子宮筋腫

30歳以上の女性の3~4人に1人が持っているとされる「子宮筋腫」。婦人科検診などで指摘され、気になっている方も多いのではないでしょうか。命に別状のない良性の腫瘍と聞くと、「症状もないし、放っておいても大丈夫」と考えてしまうかもしれません。

しかし、その考えには注意が必要です。子宮筋腫は、できる場所によっては過多月経やひどい月経痛を引き起こし、日々の生活の質を大きく下げる原因となります。さらに、不妊や流産につながる可能性も指摘されており、ある研究では筋腫があることで出産に至る確率が半分以下になるという衝撃的なデータも報告されています。

この記事では、子宮筋腫の正しい知識から、見逃してはいけない症状、妊娠への影響、そして最新の治療法までを詳しく解説します。あなた自身の体と大切な未来のために、まずはこの病気について正しく知ることから始めませんか。

子宮筋腫の概要

子宮筋腫は、子宮の筋肉から発生する良性のできものです。 命をおびやかす「がん」とは異なり、体に害を与えません。 そのため、過度に心配する必要はない病気です。

30歳以上の女性では、およそ3〜4人に1人が持っているとされ、 婦人科の病気の中では、非常によく見られるものの一つです。 多くの場合、症状が全くないため、検診などで偶然発見されます。

しかし、筋腫ができる場所や大きさによっては注意が必要です。 月経の量が増えて貧血になったり、月経痛がひどくなったりと、 日々の生活の質を大きく下げる原因になることがあります。

特に、これから妊娠を考えている方にとっては重要な問題です。 子宮筋腫が、不妊や流産の原因になる可能性も考えられます。 近年、妊娠への影響が研究によって具体的に示されました。

ある研究報告によると、子宮の内側に近い場所にできた筋腫は、 受精卵が子宮の壁にくっつく「着床」を妨げることがあります。 このため、体外受精における妊娠や出産の確率が下がるのです。

実際に、このタイプの筋腫を持つ女性は持たない女性と比べ、 出産に至る確率が半分以下になるという分析結果もあります。 さらに筋腫のサイズや数が増えると、影響はより大きくなります。

このように子宮筋腫は良性ですが、症状や妊娠への影響から、 決して無視できない病気です。定期的な婦人科検診を受け、 ご自身の体の状態を正確に知っておくことが大切になります。

子宮筋腫の種類

子宮筋腫は、子宮のどこにできるかによって種類が分かれます。 できる場所で症状の出方や、妊娠への影響が大きく異なります。 ご自身の筋腫がどのタイプかを知っておくことは非常に大切です。

主に、次の3つの種類に分けられます。

種類

できる場所

主な特徴

粘膜下(ねんまくか)筋腫

子宮の内側

・赤ちゃんが育つ部屋に飛び出すようにできる

・小さくても月経量が増え、ひどい貧血になりやすい

・不妊や流産の原因になることが最も多いタイプ

筋層内(きんそうない)筋腫

子宮の筋肉の中

・子宮筋腫の中で一番多く、壁の中に埋まっている

・小さいときは無症状だが、大きくなると月経痛が強くなる

漿膜下(しょうまくか)筋腫

子宮の外側

・子宮の外側に向かって大きくなる

・大きくなると膀胱などを圧迫し、頻尿や便秘になる

・まれに根元がねじれて激しい痛みが起こる(茎捻転)

近年、より詳しく筋腫の位置を示す国際的な分類も重要です。 「FIGO(フィゴ)分類」という世界共通のルールが使われます。 特に妊娠を考える上で、この分類は非常に参考になります。

例えば、子宮の筋肉の中にありながら内側の壁にも接している、 「type 3」という筋腫は、妊娠に影響を与えることがあります。 ある研究では、この筋腫があると体外受精の成功率が下がります。

