糖尿病ケトアシドーシス
糖尿病をお持ちの方や、ご家族に糖尿病の方がいる方へ。もし、急な吐き気や腹痛、意識がぼんやりするなどの症状が現れたら、それは命にかかわる「糖尿病ケトアシドーシス」のサインかもしれません。
体内でインスリンが不足し、酸性の「ケトン体」が異常に増えるこの状態は、特に1型糖尿病の方に多く見られますが、最近では新型コロナウイルス感染症との関連も指摘されています。COVID-19に感染したお子さんや若い方では、糖尿病ケトアシドーシスになるリスクが約2.5倍高まる可能性があり、特に0歳から11歳のお子さんでは注意が必要です。
この記事では、糖尿病ケトアシドーシスの危険性とその原因、早期発見のポイントを詳しく解説。大切な命を守るための知識を身につけ、適切な対応に繋げましょう。
糖尿病ケトアシドーシスの概要
糖尿病ケトアシドーシスは、糖尿病の病状が急激に悪化し、命にかかわるほど危険な状態です。体の中でエネルギーが足りなくなり、体脂肪を無理に分解することで「ケトン体」という酸性の物質が血液に増えすぎてしまう病気です。特に、血糖値を下げるインスリンというホルモンの働きが不足している1型糖尿病の方に多く起こります。
インスリンの注射を忘れてしまったり、かぜなどの感染症にかかったり、強いストレスを感じたりすると、体に必要なインスリンの量が急に増えることがあります。この時、インスリンが足りないと、体が正常に動かず、糖尿病ケトアシドーシスになってしまう危険性があるのです。この状態になると、吐き気や腹痛が起きたり、ぼーっとしたり、ひどい場合は意識を失って倒れたりすることもあります。このような症状が出た場合は、すぐに病院での治療が必要です。
最近では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかることと、糖尿病ケトアシドーシスとの関係についても、さまざまな研究でわかってきたことがあります。例えば、新型コロナウイルスに感染したお子さんや若い方では、感染していないお子さんと比べて、新しく1型糖尿病を発症する危険性が高くなることが示されています。
さらに、新型コロナウイルスに感染すると、お子さんや若い方が糖尿病ケトアシドーシスになるリスクが、およそ2.5倍高くなる可能性も指摘されています。特に0歳から11歳のお子さんで、この危険性が高まる傾向が見られますので、保護者の方々は特に注意が必要です。
また、新型コロナウイルスに感染した小児の患者さんでは、もともと糖尿病を患っていて、なおかつ糖尿病ケトアシドーシスを併発している場合に、「ムコール症」という非常にまれな、しかし命に関わる危険なカビの感染症にかかりやすいことも報告されています。ムコール症は進行がとても速く、治療が難しい病気で、残念ながら命を落としてしまうことも少なくありません。
このように、糖尿病ケトアシドーシスは非常に重篤な状態であり、特に新型コロナウイルス感染症との関連も注目されています。糖尿病をお持ちの方や、ご家族に糖尿病の方がいる場合は、体の変化にいつも気を配りましょう。少しでも異変を感じたら、ためらわずにすぐに医療機関を受診することが大切です。特に、ウイルス感染後に体調が優れない時や、お子さんの体調で気になることがあれば、迷わずに医師に相談してくださいね。
糖尿病ケトアシドーシスの種類
糖尿病ケトアシドーシスは、血糖値を下げるインスリンというホルモンが、体の中でとても足りなくなることで起こる病気です。この危険な状態は、大きく分けていくつかの種類があります。患者さん一人ひとりの状況によって、発症の仕方が異なるため、それぞれのタイプを知っておくことが大切です。
1型糖尿病の方に起こりやすいタイプ
まず、一番多く見られるのは「1型糖尿病」という病気を持っている方で起こるケースです。1型糖尿病の方は、体のインスリンを作る工場である膵臓が壊れてしまい、インスリンがほとんど作られません。
そのため、もしインスリンの注射をうつのを忘れてしまったり、かぜなどの感染症にかかって体に強いストレスがかかったりすると、あっという間にインスリンが足りなくなります。体がエネルギー不足となり、急に血糖値が上がって、糖尿病ケトアシドーシスになってしまうのです。このタイプは、特に若い方に多く見られます。
