卵巣のう胞

健康診断で「卵巣のう胞」と診断され、不安を感じていませんか?下腹部の違和感や月経の乱れなど、体に異変を感じている方もいるかもしれません。卵巣のう胞は、初期には自覚症状がほとんどないケースが多く、予期せぬ形でその存在を知る方も少なくありません。

この記事では、女性に比較的多く見られる卵巣のう胞について、その概要から「機能性」「腫瘍性」「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」といった種類、発生原因、現れる症状を詳しく解説します。さらに、適切な検査・診断方法や、経過観察、薬物療法、手術療法といった治療の選択肢についてもご紹介します。

近年、卵巣の健康が全身の代謝や内分泌バランスと密接に関わることが明らかになっています。この情報を参考に、卵巣のう胞に対する正しい知識を身につけ、ご自身の状況に合わせた適切な治療選択へ向けて、医師とのコミュニケーションを深める一助としてください。

卵巣のう胞の概要

卵巣のう胞は、女性の卵巣にできる袋状の良性腫瘍の総称です。そのほとんどは液体が溜まって卵巣が腫れた状態であり、自覚症状がないケースが多く、健康診断や婦人科での他の検査で偶然発見されることがほとんどです。

卵巣にできる病変は多岐にわたりますが、近年、卵巣の健康は女性全体の代謝や内分泌バランスと密接に関わっていることが明らかになってきています。例えば、卵巣に多くの小さな嚢胞が見られる「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」は、全身的な病態をより正確に反映するため、「多内分泌代謝性卵巣症候群(PMOS)」への名称変更が提案されています。※ このような名称変更の動きは、単に卵巣の問題として捉えるのではなく、体全体の状況を総合的に見ていくことの重要性を示しているといえるでしょう。

欧州婦人科学会(ESG)は、この名称変更に対し、患者さんの理解を深めるために段階的な移行戦略を支持しており、当面の間は新旧の名称を併用することを推奨しています。また、名称変更の移行においては、産婦人科内分泌学が中心となり、他診療科とも連携しながら患者さんへの丁寧なコミュニケーションが重要であると強調されています。※ このように、卵巣のう胞の診断や治療においては、卵巣という臓器だけでなく、女性の体全体のバランスを考慮したアプローチが不可欠です。

卵巣のう胞の種類

卵巣のう胞は、その性質や経過によって大きく2種類に分けられます。まずは、それぞれの特徴を見ていきましょう。

卵巣のう胞は、主に以下の分類があります。

・機能性嚢胞(きのうせいのうほう):排卵など、卵巣の生理的な働きと関係して一時的にできる嚢胞です。

・腫瘍性嚢胞(しゅようせいのうほう):卵巣の組織そのものから発生する、良性から悪性まで幅広い性質を持つ腫瘍です。

機能性嚢胞

機能性嚢胞は、排卵という女性の体の自然なプロセスの中で、一時的に卵巣に液体がたまってできるものです。正常な排卵では、卵子が入った袋(卵胞)が育ち、排卵後に黄体という組織に変化します。しかし、ホルモンバランスのちょっとした乱れによって、このプロセスがうまくいかないと、卵胞や黄体が必要以上に大きくなり、嚢胞として残ってしまうことがあります。

例えば、排卵前の卵胞が大きく残った「卵胞のう胞」や、排卵後の黄体が腫れてできる「黄体嚢胞」などが挙げられます。機能性嚢胞は、多くの場合、特別な治療をしなくても数カ月で自然に消えることが多いです。そのため、通常は経過観察で様子を見ます。

腫瘍性嚢胞

腫瘍性嚢胞は、卵巣の組織から発生する病的な変化で、良性のものから悪性のものまで、さまざまな種類があります。

具体的な分類は、次のとおりです。

・良性腫瘍

・漿液性嚢胞腺腫(しょうえきせいのうほうせんしゅ):サラサラとした液体が溜まる嚢胞です。

・粘液性嚢胞腺腫(ねんえきせいのうほうせんしゅ):ネバネバした粘液が溜まる嚢胞です。

・類皮嚢胞(るいひのうほう)(成熟嚢胞性奇形腫):卵子のもととなる細胞が変化してできるため、脂肪や髪の毛、骨などが含まれることがあります。

・チョコレート嚢胞(子宮内膜症性嚢胞):子宮内膜症が卵巣にできたもので、古い血液がたまってチョコレートのように見えることから、この名前がついています。

これらの良性腫瘍であっても、大きくなると卵巣がねじれて激しい痛みを伴う「茎捻転(けいねんてん)」や、嚢胞が破裂するリスクがあるため、経過観察や手術が必要になることがあります。

