肝膿瘍
なんだか熱っぽい、右わき腹が痛む…。その症状、ただの風邪や胃の不調だと思っていませんか?もしかすると、肝臓の中に膿がたまる「肝膿瘍」という、命に関わる病気のサインかもしれません。肝臓が感染と戦う「戦場」と化している状態です。
この病気は決して侮れず、ある報告では死亡率が約9%にも上るとされています。原因は大きく「細菌」と「アメーバ」の2種類に分けられ、虫垂炎から広がるケースもあれば、近年は海外渡航歴がなくても感染するアメーバ性のものも報告されています。
原因が異なれば治療法も全く変わるため、正しい知識を持つことが非常に重要です。この記事では、肝膿瘍の症状の見分け方から、原因ごとの適切な治療法までを詳しく解説します。あなたの不調の正体を知り、早期発見につなげてください。
肝膿瘍の概要
肝膿瘍(かんのうよう)は、肝臓の中に膿(うみ)がたまる病気です。 肝臓は体の中でも特に大きく、重要な働きを担う臓器の一つです。
膿とは、体内に侵入した細菌などと、体を守る免疫細胞が戦った結果、 生じる液体状の物質のことを指します。 つまり、肝臓が感染と戦っている戦場のような状態になっているのです。
この病気は、原因となる病原体の違いによって、 主に次の2つの種類に分けられます。 この分類は、治療方針を決める上で非常に重要になります。
- 細菌性肝膿瘍
- 胆のう炎や虫垂炎(いわゆる盲腸)など、 肝臓の近くにある臓器の感染が原因で起こることがあります。
- 特に糖尿病などの持病がある方は、体の抵抗力が落ちているため、 急に重症化するおそれがあり、注意が必要です。
- アメーバ性肝膿瘍
- 赤痢アメーバという原虫(寄生虫の一種)が、 汚染された食べ物や水と一緒に口から入ることで感染します。
- かつては海外渡航歴のある方に多い病気でしたが、 近年は国内での感染も報告されています。
肝膿瘍は適切な治療を行わないと、命に関わることもある病気です。 ある報告では、死亡率が約9%とされており、決して侮れません。 発熱や右上腹部の痛みなど、気になる症状があれば、 すぐに医療機関を受診することが大切です。
肝膿瘍の種類
肝膿瘍は、原因となる病原体の違いによって、 主に2つの種類に分けられます。
原因が異なれば治療法も全く変わるため、 どちらの種類なのかを正確に見極めることが非常に重要です。
細菌性肝膿瘍
細菌が原因となり、肝臓に膿がたまってしまう状態です。 肝臓の近くにある胆のうや、虫垂(いわゆる盲腸)など、 お腹の中の病気が原因で起こることがあります。
- 原因となる細菌 最も多いのは大腸菌です。 近年では、クレブシエラ・ニューモニエという菌によるものも増えています。
- 感染の広がり方 胆のう炎や虫垂炎など、お腹の中の感染症が、 血液の流れに乗って肝臓へと運ばれてしまいます。
特に糖尿病などの持病がある方は、体の抵抗力が落ちているため、 急に重症化しやすく、注意が必要です。
アメーバ性肝膿瘍
赤痢アメーバという原虫(とても小さな寄生虫)が、 原因となって起こる肝膿瘍です。
- 原因と感染ルート 赤痢アメーバに汚染された食べ物や水を口にすることで感染します。 口から入ったアメーバは腸で炎症を起こし、 そこから血管を通って肝臓にたどり着き、膿瘍を作ります。
以前は海外渡航歴のある方に多い病気でしたが、 近年では性的接触によって国内で感染する例も報告されています。
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種類 |
原因 |
主な感染ルート |
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細菌性肝膿瘍 |
細菌<br>(大腸菌など) |
・胆のう炎や虫垂炎など、<br> お腹の病気から広がる |
