胆のう摘出後症候群

胆のう摘出後症候群の概要

胆石などで胆のうを取りのぞく手術を受けた後、 お腹の調子が良くならなかったり、 新しい症状が出たりすることがあります。

この状態を「胆のう摘出後症候群」と呼びます。 手術で原因を取りのぞいたはずなのに、 なぜかお腹の痛みが続いたり、 下痢や吐き気といった症状が新たに出たりします。

この症候群のポイントをまとめました。

  • どんな人に起こる? 胆のうを取りのぞく手術を受けた方です。
  • どのくらいの割合で起こる? 手術を受けた方のうち、最大で47%の方に 何らかの症状が出ると報告されています。 これは、およそ2人に1人に近い数字です。
  • なぜ治療がむずかしいの? 1947年から知られている状態ですが、 原因や治療法について、専門家の間でも まだはっきりとした意見の一致がありません。

この病気が分かりにくいのは、 原因が一つではないことや、 人によって症状の出方が違うためです。

そのため、決まった検査や治療の手順がなく、 患者さん一人ひとりのお話を丁寧にお伺いして、 その方に合った方法を考えることが重要になります。

胆のう摘出後症候群の種類

胆のう摘出後症候群には、風邪のA型やB型のように、 はっきりと決まった種類の名前があるわけではありません。

これは、ひとつの病気というよりも、 胆のうを取った後に起こる様々な症状の集まりを指す言葉だからです。

原因が一つではなく、複数の要因がからみあっているため、 お医者さんは原因の場所に注目してタイプを分けて考えます。

原因は、胆汁の通り道である「胆道」にある場合と、 それ以外の消化器官にある場合に大きく分けられます。

原因の場所

具体的な原因の例

胆道に原因があるタイプ

・胆管に残ってしまった小さな石

・胆汁の出口を調節する筋肉の不調

・手術による胆管の変化や傷

胆道以外に原因があるタイプ

・胃や十二指腸、大腸などの病気

・胆のうがなくなったことによる消化の変化

このように、胆のう摘出後症候群は原因が複雑です。

胆のうの手術がきっかけとなって、 もともとあった胃腸の不調がはっきりすることもあります。

そのため、お腹の症状が続く場合は、 胆道だけではなく他の消化器官にも目を向けて、 丁寧に原因を探していくことが重要になります。

胆のう摘出後症候群の原因

胆のうを取ったのに、お腹の症状が続くのはなぜでしょう。 原因は一つではなく、複数の理由が複雑にからみあっています。

専門家の間でも、原因や治療法について、 まだはっきりと意見が一致していないのが現状です。 そのため、一人ひとりの原因を丁寧に探すことが重要です。

主な原因は、次の4つに大きく分けられます。

  • 胆汁(たんじゅう)の流れの変化 胆のうは、肝臓で作られた胆汁を一時的にためる場所です。 胆のうがなくなると、胆汁が直接腸に流れ続けるようになります。
    1. 胆汁の出口の筋肉の不調 胆汁の出口には、流れを調節する筋肉の蛇口があります。 この筋肉がうまく働かないと、痛みが出ることがあります。
    2. 胆汁による下痢 大量の胆汁が大腸まで届くと、腸が刺激されてしまい、 下痢の原因になることがあります。
  • 手術そのものによる影響 手術が体に与える変化が、症状を引き起こすことがあります。
    1. 組織の癒着(ゆちゃく) 手術した部分のまわりの組織がくっついてしまい、 それが痛みの原因になることがあります。
    2. 胆道の傷 まれに、手術の際に胆汁の通り道である胆道が傷つき、 症状が出ることがあります。
  • 胆石(たんせき)の取り残し 手術の時に、胆管の中にとても小さな石が残ってしまうことです。 この残った石が、痛みの原因になる場合があります。
  • もともとあった他の病気 胃や十二指腸、大腸などにもともと病気が隠れていて、 胆のうの手術をきっかけに症状がはっきりすることがあります。

胆のう摘出後症候群の症状

胆のうを取る手術の後、様々な症状が出ることがあります。 この症候群の症状は、人によって出方が全く違うのが特徴です。 手術前と同じ痛みが続く方もいれば、新しい症状に悩む方もいます。

