腎梗塞

突然の背中の激痛や吐き気。「いつもの胃腸炎だろう」と軽く考えていませんか?その症状、実は腎臓の血管が詰まり、組織がダメージを受ける「腎梗塞」の危険なサインかもしれません。この病気は尿路結石など身近な病気と症状が酷似しているため、専門医でも診断が難しく、見過ごされやすいという特徴があります。

腎梗塞は、心房細動といった心臓の病気が原因で起こることが最も多いとされています。さらに、ある研究では他の病気の治療がきっかけとなり、約11.5%もの人に腎梗塞がみられたとの報告も。一度ダメージを受けた腎臓は元に戻らない可能性もあり、早期発見が何よりも重要です。

この記事では、静かに進行する腎梗塞の正体と、その原因や治療法について詳しく解説します。手遅れになる前に、ご自身の体を守るための知識を身につけましょう。

腎梗塞の概要

腎梗塞(じんこうそく)とは、腎臓に血液を送る大切な血管(腎動脈)が詰まってしまう病気です。血管が詰まると腎臓に酸素や栄養が届かなくなります。その結果、腎臓の組織がダメージを受け、働きが悪くなってしまいます。

腎梗塞は比較的まれな病気ですが、診断が難しいという特徴があります。突然の背中や脇腹の痛み、吐き気、熱といった症状は、他の病気でもよく見られるためです。

腎梗塞のポイント

  • どんな病気? 腎臓の血管が詰まり、腎臓の組織がダメージを受ける病気です。
  • なぜ気づきにくい? 症状が胃腸炎や尿路結石など、他の病気ととてもよく似ています。 時には、はっきりした症状がまったくない場合もあります。
  • 誰に多い? 心房細動といった不整脈など、心臓に病気がある方に起こりやすいとされています。

また、他の病気の治療がきっかけで発症することもあります。例えば、腎臓の血管にできたこぶ(腎動脈瘤)を治療する際です。ある研究では、この治療の副作用として約11.5%の方に腎梗塞がみられたと報告されています。しかし、そのうちの84%の方では、腎臓の機能は保たれたとされています。

一度ダメージを受けた腎臓の組織は、元に戻らないこともあります。梗塞の範囲が広い場合や、両方の腎臓に起こった場合は、透析治療が必要になる可能性もあります。そのため、すみやかに診断し、治療を始めることがとても重要です。

腎梗塞の種類

腎梗塞は、血管が詰まる原因によって大きく2つのタイプに分けられます。 原因によって治療の進め方が変わるため、この分類はとても重要です。 それぞれの特徴を理解し、適切な治療につなげていきましょう。

腎梗塞は、主に以下の2つのタイプに分けられます。

種類

どんなタイプ?

塞栓性(そくせんせい)

腎臓以外の場所でできた血のかたまりが、血液の流れに乗ってきて腎臓の血管を詰まらせるタイプです。

血栓性(けっせんせい)

腎臓の血管そのものに問題が起きて、そこでできた血のかたまりが血管を詰まらせるタイプです。

塞栓性腎梗塞(どこかから飛んでくるタイプ)

腎梗塞の中で最もよく見られるのが、この塞栓性のタイプです。 主な原因は「心房細動」という心臓の不整脈(脈が乱れる病気)です。 心臓が正しく動かないと、心臓の中で血のかたまりができやすくなります。 そのかたまりが血流に乗って腎臓まで運ばれ、血管を塞いでしまうのです。

血栓性腎梗塞(腎臓の血管で起こるタイプ)

こちらは腎臓の血管自体に原因があるタイプです。 動脈硬化で血管が傷ついたり、腎動脈解離で血管の壁が裂けたりします。 その結果、傷ついた部分に血のかたまりができ、血管を詰まらせます。 また、お腹を強くぶつけるなどのケガがきっかけになることもあります。

治療が原因で起こるケース

まれですが、他の病気の治療がきっかけで腎梗塞が起こることもあります。 例えば、腎臓の血管にできたこぶ(腎動脈瘤)を治療する際です。 ある研究では、この治療の副作用で約11.5%の方に腎梗塞がみられました。 しかし、そのうちの84%の方では腎臓の働きは保たれたと報告されています。

腎梗塞の原因

腎臓の血管が詰まってしまう原因は、大きく2つのパターンに分けられます。 前の章でご説明したタイプごとに、詳しい原因を見ていきましょう。

1. どこかから血の塊が飛んでくるケース(塞栓性)

腎梗塞の最も多い原因は、心臓でできた血の塊が原因となるものです。 特に「心房細動」という不整脈(脈のリズムが乱れる病気)が深く関係します。

  • 心房細動(しんぼうさいどう) 心臓が小刻みに震えることで、心臓内の血液の流れがよどみます。 その結果、血の塊(血栓)ができやすくなってしまうのです。 この血の塊が血流に乗り、腎臓の血管に流れ着いて詰まらせます。

2. 腎臓の血管そのもので問題が起こるケース(血栓性)

腎臓の血管自体にトラブルが起きて、血の塊ができてしまうこともあります。 血管が古くなって硬くなる「動脈硬化」などが代表的な原因です。

  • 動脈硬化(どうみゃくこうか) 血管の壁にコレステロールなどがたまり、道が狭く、もろくなります。 傷ついた血管の部分で血の塊ができ、血管をふさいでしまいます。
  • 腎動脈解離(じんどうみゃくかいり) 腎臓の血管の壁が、何らかの原因で裂けてしまう状態です。