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アメーバ性肝膿瘍 |
赤痢アメーバ<br>(原虫) |
・汚染された飲食物の摂取<br>・性的接触 |
肝膿瘍の原因
肝膿瘍は、肝臓に膿がたまってしまう病気です。 原因は大きく2つに分けられ、感染ルートが異なります。 原因によって治療法が全く違うため、特定が非常に重要です。
細菌が原因の場合(細菌性肝膿瘍)
主に、お腹の中にもともといる細菌が原因となって起こります。 体の抵抗力が落ちたときなどに、細菌が肝臓で増えてしまいます。
- 肝臓の近くの臓器からの感染 胆のうや胆管は、肝臓と隣り合っている臓器です。 胆石症などをきっかけに炎症(胆のう炎など)が起こると、 細菌が直接肝臓へと広がってしまうことがあります。
- 血液を通じた感染 虫垂炎(いわゆる盲腸)など、肝臓から離れた場所の感染でも、 原因菌が血液の流れに乗って肝臓に運ばれ、膿瘍を作ります。
原因菌として最も多いのは、お腹の中にいる大腸菌です。 また、糖尿病の持病がある方は、特に注意が必要です。 クレブシエラ・ニューモニエという菌により、重症化しやすくなります。 血糖値が高いと、体を守る免疫の働きが弱まるためです。
アメーバが原因の場合(アメーバ性肝膿瘍)
こちらは「赤痢アメーバ」という寄生虫の一種が原因です。 体の外から、口を通して体内に侵入してきます。
- 食べ物や水からの感染 赤痢アメーバに汚染された食べ物や生水を口にすることで、 感染が成立します。
- 腸から肝臓への感染 口から入った赤痢アメーバは、まず大腸の壁で増殖します。 そこで炎症を起こした後、血液の流れに乗って肝臓へと運ばれ、 そこで膿のたまりを作ってしまうのです。
以前は海外渡航歴のある方に多い病気でした。 しかし近年、海外渡航歴のない方でも感染が報告されています。 性的接触をきっかけに感染する例が増えているためです。
肝膿瘍の症状
肝膿瘍になると、体にさまざまなサインが現れます。 風邪や胃腸の不調と似た症状もあるため注意が必要です。 しかし、特徴的なサインを知ることで早期発見につながります。
肝膿瘍で最もよく見られる症状は「発熱」と「腹痛」です。
- 発熱 38.5度を超えるような高い熱が特徴です。 体の中で免疫が細菌と戦っているために起こります。 悪寒(寒気)や、体がガタガタと震えることもあります。 この熱は、10日以上も続く場合があります。
- 右わき腹の痛み(右季肋部痛) 右の肋骨の下あたりに痛みを感じます。 肝臓にできた膿のかたまりが腫れて、 肝臓を包む膜を圧迫するために生じる痛みです。
これらの他にも、以下のような症状がないか確認してみましょう。 症状は2週間から1ヶ月ほどかけて、ゆっくり現れることもあります。
【肝膿瘍の症状チェックリスト】
- 38.5度以上の高熱が続く
- 寒気がして、体がブルブルと震える
- 右のわき腹や、みぞおちのあたりが痛む
- 食欲がわかない、または吐き気がある
- 体全体が重く、強いだるさを感じる(倦怠感)
- 特に理由がないのに体重が減ってきた
人によっては、症状がはっきりと出ないまま経過することもあります。 また、肝臓の周りに水がたまり、胸やお腹の張りを自覚することも。 気になる症状があれば、決して自己判断せず、速やかに医療機関を受診してください。
肝膿瘍の検査・診断
肝膿瘍が疑われる場合、原因を正確に突き止めることが重要です。 原因が細菌かアメーバかで、治療法が全く異なるからです。 そのため、いくつかの検査を組み合わせて診断を進めていきます。
まず、医師が症状や生活習慣について詳しくお話を伺います。 これを「問診」といい、診断の重要な手がかりを探す時間です。 少し聞きにくい質問をすることもありますが、ご協力をお願いします。
- 問診で確認すること
