自然気胸
運動もしていないのに突然、胸に針で刺すような痛みが走る。深呼吸をしようとしても、なぜか息が苦しい…。そんな経験はありませんか?もしかしたら、それは肺に穴があいてしまう「自然気胸」のサインかもしれません。
特に、10代から20代の背が高くやせ型の男性に多く見られるこの病気は、特別な原因なく発症するのが特徴です。さらに厄介なことに、一度治療をしても再発しやすく、最新の胸腔鏡手術を受けた後でさえ、約10%の人が再び同じ苦しみを経験すると報告されています。
なぜこの病気は繰り返すのでしょうか。この記事では、自然気胸のメカニズムから、ご自身のタイプを知るための種類、そして再発を防ぐための治療法までを、専門的な知見をもとに詳しく解説します。
自然気胸の概要
自然気胸とは、肺に突然穴があいて空気がもれてしまう病気です。 もれた空気のせいで、まるで風船がしぼむように肺が小さくなります。 交通事故などのケガが原因ではなく、普段の生活の中で起こるのが特徴です。
この病気は、特定の年齢や体つきの人に起こりやすい傾向があります。 特に、10代から20代の若い世代と、60代以降の高齢の方に多いです。
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年齢層 |
よくみられる特徴 |
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10代〜20代の若者 |
・男性 ・背が高い ・やせ型 |
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60代以降の高齢者 |
・長年の喫煙習慣がある |
若い方の気胸は、肺の表面にできた弱い部分が主な原因となります。 この弱い部分は「ブラ」や「ブレブ」と呼ばれ、風船のようになっています。 一方、高齢の方は、喫煙などで肺自体がもろくなっていることが関係します。
自然気胸は、一度治療をしても繰り返してしまうことがあります。 例えば、胸腔鏡(きょうくうきょう)というカメラを使う手術があります。 この手術を受けた後でも、約10%の確率で再発すると報告されています。
特に、以下のような方は手術後に再発しやすいとされています。
- 男性
- 年齢が若い
- 体重が軽い(BMIが低い)
- 反対側の肺で気胸になったことがある
このように、気胸になりやすい人の特徴と、手術後に再発しやすい人の特徴は、 少し違う点があることも知っておくとよいでしょう。
自然気胸の種類
自然気胸は、肺にもともとの病気があるかどうかで、大きく2つの種類に分けられます。 ご自身の状態がどちらに当てはまるかを知ることは、治療方針を考える上で重要です。
1.原発性自然気胸(げんぱつせいしぜんききょう)
肺自体にはっきりとした病気がないにもかかわらず、突然起こるタイプの気胸です。 肺の表面にできた「ブラ」や「ブレブ」という、風船のように弱い部分が破れます。 これが原因となり、肺から空気がもれてしまいます。
このタイプは、10代後半から30代の、背が高くやせ型の男性に多い傾向があります。 原発性自然気胸は、一度治っても繰り返しやすいのが特徴です。 多くの研究結果をまとめた信頼性の高い報告でも、手術後の再発率は約10%です。
特に、以下のような方は再発しやすいとされています。
- 男性
- 年齢が若い
- 体重が軽い
- 反対側の肺で気胸になったことがある
2.続発性自然気胸(ぞくはつせいしぜんききょう)
肺気腫(はいきしゅ)や肺がんなど、もともと肺に病気がある方に起こる気胸です。 長年の喫煙習慣がある高齢の方によくみられます。 もとの病気で肺がもろくなっているため、重症化しやすく治療が難しい場合があります。
このほか、女性特有のまれなタイプとして、月経の時期にあわせて発症する 「月経随伴性気胸(げっけいずいはんせいききょう)」というものもあります。
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種類 |
主な原因 |
かかりやすい人 |
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原発性自然気胸 |
肺の表面にできた「ブラ」や「ブレブ」が破れる |
10代~30代の背が高くやせ型の男性 |
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続発性自然気胸 |
肺気腫、肺がん、肺炎などの肺の病気 |
喫煙歴のある高齢者 |
自然気胸の原因
自然気胸が起こる直接的な原因は、肺の表面にできてしまう 「ブラ」や「ブレブ」という、風船のように弱い部分が破れることです。 ここから漏れ出た空気が胸の中にたまり、肺を圧迫してしまいます。
しかし、なぜ特定の人にだけ、このような弱い部分ができてしまうのか、 その根本的なメカニズムは、残念ながらまだ完全には解明されていません。
ただ、どのような人に起こりやすいかという傾向は、研究によってわかっています。 特に、手術をしても再発しやすい人の特徴が明らかになってきました。 ご自身やご家族が当てはまるか、確認してみましょう。
【気胸になりやすく、再発もしやすい人の特徴】
- 若い年齢である 10代後半から30代の方に多くみられます。
- やせ型で体重が軽い 身長と体重から計算する体格指数(BMI)が低い方に多い傾向があります。
- 男性である 女性よりも男性に圧倒的に多く発症します。
- 反対側の肺で気胸になったことがある 片方の肺で気胸を経験すると、もう一方も発症するリスクがあります。