具体的には、受精卵が子宮にくっつく「着床」の確率や、 妊娠が無事に継続する確率、そして出産に至る確率が、 統計的にもはっきりと低くなることが報告されているのです。 筋腫の数やサイズが大きくなると、その影響はさらに増大します。

このように、筋腫の種類や位置は、症状や将来の計画に関わります。 特に妊娠を希望される方は、専門医とよく相談しましょう。

子宮筋腫の原因

子宮筋腫ができる、はっきりとした原因はまだわかっていません。 しかし、筋腫が発生し、大きくなる仕組みには、 女性ホルモンが深く関わっていることが明らかになっています。

女性ホルモンが成長の「えさ」になる

卵巣から分泌される、以下の2種類の女性ホルモンが、 子宮筋腫を大きくする性質を持っていると考えられています。

  • エストロゲン(卵胞ホルモン)
  • 主に月経から排卵にかけて分泌されるホルモンです。
  • プロゲステロン(黄体ホルモン)
  • 主に排卵から次の月経にかけて分泌されるホルモンです。

これらのホルモンは、筋腫にとって成長するための「栄養」です。 そのため、ホルモンの分泌が活発な年代に筋腫は育ちやすいです。 逆に、分泌が止まる閉経後には、栄養が絶たれて小さくなります。

この関係性は、近年の治療薬の研究からも裏付けられています。 ある研究では、女性ホルモンの働きを調整するお薬を使うことで、 子宮筋腫が原因のひどい月経出血が大幅に減ることが示されました。

さらに、この治療を受けた多くの女性で、つらい痛みも軽くなり、 生活の質が大きく改善したことも科学的に報告されています。 ホルモンを調整すると症状が良くなることからも、 女性ホルモンが筋腫の成長に深く関わっているのは確かです。

今のところ、遺伝的な体質なども関係する可能性が考えられますが、 まだはっきりと解明されておらず、今後の研究が待たれます。

子宮筋腫の症状

子宮筋腫があっても、症状が全くないまま過ごす方も多いです。 しかし、筋腫ができた場所や大きさによっては、 日常生活に影響が出るほどの、つらい症状に悩まされることもあります。

最も代表的な症状は、月経(生理)に関するトラブルです。 経血の量が異常に増える「過多月経」や、月経痛が代表的です。 レバーのような血のかたまりが出たり、昼でも夜用ナプキンが必要なこともあります。

このような状態が続くと、体内の鉄分が不足して貧血になります。 立ちくらみや動悸、息切れなど、貧血のサインが現れやすくなります。 実際に、子宮筋腫の治療に関する海外の研究でも、 「重度の月経出血」や「痛み」は生活の質を大きく下げる問題とされています。

また、筋腫がこぶし大のように大きくなると、 まわりの臓器を圧迫して、月経以外の時期にも症状が出ます。 例えば、膀胱が押されるとトイレが近くなり(頻尿)、 腸が圧迫されると便秘の原因になることがあります。

【子宮筋腫でみられる症状のチェックリスト】 ご自身の体調と見比べて、当てはまるものがないか確認してみましょう。

  • □ 経血の量が明らかに多い(レバー状の塊が出る)
  • □ 月経の期間が8日以上と長引くようになった
  • □ 月経痛が年々ひどくなっている気がする
  • □ 立ちくらみ、めまい、動悸など貧血のような症状がある
  • □ お腹が張って、下腹部に硬いものを触れることがある
  • □ 以前よりトイレが近くなった、または便秘がちになった
  • □ 月経時以外にも腰や下腹部に痛みを感じる

これらのサインは、体が助けを求めている証拠かもしれません。 一つでも当てはまる場合は、他の病気の可能性も考えられます。 「いつものことだから」と我慢せず、婦人科で相談することが大切です。

子宮筋腫の検査・診断

子宮筋腫が疑われる場合、いくつかの検査を組み合わせて診断します。 どのような検査をするかを知っておくと、安心して受診できるでしょう。 検査の目的は、筋腫の正確な場所や大きさ、数を知ることです。