・境界悪性腫瘍:良性と悪性の中間に位置するもので、悪性へと移行する可能性も考慮されます。

・悪性腫瘍:卵巣がんと呼ばれるもので、早期発見と適切な治療が非常に重要です。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

卵巣に多数の小さな嚢胞(のうほう)が見られる状態には、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」もあります。PCOSは、生殖年齢の女性によく見られる内分泌疾患の一つです※。

PCOSの診断は、超音波検査で卵巣に多数の嚢胞が確認されることに加え、月経不順や、男性ホルモンが過剰になることなどが総合的に判断されます。近年では、PCOSが単なる卵巣の問題ではなく、女性の代謝や内分泌バランスと密接に関わる全身的な病態であることが明らかになっています※。このため、研究では患者さん由来の卵巣オルガノイド(臓器の機能を持つミニチュア臓器)を活用し、PCOSの複雑な病態や個人差を考慮した治療法の開発が進められています※。

PCOSは、ロッテルダム分類に基づき、次の4つの表現型に分類されることが知られています※。

表現型 | 診断基準

発症要因

・遺伝的要素:家族歴がある場合に、発症リスクが高まることがわかっています。

・環境的要素:ストレスや環境の変化が影響することがあります。

体質

・女性ホルモンの一種であるアンドロゲンの分泌が過剰である傾向が見られます。

・インスリンに対する体の反応が悪くなるインスリン抵抗性がある場合もあります。

症状

・卵巣に多数の小さな嚢胞ができる特徴があります。

・月経不順(稀発月経や無月経)や排卵障害が起きることがあります。

・多毛、ニキビ、薄毛など、男性ホルモンの影響による症状が出ることもあります。

・妊娠しづらい、流産しやすいといった不妊の悩みにつながる場合もあります※。

PMOSへの名称変更

・PCOSという名称は、疾患が全身的な病態を反映していないという意見から、「多内分泌代謝性卵巣症候群(PMOS)」への名称変更が提案されています※。

・この名称変更の動きは、卵巣だけでなく、女性の体全体の代謝や内分泌バランスを総合的に見ていくことの重要性を示しています。

・欧州婦人科学会(ESG)は、患者さんの理解を深めるため、新旧の名称をしばらく併用することを推奨しており、産婦人科だけでなく、他の診療科とも連携しながら、患者さんへ丁寧に説明していくことが大切だと考えています※。

このように、卵巣にできる嚢胞は、原因や性質、そして治療の必要性や今後の見通しがそれぞれ異なります。特にPCOSでは、どの表現型に該当するかによって、妊娠の経過やリスクの程度も変わるため※、一律の対応ではなく、患者さん一人ひとりに合わせた治療計画を立てることが重要です※。ご自身の卵巣のう胞がどのような種類なのか、そして今後どのように治療を進めていくべきかについて、ぜひ医師とよく相談し、理解を深めてください。

卵巣のう胞の原因

卵巣のう胞は、種類によって発生原因が異なります。多くの場合、良性ですが原因が特定できないこともあり、大きく分けて「機能性嚢胞」と「器質性嚢胞」の二つがあります。

機能性嚢胞の原因

機能性嚢胞は、卵巣の生理的な働き、特に排卵に関連して一時的に形成される袋状のものです。これは、月経周期におけるホルモンバランスの変動が深く関わっています。

・ホルモンバランスの乱れ

卵巣では、卵子が成長する「卵胞(らんほう)」と、排卵後に卵胞が変化して形成される「黄体(おうたい)」が周期的に現れます。この過程でホルモンバランスが一時的に崩れると、卵胞や黄体が通常よりも大きく育ったり、内部の液体がうまく吸収されずに残ったりすることがあります。これが機能性嚢胞の主な原因です。

特に「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」は、ホルモンバランスの異常により卵巣内に多数の小さな嚢胞ができる内分泌疾患です。PCOSの患者さんでは、高アンドロゲン血症(男性ホルモンが過剰な状態)や排卵障害が見られることが特徴です※。これにより、子宮内膜の受容性(受精卵が着床する能力)にも異常が生じやすく、着床率の低下や流産、早産といった妊娠合併症のリスクが高まることが指摘されています※。

