おたふく風邪

「子どもの病気」と思われがちなおたふく風邪。しかし、感染しても約3人に1人は目立った症状が出ないため、知らず知らずのうちに周囲の大人へうつしてしまう可能性があります。大人が感染すると重症化しやすく、まれに難聴や髄膜炎といった深刻な合併症を引き起こすことも。実はこの病気、原因となるウイルスに直接効く薬は存在しないのです。

この記事では、おたふく風邪の正しい知識と、最も重要となる「予防策」について詳しく解説します。大切なご家族を合併症のリスクから守るため、ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。

おたふく風邪の概要

おたふく風邪は、正式には「流行性耳下腺炎」とよばれる病気です。 ムンプスウイルスというウイルスが原因で起こる、ウイルス性の感染症です。 主な特徴として、耳の下にある唾液を作る場所(耳下腺)が腫れます。

おたふく風邪について、特に知っておきたいポイントをまとめました。

  • かかりやすい年齢 主に3歳から6歳くらいのお子さんによく見られる病気です。 しかし、大人になってから感染すると症状が重くなる傾向があります。
  • 症状が出ないことも 感染した人のうち約3割は、はっきりとした症状が出ません。 これを「不顕性感染」といい、自覚がないまま周りの人にうつす可能性があります。
  • 潜伏期間 ウイルスに感染してから症状が出るまでには、2〜3週間と比較的長い時間がかかります。

おたふく風邪は、自然に治ることが多いですが、油断は禁物です。 まれに難聴や髄膜炎といった、重い合併症を引き起こすことがあるからです。 そのため、ワクチンによる予防が非常に重要になります。

予防接種で使われるMMRワクチンは、複数の研究で安全性が確かめられています。 接種後に心配されることがある発熱性けいれんの発生率も、0.4%以下と低いことがわかっています。 このように、ワクチンは合併症から体を守るための有効な方法といえます。

おたふく風邪の種類

おたふく風邪の原因は「ムンプスウイルス」という1種類だけです。 インフルエンザのようにA型、B型といったウイルスの型はありません。

しかし、ウイルスに感染したときの症状の出方には個人差があります。 この症状の出方の違いによって、大きく2つのパターンに分けられます。

症状の出方

特徴

顕性感染(けんせいかんせん)

耳の下やあごの下が腫れる、熱が出るなど、おたふく風邪らしい症状がはっきりと現れるタイプです。

不顕性感染(ふけんせいかんせん)

ウイルスに感染しても、症状がほとんど出ないタイプです。感染した人の約3割がこの不顕性感染だといわれています。自覚がないまま、周りの人にうつす可能性があるので注意が必要です。

また、おたふく風邪を予防するためのワクチンにも種類があります。 ご自身の状況に合わせて、適切な予防法を選ぶことが重要です。

  • ムンプスワクチン おたふく風邪だけを予防するためのワクチンです。
  • MMRワクチン 麻疹(はしか)、おたふく風邪、風疹(ふうしん)の3つをまとめて予防できる混合ワクチンです。

MMRワクチンは複数の会社から提供されています。 いくつかの研究によると、どの会社のワクチンでも安全性に大きな差はないと報告されています。 接種後に心配されることがある発熱性けいれんの発生率も、0.4%以下と低いことがわかっています。

おたふく風邪の原因

おたふく風邪は、「ムンプスウイルス」が原因で起こる感染症です。 このウイルスは感染力が非常に強く、人から人へとうつります。 主な感染経路には、以下の2つが知られています。

  • 飛沫感染(ひまつかんせん) 感染した人の咳やくしゃみ、会話などで飛び散るしぶきを吸い込むことで感染します。
  • 接触感染(せっしょくかんせん) ウイルスが付いたドアノブやおもちゃなどを触った手で、ご自身の口や鼻、目に触れることで感染します。

ムンプスウイルスの感染力は、インフルエンザの約5倍ともいわれています。 1人の感染者から、周りの10人以上にうつしてしまうこともあるほどです。 そのため、集団生活を送るお子さんの間で広がりやすい傾向があります。

さらに注意が必要なのは、感染しても約3人に1人は症状が出ないことです。 これは「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」とよばれます。 元気に見えても、気づかないうちにウイルスを広めてしまう可能性があります。

この感染力が強いウイルスから体を守るには、ワクチン接種が大切です。 複数の会社がMMRワクチンを提供していますが、どのワクチンも安全性に大きな差はないと研究で示されています。 ワクチン接種後に心配される発熱性けいれんの発生率も、0.4%以下と低いことがわかっています。

