年々ひどくなる月経痛や、レバーのような血のかたまりが混じるほどの経血量。「いつものことだから」「年齢のせいかも」と我慢してしまっていませんか。そのつらい症状は、30代後半から40代の女性に多く見られる「子宮腺筋症」という病気のサインかもしれません。
子宮腺筋症は、子宮の壁が厚く硬くなることで激しい痛みを引き起こすだけでなく、不妊の原因になったり、ある研究では流産のリスクを約1.8倍に高めたりすることも報告されています。放置すると症状はゆっくりと進行してしまうため、ご自身の状態を正しく知ることが大切です。
この記事では、子宮腺筋症の詳しい原因や症状から、薬物療法や手術、最新の治療法までを分かりやすく解説します。つらい症状を改善し、ご自身に合った選択をするための一助として、ぜひ最後までお読みください。
子宮腺筋症の概要
子宮腺筋症は、子宮の内側をおおう子宮内膜に似た組織が、 子宮の壁である筋肉(筋層)の中にもぐりこんでしまう病気です。
本来あるべきではない場所にできた組織も、月経を起こすための 女性ホルモンの影響を受けます。 そのため、月経のたびに子宮の筋肉の中で出血が起こります。 出口のない血液がたまるため、子宮の壁は厚く硬くなります。
この病気は30代後半から40代の方に多く見られますが、 20代で発症することもあります。 主な症状には、以下のようなものがあります。
- ひどい月経痛
- 経血の量が多くなる(過多月経)
- レバーのような血のかたまりが出る
- 貧血
また、不妊の原因となったり、妊娠した場合の合併症にも 注意が必要です。 ある研究では、子宮腺筋症があると流産のリスクが約1.8倍、 妊娠中に血圧が高くなる子癇前症のリスクが約1.7倍に なると報告されています。
月経がある間は病気がゆっくりと進行するため、 気になる症状があれば早めに婦人科へご相談ください。
子宮腺筋症の種類
子宮腺筋症は、病気の組織が子宮の筋肉の中にどう広がっているかで、 いくつかのタイプに分けられます。 ご自身の状態がどのタイプかを知ることは、 今後の治療方針を決めるうえでとても大切です。
一般的に、子宮腺筋症は以下のタイプに分類されます。
- 病気の組織が、子宮の筋肉全体に染み込むように広がっているタイプです。
- このタイプでは子宮の壁が均一に厚くなり、子宮全体が大きくなる傾向があります。
- 病気の組織が、子宮の筋肉の一部分にかたまり、こぶのようになっているタイプです。
- 超音波検査などで見た目が子宮筋腫と似ているため、区別することが重要になります。
これらのタイプは、妊娠を希望される場合に大きく関わってきます。 ある研究では、子宮腺筋症があると流産のリスクが約1.9倍に高まることが報告されています。 そのため、不妊治療ではより慎重な方法を選ぶ必要があります。
例えば体外受精では、採卵後すぐに受精卵を子宮に戻す「新鮮胚移植」よりも、 一度受精卵を凍結する方法が有効な場合があります。 受精卵を凍結保存し、薬で子宮の状態を整えてから移植する「凍結胚移植」の方が、 良い結果につながる可能性があるとされています。
ご自身のタイプや症状、今後のご希望に合わせて治療法を考えていくことが大切です。 まずは専門の医師に相談し、正確な診断を受けましょう。
子宮腺筋症の原因
子宮腺筋症がなぜ起こるのか、そのはっきりとした原因は、 残念ながらまだ詳しくわかっていません。 しかし、現在の医学ではいくつかの有力な説があります。
最も可能性が高いと考えられているのは、 子宮の内側をおおう子宮内膜、またはそれに似た組織が 何らかのきっかけで子宮の筋肉の層に入り込む説です。 筋肉に入った組織は月経のたびに出血しますが、 体の外へ出ないため、子宮の壁が厚く硬くなります。
直接の原因ではありませんが、次のような場合に 発症しやすいことが知られています。
- 出産によって子宮内膜と筋肉の境目に変化が起き、
- 組織が入り込みやすくなる可能性が考えられます。
- 帝王切開や流産の手術などで子宮に傷がつくと、
- そこから組織が入り込むことがあるとされます。
「遺伝やストレスは関係ありますか?」とご質問を いただくこともありますが、これらが直接の原因であると 示す医学的な根拠は、今のところありません。
原因の解明が急がれますが、この病気は妊娠にも 影響を与えることがわかっています。 複数の研究をまとめた信頼性の高い報告によると、 子宮腺筋症の方は、そうでない方と比べて 流産のリスクが約1.8倍、妊娠中に血圧が高くなる 「子癇前症」という病気のリスクが約1.7倍に 高まることが示されています。
子宮腺筋症の症状
子宮腺筋症のサインは、主に月経に関するものに現れます。 代表的な症状は「ひどい月経痛」と「経血量の多さ」です。 これらは生活の質を大きく下げるため、治療の重要な目標です。
つらい月経痛と骨盤の痛み
子宮の筋肉が硬くなるため、月経のときにうまく収縮できず、 年々ひどくなる強い痛みを感じることが特徴です。 市販の痛み止めが効きにくくなる方も少なくありません。
また、月経のとき以外にも、下腹部や腰、骨盤のあたりに 鈍い痛みが続く「骨盤痛」を感じることがあります。 ある研究では、薬による治療でこの骨盤痛が改善したと 報告されており、治療すべき重要な症状とされています。
経血量の増加と貧血
子宮の壁が厚くなることで、はがれ落ちる子宮内膜の量が増え、 経血の量も多くなります(過多月経)。 レバーのような血のかたまりが混じるのも特徴の一つです。
出血量が増えると、血液中のヘモグロビンが減ってしまいます。 その結果、めまいや立ちくらみ、動悸、息切れといった 貧血の症状が現れることが少なくありません。 治療によって貧血が改善することも報告されています。
