MetALD(代謝機能障害・アルコール関連肝疾患)

健康診断で「脂肪肝」や肝機能の数値を指摘され、原因は単純にお酒のせいだと考えていませんか。近年、肥満や糖尿病などの生活習慣病に、日常的な飲酒習慣が重なることで肝臓のダメージが加速する「MetALD」という病気が注目されています。

この記事では、2023年に提唱された新しい疾患概念であるMetALDについて、その原因や症状、診断方法を解説します。従来の脂肪肝とは異なり、肝硬変や肝がんへ進行するスピードが速まる危険性についても詳しく説明します。

ご自身の生活習慣と照らし合わせながら読み進めることで、MetALDのリスクを正しく理解し、ご自身の肝臓を守るために今何をすべきかがわかります。

MetALD(代謝機能障害・アルコール関連肝疾患)の概要

MetALD(メタエルディー)は、肥満や糖尿病といった生活習慣病(代謝機能障害)を土台に、日常的な飲酒習慣が重なることで肝臓にダメージが蓄積していく病気です。

2023年に国際的な専門家グループによって提唱された新しい疾患概念で、従来の「脂肪肝」の分類が見直されたことで生まれました。

これまで「お酒が原因の脂肪肝」と「生活習慣が原因の脂肪肝」は、それぞれ別のものとして扱われる傾向にありました。しかし、この2つが合併したMetALDは、どちらか一方だけが原因の場合と比べて、肝硬変や肝がんへと進行するスピードが速まる危険性が指摘されています。

なぜ進行が速いのか、その詳細なメカニズムは現在も世界中で研究が進められています。

最近の研究では、脂肪細胞から分泌される「アディポカイン」と呼ばれる物質のバランスが、病状に深く関わっていることがわかってきました。

例えば、特定の物質(RBP-4)は、MetALDの発症前には血中濃度が上がるものの、肝硬変へと進行し肝機能が落ちてくると逆に減少するなど、病気のステージによって複雑な変動を示すことが報告されています。※

このように体内で起きる変化は、「アルコールによる炎症」「肝臓自体の機能低下」「有害物質を解毒する働きの低下」といった複数の要素が複雑に絡み合って生じると考えられています。※

この疾患概念は新しいため、まだ解明されていない部分も多く残されていますが、健康診断で「脂肪肝」や「肝機能の数値異常」を指摘され、日常的にお酒を飲む方は、MetALDのリスクを念頭に置くことが大切です。

MetALD(代謝機能障害・アルコール関連肝疾患)の種類

MetALDは、2023年に新しく定められた脂肪肝の国際的な分類「脂肪性肝疾患(SLD)」を構成する、3つの主要なタイプの一つです。

脂肪性肝疾患(SLD)は、その主な原因によって、下表のように分けられます。

分類 | 主な原因と特徴

MASLD (代謝機能障害関連 脂肪性肝疾患) | ・肥満、糖尿病といった代謝の問題が主体 ・飲酒は少量か、まったくない

ALD (アルコール関連肝疾患) | ・過度な飲酒が主体 ・代謝の問題はないか、あっても軽い

MetALD (代謝機能障害・ アルコール関連肝疾患) | ・代謝の問題と、中等量の飲酒の両方が重なった状態

MetALDは、代謝異常による肝臓への負担と、アルコールによる肝臓へのダメージという、性質の異なる2つの要素が組み合わさった「ハイブリッド型」の脂肪肝です。

この2つの要素が重なることで、病気の進行スピードが単独の場合よりも速まる可能性があり、病態もより複雑になります。

その複雑さを解き明かす鍵として、脂肪細胞から分泌される「アディポカイン」という生理活性物質の研究が進んでいます。

例えば、アディポカインの一種であるRBP-4という物質は、MetALDの発症前には血中濃度が上がるものの、肝硬変へと進行し肝機能が落ちてくると逆に減少する、という二相性の変動パターンを示すことがわかってきました。※

ほかにも、ケメリンという物質の低下や、オメンチン-1という物質の著しい上昇なども確認されており、単純な足し算では説明できない変化が体内で起きていることが示唆されています。※