おたふく風邪の症状

ウイルスに感染後、2〜3週間は症状が出ない潜伏期間があります。 その後、おたふく風邪に特徴的な症状があらわれ始めます。 お子さんの様子で、特に注意して見てほしい症状は以下のとおりです。

  • 耳の下やあごの下の腫れと痛み 唾液を作る場所である「耳下腺(じかせん)」などが腫れます。 片方から腫れ始め、数日後に反対側も腫れることもあります。 顔の形が変わるほど腫れ、押したり噛んだりすると痛みます。
  • 発熱 38度以上の熱が出ることが多く、時には40度近くなることもあります。 高熱が原因で、まれにけいれんを起こす「熱性けいれん」に注意が必要です。 ワクチン接種後の発熱性けいれんを心配される方もいます。 しかし複数のワクチンを比較した研究でも、その発生率は0.4%以下と低いことがわかっています。
  • ものを飲み込むときの痛み 唾液腺の腫れによって、食べ物や飲み物を飲み込むときに痛みます。 特にお酢などの酸っぱいものを食べると、痛みが強くなることがあります。
  • そのほかの全身症状 頭痛や体のだるさ、食欲がなくなるなどの症状もよくみられます。

ただし、感染した人の約3人に1人は、はっきりした症状が出ません。 これを「不顕性感染」といい、症状がなくても周りの人にうつします。 また、大人がかかると子どもより症状が重くなりやすい傾向があります。

おたふく風邪の検査・診断

お子さんの顔がいつもより腫れていると感じたら、病院を受診しましょう。 おたふく風邪の診断は、ほとんどの場合、お医者さんの診察でわかります。 特徴的な症状から判断できることが多く、特別な検査は不要なことが多いです。

診察では、まず丁寧にお話を聞く「問診」から始めます。 お子さんの状態や周りの状況から、診断の手がかりを探します。

【お医者さんが確認すること】

  • 症状の様子 いつから熱が出て、耳の下やあごが腫れ始めたかなどを聞きます。 ものを食べたり飲んだりするときの痛みの有無も大切な情報です。
  • 周りの流行状況 ご家族や保育園、学校などでおたふく風邪が流行していないか確認します。 感染力が強いため、周りの状況は重要なヒントになります。
  • 予防接種の履歴 おたふく風邪のワクチンを接種したか、何回接種したかを確認します。 接種歴は診断だけでなく、症状の重さを予測する上でも役立ちます。

問診の後は、実際に腫れている場所を優しく触って確認します。 腫れの硬さや場所、痛みの程度から、似た症状の他の病気ではないかを見分けます。

症状が典型的でない場合など、診断をはっきりさせる目的で検査を行うことがあります。

検査の種類

どんなことを調べるの?

血液検査(抗体検査)

体の中にウイルスと戦った証である「抗体」があるか調べます。今まさに感染しているのか、過去にかかったことがあるのかがわかります。

ウイルス分離・検出

唾液などから、原因であるムンプスウイルスそのものを見つける検査です。結果が出るまでに時間がかかるため、一般的な診断ではあまり行いません。

これらの問診や診察、そして必要に応じた検査結果を総合的に判断します。 その上で、おたふく風邪かどうかを最終的に診断します。

おたふく風邪の治療

おたふく風邪の原因であるウイルスに、直接効くお薬は残念ながらありません。 インフルエンザのように、ウイルスを退治する特効薬がないのです。 そのため治療は、つらい症状を和らげる「対症療法」が中心となります。 お子さんの体力を消耗させないよう、安静にして体を休めることが大切です。

ご家庭では、以下の工夫で症状を和らげることができます。

  • 熱や痛みがあるとき 熱や耳の下の痛みが強い場合は、解熱鎮痛剤を処方することがあります。 お薬でつらさを和らげ、体力を温存することが回復への近道です。
  • 食事の工夫 耳の下が腫れて痛むため、食べ物を噛んだり飲み込んだりしにくくなります。 おかゆやゼリー、スープなど、あまり噛まずにすむ食事がおすすめです。 レモンなど酸っぱいものは唾液の分泌を促し、痛みが強くなるので避けましょう。
  • こまめな水分補給 熱で汗をかいたり、食事が摂れなかったりすると脱水症状を起こしやすくなります。 水やお茶、経口補水液などで、こまめに水分を摂るように心がけてください。

このように、おたふく風邪には根本的な治療法がありません。 だからこそ、かからないように「予防」することが何よりも重要になります。 予防の中心となるワクチンは、複数の研究で安全性が確認されています。 接種後に心配される発熱を伴うけいれんの発生率も、0.4%以下と低いことがわかっています。 症状で心配な点があれば、自己判断せずに医療機関へ相談しましょう。