まず、月経の状態など、困っている症状を詳しくお聞きする問診と、 医師が直接触れて子宮の大きさなどを確かめる「内診」を行います。 これらで、子宮の状態をおおまかに把握することができます。

診断の中心となるのは、次のような画像検査です。

  • 超音波(エコー)検査
  • 子宮筋腫の診断で、最も基本となる画像検査です。
  • 体の表面、または腟の中から超音波の出る器具をあて、
  • モニターに子宮や卵巣を映し出し、筋腫の状態を調べます。
  • この検査で、筋腫の場所や大きさ、数を正確に確認できます。

より詳しく調べる必要がある場合には、次の検査を追加します。

  • MRI検査
  • 磁気の力を使い、体の内部を様々な角度から撮影する検査です。
  • 筋腫を鮮明に画像化できるため、良性の筋腫なのか、
  • まれな悪性の病気「子宮肉腫」の疑いがないかを見分けます。

これらの検査結果を総合的に判断し、子宮筋腫の診断が確定します。 診断後は、症状や妊娠のご希望を伺い、治療方針を決めていきます。 もし手術が必要でも、体への負担を軽くする研究が進んでいます。

例えば、お腹に小さな穴を開ける手術の際、出血を減らす工夫です。 ある研究では、手術中に子宮へ行く血管を一時的に止めることで、 出血量が大幅に減り、より安全に手術が行えると報告されました。 この方法は手術時間を長くすることなく、安全に実施できるものです。

子宮筋腫の治療

子宮筋腫の治療は、一つの正解があるわけではありません。 筋腫の大きさや場所、症状のつらさ、あなたの年齢や、 将来赤ちゃんを望むかどうかを考えて、最適な方法を選びます。

症状がなければ、すぐに治療せず様子を見ることも多いです。 主な治療法は「薬物療法」と「手術療法」の2つです。 一人ひとりの状態に合わせ、治療方針を決定していきます。

薬物療法:つらい症状を和らげる

お薬の治療は、つらい症状を軽くすることが主な目的です。 筋腫そのものをなくす治療ではありませんが、生活の質を高めます。

  • 対症療法 月経の出血が多く貧血がある場合は「鉄剤」を使います。 月経痛がひどい時は「痛み止め」を服用します。 低用量ピルなどのホルモン剤で、出血量を減らすことも可能です。
  • ホルモン療法(偽閉経療法) 筋腫の栄養源である女性ホルモンを、一時的に止めます。 これにより筋腫を小さくし、手術をしやすくする目的です。 ただし、骨がもろくなる副作用があるため、長期間は使えません。

手術療法:根本的な解決を目指す

お薬で症状が良くならない場合や、筋腫が大きい場合に考えます。 将来、妊娠を希望するかどうかで、手術の方法が変わります。

手術の種類

特徴

こんな方におすすめ

子宮筋腫核出術

筋腫だけを取り除き、子宮を残す手術です。

これから妊娠を希望する方

子宮全摘術

子宮ごと筋腫を取り除く、最も確実な方法です。

妊娠の希望がなく、症状を根本から治したい方

子宮動脈塞栓術

足の付け根から細い管を入れ、筋腫の栄養血管を詰めます。

体への負担が少ない治療を望む方(妊娠希望がない場合)

子宮筋腫核出術の後には、一つの課題がありました。 それは、お腹の中で臓器がくっついてしまう「癒着」です。 この癒着は、将来の痛みや不妊の原因になることもあります。

しかし、この癒着を防ぐための研究が大きく進んでいます。 ある研究では、手術の最後に「L-アラニル-L-グルタミン」という成分を お腹の中に使うと、癒着が大きく減ることが報告されました。

この成分を使ったグループでは、なんと全員で癒着の改善がみられ、 さらに9割以上の人で癒着が全くなくなったという結果でした。 このような工夫で、手術はより安全で体への負担が少ないものになっています。