PCOSによる子宮内膜の機能不全は、ホルモンバランスの乱れだけでなく、体の代謝異常、慢性的な炎症、さらには子宮内の細菌バランスの変化(子宮内細菌叢の乱れ)など、多くの要因が複雑に絡み合って起こると考えられています※。

・薬剤の影響

不妊治療などで排卵を促す薬剤(排卵誘発剤)を使った場合、卵巣が過剰に刺激されることで一時的に機能性嚢胞が発生することもあります。

機能性嚢胞は、ほとんどの場合、数カ月程度で自然に消える傾向があります。

器質性嚢胞の原因

器質性嚢胞は、卵巣の組織そのものから発生する病的な袋状のものです。自然に小さくなることは少なく、その原因はそれぞれ異なります。

・子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)

子宮内膜症が卵巣にできた状態を指します。子宮内膜に似た組織が卵巣内で増殖し、月経のたびに出血を繰り返します。この古い血液が卵巣内に溜まり、見た目がチョコレートのようになるため、この名前がついています。月経血が卵管を通って腹腔内に逆流することなどが、一因と考えられています。

・漿液性嚢胞腺腫(しょうえきせいのうほうせんしゅ)

卵巣の表面にある細胞から発生する良性腫瘍です。サラサラとした透明な液体が溜まりますが、特定の原因はまだ詳しくわかっていません。

・粘液性嚢胞腺腫(ねんえきせいのうほうせんしゅ)

こちらも卵巣の表面にある細胞から発生する良性腫瘍で、粘り気のある液体が溜まります。漿液性嚢胞腺腫と同様に、明確な原因は不明です。

・類皮嚢胞(るいひのうほう)(成熟嚢胞性奇形腫)

受精卵のごく初期の細胞の一部が卵巣内に残り、それが成長してできるとされています。そのため、髪の毛、脂肪、骨、歯といった体のさまざまな組織が含まれることがあります。これも発生のメカニズムは完全に解明されていません。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣に多くの嚢胞が見られるため卵巣のう胞の一種と思われがちですが、主にホルモンバランスの異常が原因となる「内分泌疾患」です。PCOSの患者さんは、高アンドロゲン血症や排卵障害が見られることが特徴です※。

特にPCOSの妊娠管理においては、ロッテルダム分類に基づく4つの表現型(PCOSの病態を細かく分類したもの)ごとに、妊娠の転帰やリスクが異なることがわかってきています。例えば、自然妊娠では高アンドロゲン血症を伴う表現型で妊娠高血圧症候群や流産のリスクが高い傾向にあります。生殖補助医療(ART)による妊娠でも、表現型によって有害な転帰や生児獲得率に差が見られるため、画一的な対応ではなく、患者さん一人ひとりの表現型に応じた個別化されたリスク評価と治療戦略が重要であると考えられています※。

卵巣のう胞の原因は種類によってさまざまです。ご自身の卵巣のう胞がどのタイプに当てはまるのか、また、どのような原因で発生しているのか、疑問や不安がある場合は、早めに医療機関を受診して専門医に相談することが大切ですし、より深く理解できるでしょう。

卵巣のう胞の症状

卵巣のう胞は、初期にはほとんど自覚症状がないケースが多く、健康診断や婦人科検診で偶然発見されることがほとんどです。しかし、のう胞が一定の大きさになるにつれて、体にさまざまな変化が現れることがあります。

のう胞が大きくなることで現れる症状は、次のとおりです。

・下腹部の不快感:

嚢胞が大きくなるにつれて、周囲の臓器を圧迫することがあります。これにより、持続的な不快感や重い感覚、下腹部が張るような違和感として現れることがあります。

・月経異常:

月経の周期が乱れる、月経量が増える、月経痛が強くなるなどの変化が見られることがあります。特に、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の場合、高アンドロゲン血症(男性ホルモンが過剰な状態)や排卵障害を伴うため、月経不順や不妊の原因となる可能性があります。

