腎血管筋脂肪腫

健康診断などで「腎臓に腫瘍の疑い」と指摘され、不安な気持ちを抱えていませんか。「腫瘍」と聞くと悪いものを想像しがちですが、その正体は「腎血管筋脂肪腫」という、ほとんどが悪性ではない良性の腫瘍かもしれません。

この腫瘍と診断される方のうち、約8割は原因がはっきりしない「孤発性」です。しかし、良性だからと安心はできません。腫瘍が大きくなると、ある日突然お腹の中で破裂し、大出血を起こす危険性も秘めているため、正しい知識を持つことが極めて重要になります。

この記事では、腎血管筋脂肪腫の正体から、遺伝が関わるケース、そして治療が必要になるタイミングまでを詳しく解説します。ご自身の状態を正しく理解し、今後の適切な判断に繋げましょう。

腎血管筋脂肪腫の概要

腎血管筋脂肪腫(じんけっかんきんしぼうしゅ)は、腎臓にできる腫瘍の一種です。 名前が少し難しく聞こえますが、そのほとんどは「良性」の腫瘍です。 がん(悪性腫瘍)とは違い、他の場所に広がる(転移する)ことは基本的にありません。

この腫瘍は、名前の通り3つの成分が集まってできています。

  • 血管(けっかん) 血液が通るチューブのようなものです。
  • 平滑筋(へいかつきん) 内臓などにある、自分で動かせないなめらかな筋肉です。
  • 脂肪(しぼう) 体のクッションになる、あぶらの組織です。

腫瘍が小さい間は、特に症状が出ないことがほとんどです。 そのため、健康診断や他の病気の検査で偶然見つかるケースが多く見られます。 しかし、腫瘍が大きくなると、お腹の中で出血する危険性があるため注意が必要です。

また、遺伝性の病気である「結節性硬化症」に伴ってできることもあります。 この場合は、腫瘍を小さくする飲み薬(mTOR阻害薬)での治療が選択肢になります。 ある研究では、この薬で腫瘍の大きさが約半分に縮小したと報告されています。 ただし、体に合わない反応(副作用)のリスクもあるため、治療は慎重に判断されます。

腎血管筋脂肪腫の種類

腎血管筋脂肪腫は、でき方によって大きく2つのタイプに分けられます。 どちらのタイプかを知ることは、治療の方針を決める上でとても大切です。

1. 孤発性(こはつせい)

腎血管筋脂肪腫と診断される方のうち、約8割がこのタイプです。 遺伝とは関係なく、誰にでも起こる可能性があります。

多くの場合は、片方の腎臓に腫瘍が1つだけ見つかります。 はっきりとした原因は、まだよくわかっていません。

2. 結節性硬化症(けっせつせいこうかしょう)に伴うもの

残りの約2割は、遺伝子の変化によって起こる病気の一症状として現れます。 この「結節性硬化症」という病気が原因で、腫瘍ができます。

比較的若い年齢で見つかることが多く、両方の腎臓に複数できる傾向があります。 このタイプでは、腫瘍の成長を抑える飲み薬での治療が選択肢になります。

信頼性の高い研究では、エベロリムスという薬を飲むことで、 腫瘍の大きさが約半分に縮小した、という結果が報告されています。 ただし、体に合わない反応(副作用)のリスクもあるため、治療は慎重に判断します。

種類

発生の割合

主な原因

特徴

孤発性

約80%

不明

・遺伝とは関係ない

・片方の腎臓に1つだけできることが多い

結節性硬化症に伴うもの

約20%

遺伝性の病気

・両方の腎臓に複数できることが多い

・比較的若いうちに見つかりやすい

腎血管筋脂肪腫の原因

腎血管筋脂肪腫ができる理由は、まだ医学の世界でも完全にはわかっていません。 しかし、腫瘍ができるきっかけは、大きく2つのタイプに分けられることが知られています。

  1. たまたまできるタイプ(孤発性)
  2. 遺伝性の病気が関係するタイプ(結節性硬化症)

1. たまたまできるタイプ(孤発性)

腎血管筋脂肪腫と診断される方のうち、ほとんどのケース(約8割)がこのタイプです。 遺伝とは関係なく、誰にでも起こる可能性があります。

現在の研究では、特定の食事や生活習慣が原因になるという証拠は見つかっていません。 なぜ腫瘍ができるのか、はっきりとした原因はまだわかっていないのが現状です。

2. 遺伝性の病気が関係するタイプ(結節性硬化症)

残りの約2割は、「結節性硬化症」という遺伝性の病気が原因で起こります。 私たちの体には、細胞が勝手に増えすぎないよう、ブレーキをかける仕組みがあります。 このブレーキ役を担うのが、体の設計図である「遺伝子」です。

結節性硬化症は、この遺伝子に生まれつき変化があるため、ブレーキが効きにくくなる病気です。 そのため、腎臓だけでなく、脳や皮膚など体の様々な場所に良性の腫瘍ができやすくなります。 ある報告では、結節性硬化症の患者さんのうち、50~80%の方に腎血管筋脂肪腫が見つかるとされています。

