脂肪肝

健康診断の結果に書かれた「脂肪肝」の三文字、見て見ぬふりをしていませんか?日本人男性の約4割、女性の約2割が該当するとされ、もはや誰にとっても無関係ではない国民病です。

しかし「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓は、異常があってもほとんどサインを出しません。症状に気づいたときには、より深刻な肝炎や、胃がん、食道がんへと進行しているケースも少なくないのです。

この記事では、10万人以上のデータを基に解明された脂肪肝の意外な原因から、すぐに始められる具体的な対策までを徹底解説します。手遅れになる前に、ご自身の体を守る知識を身につけましょう。

脂肪肝の概要

「脂肪肝」は健康診断の結果などでよく目にする言葉です。 日本人の男性の約4割、女性の約2割が脂肪肝といわれ、 もはや誰にとっても無関係ではない、身近な病気のひとつです。

具体的には、肝臓の細胞のうち5%以上に脂肪がたまった状態です。 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、異常があっても症状がほとんど出ません。 そのため、ご自身では気づかないうちに進行してしまうこともあります。

最近、脂肪肝と食事の関係を調べた大規模な研究がありました。 世界中の60の研究、10万人以上のデータをまとめたところ、 脂肪肝の人はそうでない人に比べ、1日の総カロリー摂取量が明らかに多いことがわかりました。

一方で、食事の栄養バランスは、脂肪肝のなりやすさとは直接関係がない可能性も示されています。 つまり、「何を食べるか」というよりも、「全体としてどれくらいの量を食べるか」が大切なのです。 ご自身の食事の総カロリーを一度見直してみましょう。

脂肪肝の種類

脂肪肝は、原因によって大きく2つの種類に分けられます。 ご自身の生活習慣を振り返り、どちらのタイプに近いかを知ることが大切です。 改善に向けた第一歩になります。

1. アルコール性脂肪肝

その名の通り、お酒の飲みすぎが原因で起こる脂肪肝です。 肝臓はアルコールを分解する工場のような役割をしています。 たくさんお酒を飲むと工場が働きすぎてしまい、中性脂肪がたまっていきます。

ある研究では、日常的にお酒を飲む習慣がある方では、 肝臓の病気が起こる割合が非常に高くなると報告されています。 この状態を放置すると「アルコール性脂肪性肝炎(ASH)」という、 肝臓が炎症を起こす、より深刻な病気に進んでしまうことがあります。

2. 非アルコール性脂肪肝(NAFLD)

お酒をほとんど、あるいは全く飲まないのに発症する脂肪肝です。 食べ過ぎや運動不足による肥満、糖尿病などが主な原因です。 こちらも進行すると、肝臓に炎症が起きる「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」になることがあります。

最近では、この脂肪肝を「MAFLD(マッフルディー)」と呼ぶことが増えました。 MAFLDは、胃がんや食道がんになる危険性を高める可能性が指摘されています。 また、肝臓に脂肪がたまっている方の多くは、膵臓にも脂肪がたまりやすいことがわかってきました。 ある調査では、脂肪肝の方の約85%に、膵臓の脂肪化も見られたと報告されています。

種類

主な原因

アルコール性脂肪肝

過度な飲酒

非アルコール性脂肪肝(NAFLD)

肥満、糖尿病、脂質異常症など

脂肪肝の原因

脂肪肝になる原因は、大きく2つに分けられます。 「お酒の飲みすぎ」と「お酒以外の生活習慣」です。 ご自身の生活を振り返り、どちらが当てはまるか考えてみましょう。

1. お酒の飲みすぎ

肝臓には、アルコールを分解するという大切な役割があります。 しかし、毎日たくさんお酒を飲み続けると肝臓が働きすぎてしまいます。 分解しきれないアルコールが中性脂肪に変わり、肝臓にたまってしまうのです。

ある調査では、アルコールが原因の肝臓の病気は、 お酒を飲む習慣のある方で非常に高い割合で起こることがわかっています。 特にアルコールに依存している状態の方では、 半数以上の方に何らかの肝臓の障害が見つかるともいわれています。

2. お酒以外の生活習慣

「お酒は飲まないから大丈夫」と思っていませんか? 実は、お酒を飲まない人でも脂肪肝になることは多いのです。 主な原因は食べ過ぎや運動不足による、カロリーの摂りすぎです。

また、次のような健康診断の項目も、脂肪肝のサインかもしれません。

  • 高い尿酸値
  • 尿酸値が高い人は低い人と比べて、 脂肪肝になる危険性が約1.88倍も高くなると報告されています。 実際に、尿酸値が高い人のうち約65%が脂肪肝を持っているというデータもあります。
  • お口の中の病気
  • 口の中にできる特定の病気(口腔扁平苔癬)があると、 脂肪肝のリスクが5倍以上高まる可能性も指摘されています。 このように、脂肪肝は様々な要因がからみあって起こるのです。

脂肪肝の症状

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、脂肪がたまってもサインを出しにくいです。 多くの方は、健康診断の血液検査などで初めて異常を指摘され、驚かれます。 しかし、「症状がないから大丈夫」と考えるのは注意が必要です。

