自身の生活に合わせて選べる治療法まで詳しく解説します。自分らしい生活を守るために、まずは腎臓のサインを正しく知ることから始めませんか。

透析の概要

透析とは、病気などで弱ってしまった腎臓の代わりに、人工的に血液をきれいにする治療法で、「人工透析」とも呼ばれます。

腎臓は、私たちの体で非常に大切な役割を担っています。

  • 老廃物の排出 食事から得た栄養の残りカスなどを、尿として体の外に出します。
  • 水分・ミネラルの調整 体内の水分量や塩分などのバランスを、常に一定に保ちます。
  • 血圧のコントロール 血圧をちょうど良い高さに調整する役割も持っています。
  • ホルモンの分泌 血液を作るよう骨髄に命令するホルモンなどを分泌します。

しかし、「慢性腎不全」になると腎臓の働きが徐々に悪化し、これらの機能が十分に果たせなくなります。

その結果、体に老廃物がたまったり、むくみや高血圧、貧血といったさまざまな不調が起こり始めます。

さらに病状が進行し、腎臓の働きが健康なときの15%以下になった状態を「末期腎不全」と呼び、透析治療が必要になります。

近年、透析治療は進歩しており、より安全で効果的な方法が研究されています。

例えば、体内の水分量を精密に測る「生体電気インピーダンス法」という技術があります。

この技術を用いることで、一人ひとりに最適な水分除去量を設定し、心臓への負担を軽くできる可能性があります。

実際、複数の研究を分析した報告では、この技術の活用が全死亡リスクを低下させる可能性が示されました。

透析は、低下した腎臓の機能を補い、患者さんが自分らしい生活を続けるために非常に大切な治療です。

透析の種類

透析治療には、主に2つの種類があります。 「血液透析」と「腹膜透析」です。

どちらを選ぶかは、体の状態や生活スタイルで決まります。 それぞれの特徴を知り、ご自身に合った方法を選びましょう。

血液透析(HD)

病院やクリニックで行う、最も一般的な治療法です。 腕の血管から血液を体の外へ取り出します。

そして「ダイアライザー」という機械に通します。 これは、血液のゴミや余分な水分を取り除くフィルターです。 きれいになった血液は、再び体の中に戻されます。

  • 場所 病院やクリニック
  • 頻度 週に2〜3回
  • 時間 1回につき4時間くらい

この治療では、たくさんの血液を機械に送る必要があります。 そのため、腕の血管を手術でつなぎ合わせます。 「シャント」という血液専用の出入り口を作るのです。

また、透析では体から抜く水分量の管理がとても大切です。 最近の研究では、体の水分量を正確に測る技術が注目されています。 「生体電気インピーダンス法」という方法です。

この技術で水分管理をすると、心臓への負担が減る可能性が示されました。 特にアジア人では、死亡リスクが低下したという報告もあります。

腹膜透析(PD)

主に自宅で行うことができる治療法です。 自分のお腹の中にある「腹膜」という膜を使います。 この腹膜が、フィルターの代わりとなって血液をきれいにします。

  • 場所 自宅や職場など
  • 頻度 毎日
  • 時間 生活スタイルに合わせて調整できます

まず、お腹に「カテーテル」という細い管を入れる手術をします。 この管から透析液をお腹の中に入れます。 数時間後、ゴミが移った透析液を体の外に出すのです。

項目

血液透析

腹膜透析

場所

病院・クリニック

自宅・職場

頻度

週2~3回

毎日

時間

1回4時間ほど

1回30分ほどを複数回

行う人

医療スタッフ

ご自身・ご家族

どちらの治療法にも、良い点と注意すべき点があります。 ご自身の生活に合った治療法を、医師とよく相談して決めましょう。

透析の原因

透析が必要になるのは、腎臓の働きが大幅に低下した「末期腎不全」という状態になったときです。

腎機能が低下する原因には様々な病気が関係していますが、特に次の3つの病気が主な原因として知られています。

日本の透析患者さんの原因疾患を調べた統計(2019年末)によると、上位3つは以下の通りです。

  • 第1位:糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう) 全体の約4割を占める、最も多い原因です。
  • 第2位:慢性糸球体腎炎(まんせいしきゅうたいじんえん) かつては最多でしたが、治療法の進歩で減少傾向にあります。
  • 第3位:腎硬化症(じんこうかしょう) 高血圧が原因で、高齢化に伴い増加しています。

