肩鎖関節脱臼
スポーツや日常生活での転倒で肩を強く打ち、「ただの打ち身だろう」と放置していませんか?その痛み、実は「肩鎖関節脱臼」かもしれません。このケガは肩周辺の損傷全体の約1割を占めるとされ、決して珍しいものではなく、誰にでも起こりうるのです。
ケガの深刻さは、実は靱帯の損傷具合によって6段階にも分類され、それによって治療法も大きく変わります。重症の場合、鎖骨の端がピアノの鍵盤のように浮き上がり、肩に明らかな段差ができることもあります。将来の変形を心配される方もいますが、研究報告では過度な心配は不要とされています。
この記事では、ご自身のケガがどのレベルなのかを正しく見極め、手術をしない保存療法から手術療法まで、あなたに最適な治療法を見つけるための知識を詳しく解説します。気になる症状があれば、ぜひ読み進めてみてください。
肩鎖関節脱臼の概要
「肩鎖関節脱臼」は、少し難しい名前のケガかもしれません。 しかし、スポーツや転倒で肩を強く打ったときに起こりやすいです。 肩周辺のケガの中では比較的よく見られ、全体の約1割を占めます。
まず、肩鎖関節がどこにあるかを知っておきましょう。
- 鎖骨(さこつ)
- 首の付け根あたりから肩にかけて伸びる、横に長い骨です。
- 肩甲骨(けんこうこつ)
- 背中側にある大きな三角形の骨で、その一部を「肩峰(けんぽう)」と呼びます。
この鎖骨の外側の端と、肩甲骨の肩峰がつながる部分が肩鎖関節です。 この関節は、靱帯(じんたい)という丈夫なひもで固定されています。
転倒などで肩に強い衝撃が加わると、この靱帯が傷つきます。 靱帯が切れると、鎖骨と肩甲骨の連結が外れてずれてしまいます。 この状態が「肩鎖関節脱臼」です。
治療法を選ぶ際、将来の関節の変形を心配される方もいます。 しかし、手術をしても、しなくても、将来的に関節がすり減る(変形性関節症)リスクに大きな差はないという研究報告があります。 そのため、治療法を決める上で、将来の変形を過度に心配する必要はないと考えられています。
肩鎖関節脱臼の種類
肩鎖関節脱臼は、靱帯(じんたい)の傷つき方で重症度が変わります。 どのくらいひどいケガなのかを正しく知ることが、治療法を選ぶ第一歩です。 世界中の医師が使う「Rockwood(ロックウッド)分類」が有名です。 ケガの程度に応じて、TypeⅠ(1がた)からⅥ(6がた)の6段階に分けます。
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分類 |
どんな状態? |
靱帯(じんたい)の状態 |
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Type I |
捻挫(ねんざ) |
肩鎖靱帯が伸びたり、少し切れたりしている。骨のずれはない。 |
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Type II |
亜脱臼(あだっきゅう) |
肩鎖靱帯は完全に切れ、鎖骨が少し浮き上がっている。 |
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Type III |
完全脱臼 |
2種類の靱帯が両方とも完全に切れ、鎖骨がはっきりと上にずれる。 |
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Type IV |
後方への脱臼 |
靱帯が完全に切れ、鎖骨が正常な位置より後ろにずれている。 |
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Type V |
高度な脱臼 |
靱帯が完全に切れ、Type IIIよりさらに大きく鎖骨が上にずれる。 |
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Type VI |
下方への脱臼 |
とてもまれなタイプ。鎖骨が肩甲骨の下にもぐり込んでいる。 |
TypeⅠやⅡは比較的軽症で、手術をしない保存療法で治療することが多いです。 一方で、TypeⅣ以上の重症なタイプでは、手術が必要になることがほとんどです。
特に、活発な運動をする方の場合、ケガから3週間以内に手術が勧められます。 Type IIIは、手術をするかしないか、専門家の間でも意見が分かれる状態です。 患者さんの年齢やスポーツ活動のレベルなどを考え、慎重に治療法を決めます。
肩鎖関節脱臼の原因
肩鎖関節脱臼は、肩にとても強い力が加わることで起こります。 転んだり、何かにぶつかったりした時が、特に危険です。 研究報告でも、よく見られるスポーツでのケガの一つとされています。
ケガが起こる仕組みは、次のようになっています。 脇をしめた状態で肩の外側を強く打つと、肩甲骨は下に押し下げられます。 しかし、鎖骨は元の位置に残ろうとするため、両方の骨に逆向きの力がかかります。 この力に耐えきれず、骨と骨をつなぐ靱帯という丈夫なひもが切れてしまうのです。 この靱帯が切れることで、鎖骨の端が上に飛び出し、関節がずれてしまいます。
具体的には、以下のような状況で起こりやすいです。
- スポーツでの接触や転倒
- ラグビー、柔道などで相手と激しくぶつかったり、倒されたりした時。
- 乗り物からの転倒
- 自転車やバイクの運転中に、事故で転んでしまった時。
- スキーやスノーボードで、滑っている最中に転んだ時。
- 日常生活での転落や転倒
- 脚立や階段など、高い場所から落ちてしまった時。