専門家の間では、こうした複雑な変化の背景に、以下の3つのメカニズムが絡み合っていると考えられています。※

・アルコールによる肝臓や脂肪組織の炎症

・肝機能の低下により、アディポカインを血液中から除去する働き(肝クリアランス)が落ちる

・肝臓が硬くなることで血流が滞り、肝臓を迂回する血液循環路(門脈体循環シャント)ができてしまう

このように、MetALDは単にMASLDとALDが合併したものではなく、互いに影響し合うことで独自の病態を形成すると考えられています。

MetALD(代謝機能障害・アルコール関連肝疾患)の原因

MetALDは、「代謝機能の異常」と「中等量の飲酒習慣」という、2つの要因が重なることで発症します。

どちらか一方だけではMetALDの診断には至りませんが、この2つが組み合わさることで肝臓への負担が単独の場合よりも増し、病気を引き起こすと考えられています。

具体的には、以下の要因がMetALDの主な原因となります。

1. 代謝機能の異常(心代謝系危険因子)

MetALDの土台となるのが、肥満や糖尿病といった生活習慣病です。

以下の5つの項目のうち、1つでも当てはまる方は注意が必要です。

・肥満:BMI 23kg/m²以上、または腹囲(男性94cm超、女性80cm超)

・血糖値の異常:空腹時血糖値100mg/dL以上、HbA1c 5.7%以上、または2型糖尿病の治療中

・高血圧:収縮期血圧130mmHg以上、または拡張期血圧85mmHg以上、または降圧薬を内服中

・脂質異常症(中性脂肪):中性脂肪150mg/dL以上、または治療薬を内服中

・脂質異常症(HDLコレステロール):善玉であるHDLコレステロールが基準値より低い(男性40mg/dL未満、女性50mg/dL未満)、または治療薬を内服中

2. 中等量の飲酒習慣

上記の代謝の問題に、日常的な飲酒習慣が加わることがMetALDの引き金となります。

ここでいう「中等量」とは、具体的に以下の飲酒量を指します。

・男性:1週間に純アルコール換算で210g~420g(1日あたり30~60g)

・女性:1週間に純アルコール換算で140g~350g(1日あたり20~50g)

純アルコール20gは、ビール中瓶1本(500mL)、日本酒1合(180mL)、ワイングラス2杯(240mL)が目安です。

これらの要因が重なると、なぜ肝臓へのダメージが加速するのでしょうか。

代謝機能の異常によって肝臓に脂肪がたまっている状態は、いわば肝臓が「燃えやすい状態」にあるといえます。そこにアルコールという追加の負担が加わることで、肝臓や脂肪組織の炎症が強く引き起こされると考えられています。※

「お酒はそれほど飲まないのに、健康診断で肝臓の数値が気になる」という方は、背景にご自身の体重や血糖値といった代謝の問題が隠れている可能性があります。

MetALD(代謝機能障害・アルコール関連肝疾患)の症状

MetALDは、初期段階では自覚できる症状がほとんど現れません。

肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、ダメージがかなり蓄積するまでSOSのサインを発しにくい性質を持っています。そのため、ご自身では気づかないうちに病気が静かに進行しているケースも珍しくありません。

しかし、水面下では病気の進行に伴う変化が確かに起きています。

自覚症状がない段階でも、血液検査の数値には異常が認められることがあります。

例えば、脂肪細胞から分泌される「RBP-4」という物質は、MetALDの発症前には血中濃度が上がるものの、肝硬変へと進行し肝機能が落ちてくると逆に減少する、という特徴的な変動パターンを示すことがわかってきました。※

このように、症状がない時期でも体の中では病気のサインが出始めています。

病状がさらに進行し、肝臓の機能が限界に近づくと、ようやく以下のようなはっきりとした症状が現れるようになります。

・全身の倦怠感、疲れやすさ

・食欲不振

・黄疸(おうだん):皮膚や白目が黄色っぽくなる

・腹水(ふくすい):お腹に水がたまって張ってくる

・むくみ:特に足の甲やすねに現れやすい

これらの症状は、肝臓の機能が著しく低下していることを示す危険なサインです。

症状がないからと安心せず、健康診断などで「脂肪肝」や「肝機能の数値異常」を指摘された場合は、お早めに医療機関を受診することが大切です。

MetALD(代謝機能障害・アルコール関連肝疾患)の検査・診断

MetALDの診断は、問診でお伺いする「飲酒量」、そして血液検査や画像検査で明らかになる「代謝の問題」と「肝臓の状態」という、3つの情報を組み合わせて総合的に判断します。

まず、腹部超音波(エコー)検査などを用いて、肝臓に脂肪がたまっている状態(脂肪性肝疾患)があることを確認するのが第一歩です。

その上で、以下の「飲酒習慣」と「代謝の問題」という2つの必須条件を両方とも満たす場合に、MetALDと診断されます。

項目 | 診断基準

1. 飲酒習慣 | 1日あたりの純アルコール摂取量が以下の範囲に該当する ・男性:30~60g/日(週に210~420g) ・女性:20~50g/日(週に140~350g)