一方で、高齢の方の場合は、長年の喫煙が原因で肺自体がもろくなる 「肺気腫(はいきしゅ)」という病気が背景にあることが少なくありません。 また、まれですが、30代から40代の女性では、生理の周期に合わせて発症する 「月経随伴性気胸(げっけいずいはんせいききょう)」という特殊なタイプもあります。
自然気胸の症状
自然気胸の症状は、運動などのきっかけがなく、安静にしている時に突然現れるのが特徴です。 多くの場合、前触れがないため、初めて経験すると驚かれるかもしれません。 ご自身の状態に当てはまるものがないか、確認してみましょう。
代表的な症状は、主に次の3つです。
- 突然の胸の痛み 肺から漏れた空気が胸の内側を覆う膜を刺激するため、痛みを感じます。 「針で刺されたようなチクチクした痛み」と表現されることが多いです。
- 息苦しさ(呼吸困難) 空気が漏れた分だけ肺がしぼんでしまい、酸素を十分に取り込めなくなります。 深呼吸をしても、空気が肺に入ってこないような感覚に陥ります。
- 乾いた咳 しぼんだ肺が気管や気管支を刺激することで、痰の絡まない咳が出ることがあります。
これらの症状の強さは、肺がどのくらいしぼんでいるかによって大きく異なります。 肺のしぼみ具合が軽い場合は、胸の違和感程度でほとんど症状を感じないこともあります。 しかし、しぼみ具合が大きくなるにつれて、痛みや息苦しさは強くなっていきます。
まれに、空気漏れが止まらず胸の中に空気がたまり続けることがあります。 この「緊張性気胸」という状態になると、肺だけでなく心臓も圧迫されて大変危険です。 急に血圧が下がるなど、命に関わることもあるため、すぐに医療機関を受診してください。
自然気胸の検査・診断
「胸が痛い」「息が苦しい」といった症状で病院を受診すると、 まず肺の状態を画像で確認する検査から始まります。 自然気胸の診断は、主に胸部X線(レントゲン)検査で行います。
この検査では、肺が空気もれでどれくらいしぼんでいるかがわかります。 医師はレントゲン写真を見て、肺のしぼみ具合を3段階に分けます。
- 軽度 肺の上のほうが、鎖骨のあたりで少しだけしぼんでいる状態です。
- 中等度 軽度と高度の間の状態で、肺がある程度小さくなっています。
- 高度 肺がほとんど、または完全につぶれてしまっている状態です。
さらに詳しい情報を得るために、胸部CT検査を行うこともあります。 CT検査は体を輪切りにしたような画像を撮影する検査です。 レントゲンではわからない、肺の細かい状態まで確認できます。
【CT検査でわかること】
- 小さな気胸の発見 レントゲンでは見つけにくい、ごくわずかな空気もれを見つけられます。
- 原因の特定 空気もれの原因である「ブラ」や「ブレブ」の数・大きさ・場所がわかります。
- ほかの病気の有無 気胸以外に、肺に何か別の病気が隠れていないかを調べます。
これらの画像検査の結果と、患者さんの症状を総合的に判断して診断を確定します。 また、診断の際には、今後の治療方針を決める上で大切な「再発のしやすさ」も考慮します。
多くの研究結果をまとめた信頼性の高い報告によると、 手術をしても約10%の確率で再発することがわかっています。 特に、以下のような特徴がある方は再発しやすいとされています。
- 男性である
- 年齢が若い
- 体重が軽い(BMIが低い)
- 反対側の肺で気胸になったことがある
こうした再発のリスクを診断の段階でしっかり把握することが、 一人ひとりに合った最適な治療法を選ぶ上でとても重要になります。
自然気胸の治療
自然気胸の治療法は、肺のしぼみ具合によって大きく3つに分けられます。 レントゲン検査の結果をもとに、ご自身の状態に最適な方法を医師と相談します。 それぞれの治療法について、詳しく見ていきましょう。
1.安静療法(肺のしぼみが軽い場合)
肺から漏れた空気の量が少なく、症状も軽い場合は安静療法が選ばれます。 体を大きく動かさず、安静に過ごすことで治療を進める方法です。 漏れ出た空気は、時間とともに自然に体の中へ吸収されていきます。 通院でレントゲン写真を撮りながら、肺が元に戻るかを確認します。
2.胸腔ドレナージ(肺のしぼみが大きい場合)
肺が多くしぼんでしまい、胸の痛みや息苦しさが強い場合に行います。 これは、胸の中にたまった空気を体の外へ逃がしてあげる治療です。 部分的な麻酔をした後、胸に細い管(ドレーン)を入れます。 この管を通して空気を抜き、しぼんだ肺を再び優しく広げます。 肺が広がると、空気漏れの原因となった穴が自然にふさがりやすくなります。
3.手術療法(再発を防ぎたい場合など)
以下のような場合には、手術を検討することがあります。
- 胸腔ドレナージをしても、空気漏れがなかなか止まらない
- これまでに何度も気胸を繰り返している
- 仕事や学業の都合で、できるだけ再発を防ぎたい
手術は、胸腔鏡(きょうくうきょう)というカメラを使う方法が一般的です。 空気漏れの原因である「ブラ」や「ブレブ」を切り取ります。 この胸腔鏡手術(VATS)は、傷が小さく体への負担が少ないのが特徴です。
手術をしても、残念ながら再発の可能性はゼロではありません。 信頼性の高い多くの研究報告をまとめた結果、手術後の再発率は約10%です。 特に、以下の特徴がある方は再発しやすいことがわかっています。
- 男性である
- 年齢が若い
- 体重が軽い(BMIが低い)
- 反対側の肺で気胸になったことがある
どの治療法を選ぶかは、こうした再発のリスクも考えながら、 医師としっかり話し合って決めることがとても大切です。