糖尿病性腎症

糖尿病の合併症の一つで、高い血糖値が続くことで腎臓の細い血管が傷つき、機能が失われていく病気です。

腎臓には、血液をろ過してきれいにする「糸球体(しきゅうたい)」というフィルターがたくさんあります。

血糖値が高い状態が続くと、このフィルターが目詰まりを起こしたり、壊れたりしてしまいます。

その結果、体に必要なタンパク質が尿に漏れ出たり、老廃物をうまく排出できなくなったりするのです。

慢性糸球体腎炎

血液をきれいにするフィルターである「糸球体」に、長い期間にわたって炎症が起こる病気の総称です。

炎症によって糸球体が少しずつ壊れてしまうと、フィルターとしての役割を十分に果たせなくなります。

本来は排出されるべき老廃物が体にたまり、逆に必要なタンパク質が体の外へ出ていってしまいます。

腎硬化症

主に高血圧が原因で、腎臓の血管が硬くなる「動脈硬化」が進んでしまう病気です。

長期間にわたって高い圧力がかかると、腎臓の血管は弾力性を失い、硬く、もろくなってしまいます。

すると、腎臓への血流が悪くなり、腎臓全体が十分に働けなくなって機能が低下していくのです。

これらの病気は、自覚症状がほとんどないまま静かに進行することが多く、注意が必要です。

気づいたときには腎機能がかなり低下しているケースも少なくありません。

そのため、定期的な健康診断で尿や血圧の状態を確認し、早期発見・早期治療につなげることが非常に大切です。

透析の症状

腎臓の働きが弱まると、出すべき老廃物や水分が体に溜まります。 この状態を「尿毒症」と呼び、心と体に様々な不調が現れます。

透析が必要になる前に見られる、体からのSOSサインを確認しましょう。 ご自身の状態と照らし合わせてみてください。

【からだにあらわれる症状のチェックリスト】

  • □ 顔や手足がむくむ 体に余分な水分が溜まっているサインです。
  • □ 少し動いても息切れがする、呼吸が苦しい 貧血や、肺に水が溜まっている可能性があります。
  • □ なんとなく体がだるい、疲れやすい 老廃物が溜まったり、貧血が進んだりするためです。
  • □ 食欲がない、吐き気がある 老廃物が胃腸の働きを悪くさせます。
  • □ 血圧が高くなる 水分や塩分の調整ができなくなることが原因です。
  • □ 皮膚がかゆい 体に溜まった老廃物が皮膚を刺激します。

体の不調は、心の元気も奪ってしまうことがあります。 気分の落ち込みや不安感といった、精神的な症状も少なくありません。

実際に多くの研究で、透析患者さんの「生活の質(QOL)」や、 気分の落ち込み(抑うつ)が重要な課題であることが示されています。

生活の質とは、自分らしく充実した毎日を送れているかの指標です。 体のつらさが精神面に影響し、生活の質を大きく左右するのです。

これらの症状は、腎臓が助けを求めているサインかもしれません。 気になることがあれば、早めに医師へ相談することが大切です。

透析の検査・診断

腎臓がどれくらい頑張っているかを知るために、検査を行います。 主に血液検査と尿検査で、透析が必要かどうかを慎重に判断します。

お医者さんが腎臓の働きをどうやって調べているか見ていきましょう。

検査の種類

主な項目

何を調べているか

血液検査

クレアチニン

血液中のゴミの量です。値が高いほど、腎臓がゴミをうまく捨てられていないサインです。

eGFR

腎臓がお掃除できるパワーを表す点数です。この点数が低いほど、腎臓の働きが弱っています。

尿検査

たんぱく・潜血

腎臓のフィルターが壊れていないかを調べます。大切な栄養(たんぱく)や血が漏れていないかを確認します。

eGFRという腎臓のお掃除パワーを示す点数が15点を下回ると、 「末期腎不全」という状態で、透析治療の開始を考え始めます。

また、透析治療をより安全に行うための新しい検査もあります。 「生体電気インピーダンス法」という、体の水分量を正確に測る技術です。

この検査で水分管理をすると、心臓への負担が軽くなる可能性があります。 複数の研究を分析した結果、この技術を使うことで、 全死亡リスクが低下する可能性が示されました。

特に、私たちと同じアジア人では、その効果がより高いという報告もあります。 これらの検査結果を総合的に見て、一人ひとりに最適な治療法を決めます。

透析の治療

腎臓の働きがとても弱くなると、命を守る治療が必要になります。 腎臓の代わりをする治療を「腎代替療法」と呼びます。

これは、ただ生きるためだけでなく、自分らしい生活を送るための大切な治療です。 多くの研究で、透析を受ける方の「生活の質(QOL)」や、 気分の落ち込みが重要な課題であることが示されています。

そのため、心と体の両面から自分に合った治療を選ぶことが大切です。

血液透析(HD)

血液を体の外へ取り出し、機械でゴミを取り除いてから体に戻す方法です。

  • 準備 腕の血管を手術でつなぎ合わせ、透析用の血液の通り道(シャント)を作ります。
  • 場所と時間 週に3回ほど病院へ通い、1回4時間ほどの治療を受けます。
  • 大切なこと 体の水分量をちょうど良く保つことが非常に重要です。

最近では、「生体電気インピーダンス法」という技術があります。 これは、体の水分量を正確に測り、最適な水分除去量を決める方法です。

この技術を使うと、心臓への負担が軽くなる可能性が示されました。 特にアジア人では死亡リスクが低下したという報告もあります。

腹膜透析(PD)

自分のお腹の中にある膜(腹膜)を使って、血液をきれいにする方法です。

  • 準備 お腹に「カテーテル」という細い管を入れる簡単な手術をします。
  • 場所と時間 主に自宅で行い、生活スタイルに合わせて時間を調整できます。
  • 大切なこと カテーテルの出口を清潔に保ち、ばい菌が入らないように自己管理をします。

項目

血液透析

腹膜透析

場所

病院・クリニック

自宅・職場など

頻度・時間

週3回、1回4時間ほど

毎日(日中または夜間)

行う人

医療スタッフ

ご自身・ご家族

どちらの治療法にも、良い点と注意すべき点があります。 ご自身の生活スタイルや体の状態に合わせて、医師とよく相談しましょう。