2. 代謝の問題 (心代謝系危険因子) | 以下の5項目のうち、1つでも当てはまる ・肥満:BMI 23kg/m²以上、または腹囲(男性94cm超、女性80cm超) ・血糖値の異常:空腹時血糖値100mg/dL以上、HbA1c 5.7%以上、または2型糖尿病の治療中 ・高血圧:収縮期血圧130mmHg以上、または拡張期血圧85mmHg以上、または降圧薬を内服中 ・脂質異常症(中性脂肪):中性脂肪150mg/dL以上、または治療薬を内服中 ・脂質異常症(HDLコレステロール):善玉であるHDLコレステロールが基準値より低い(男性40mg/dL未満、女性50mg/dL未満)

さらに、診断を確定させるだけでなく、病気がどのくらい進行しているのか、その深刻度をより詳しく把握するための研究も世界中で進められています。

その鍵として注目されているのが、脂肪細胞から分泌される「アディポカイン」と呼ばれる物質の血中濃度です。

例えば、アディポカインの一種であるRBP-4という物質は、MetALDの発症前には血中濃度が上がりますが、肝硬変へと進行し肝機能が落ちてくると逆に減少する、という病気のステージに応じた二相性の変動パターンを示すことが明らかになってきました。※

ほかにも、ケメリンという物質の低下や、オメンチン-1という物質の著しい上昇といった特徴的な変化も確認されており、MetALDが単純な足し算では説明できない独自の体内変化を引き起こすことが示唆されています。※

これらのアディポカインの測定は、まだ研究段階にあるものの、将来的にMetALDの進行度をより正確に把握し、一人ひとりに合った治療方針を決める上で重要な手がかりになる可能性があります。

健康診断で「脂肪肝」や「肝機能の数値異常」を指摘され、ご自身の状態が当てはまるかもしれないとご心配な方は、自己判断はせず、まずは専門の医療機関で詳しい検査を受けることが、ご自身の肝臓を守るための大切な第一歩です。

MetALD(代謝機能障害・アルコール関連肝疾患)の治療

MetALDの治療は、原因となっている「代謝の問題」と「飲酒習慣」という、2つの根本要因へ同時にアプローチすることが基本です。

現時点でMetALDに特化した治療薬は存在しません。しかし、それは打つ手がないということではなく、ご自身の生活習慣を見直すこと自体が、病気の進行を食い止め、肝臓の状態を改善させるための最も強力な治療法となります。

具体的には、以下の3つのアプローチを組み合わせて、肝臓への負担を総合的に減らしていくことを目指します。

・1. 食事療法と運動療法(代謝の問題へのアプローチ)

MetALDの土台となっている肥満や糖尿病といった代謝機能障害を改善するため、まずは「体重の7%減量」を目標とした食事の見直しと、定期的な運動習慣を取り入れます。これにより、肝臓にたまった脂肪を減らし、炎症を抑える効果が期待できます。

・2. 節酒(アルコールへのアプローチ)

MetALDはアルコールの影響が加わることで病状が進行しやすくなるため、飲酒量を減らす「節酒」が治療の要となります。肝臓に直接ダメージを与えるアルコールを控えることは、病気の進行スピードを緩めるために不可欠です。

・3. 合併症の治療

高血圧、脂質異常症、糖尿病といった合併症がある場合は、それらの病気の治療もしっかりと行います。これらの病気をコントロールすることは、全身の血管や代謝の状態を整え、間接的に肝臓への負担を軽減することにつながります。

MetALDは2023年に提唱された新しい疾患概念であり、その病態が代謝の問題とアルコールのどちらの影響をより強く受けるのかなど、まだ完全に解明されていない部分も多く残されています。

実際に、病気の進行度によって体内で分泌される特定の物質(アディポカイン)の血中濃度が複雑に変動することが報告されており、この病気が単純な足し算では説明できない独自のメカニズムを持つことが示唆されています。※

このように病気の全容解明にはさらなる研究が必要ですが、現時点で明らかになっているのは、「生活習慣の改善」と「節酒」が病気の進行を食い止める最も重要な鍵であるという事実です。※

まずは主治医とよく相談し、ご自身の状態に合った治療プランを立て、一歩ずつ着実に実行していくことが、ご自身の肝臓の未来を守るために何よりも大切です。