体質性黄疸

健康診断で「黄疸の疑い」や「ビリルビン値が高い」と指摘され、「肝臓が悪いのでは?」と不安に感じていませんか。その症状、実は病気ではなく、生まれ持った「個性」ともいえる「体質性黄疸」の可能性があります。

体質性黄疸は、肝機能そのものに問題があるわけではなく、多くは体に害を及ぼさないため治療も必要ありません。しかし、なぜ自分の体に黄疸が現れるのか、その正体を知らないままでは漠然とした不安が残ってしまいます。

この記事では、体質性黄疸のメカニズムや種類、心配がいらない理由について詳しく解説します。ご自身の体の特徴を正しく理解し、不要な不安を解消するための一助としてください。

体質性黄疸の概要

体質性黄疸は、生まれつきの体質が原因で起こる黄疸です。 病気というよりも、その人の個性や特徴のようなものと考えてよいでしょう。 そのため、肝臓の機能が悪いわけではないことをまず知っておいてください。

私たちの血液の中には、酸素を運ぶ「赤血球」という成分があります。 古くなった赤血球は分解され、その際に「ビリルビン」という黄色い色素が作られます。 このビリルビンは、通常は肝臓で処理されて体の外へ排出されます。

【ビリルビンが体の外に出るまでの流れ】

  • 古い赤血球が壊れる 「ビリルビン」という黄色い物質が作られます。
  • ビリルビンが肝臓に運ばれる 肝臓はビリルビンを処理する工場のような役割をします。
  • 肝臓で処理される 体の外に出やすい形に変えられます。
  • 体の外へ排出される 「胆汁(たんじゅう)」という消化液に混ざって排出されます。

体質性黄疸の人は、生まれつき肝臓でのビリルビン処理の能力が少しだけ低いのです。 処理スピードがゆっくりなため、血液の中にビリルビンが残りやすくなります。 その結果、血液中のビリルビンが増え、皮膚や白目が黄色く見えるのです。

ここで大切なのは、肝臓の機能自体が悪いわけではないということです。 あくまでビリルビンを処理する部分の個人差なので、体に害はありません。 そのため、ほとんどの場合は特別な症状はなく、治療も必要ないのが一般的です。 健康診断の血液検査で偶然指摘され、驚かれる方が多いのもこのためです。

体質性黄疸の種類

体質性黄疸は、実はいくつかの種類に分かれています。 どの種類にあてはまるかは、血液中に増えているビリルビンのタイプで決まります。 ビリルビンには2つの顔があり、この違いを知ることが大切です。

前の見出しで、肝臓を「ビリルビンを処理する工場」に例えました。 この工場で処理される前の、いわば「原料」の状態のビリルビンを「間接ビリルビン」と呼びます。 そして、工場で処理された後の「製品」の状態のビリルビンを「直接ビリルビン」と呼びます。

体質性黄疸は、このどちらのビリルビンが増えるかによって、大きく2つのグループに分けられ、さらに4つの病名に分類されます。 肝臓という工場の、どの工程に生まれつきの個性があるかによって、どのタイプになるかが決まるイメージです。

  • 間接ビリルビンが増えるタイプ 肝臓の工場で、原料(ビリルビン)を処理する力が少しだけマイペースな場合に起こります。
  • ジルベール(ギルバート)症候群
  • クリグラー・ナジャー症候群
  • 直接ビリルビンが増えるタイプ 工場で処理した製品(ビリルビン)を、体の外へ出荷するのが少しだけ苦手な場合に起こります。
  • デュビン・ジョンソン症候群
  • ローター症候群

増えるビリルビンの種類

病気の名前

肝臓の働きの特徴

間接ビリルビン

(処理される前の原料)

ジルベール症候群

クリグラー・ナジャー症候群

原料の処理が少しゆっくり

直接ビリルビン

(処理された後の製品)

デュビン・ジョンソン症候群

ローター症候群

製品の出荷が少し苦手

これらのうち、ほとんどはジルベール症候群というタイプです。 血液検査でどのタイプのビリルビンが増えているかを調べることで、どの種類の体質性黄疸なのかを正確に診断していきます。

体質性黄疸の原因

体質性黄疸は、生まれつき持っている遺伝子の特徴が原因です。 食事や運動などの生活習慣や、他の病気が原因で起こるものではありません。 そのため、ご自身の生活を責める必要はまったくないのです。

私たちの体は、親から受け継いだ「遺伝子」という設計図をもとに作られます。 体質性黄疸の人は、ビリルビンを処理する部分の設計図が少し個性的です。 その結果、肝臓の特定の働きだけが、他の人と少しだけ違うのです。

体質性黄疸の多くは「常染色体劣性遺伝」という形式で受け継がれます。 少し難しい言葉ですが、遺伝の仕組みを知ると安心できるかもしれません。 人は誰でも、両親から遺伝子の設計図を1セットずつ、合計2セット受け取ります。

  • 体質性黄疸の遺伝子の特徴 2セットある設計図のうち、1セットだけが個性的でも症状は現れません。 両親から受け継いだ2セットの設計図が、両方とも個性的だった場合に症状が現れます。

この仕組みのため、ご両親自身には全く症状がなくても不思議ではありません。 ご両親がそれぞれ個性的な設計図を1つずつ持っている場合に、 お子さんにその両方の設計図が受け継がれると、体質性黄疸として現れるのです。 ご家族に同じ症状の方がいなくても、決して珍しいことではないのでご安心ください。