PCOSは、卵巣のう胞の種類の見出しで説明したように、卵巣機能に留まらない全身的な内分泌疾患です。PCOSにより、受精卵が子宮に着床するための準備が整っている状態である「子宮内膜の受容性」にも異常をもたらし、着床率の低下につながることがわかっています。また、流産や早産といった妊娠合併症のリスクを高めることも報告されています※。

このような子宮内膜の機能不全は、ホルモンバランスの乱れだけでなく、体の代謝異常、慢性的な炎症、さらには子宮内の細菌バランス(子宮内細菌叢)の変化など、多くの要因が複雑に絡み合って起こると考えられています※。

・お腹の膨らみ:

卵巣のう胞が著しく大きくなると、物理的に下腹部が膨らみ、外見でもわかるようになる場合があります。

・頻尿・便秘:

大きくなったのう胞が、直腸や膀胱といった周囲の臓器を物理的に圧迫することで、これらの症状が引き起こされることがあります。

・腰痛:

下腹部への圧迫感や違和感が、関連痛として腰部に現れることもあります。

これらの症状は、のう胞の種類や大きさ、発生部位によっても異なります。

緊急性が高い症状

卵巣のう胞は、急激な状態の変化により、緊急性の高い症状を引き起こすこともあります。

・茎捻転(けいねんてん):

卵巣が、その付け根の部分でねじれてしまう状態です。のう胞が大きくなることで起こりやすくなり、血流が阻害されるため、突然の激しい下腹部痛とともに、吐き気や嘔吐、冷や汗、意識が遠のくなどの症状が現れます。これは緊急性が高く、迅速な手術が必要となる場合がほとんどです。

・破裂(はれつ):

のう胞が何らかの衝撃や圧力で破裂し、中の液体が腹腔内に漏れ出す状態です。突然の激しい腹痛を伴い、場合によっては腹膜炎など炎症や感染のリスクもあるため、早急な処置が求められることがあります。

もし、ご自身にこれらの症状が当てはまる、または不安を感じるようでしたら、早めに婦人科を受診し、専門医に相談することをおすすめします。

卵巣のう胞の検査・診断

卵巣のう胞の検査と診断は、患者さんの状態を正確に把握し、適切な治療方針を見つけるための重要なステップです。症状の有無にかかわらず、複数の検査を組み合わせることで、のう胞の性質や状態を詳しく調べます。

1. 問診と内診

婦人科を受診すると、まず詳しく問診が行われます。下腹部の痛みや張り、月経の変化、不正出血など、気になる症状があれば具体的に伝えましょう。これまでの病歴や生活習慣も、診断の重要な手がかりとなります。続いて、内診で子宮や卵巣の大きさ、位置、硬さなどに異常がないか、医師が直接触れて確認します。この触診で、ある程度の情報を得ることが可能です。

2. 画像診断

卵巣のう胞の診断では、画像診断が病変の正確な把握に欠かせません。超音波検査、CT、MRIといった画像診断は、のう胞の大きさや形、内部の状態を具体的に捉え、良性か悪性かを判断するための重要な情報を提供します。

・経膣超音波検査・経腹超音波検査

経膣または経腹超音波検査は、卵巣のう胞の発見に最も広く用いられる検査です。リアルタイムで子宮や卵巣の様子を観察できるため、のう胞の大きさ、形、内容物(液体か固形か)、壁の厚さなどを詳しく調べることができます。この情報から、良性か悪性か、さらにどの種類ののう胞であるかをある程度推測する手がかりになります。

・CT・MRI検査

超音波検査で得られる情報が不十分な場合や、悪性の可能性が疑われる際には、CTやMRI検査が追加で検討されます。これらの検査では、のう胞と周囲の臓器との位置関係や、内部のより詳細な構造を多角的に確認できます。これにより、より確実な診断へとつながると考えられています。

特に、幼児期にまれに見られる機能性卵巣嚢胞の診断でも、画像診断が重要な役割を果たします。例えば、2歳10ヶ月の女児が乳房発育や不正性器出血といった思春期早発症の症状を呈し、画像診断によって機能性卵巣嚢胞が原因であると診断された事例が報告されています。このケースでは、嚢胞の増大や茎捻転(卵巣がねじれること)のリスクを考慮しながら、画像診断による経過観察が治療方針の決定に大きく貢献しました※。このように、年齢を問わず、画像診断はのう胞の性質やリスクを評価するために不可欠な検査といえるでしょう。

