腱鞘炎

スマホやPC作業で指や手首にズキッとした痛みを感じる…。「ただの使いすぎ」と軽く考えて、放置していませんか?その症状、実は単なる疲れではなく、指が動かなくなることもある「腱鞘炎」のサインかもしれません。

腱鞘炎は使いすぎだけでなく、妊娠や更年期といった女性ホルモンの変化が引き金になることもあります。さらに、過去の手首骨折手術を受けた方のうち約3.4%が合併症として発症するという報告もあり、思いがけない原因が潜んでいるのです。

本記事では、あなたの痛みの原因を探るヒントから、ご自身でできる簡単なセルフチェック、そして体への負担が少ない最新の治療法までを詳しく解説します。悪化させて日常生活に支障が出る前に、ご自身の症状と向き合ってみませんか。

腱鞘炎の概要

私たちの指や手首は「腱(けん)」という、ひも状の組織で動きます。 この腱が骨から離れないよう、トンネル型の「腱鞘(けんしょう)」が包んでいます。 腱と腱鞘があることで、指を滑らかに動かすことができるのです。

しかし、スマホ操作や家事などで指を酷使すると問題が起こります。 腱が腱鞘の中を何度も行き来し、強い摩擦が生じてしまうのです。 この摩擦が原因で炎症が起き、痛みや腫れを引き起こすのが腱鞘炎です。

腱鞘炎は単に痛むだけでなく、指や手の機能低下を招く疾患です。 物をつかむ、字を書くといった日常の動作が困難になることもあります。 このように、生活の質を大きく下げてしまう可能性を秘めています。

治療はまず安静にすることや、お薬を使うことから始めるのが一般的です。 しかし、こうした保存的治療と呼ばれる方法で改善しない場合もあります。

近年の研究では、体への負担が少ない治療法も注目されています。 例えば、超音波で腱の状態を見ながら針で治療を行う方法などです。 従来の治療で良くならなかった方にも、安全で有効な選択肢と考えられます。

腱鞘炎の種類

腱鞘炎は、症状がでる場所によっていくつかの種類に分けられます。 ここでは、特に相談が多い代表的な2つの腱鞘炎を紹介します。 ご自身の症状と見比べて、理解を深めることが大切です。

ばね指(弾発指)

指を曲げる腱と、腱が通るトンネル状の腱鞘で炎症が起こる状態です。

  • 主な症状 指の付け根(手のひら側)の痛みや腫れが特徴です。 指を曲げ伸ばす際に、ばねのようにカクンと引っかかります。 悪化すると、指が曲がったまま自力で伸ばせなくなります。
  • 起こりやすい指 親指や中指、薬指に多いですが、どの指にも起こり得ます。

治療の一つとして、指の動きを助ける装具(スプリント)療法があります。 指の付け根の関節を固定するタイプや、指同士の動きを調整するタイプなど、 実は様々な種類の装具があり、現在その効果を比較する研究も進められています。

ドケルバン病

手首の親指側にある腱と腱鞘で炎症が起きる状態です。 物をつかむ、ビンのふたを開けるといった動作で痛みが出ます。

  • 主な症状 手首の親指側の痛みや腫れがみられます。 親指を動かしたり、手首をひねったりすると痛みが強くなります。
  • 簡単なセルフチェック 親指を他の指で握り、手首を小指側に曲げてみてください。 この時に強い痛みが出れば、ドケルバン病の可能性があります。

複数の研究を分析した報告では、ステロイド注射と装具による固定を 組み合わせる方法が、主要な治療法として有効だとされています。 また、痛みを和らげる選択肢として、体の外から衝撃波を当てる治療も 有効な場合があることが分かっています。

腱鞘炎の原因

腱鞘炎が起こる最も大きな理由は、指や手首の「使いすぎ」です。 スマホの操作やパソコン作業、育児などで指や手首を繰り返し動かすと、 腱とそれを包む腱鞘がこすれ合い、炎症が起きて痛みや腫れが出ます。

しかし、原因は単なる使いすぎだけではありません。 体の状態の変化や、他の病気、過去の怪我なども深く関係します。 ご自身の生活習慣や健康状態と照らし合わせてみましょう。

  • 指や手首の使いすぎ パソコンやスマホの長時間操作、楽器の演奏、家事や育児、 テニスなどのスポーツが代表的です。
  • 体の変化や病気によるもの
  • 女性ホルモンの影響 妊娠・出産期や更年期の女性に多いのが特徴です。 ホルモンバランスの変化で腱や腱鞘がむくみやすくなり、 わずかな負担でも炎症を起こしやすくなります。
  • 他の病気の影響 糖尿病や関節リウマチ、透析治療を受けている方は、 腱や腱鞘が厚くなったり、もろくなったりすることがあり、 腱鞘炎になるリスクが高いことがわかっています。
  • 怪我や手術の影響 手首の骨折などを治療した後に、腱鞘炎が起こることもあります。 ある研究では、手首の骨折を手術した方のうち、 約3.4%に腱鞘炎が合併症として見られたと報告されています。