このケガは、統計的に男性に多く見られることがわかっています。 ほとんどは肩を直接ぶつけることで起こりますが、注意が必要です。 転んだ際に腕を伸ばして手をついても、その力が肩に伝わりケガをすることがあります。
肩鎖関節脱臼の症状
肩鎖関節をケガすると、主に「痛み」「腫れ」「見た目の変化」があらわれます。 これらのサインは、ケガのひどさによって大きく変わってきます。
ケガをした直後から、肩のてっぺん、鎖骨の外側の端あたりが強く痛みます。 腕を動かしたり、ケガした部分を押したりすると、痛みはさらに強くなるのが特徴です。 時間が経つにつれて、ケガをした部分の周りがだんだん腫れてきます。
見た目の変化も、ケガのひどさを見分ける大事なサインです。 軽いケガの場合、見た目はほとんど変わらず、ただの打ち身と間違いやすいです。 しかし、ひどいケガになると鎖骨の端が上に飛び出し、肩に段差ができます。
<肩鎖関節脱臼の主な症状チェックリスト>
- 肩のてっぺん(鎖骨の端)に痛みや腫れがある
- 腕を上げたり動かしたりすると、とても痛みます。
- 鎖骨の端が飛び出して、肩に段差ができている
- 飛び出した部分を押すと、ピアノの鍵盤のように上下に動くことがあります。
- 肩を動かすと、ぐらぐらして不安定な感じがする
ケガをそのままにしておくと、痛みが長引いたり、肩の動きに問題が残ったりします。 また、ある研究報告では、ケガから時間が経った慢性的な状態で治療を始めると、合併症(予想外の別の問題)が起こりやすくなることがわかっています。 気になるサインがあれば自分で判断せず、できるだけ早く病院で診てもらいましょう。
肩鎖関節脱臼の検査・診断
肩鎖関節脱臼が疑われる場合、正しい治療法を選ぶために検査を行います。 まず、いつ、どのようにケガをしたのか、詳しくお話を聞きます。 その後、肩の状態を目で見たり、やさしく触ったりして確認します。 多くの場合、転倒などのきっかけがはっきりしているため、診察で強く疑われます。
診断を確定し、ケガのひどさを正確に知るために、写真を使った検査をします。 世界中の医師が、ケガの診断にはレントゲン検査を行うことが一般的だと考えています。
- レントゲン(X線)検査 診断の基本となる、骨の写真を撮る検査です。 骨折がないか、鎖骨がどれくらいずれているかを確認します。 この結果をもとに、ケガの重症度を世界共通の「Rockwood分類」で判定します。 この分類は、次の治療法を決める上でとても重要な情報になります。
- CT検査やMRI検査 レントゲンだけでは見えにくい部分を、さらに詳しく調べる検査です。 骨をつなぐ靱帯(じんたい)や周りの筋肉の状態を確認したい時に行います。
これらの検査結果を合わせて、最終的な診断をします。 ある研究では、ケガをしてから時間が経った状態(慢性)で治療を始めると、合併症が起こりやすくなると報告されています。 そのため、自分で判断せず、できるだけ早く病院で検査を受けることが大切です。
肩鎖関節脱臼の治療
肩鎖関節脱臼の治療法は、ケガの重さによって大きく2つに分けられます。 一つは手術をしない「保存療法」、もう一つは「手術療法」です。 どの治療を選ぶかは、靱帯の傷つき具合(Rockwood分類)が基本です。 それに加えて、あなたの年齢や生活、スポーツ活動などを考えて決めます。
手術をしない「保存療法」
靱帯の傷が軽い捻挫や、少しだけずれた亜脱臼の場合に選ばれます。 具体的には、Rockwood分類のⅠ型やⅡ型といった軽症のケガが対象です。
- 固定する 三角巾(さんかくきん)などで腕を吊り、肩を安静に保ちます。
- 冷やす ケガの直後は、痛みや腫れを抑えるために、ケガした部分を冷やします。
- リハビリ 痛みが引いたら、肩が硬くならないよう、少しずつ動かす練習を始めます。
手術をする「手術療法」
靱帯が完全に切れて、骨が大きくずれている重症の場合に手術を考えます。 Rockwood分類のⅣ型、Ⅴ型、Ⅵ型といったケガでは、手術が必要です。 Ⅲ型は、手術をするか専門家の間でも意見が分かれ、相談して決めます。
手術の目的は、ずれた関節を正しい位置に戻し、切れた靱帯を治すことです。 手術には、いくつかの方法があります。
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手術方法の種類 |
どんな手術? |
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フックプレート法 |
金属の板(プレート)で、関節を一時的に固定する方法です。 |
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スーチャーボタン法 |
特殊なボタンと丈夫な糸を使い、靱帯の代わりとして固定します。 ある研究報告では、手術後の体の動きの回復や痛みの軽さで、フックプレート法より良い結果が期待できる可能性が示されています。 |
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靱帯再建術 |
自分の体の別の場所から取った腱(けん)などを使い、新しく靱帯を作り直します。 機能の回復に良い影響がありますが、手術時間が長くなる傾向があります。 |
治療法を選ぶ際、将来的に関節が変形しないか心配になるかもしれません。 しかし、手術をしても、しなくても、将来の変形リスクに大きな差はないという研究報告があります。 今のあなたに合った一番良い治療法を、お医者さんと一緒に探すことが大切です。