3. 血液検査(腫瘍マーカー)

血液検査では、卵巣のう胞が悪性である可能性を探るために、腫瘍マーカーと呼ばれる特定の物質の値を調べます。最もよく用いられるのはCA125ですが、この数値が高いからといって、必ずしも悪性であるとは限りません。良性ののう胞や、子宮内膜症、月経中など、卵巣がん以外の原因でも上昇することがあるためです。腫瘍マーカーはあくまで診断の補助的な情報であり、他の検査結果と総合的に評価することが大切です。

4. 病理組織検査

卵巣のう胞の最終的な確定診断は、手術で摘出された組織を詳しく調べる病理組織検査によって行われます。顕微鏡を使って細胞の形態や組織構造を詳細に確認することで、のう胞がどの種類で、良性か悪性か、そしてその悪性度を正確に判断できます。

先述した幼児期の思春期早発症の事例では、腹腔鏡下で摘出された卵巣嚢胞の病理組織検査により、良性の濾胞性嚢胞であったことが最終的に確認されています※。このように、病理組織検査は、のう胞の正確な性質を明らかにし、その後の個別化された治療方針や経過観察の方法を決定するために不可欠な検査です。

卵巣のう胞の治療

卵巣のう胞の治療方法は、のう胞の種類や大きさ、現れている症状、患者さんの年齢、そして妊娠を希望するかどうかなど、さまざまな要素を総合的に考慮して決められます。治療の主な選択肢は、経過観察、薬物療法、手術療法の3つです。

経過観察

自覚症状がなく、のう胞が小さくて良性の可能性が高い場合、すぐに治療を始めず、定期的な検査でその変化を注意深く見守る「経過観察」が選択されることがあります。卵巣のう胞の中には、自然に消失するものも少なくないため、急いで治療が必要とならないケースも存在します。

薬物療法

子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)のように、女性ホルモンの影響が考えられるのう胞に対しては、ホルモン剤を使った薬物療法が行われることがあります。これは、のう胞の進行を抑えたり、つらい症状を和らげたりすることを目的としています。

また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に伴う卵巣のう胞の場合、ホルモンバランスの乱れが生殖機能に影響を及ぼすことがあります。PCOSの患者さんでは、受精卵が子宮に着床するための準備が整っている状態を示す「子宮内膜の受容性」に関わる指標に異常が見られることがわかっています。この異常が、着床率の低下や流産、早産といった妊娠合併症のリスクを高める可能性が指摘されており、PCOS患者さんの妊娠成績を改善するためには、詳細なメカニズムの解明が不可欠です※。

PCOSによる子宮内膜の機能不全は、ホルモンバランスの乱れだけでなく、体の代謝異常、慢性的な炎症、さらには子宮内の細菌バランス(子宮内細菌叢)の変化など、複数の要因が複雑に絡み合って起こると考えられています※。このような状態に対しては、ホルモン療法や代謝を改善する薬が検討されることがあります。

手術療法

のう胞が非常に大きく、破裂や茎捻転(卵巣が根元でねじれてしまうこと)のリスクが高い場合、日常生活に支障をきたすほどの強い症状がある場合、あるいは悪性の可能性がある場合には、手術によってのう胞を取り除くことが検討されます。

手術は、お腹に小さな穴を開けて行う腹腔鏡下手術が一般的です。この方法は、体の負担が少なく、回復も早い傾向があります。しかし、のう胞の大きさや状態、周囲の臓器との癒着などによっては、開腹手術(お腹を大きく開けて行う手術)が必要となることもあります。

将来的な治療法としては、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の研究が進んでいます。幹細胞から作製される卵巣オルガノイド(臓器の機能を持つミニチュア臓器)は、PCOSに特有の病態をより正確に再現できます。これにより、病気の詳しいメカニズムの解明や、患者さん一人ひとりに合わせた個別化医療に向けた薬剤スクリーニング、さらには病気の兆候を示すバイオマーカー(生体指標)の探索への応用が期待されています※。このような研究が進むことで、将来的に卵巣のう胞、特にPCOSに関連するものの診断と治療戦略がさらに進化していく可能性があります※。

ご自身の卵巣のう胞がどのような状態なのか、そして今後の生活や希望に合わせて最適な治療法を選ぶためには、医師と十分に相談し、納得できる形で治療を進めることが大切です。