2型糖尿病の方にも起こるタイプ
次に、「2型糖尿病」の方にも、糖尿病ケトアシドーシスは起こることがあります。2型糖尿病では、体の中でインスリンが全く作られないわけではありません。しかし、その働きが悪くなったり、必要な量よりも少なくなったりします。
普段はなんとかバランスが取れていても、重い感染症にかかったり、大きな手術を受けたりするなど、体にとても大きな負担がかかると、急激にインスリンが足りなくなり、糖尿病ケトアシドーシスになる危険性があるのです。このような場合も、私たちは細心の注意を払って患者さんをサポートしています。
新しいがん治療薬が原因となるタイプ
最近では、今までとは違う理由で糖尿病ケトアシドーシスになる方もいらっしゃいます。それは、がんの治療に使われる「免疫チェックポイント阻害剤(めんえきチェックポイントそがいざい)」という、少し特殊なお薬が関係しています。
このお薬は、がん細胞と戦う体の免疫の力を強める効果があります。しかし、副作用として体の免疫が自分の細胞を攻撃してしまうことがあります。この時、まれにインスリンを作る膵臓の細胞が攻撃されてしまい、急にインスリンが作れなくなって、新しく糖尿病を発症し、それが引き金となって糖尿病ケトアシドーシスになるケースが報告されているのです。
特に、ペムブロリズマブという免疫チェックポイント阻害剤を単独で使った患者さんの約4割で、体自身の免疫が関わる糖尿病と、それに伴う糖尿病ケトアシドーシスが見られたという研究結果があります。このことから、このタイプは従来の化学療法と比べて、新たに糖尿病や糖尿病ケトアシドーシスが発症することと強く関連すると考えられます。
このようなお薬による糖尿病ケトアシドーシスは、従来のタイプとは少し異なるため、私たちも治療を受けている患者さんの変化には特に注意して見ています。免疫チェックポイント阻害剤を使った後に、なんだか体調がおかしいなと感じたら、すぐに担当の先生に相談してください。
免疫治療の後に糖尿病ケトアシドーシスになる詳しい仕組みについては、今も世界中で研究が進められています。ご自身の体がいつもと違うと感じた時は、遠慮なく医療機関を受診し、医師に相談してくださいね。早めの対応が、体を守るためにとても大切です。
糖尿病ケトアシドーシスの原因
糖尿病ケトアシドーシスは、体がエネルギー不足となり、危険な状態に陥る病気です。 この状態は、主にインスリンというホルモンが、体の中で足りなくなることで起こります。 インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込むための「鍵」のような役割を果たしています。 この鍵が不足すると、細胞はブドウ糖を使えなくなり、エネルギー源として脂肪を分解し始めます。 その結果、「ケトン体」という酸性の物質が増えすぎてしまうのです。
このインスリン不足が起こる原因は、いくつか考えられます。 ご自身の体の変化にいつも気を配り、どんな時に危険が高まるのかを知ることが大切です。
- インスリン治療の中断 1型糖尿病の方がインスリン注射を自己判断でやめてしまうと、 体内のインスリンがゼロに近くなり、急激に血糖値が上がります。 これは、体にとって非常に危険な行為であり、 命に関わる事態を招くことがありますので、決して自己判断で中断しないでください。
- 体の不調(シックデイ) 熱が出たり、お腹を壊したり、体が強いストレスを感じたりする日を 私たちは「シックデイ」と呼んでいます。 このような時、体はいつも以上にインスリンを必要とします。 シックデイの対応が適切でないと、インスリンが足りなくなり、 糖尿病ケトアシドーシスにつながることがあります。 体調が悪い時は、迷わずに医療機関にご相談ください。
最近の研究では、糖尿病の治療に使われる特定のお薬や、感染症、がんの治療薬も原因となることが分かってきました。 これらの情報は、患者さんがご自身の体を守るために、ぜひ知っておいていただきたい大切なことです。
- SGLT2阻害薬の使用 この薬は、おしっこから糖を体の外に出すことで、血糖値を下げる効果があります。 しかし、研究によると、この薬を使うことで糖尿病ケトアシドーシスになるリスクが、 プラセボ(偽薬)を使った場合と比べて、約2倍に上がることが報告されています。 特に、慢性的な腎臓の病気をお持ちの方(慢性腎臓病の患者さん)では、 そのリスクがより高くなる可能性がありますので、注意が必要です。 また、この薬の使用により、体の水分が減ってしまう「体液量減少」にも、 注意していただく必要があります。