主な症状には、お腹の痛みや消化に関する不調があります。

  • お腹の痛みや違和感 みぞおちや、右のあばら骨の下あたりに痛みを感じます。 「重たい感じがする」「差し込むように痛む」など、 痛みのあらわれ方も人によって異なります。
  • 吐き気や胃もたれ 特に、天ぷらなどの脂っこい食事をとった後に、 むかむかしたり、胃が重く感じたりすることがあります。
  • 下痢 胆汁の流れが変わり、大腸が刺激されることで起こります。 手術の後から、便がゆるくなったと感じる方がいます。
  • 黄疸(おうだん) 胆汁の流れが悪くなると、体や白目の部分が黄色くなります。 これは、体に異常が起きているサインの可能性があります。

これらの症状は、手術後すぐに出ることもあれば、 何年も経ってから現れることもあり、タイミングも様々です。

【手術後の体調チェック】 ご自身の症状と比べてみてください。

□ みぞおちや右のわき腹に痛みや重さがある □ 脂っこいものを食べると胃がもたれる □ 以前よりお腹がゆるくなった、下痢が続く □ 体や白目が黄色っぽくなった気がする □ お腹が張ってガスがたまりやすい

胆のう摘出後症候群の症状は一つとは限りません。 気になる症状があれば、どんな小さなことでも我慢せず、 必ずお医者さんに相談してください。

胆のう摘出後症候群の検査・診断

胆のう摘出後症候群の診断は、まるでパズルのようです。 原因が人によって様々で、決まった検査手順がないためです。

専門家の間でも、診断方法がまだ確立していないのが現状です。 そのため、いくつかの検査を丁寧に行い、 原因のピースを一つひとつ集めていくことが重要になります。

まずは、体に負担の少ない検査から始めます。

  • 血液検査 採血をして、肝臓や膵臓の数値に異常がないか、 また、体の中で炎症が起きていないかなどを確認します。
  • 腹部超音波(エコー)検査 お腹にゼリーをぬり、機械をあてて中の様子を見ます。 胆管に石が残っていないかなどを調べることができる検査です。

これらの検査で原因がはっきりしない場合は、 より詳しく調べるために、次のような検査を追加します。

  • CT検査やMRI(MRCP)検査 体の断面図を撮影して、お腹の中を隅々まで調べます。 超音波検査では見つけにくい小さな石や、 胆管の形の変化を発見するのに役立ちます。
  • 内視鏡検査 胃カメラのように口から内視鏡を入れて、 胆汁の通り道を直接観察することがあります。

これらの検査で胆汁の通り道に異常が見つからない場合は、 胃や大腸など、他の消化器官の病気が隠れていないか、 さらに検査を進めることもあります。

一人ひとりのお話と検査結果を総合的に判断し、 根気強く原因を探っていくことが、診断への近道となります。

胆のう摘出後症候群の治療

胆のうを取った後の不調の治療は、原因によって方法が全く異なります。 決まったお薬や治療法があるわけではないのが、この症候群の特徴です。

専門家の間でも、まだ治療法について意見が一致していないのが現状です。 そのため、一人ひとりの状態に合わせた治療計画を立てることが重要になります。 原因に合わせて、主に次のような治療法を組み合わせて行います。

治療の種類

具体的な内容

お薬での治療

・胆汁が原因で起こる下痢には、その働きを調整するお薬を使います。

・胆管に残ったとても小さな石には、石を溶かすお薬が有効な場合があります。

内視鏡を使った治療

・胃カメラのような細い管を使い、胆管に残った石を取り除きます。

・胆汁の出口の筋肉(オッディ括約筋)の動きが悪い場合は、

その筋肉を少し広げて、胆汁の流れをスムーズにすることがあります。

食事の工夫

・脂肪分の多い食事は、症状を悪化させることがあります。

・天ぷらや揚げ物、脂身の多いお肉などを控える食事の見直しも、

大切な治療の一つです。

手術

・まれですが、胆管に傷があったり、周りの組織とくっついていたり

(癒着)している場合は、再度手術が必要になることもあります。

原因がはっきりしない場合でも、諦める必要はありません。 まずはお腹の痛みや下痢など、今あるつらい症状を和らげる治療から始めます。

どのような治療が最適なのかは、精密な検査の結果をもとに判断します。 大切なのは、あなたに合った治療法を、一緒に根気強く探していくことです。