肝臓にたまった脂肪が原因で炎症が起き、病気が進むと、 ようやく体はSOSのサインを出し始めます。 これらの症状に気づいたときは、病気が進行しているサインかもしれません。

  • 全身の倦怠感(けんたいかん)
  • 体が重く、なんとなくいつもだるい感じが続きます。
  • 右上腹部の違和感
  • お腹の右上のあたりに、鈍い痛みや張った感じがします。
  • 黄疸(おうだん)
  • 皮膚や白目の部分が黄色っぽく見える状態です。

また、脂肪肝は一見すると関係なさそうな体の変化とも関わっています。

  • お口の中のトラブル
  • ある研究では、お口の中に特定の病気(口腔扁平苔癬)があると、 脂肪肝になる危険性が約5.7倍も高くなると報告されています。 これは、頬の内側などにできる白いレース模様のできものです。
  • 膵臓(すいぞう)への影響
  • 脂肪肝の人は、膵臓にも脂肪がたまりやすいことがわかっています。 ある調査では、脂肪肝の方の約85%に、膵臓の脂肪化が見られました。

自覚症状がなくても、健康診断の結果やお口の中など、 体の小さな変化にも注意を向けてみましょう。 気になることがあれば、早めに医師へ相談することがとても大切です。

脂肪肝の検査・診断

脂肪肝はほとんど症状が出ないため、多くの方は検査で初めて気づきます。 健康診断などで「肝機能の数値が高い」と指摘されたら、 それは体からの大切なSOSサインかもしれません。 ここでは、脂肪肝を調べるための検査について解説します。

血液検査

まず最初に行うのが血液検査です。 肝臓の状態を知るための手がかりを探します。 健康診断でもおなじみの項目ですが、改めて意味を知っておきましょう。

検査項目

主な意味

AST(GOT), ALT(GPT)

肝臓の細胞がどれくらい壊れているかを示す数値です。

γ-GTP

お酒や薬などで肝臓に負担がかかると高くなります。

中性脂肪・コレステロール

脂質の代謝、つまり体の脂質のバランス状態を確認します。

これらの数値から、肝臓がダメージを受けていないかを推測します。

画像検査

血液検査で異常が見つかった場合は、画像検査で肝臓を直接観察します。 肝臓に脂肪がたまっている様子を目で見て確認するためです。

  • 腹部超音波(エコー)検査
  • お腹にゼリーを塗って機械をあてる、痛みのない検査です。 肝臓の脂肪のたまり具合や、形に異常がないかを確認します。
  • CT検査・MRI検査
  • 超音波検査よりも、さらに詳しく肝臓の状態を見ることができます。
  • 超音波エラストグラフィー検査
  • 肝臓のかたさを測る特殊な検査です。 脂肪肝から肝硬変へと病気が進んでいないかを調べます。

特に注意が必要なケース

脂肪肝の検査では、他の病気との関連も重要になります。 例えば、B型肝炎ウイルスに感染している方が脂肪肝を合併すると、 将来的に肝がんへ進むリスクが約1.6倍に高まるという報告があります。

また、お口の中に白いレース模様のできもの(口腔扁平苔癬)がある方は、 脂肪肝のリスクが約5.7倍も高くなる可能性が指摘されています。 気になることがあれば、早めに医師へ相談することが大切です。

脂肪肝の治療

脂肪肝の治療で最も大切なのは、お薬に頼るのではなく、毎日の生活習慣を見直すことです。主に「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つのアプローチで改善を目指します。

1. 食事療法

脂肪肝の改善には、食事でとる総カロリー量をへらすことがとても重要です。 世界中の多くの研究をまとめた分析でも、脂肪肝の人はそうでない人に比べ、 食事からとるカロリーの総量が多いことが報告されています。 特定の栄養素のバランスを気にするよりも、まずは食事全体の量を調整しましょう。

【食事のポイント】

  • 目標
  • 現在の体重から7%の減量を目指しましょう。
  • 方法
  • 腹八分目を心がけ、食べ過ぎないようにします。
  • 野菜から先に食べる「食べ順」で血糖値の上昇をおだやかにします。
  • 間食や甘いジュース、アルコールをひかえましょう。

2. 運動療法

食事の見直しとあわせて、運動を取り入れることでより効果が期待できます。 きつい運動を一度だけ行うよりも、続けられることが大切です。

【運動のポイント】

  • 種類
  • ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動がおすすめです。
  • 目標
  • 少し汗ばむくらいの強さで、週に合計150分以上を目指しましょう。

3. 薬物療法

現在のところ、脂肪肝そのものに直接効くお薬はありません。 しかし、脂肪肝の原因となる糖尿病や脂質異常症、高血圧などがある場合は、 それらの病気に対するお薬を使って治療を行います。

例えば、糖尿病のお薬のなかには、肝臓の数値を良くしたり、 体重やコレステロールの値を改善したりする効果が期待できるものもあります。 これらのお薬は、あくまで生活習慣の改善を補助するものです。 食事や運動を基本とした治療を続けることが、何よりも大切になります。