- 症状の経過 いつから熱や痛みがあるか、下痢の有無などを確認します。
- 海外への渡航歴 アメーバ性肝膿瘍は、特定の地域での感染リスクがあります。
- 持病の有無 糖尿病などの病気は、細菌性肝膿瘍の重症化に関わります。
- 性的接触歴 国内でのアメーバ感染の原因として考えられるためです。
次に、体の中の状態を客観的に調べる検査を行います。
- 血液検査
- 体の中で炎症が起きているか(CRPや白血球数)を調べます。
- 肝臓の機能に異常がないか(肝胆道系酵素)も確認します。
- アメーバが原因か調べるため、専用の抗体検査も行います。
- 画像検査
- 腹部超音波(エコー)検査 体に負担の少ない検査で、膿のかたまりの有無を確認します。
- CT検査 体を輪切りにしたような画像で、膿瘍の状態を詳しく調べます。 造影剤を使うと、膿瘍の輪郭がより鮮明に映し出されます。
最終的な診断のために、直接膿を抜き取って調べることもあります。
- 膿瘍の穿刺(せんし)
- 画像で場所を確認しながら、体の外から細い針を刺します。
- 膿を直接抜き取り、原因が細菌かアメーバかを特定します。
- 細菌性は腐敗臭、アメーバ性は無臭でチョコレート状です。
これらの検査結果を総合的に判断し、診断を確定させます。 正確な診断こそが、適切な治療への第一歩となるのです。
肝膿瘍の治療
肝膿瘍の治療は、原因によって方法が全く異なります。 原因が細菌かアメーバかを見極め、適切な治療を選ぶことが重要です。 どちらも基本はお薬による治療ですが、状況に応じて処置も行います。
細菌が原因の場合(細菌性肝膿瘍)
細菌を退治するための「抗菌薬(抗生物質)」を使用します。 治療は入院して行うことが多く、2段階で進めるのが一般的です。
- 点滴での治療 まずは効果が早く体に行き渡るように、点滴で抗菌薬を投与します。 高熱などのつらい症状を、速やかに和らげることを目指します。
- 飲み薬での治療 症状が落ち着いてきたら、飲み薬に切り替えて治療を継続します。
点滴と飲み薬を合わせ、治療期間は4〜6週間ほどかかります。 症状が良くなっても、自己判断でお薬をやめないことが非常に大切です。
アメーバが原因の場合(アメーバ性肝膿瘍)
赤痢アメーバという寄生虫に効く「抗原虫薬」を使用します。 メトロニダゾールというお薬を、7〜10日間ほど飲み続ける治療です。
この治療中は、アルコールを絶対に飲まないでください。 薬の効果が弱まったり、ひどい吐き気などの副作用が出たりします。 治療が終わってからもしばらく、1週間は禁酒を続ける必要があります。
膿を出す処置(ドレナージ)
お薬だけでは治りにくい場合は、膿を直接出す処置を行います。 以下のような場合に、「経皮経肝ドレナージ」という処置を検討します。
- 膿のかたまりが5cm以上と大きい場合
- お薬を使っても、なかなか熱が下がらない場合
- 膿瘍が破裂しそうな危険がある場合
これは、超音波などで場所を確認しながら、お腹の外から細い管を刺し、 肝臓にたまった膿を体の外へ出す治療法です。 膿を排出することで、熱などの症状が速やかに改善する効果が期待できます。
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種類 |
主な治療薬 |
治療期間の目安 |
補足 |
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細菌性 |
抗菌薬(抗生物質) |
4〜6週間 |
・最初は点滴、後に飲み薬<br>・膿が大きい場合はドレナージも |
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アメーバ性 |
抗原虫薬 |
7〜10日間 |
・治療中と治療後1週間は禁酒<br>・破裂の危険があればドレナージも |