- がん治療薬「免疫チェックポイント阻害剤」 がんの治療で使う「免疫チェックポイント阻害剤」という、新しいタイプのお薬があります。 この薬は、体自身の免疫力を高めてがん細胞と戦わせるものです。 しかし、まれに体の免疫が、インスリンを作る膵臓の細胞を攻撃してしまうことがあります。 その結果、急にインスリンが作れなくなり、新しく糖尿病を発症し、 それがきっかけで糖尿病ケトアシドーシスになるケースが報告されています。 ある研究では、ペムブロリズマブという免疫チェックポイント阻害剤を単独で使った患者さんの 約4割で、自己免疫性の糖尿病とそれに伴う糖尿病ケトアシドーシスが発症したと報告されています。 がん治療中に何か体調の変化を感じたら、すぐに担当の先生に相談してください。
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 新型コロナウイルス感染症にかかることも、糖尿病ケトアシドーシスの一因となることが 分かってきました。 特に、感染していないお子さんと比べて、新型コロナウイルスに感染したお子さんや若い方では、 新しく1型糖尿病を発症するリスクが高まることが示されています。 さらに、新型コロナウイルスに感染すると、お子さんや若い方が糖尿病ケトアシドーシスになる危険性が、 およそ2.5倍高くなる可能性も指摘されています。 特に0歳から11歳のお子さんで、この危険性が高まる傾向が見られますので、 保護者の方々は十分な注意が必要です。
このように、糖尿病ケトアシドーシスは、さまざまな原因で起こり得る危険な病気です。 ご自身の体の変化にいつも気を配り、何か異変を感じたら、ためらわずにすぐに医療機関を受診することが、 ご自身とご家族の健康を守るために最も大切なことです。 特に、ウイルス感染後に体調が優れない時や、服用しているお薬で気になることがあれば、 迷わず医師に相談してくださいね。
糖尿病ケトアシドーシスの症状
私たちの体は、危険な状態になると、さまざまな「SOSサイン」を出して教えてくれます。糖尿病ケトアシドーシスは、命に関わる危険な状態ですので、このSOSサインに早く気づき、適切に対応することが、体を守るために欠かせません。
体からの初期のSOSサイン
糖尿病ケトアシドーシスが始まったばかりの時には、次のようなサインが見られることが多いです。体が水分不足になり、血液が酸性に傾き始めることで、これらの症状が起きてきます。
- 体がだるい、疲れやすいと感じる – 普段よりも体が重く感じたり、すぐに疲れてしまったりすることがあります。 – これは、体がエネルギーをうまく使えなくなっているためです。
- 喉がひどく渇く – 水を飲んでも飲んでも喉の渇きが収まらないように感じます。 – 体が水分を欲しがっている大切なサインです。
- 尿の回数が異常に多くなる – 体の中の余分な糖を、おしっことして体の外に出そうとするためです。 – トイレに行く回数が増え、夜中に何度も目が覚めることもあります。
- 吐き気や嘔吐がある – 気持ちが悪くなったり、実際に吐いてしまったりすることがあります。
- お腹が痛むこともある – 胃のあたりから下腹部にかけて、キリキリとした痛みを感じることもあります。
症状が進んだ時のSOSサイン
初期のサインに気づかずに症状が進んでしまうと、体はもっと強いSOSサインを出し始めます。
- 呼吸が速く、深くなる – ハァハァと息をしたり、苦しそうに見えたりすることもあります。 – 体が血液の酸性度を元に戻そうと、頑張って息をしているサインです。
- 息が甘酸っぱい匂いがする – 体の中で「ケトン体」という酸っぱい匂いのもとが増えているサインです。 – これは糖尿病ケトアシドーシスに特有の匂いです。
- 意識がぼんやりしたり、眠気が非常に強くなる – 頭がモヤモヤする、いつも眠いと感じるようになります。 – ひどい場合は、話しかけても反応が鈍くなったり、意識を失って倒れてしまったりすることもあります。