タイプ

割合の目安

主な原因

孤発性

約80%

はっきりとした原因は不明

結節性硬化症に伴うもの

約20%

細胞の増えすぎを抑える遺伝子の変化

腎血管筋脂肪腫の症状

腎血管筋脂肪腫は、腫瘍が小さい間はほとんど症状がありません。 そのため、ご自身では気づかずに、健康診断の超音波(エコー)検査などで偶然見つかることがほとんどです。

しかし、腫瘍が大きくなってくると、まわりの臓器を圧迫したり、腫瘍内の血管に異常が起きたりして、さまざまな症状が現れることがあります。

【自分で気づける症状のチェックリスト】 気になる症状がないか、確認してみましょう。

  • □ わき腹や腰に痛みを感じる
  • □ お腹が張る感じ(腹部膨満感)がある
  • □ 便秘がちになった
  • □ お腹のあたりにしこりのようなものを触れる
  • □ 赤や茶色のおしっこ(血尿)が出る
  • □ 血圧が高くなった

これらの症状は、腫瘍が大きくなっているサインかもしれません。

特に注意が必要なのは、腫瘍の中にあるもろい血管が破れることです。 お腹の中で急に出血すると、突然の激しい腹痛や冷や汗、意識が遠のくといった危険な状態になるため、すぐに医療機関を受診する必要があります。

また、遺伝性の病気である結節性硬化症に伴う場合は、腎臓だけでなく、お肌など体の他の部分にも症状が出ることがあります。 信頼性の高い研究では、このタイプの腫瘍を小さくするお薬の有効性が示されています。 しかしその一方で、お肌の症状を含む、体に合わない反応(副作用)のリスクが高まることも報告されているため、治療は慎重に判断されます。

気になる症状がある場合は、自己判断せずに専門のクリニックに相談しましょう。

腎血管筋脂肪腫の検査・診断

腎血管筋脂肪腫は、症状がほとんどないため、健康診断などで偶然見つかることが多いです。 腫瘍の疑いがあるとわかったら、それがどんなものなのかを詳しく調べる検査が必要です。 本当に腎血管筋脂肪腫なのか、悪さをするタイプの腫瘍ではないかを確認していきます。

一般的に、次のようなステップで検査を進めます。

検査の種類

何を調べるための検査?

超音波(エコー)検査

腫瘍の有無、大きさ、場所を確認する最初の検査です。

CT検査・MRI検査

腫瘍の中身を詳しく見て、他の病気ではないか確かめます。

血液検査・尿検査

腎臓が元気に働いているかをチェックします。

まず、お腹にゼリーを塗って機械をあてる、痛みのない超音波(エコー)検査を行います。 この検査で、腫瘍の大きさや腎臓の中での位置を大まかに把握することができます。

次に、体の輪切りの写真を撮るCT検査やMRI検査で、腫瘍の内部をより詳しく調べます。 腫瘍の中に脂肪成分があるかを確認することで、腎細胞がんといった他の病気と区別します。

腫瘍が見つかっても、複数あったり若い方だったりした場合は、注意深く原因を探ります。 遺伝性の病気である「結節性硬化症」が隠れていないか、全身の状態を確認するためです。 この病気と診断されると、腫瘍を小さくする飲み薬での治療が選択肢になることがあります。 信頼性の高い研究では、このお薬で腫瘍の大きさが約半分に縮小したと報告されています。 そのため、原因を特定することは、今後の治療方針を決める上でとても重要になるのです。

腎血管筋脂肪腫の治療

腎血管筋脂肪腫が見つかっても、すぐに治療が始まるとは限りません。 多くの場合は、お体に悪影響がないかを確認しながら様子を見ていきます。 これを「経過観察」と呼び、定期的な検査で変化がないかをチェックします。

治療を考えるタイミング

しかし、腫瘍が大きくなると出血のリスクが高まるため治療が必要です。 一般的に、以下のような場合に治療を検討します。

項目

治療を検討する目安

腫瘍の大きさ

直径が4cmを超える

腫瘍内の血管の状態

血管にできたこぶ(動脈瘤)が5mmを超える

症状の有無

お腹や腰の痛み、出血などの症状がある

腫瘍が大きくなるということは、内部の血管ももろく、張りつめた状態になります。 そのため、何かのきっかけで破裂し、お腹の中で大出血を起こす危険があるのです。

主な治療法の種類

治療が必要と判断された場合、主に3つの選択肢があります。 患者さん一人ひとりの状態に合わせて、最適な方法を選んでいきます。

  • 動脈塞栓術(どうみゃくそくせんじゅつ) 足の付け根の血管からカテーテルという細い管を入れます。 腫瘍を栄養している血管まで進め、特殊な物質で栓をします。 腫瘍への栄養を断ち、兵糧攻めにして小さくする治療法です。
  • 手術 腫瘍だけを切り取る「部分切除術」が基本となります。 しかし、腫瘍が大きい場合や場所が悪い場合には、 腎臓ごと取り除く手術が必要になることもあります。
  • 薬物療法 遺伝性の病気である「結節性硬化症」に伴う場合に有効な治療です。 mTOR(エムトール)阻害薬という飲み薬を使います。 信頼性の高い研究では、この薬で腫瘍の大きさが約半分に縮小したと報告されています。 ただし、体に合わない反応のリスクも高まるため、慎重に治療を判断します。