もしかして?と思ったらチェック
次のような症状に心当たりがあれば、注意が必要です。
- 年々、月経痛がひどくなっている
- 痛み止めを飲んでもあまり効かない
- 経血の量が多く、昼でも夜用ナプキンを使う
- 1〜2時間でナプキンを交換する必要がある
- レバーのような大きな血のかたまりが出る
- 月経以外のときも下腹部や腰が重く痛む
- 排便のときや性交のときに、お腹の奥が痛む
- 貧血を指摘されたり、立ちくらみがしたりする
- 妊娠を希望しているが、なかなか授からない
これらの症状は、放置するとゆっくり悪化していく傾向があります。 「いつものこと」と我慢せず、早めに婦人科へご相談ください。
子宮腺筋症の検査・診断
つらい症状の原因を突き止めるため、検査はとても大切です。 婦人科では、主に次のような検査で体の状態を正確に調べます。
- 医師が症状について詳しくお話をうかがいます。
- いつから、どんな症状があるか、月経の状態、
- 痛みの強さ、妊娠の経験などを伝えていただきます。
- これは診断のための、とても大切な手がかりになります。
- 医師が腟の中から子宮や卵巣に直接触れる診察です。
- 子宮の大きさや硬さ、押したときの痛みの有無を確認し、
- 子宮が全体的に大きくなっていないかを調べます。
- 体に超音波をあて、その反射を映像にする検査です。
- 子宮の壁が厚くなっていないか、筋肉の中に病変がないか、
- 子宮筋腫など、似た症状の病気と見分けるために行います。
- 磁気の力で体の断面を撮影する、より詳しい検査です。
- 超音波検査ではわかりにくい病気の広がりや種類を、
- はっきりと確認することができます。
これらの検査で正確に診断することは、治療法を選ぶ上で重要です。 例えば、ホルモン剤と超音波を組み合わせた治療法があります。 ある研究では、超音波治療(HIFU)に特定のホルモン剤を併用すると、 つらい月経痛や経血の多さがより改善する可能性が示されました。 ご自身に合った治療のため、まずは検査で状態を把握しましょう。
子宮腺筋症の治療
子宮腺筋症の治療法は、患者さん一人ひとりの状況に合わせて、 最適な方法を慎重に選んでいくことが大切です。 特に「年齢」「症状のつらさ」「将来妊娠を希望するか」 この3つが、治療方針を決めるための重要なポイントになります。
治療法は大きく分けて、お薬を使う「薬物療法」と、 手術を行う「手術療法」、そして比較的新しい治療法があります。
薬物療法
まず、つらい症状を和らげて生活の質を上げることを目指します。 月経痛に対しては痛み止め(鎮痛剤)を使います。 痛みが強い場合や、病気の進行を抑えたい場合には、 女性ホルモンの働きを調整する「ホルモン療法」を行います。
- 骨盤の痛みを和らげ、子宮が大きくなるのを抑えます。
- ある研究では、次に紹介するLNG-IUSというお薬よりも、
- 骨盤の痛みを減らす効果が高い可能性が示されています。
- レボノルゲストレル放出子宮内システム(LNG-IUS)
- 小さな器具を子宮の中に入れ、お薬を直接届けます。
- 経血の量を減らす効果が高く、貧血の改善に繋がります。
- 一時的に月経が止まった状態を作り、病巣を小さくします。
- 妊娠の準備や、手術の前に行うこともあります。
手術療法
お薬で症状が十分に良くならない場合や、 根本的な治療を望む場合に検討します。 将来、妊娠を希望するかどうかで手術の方法が変わります。
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治療法
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こんな方におすすめ
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特徴
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子宮全摘術
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・症状がとても重い
・将来、妊娠を希望しない
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病気の原因となる子宮をすべて取り除くため、最も確実な治療法です。
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子宮腺筋症核出術
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・将来、妊娠を希望する
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病巣の部分だけを取り除く手術です。子宮を残せますが、再発の可能性もあります。
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その他の治療法と妊娠
最近では、お腹を切らずに超音波で病巣を治療する 「高強度焦点式超音波(HIFU)」という方法も選択肢です。 ホルモン療法と組み合わせると、より効果が高まることがあります。 特にLNG-IUSと併用すると、つらい月経痛や出血量を 減らす効果が高いという研究報告があります。
また、子宮腺筋症があると、妊娠しにくくなったり、 流産のリスクが約1.9倍に高まることがわかっています。 妊娠を希望して体外受精を行う場合は、 一度受精卵を凍結保存し、お薬で子宮の状態を整えてから 移植する「凍結胚移植」が、良い結果に繋がりやすいとされます。
どの治療法がご自身に合っているか、 担当の医師とよく相談して決めていきましょう。