3. 他の病気の治療がきっかけになることも

まれですが、他の病気の治療が腎梗塞の原因となることがあります。 例えば、腎臓の血管にできたこぶ(腎動脈瘤)を治療する際です。 ある研究では、この治療の副作用で約11.5%の方に腎梗塞がみられました。 しかし、そのうち84%の方では腎臓の働きは保たれたと報告されています。

このように原因は様々ですが、はっきりと特定できないケースも少なくありません。 ご自身の体の状態を知ることが、腎梗塞の予防や早期発見につながります。

腎梗塞の症状

腎梗塞の症状は、ある日突然あらわれることが多いのが特徴です。 しかし、そのサインは他のよくある病気と非常によく似ています。 そのため、見過ごされたり、診断が遅れたりすることも少なくありません。 また、はっきりした症状がまったくない「隠れ腎梗塞」もあります。

腎梗塞でみられる代表的な症状は、以下の通りです。

  • 突然の激しい痛み
    背中や腰、わき腹に、これまで経験したことのないような強い痛みを感じます。
    腎臓の組織に血液が届かず、ダメージを受けているサインです。
    腹痛として感じることもあり、非常に強い痛みを伴うことが多いです。
  • 吐き気・おう吐
    強い痛みは、体の防御反応として吐き気を引き起こすことがあります。
  • 発熱
    血液が届かなくなった腎臓の組織が傷つくと、体の防御反応として炎症が起こります。
    その結果、37.5度以上の熱が出ることがあります。
  • 血尿(けつにょう)
    尿に血液が混ざり、お茶のように色が濃くなったり、赤っぽくなったりします。
  • 血圧の上昇
    腎臓の血流が悪くなると、血圧を上げるホルモンが分泌されることがあります。
    その結果、急に血圧が高くなることがあります。

これらの症状は、尿路結石や胃腸炎などでも見られます。 そのため、症状だけで腎梗塞だと判断するのは非常に難しいのです。

まれですが他の病気の治療が原因で起こることもあります。 例えば、腎臓の血管にできたこぶを治療した際に起こるケースです。 ある研究では、治療を受けた方の約11.5%に腎梗塞が見られたとされます。 しかし、そのうち84%の方では腎臓の働きは保たれたと報告されています。

気になる症状があれば、「いつものこと」と自己判断はしないでください。 できるだけ早く医療機関を受診することが、腎臓を守るためにとても大切です。

腎梗塞の検査・診断

腎梗塞の症状は、他の多くの病気と似ているため見分けるのが難しいです。 そのため、正確に診断するためにいくつかの検査を組み合わせて判断します。 まるで探偵が証拠を集めるように、体のサインを丁寧に見つけていきます。

主に、以下のような検査を組み合わせて診断を行います。

検査の種類

調べること

血液検査

腎臓の細胞が壊れた時に血液中に出る酵素(LDH)や、炎症の度合いを示す白血球の数値などを確認します。

尿検査

尿に血液やタンパク質が混じっていないかを調べます。腎臓が傷ついているサインを見つけるための検査です。

画像検査

腎臓の血の流れを直接目で見て確認します。診断を確定させるために、特に造影CT検査がとても重要です。

心電図検査

腎梗塞の原因となりやすい心房細動といった、心臓のリズムの乱れ(不整脈)がないかを調べます。

これらの検査の中で、診断の決め手となるのが造影CT検査です。 造影剤というお薬を注射してCT撮影をすることで、血の流れがわかります。 血管が詰まって血が流れていない部分は、写真に白く映らないのです。 これにより、腎臓のどこがダメージを受けているかを正確に特定できます。

また画像検査は、腎梗塞の原因を探るためにも役立ちます。 例えば、腎動脈瘤(血管のこぶ)という病気が隠れていることもあります。 ある研究では、この腎動脈瘤を治療した際に約11.5%の方に腎梗塞がみられました。 しかし、そのうち84%の方では腎臓の働きは保たれたと報告されています。 このように原因をきちんと特定することが、その後の治療を決める上で大切です。

腎梗塞の治療

腎梗塞の治療目標は、2つあります。 一つは、腎臓の組織がこれ以上壊れるのを防ぎ、機能を守ることです。 もう一つは、新たな血の塊ができて再発するのを防ぐことです。

腎臓の細胞は一度ダメージを受けると元に戻りにくいため、時間との勝負です。 そのため、できるだけ早く治療を始めることがとても大切になります。 治療は主に、以下の3つの方法から、患者さんの状態に合わせて選びます。

治療法

どんな治療?

どんな時に選ばれる?(例)

薬物療法

血をサラサラにする薬(抗凝固薬)を使い、新しい血の塊ができるのを防ぎます。

すべての患者さんの基本となる治療です。

カテーテル治療

足の付け根などから細い管を血管に入れ、詰まった血の塊を薬で溶かしたり、吸い取ったりします。

発症してから、あまり時間が経っていない場合に有効です。

外科手術

お腹のケガで腎臓の血管が傷ついた場合などに、手術で血の流れを元に戻します。

ケガが原因の場合など、特別なケースで検討されます。

原因の病気への治療も重要です

腎梗塞の治療と同時に、原因となった病気の治療も進める必要があります。 例えば、原因の一つである腎動脈瘤(血管のこぶ)の治療です。 この場合、カテーテルを使った体への負担が少ない治療が行われることがあります。

ある研究報告によると、この治療の成功率は96%と非常に高いです。 治療の副作用で腎梗塞が起こることも約11.5%ありますが、そのうち84%の方では腎臓の機能は保たれるとされています。

もし腎臓の機能が大きく低下してしまった場合は、その働きを補うために血液透析という治療が必要になることもあります。 治療は基本的に入院して安静を保ちながら行われます。