特に注意したい状況と症状
特定の状況下では、糖尿病ケトアシドーシスの症状に特に注意が必要です。
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後 – 新型コロナウイルスにかかったお子さんや若い方では、糖尿病ケトアシドーシスになる危険性が、かかっていない方に比べておよそ2.5倍も高まるという研究結果があります。 – 感染後に急に喉が渇いたり、おしっこの回数が増えたりするなどの症状が見られたら、注意が必要です。 – 特に、体調が戻った後も、いつもと違う様子が見られたら、すぐに気づいてあげてください。
- がん治療中の免疫療法を受けている方 – がんの治療で「免疫チェックポイント阻害剤」という特殊なお薬を使っている方は、以前糖尿病がなかったのに、急に上記のような症状が出ることがあります。 – なぜ急にこのような症状が出るのか、専門家は今も詳しく調べているところです。
- 重い合併症:ムコール症のサイン – 糖尿病ケトアシドーシスが長く続き、体の抵抗力が落ちてしまうと、とてもまれですが、ムコール症という危険なカビの感染症にかかりやすくなることがあります。 – このムコール症は、新型コロナウイルスにかかった10歳くらいのお子さんで報告されており、特に注意が必要です。 – 特に、糖尿病をすでに持っている場合や、コロナの治療で使うお薬(コルチコステロイド)を飲んでいた場合に、注意が必要とされています。 – 最も一般的な病型は「鼻眼窩脳ムコール症」といい、鼻や目の周りに広がりやすいのが特徴です。 – 顔が痛んだり、腫れたり、目の周りが赤くなったり、見えにくくなったり、といった新たな症状が見られたら、ムコール症の可能性があります。 – 進行がとても速く、残念ながら、治療を受けても半分くらいのお子さんが命を落としてしまうという、とても怖い病気です。 – このような症状に気づいたら、時間が経つほど危険が増します。
これらの症状は、体があなたに助けを求めているサインです。一つでも「おかしいな」と感じたら、ためらわずにすぐに病院を受診してくださいね。早めの受診が、体を守るために非常に大切です。
糖尿病ケトアシドーシスの検査・診断
糖尿病ケトアシドーシスは、体の調子がとても悪くなっている危険なサインです。もし、体がだるい、気持ちが悪い、お腹が痛い、頭がぼんやりするといった症状が出たら、すぐに病院に来てくださいね。早くこの病気を見つけることが、体を守るためにとても大切です。
この病気かどうかを調べるためには、主に「血液検査」と「尿検査」を行います。体の中の状態を詳しく見て、何が起きているのかを探る大切なテストです。
体の状態を知るための3つの検査
- 血液中の糖の量(血糖値)を測る – 体のエネルギー源である「ブドウ糖」が血液の中にどれくらいあるかを調べます。 – 糖尿病ケトアシドーシスでは、このブドウ糖の量が異常に高くなっています。 – 体がブドウ糖をうまく使えなくなっているサインです。
- ケトン体という特別な物質があるか調べる – 血液や尿の中に「ケトン体」という酸っぱい物質が増えていないかを調べます。 – ケトン体は、インスリンというホルモンが足りない時に、 – 体が脂肪を無理やり燃やしてエネルギーを作ろうとするときにできるものです。 – この物質が多いことは、体が危険な状態にあるという大切なサインです。
- 血液の「すっぱさ」(pH)を測る – 血液が「酸性」に傾いていないかを確認します。 – 糖尿病ケトアシドーシスでは、ケトン体が増えすぎることで、 – 血液が酸っぱくなり、「アシドーシス」という状態になります。 – 体のバランスが崩れていて、早急な手当てが必要であることを教えてくれます。
これらの検査の結果を詳しく見て、医師が「糖尿病ケトアシドーシス」かどうかを判断します。早期に病気を見つけることができれば、その分早く治療を始めることができ、回復への道も開かれます。
診断後の治療と注意点
診断がついた後の治療では、インスリンというホルモンを体に補充することが中心となります。これまでの治療では、点滴でインスリンをずっと入れ続ける方法が一般的でした。しかし、最近の研究では、特定の患者さんであれば、注射でインスリンを体に打つ方法も、点滴と同じくらい安全で効果的である可能性がわかってきました。