体質性黄疸の症状

体質性黄疸の主な症状は、白目や皮膚が黄色く見える「黄疸(おうだん)」です。 しかし、ほとんどの場合は症状がとても軽く、日常生活で気づくことはまれです。 多くの方は、健康診断の血液検査でビリルビンの数値を指摘されて初めて知ります。

体質性黄疸は種類によって症状の現れ方が異なり、注意が必要なサインもあります。 自分の体の特徴として、どのような症状があるのかを知っておくことが大切です。

種類によって異なる症状

体質性黄疸の代表的な種類ごとに、現れやすい症状をみていきましょう。 ほとんどの症状は、日常生活に大きな影響を与えるものではありません。

種類

主な症状

ジルベール症候群

・ほとんど自覚症状はない

・疲れやストレス、風邪などで一時的に黄疸が強くなる

・人によっては倦怠感(だるさ)を感じることがある

クリグラー・ナジャー症候群

・新生児期からの強い黄疸

・けいれんなど神経系の症状が出ることがある(まれな病型)

デュビン・ジョンソン症候群

ローター症候群

・自覚症状はほとんどない

・健康診断などで偶然発見されることが多い

黄疸以外の症状に注意

黄疸は目に見えるサインですが、まれに他の症状を伴うこともあります。 以下のような症状が気になる場合は、医師に相談してみましょう。

  • 全身の倦怠感 なんとなく体がだるく、疲れがとれにくい感じがします。
  • 食欲不振 いつもより食欲がわかない状態が続くことがあります。
  • 腹部の不快感 みぞおちのあたりや、お腹の右上に痛みを感じる人もいます。

体質性黄疸の多くは、特別な治療を必要としない「個性」のようなものです。 しかし、黄疸の原因が肝炎など他の病気である可能性も考えられます。 「体質だから」と自己判断せず、一度は医療機関で正確な診断を受けましょう。

体質性黄疸の検査・診断

健康診断などで黄疸を指摘されると、「肝臓が悪いのでは」と不安になるかもしれません。 体質性黄疸の検査は、まず肝炎といった心配な病気がないことを確かめるために行います。 黄疸の原因となりうる病気の可能性を一つずつ消していくことで、正確な診断に至るのです。 自分の体の状態を正しく知るための、大切なステップだと考えてください。

体質性黄疸の診断は、主に血液検査、尿検査、お腹の超音波検査を組み合わせて進めます。 これらの検査で、肝臓の機能や形に大きな異常がないことを丁寧に確認していきます。 以下に、それぞれの検査で何を調べているのかを具体的に解説します。

【体質性黄疸の主な検査】

  • 血液検査 血液中のビリルビンの種類と量を測り、どのタイプの黄疸かを判断します。 また、ASTやALTといった肝機能の数値も調べます。 これは肝臓の細胞が壊れていないかを確認する大切な項目です。
  • 尿検査 尿の中にビリルビンが漏れ出ていないかをチェックします。 体質性黄疸の種類によって、尿検査の結果も変わってきます。
  • 腹部超音波(エコー)検査 お腹にゼリーを塗り、機械をあてて肝臓や胆管の様子を見る痛みのない検査です。 胆石などでビリルビンの通り道がふさがれていないかなどを確認します。

これらの検査結果を総合的に見て、肝臓の機能や形に問題が見つからず、 ウイルス性肝炎なども否定された場合に、体質性黄疸と診断されます。 まれに、より詳しい検査が必要なこともありますが、ほとんどは上記の検査で診断がつきます。

体質性黄疸の治療

体質性黄疸は、病気というより生まれ持った「個性」のようなものです。 そのため、ほとんどの場合は体に悪い影響がなく、特別な治療は必要ありません。 自分の体の特徴として、上手に付き合っていくことが基本になります。

しかし、ごくまれに赤ちゃんの頃から治療が必要なタイプもあります。 どの種類の体質性黄疸なのかを正しく知っておくことがとても大切です。

ほとんどの場合は治療の必要なし

ジルベール症候群など、ほとんどの体質性黄疸は治療がいりません。 肝臓の機能自体は健康な人と変わらず、元気に働いているからです。 日常生活で困ることはなく、経過を見ていくだけで十分な場合がほとんどです。

ただし、疲れやストレスがたまると、一時的に黄疸が強くなることがあります。 また、見た目の黄疸やだるさが気になる方もいるかもしれません。 その場合は、症状を和らげるためのお薬を使うこともあります。

赤ちゃんの頃から治療が必要な場合

クリグラー・ナジャー症候群というまれなタイプは、治療が必要です。 血液中のビリルビンがとても多くなり、脳に影響が出る可能性があるためです。 赤ちゃんの頃から、専門の病院でしっかりと治療を続けることが重要です。

主な治療法には、以下のようなものがあります。

治療法

どんな治療?

光線療法

体に特別な青い光を当てて、ビリルビンを体の外に出やすい形に変える治療です。

薬物療法

肝臓がビリルビンを処理する働きを、少しだけ手助けするお薬を使うことがあります。

肝臓移植

根本的に治すための方法として、ビリルビンを上手に処理できる肝臓に取り替える手術です。

体質性黄疸と診断されても、ほとんどは心配いりません。 まずはご自身のタイプを正確に知り、不安な点は医師に相談しましょう。