このように、腱鞘炎は日々の習慣だけでなく、年齢や性別、 健康状態など、様々な要因がからみ合って発症する病気なのです。

腱鞘炎の症状

腱鞘炎になると、手や指に「痛み」「腫れ」「動かしにくさ」といったサインが現れます。 これらは、腱と腱鞘に炎症が起きている証拠です。 炎症した部分は、熱っぽく感じたり、赤みを帯びたりすることもあります。 こうした症状は、生活の質を大きく下げる原因となるため注意が必要です。

ご自身の症状と比べて、当てはまるものがないか確認してみましょう。 一つでも当てはまれば、腱鞘炎の可能性があります。

  • 痛みや腫れ 指の付け根や手首の親指側が痛んだり、腫れたりします。 物を持つ、タオルを絞るといった動作で痛みが強くなります。
  • 動かしにくさ 指を曲げ伸ばしする際に、カクンと引っかかる感じがします。 これは「ばね指」という腱鞘炎でみられる特徴的な症状です。 朝起きた時に、指がこわばって特に動かしにくいこともあります。
  • 悪化した場合の症状 症状が進むと、指が曲がったまま自力で伸ばせなくなります。 また、痛みが続いてペットボトルの蓋が開けられないこともあります。

腱鞘炎は、単に手や指の使いすぎだけで起こるわけではありません。 例えば、過去の怪我の治療がきっかけで発症することもあります。

ある研究では、手首の骨折を手術で治療した方のうち、 約3.4%の方に合併症として腱鞘炎が見られたと報告されています。 骨を固定する金属の板が、腱を刺激してしまうことなどが原因です。

このように、思いがけない原因で症状が現れることもあります。 気になる症状があれば、放置せずに早めに専門の医療機関へご相談ください。

腱鞘炎の検査・診断

手や指の痛みは、仕事や家事など日常生活に直接影響するため、非常につらいものです。 腱鞘炎を正しく診断するため、整形外科では主に以下の流れで検査を進めます。 問診、身体診察、そして必要に応じた画像検査で原因を突き止めます。

1. 問診と身体診察 まず、医師が患者さんから症状について詳しくお話を伺います。 手や指をよく使う仕事や趣味、過去の病気やケガについてもお聞きします。 特に、過去の手首の骨折手術などは、腱鞘炎の原因となることがあるため重要です。 ある研究では、手首の骨折を手術した方のうち、3.4%に合併症として腱鞘炎が見られたと報告されています。

次に、痛みのある場所を直接触ったり、指や手首を動かしたりします。 これにより、炎症の場所や程度、痛みの原因を特定していきます。 例えば、親指側の手首が痛い場合は、親指を握って手首を曲げるテストを行い、痛みが強くなるかを確認します。

2. 画像検査で詳しく調べる 問診や身体診察で腱鞘炎が疑われる場合、さらに詳しく状態を調べるために画像検査を行います。

  • 超音波(エコー)検査 リアルタイムの映像で、腱や腱鞘の腫れ具合を直接確認できます。 炎症の程度を客観的に評価できる、とても有効な検査です。
  • レントゲン検査 骨に異常がないかを確認するために行います。 骨折だけでなく、関節リウマチなど他の病気の可能性も調べます。

これらの検査結果を総合的に判断し、診断を確定します。 正確な診断がつけば、より効果的な治療法の選択にもつながります。 例えば、指の腱鞘炎の痛みには、体の外から衝撃波を当てる治療法が有効であるという複数の研究報告もあります。 気になる症状があれば、自己判断せずに専門の医療機関を受診しましょう。

腱鞘炎の治療

腱鞘炎の治療で最も大切なのは、原因となった指や手首の使いすぎをやめ、患部を安静に保つことです。その上で、症状に合わせて治療法を組み合わせていきます。

手術をしない保存的治療 症状が比較的軽い場合は、まず手術をしない方法で改善を目指します。

  • 安静と固定 サポーターやテーピングで動きを制限し、患部への負担を減らします。
  • 薬物療法 炎症を抑えるための湿布や塗り薬、飲み薬を使います。 痛みが強い場合は、ステロイドというお薬を患部に直接注射します。 特にドケルバン病では、注射と短期間の固定を組み合わせる方法が、 主要な治療法として有効だと複数の研究で報告されています。
  • 体外衝撃波療法 痛みが続く場合の新しい選択肢です。 体の外から「衝撃波」という特殊な圧力を当てて痛みを和らげます。 指の腱鞘炎(ばね指)の痛みにも効果が期待でき、 副作用が少ないという研究報告もあります。

手術による治療 これらの治療を続けても改善しない場合や、何度も再発する場合には、手術を検討します。

  • 腱鞘切開術 硬くなった腱鞘の一部を切り開き、腱がスムーズに動けるようにします。
  • 体への負担が少ない手術 最近では、超音波で腱の状態を見ながら、針で治療を行う方法もあります。 この方法は、従来の治療で良くならなかった方にとっても、 安全で有効な選択肢であると考えられています。

どの治療が最適かは、症状や生活スタイルによって異なります。まずは専門医に相談し、ご自身に合った治療計画を立てることが大切です。