– 例えば、軽症から中等症の糖尿病ケトアシドーシスの場合、 – 注射でインスリンを入れる方法でも、点滴と同じようにしっかりと効果が出ることが期待できます。 – さらに、一部の報告では、注射でインスリンを入れる方が、 – 入院する期間が少し短くなるかもしれないとも言われています。 – これは、ご家族と早くお家に帰れる可能性がある、ということでもありますね。
また、糖尿病の治療で「SGLT-2阻害薬」という種類のお薬を飲んでいる方は、糖尿病ケトアシドーシスになるリスクについて心配されるかもしれません。心臓の病気をお持ちの方を対象にした大規模な研究では、SGLT-2阻害薬を飲んでいない方と比べて、糖尿病ケトアシドーシスになるリスクに、大きな違いは見られなかったと報告されています。
– とはいえ、どんなお薬でも、体質によっては予期せぬ変化が起きることもあります。 – もし、今お飲みになっているお薬について心配なことがあれば、 – また、体調に少しでも異変を感じた場合は、遠慮せずにすぐに担当の先生に相談してください。
私たちは、皆さんの体が元気を取り戻せるよう、いつも全力でサポートします。正しい検査と適切な治療で、安心して過ごせる毎日を取り戻しましょう。
糖尿病ケトアシドーシスの治療
糖尿病ケトアシドーシスは、体のバランスが崩れて、血液が酸っぱくなってしまうとても危険な状態です。このような状態になったら、すぐに病院に行き、入院して治療を受けることが何よりも大切です。私たちは、皆さんの体が早く元気を取り戻せるよう、全力でサポートします。
治療の大きな目標は、体に足りなくなった水分やミネラル(ナトリウムやカリウムなど)をしっかりと補給することです。そして、高くなりすぎた血糖値を、お薬(インスリン)を使ってゆっくりと正常な状態に戻していきます。これにより、血液が酸っぱくなった状態を改善し、体全体が本来の機能を取り戻せるようにします。
インスリンというお薬を体に届ける方法は、大きく分けて2つあります。一つは点滴で血管から直接インスリンを入れる方法です。もう一つは、注射で皮膚の下にインスリンを打つ方法です。どちらの方法が良いか、不安に思う方もいるかもしれませんね。
最新の研究では、特定の患者さんの場合、注射でインスリンを入れる方法も、点滴と同じくらい安全で効果がある可能性がわかってきました。この研究によると、命に関わる危険なことや、血糖値が下がりすぎる(低血糖)といったリスクは、どちらの方法でもあまり変わらないとされています。さらに、注射でインスリンを投与する治療では、入院する期間が少し短くなる可能性も指摘されています。つまり、ご家族と早くお家に帰れるかもしれません。どちらの方法が、皆さんの体にとって一番良い治療になるかは、医師が皆さんの病気の状態を詳しく見て判断しますので、安心してください。
また、糖尿病の治療で「SGLT2阻害薬」というお薬を飲んでいる方は、糖尿病ケトアシドーシスになるリスクを心配されるかもしれません。心臓の病気を持つ方を対象にした大きな研究では、このお薬を飲んでいない方と比べて、糖尿病ケトアシドーシスになるリスクに大きな違いは見られなかったと報告されています。SGLT2阻害薬は、特にご高齢の方においても、糖尿病ケトアシドーシスになるリスクを高めることとは関連がないと考えられています。
このお薬は比較的安全に使えるとされていますが、利尿薬など、体の中の水分を外に出す他のお薬と併用している場合は、体が水分不足になりやすくなることがあります。また、75歳以上の方では尿路感染症、ご高齢の方では性器真菌感染症という、カビによる感染症のリスクが少し高まる可能性も報告されています。そのため、心配なことがあれば、いつでも担当の先生に相談し、ご自身の体に合ったお薬の組み合わせを一緒に考えることが大切です。
治療は、皆さんの体調や検査の結果を注意深く見ながら進めていきます。症状が良くなり、体が安定したら、退院に向けて準備を始めます。退院した後も、糖尿病ケトアシドーシスを二度と起こさないために、インスリン治療をきちんと続けることや、普段の生活習慣を整えることが非常に大切になります。私たちは、退院後も皆さんの健康をサポートし続けます。










