ウイルス性髄膜炎
「かぜとは違う、経験したことのないようなひどい頭痛…。」もしそんな症状に悩まされているなら、それはウイルス性髄膜炎のサインかもしれません。脳や脊髄を守る大切な「髄膜」にウイルスが感染し、炎症を起こす病気です。
髄膜炎と聞くと不安に思うかもしれませんが、実は細菌性と比べて軽症で自然に回復するケースがほとんどです。デンマークで行われた大規模研究では、最も多い原因ウイルスは子どもの発達に影響を与える可能性が低いことも示唆されています。
しかし、原因ウイルスによっては重症化するリスクもゼロではありません。この記事では、ウイルス性髄膜炎の症状や原因、正しい治療法について詳しく解説します。ご自身やご家族を守るための知識として、ぜひ参考にしてください。
ウイルス性髄膜炎の概要
私たちの脳や脊髄は、非常にデリケートな臓器です。 その大切な脳と脊髄を衝撃から守っているのが「髄膜」です。 この髄膜にウイルスが感染し、炎症が起こるのがウイルス性髄膜炎です。
髄膜炎は、原因によって大きく2つの種類に分けられます。 それぞれの特徴を、下の表で見比べてみましょう。
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種類 |
原因 |
症状の重さ(傾向) |
後遺症のリスク(傾向) |
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ウイルス性髄膜炎 |
ウイルス |
比較的軽いことが多い |
低いことが多い |
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細菌性髄膜炎 |
細菌 |
重くなりやすい |
高いことがある |
表のように、ウイルス性髄膜炎は細菌性と比べて軽症で済む傾向です。 ほとんどの場合は後遺症の心配も少なく、自然に回復へ向かいます。 デンマークで行われた大規模な研究でも、この点が示されました。
その研究によると、ウイルス性髄膜炎で最も多いエンテロウイルスは、 子どものその後の学習や発達に影響をおよぼす可能性は低いとされます。 一方で、細菌による髄膜炎の場合は注意が必要です。
ただし、ウイルス性でも安心はできません。 まれに重症化しやすいウイルスもあり、特別な治療が必要になることもあります。 「かぜとは違うひどい頭痛」など、いつもと違う症状があれば、 自己判断せず、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。
ウイルス性髄膜炎の種類
ウイルス性髄膜炎と一言でいっても、原因は一つではありません。 原因となるウイルスの種類によって、いくつかのタイプに分けられます。 どのウイルスに感染したかで、症状や回復までの道のりが異なります。
代表的な原因ウイルスとその特徴を、下の表にまとめました。
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原因ウイルスの種類 |
特徴 |
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エンテロウイルス |
・夏かぜの原因として知られています。<br>・ウイルス性髄膜炎の中で最も多い原因です。 |
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単純ヘルペスウイルス |
・口の周りなどに水ぶくれを作るウイルスです。<br>・髄膜炎になると重い症状が出ることがあります。 |
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ムンプスウイルス |
・「おたふくかぜ」の原因ウイルスです。<br>・ワクチンで予防することができます。 |
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水痘・帯状疱疹ウイルス |
・「みずぼうそう」の原因ウイルスです。<br>・体の抵抗力が落ちている時にかかりやすいです。 |
この中で最も多いエンテロウイルスによる髄膜炎は、比較的軽く済むことが多いです。 デンマークで行われた大規模な研究でも、その点が示唆されています。
研究によると、エンテロウイルス性髄膜炎にかかったお子さんでは、 その後の学習や発達に関する障害のリスクは高くならないと報告されました。 この結果は、心配される親御さんにとって安心材料の一つになるかもしれません。
しかし、単純ヘルペスウイルスのように重い症状を引き起こすウイルスもあります。 そのため、原因ウイルスを特定し、それに合った治療を行うことがとても大切です。
ウイルス性髄膜炎の原因
ウイルス性髄膜炎は、その名の通りウイルスが原因です。 実は、原因となるウイルスは1種類だけではありません。 私たちの身の回りにいる、さまざまなウイルスが原因になります。
原因として最も多いのは「エンテロウイルス」です。 夏かぜの原因になるウイルスとして知られています。 その他にも、以下のようなウイルスが原因となり得ます。
- エンテロウイルス 夏かぜの原因にもなり、髄膜炎の原因で最も多いです。
- ヘルペスウイルス属 みずぼうそうや口の周りの水ぶくれを作るウイルスです。
- ムンプスウイルス おたふくかぜの原因になるウイルスです。
では、ウイルスはどのようにして体の中へ入ってくるのでしょうか。 ウイルスの種類によって、感染する経路は異なります。
- 飛沫感染 感染した人の咳やくしゃみのしぶきを吸い込みます。
- 接触感染 ウイルスがついた手で、目や鼻、口をさわることで感染します。
- 経口感染 ウイルスのついた手で食事をすることで感染します。
特にエンテロウイルスは、夏から秋にかけて流行しやすいです。 そのため、この時期は子どもや若い世代で患者さんが増える傾向です。
デンマークで行われた大規模な研究では、重要なことが示されました。 エンテロウイルスによる髄膜炎は、その後の発達への影響が少ないのです。 注意欠陥・多動性障害(ADHD)などのリスクは高まらないとされます。 一方で、細菌が原因の髄膜炎では、注意が必要とされています。
ウイルス性髄膜炎の症状
ウイルス性髄膜炎の症状は、はじめはかぜとよく似ています。 発熱や体のだるさから始まるため、見分けるのが難しいかもしれません。 しかし、時間が経つにつれて特徴的なサインが現れるため注意が必要です。
特に注意してほしい症状を、以下にまとめました。 お子さんの様子をよく観察し、当てはまるものがないか確認しましょう。
- かぜに似た全身の症状 38度以上の発熱や、体のだるさ、筋肉の痛みを感じます。 食欲がなくなることも、よくある症状の一つです。
- 髄膜炎に特有の危険なサイン これらの症状は、すぐに病院へ行くべきサインです。 ・経験したことのないような「ひどい頭痛」 ・頭痛に伴って起こる「吐き気や嘔吐」 ・首の後ろが硬くなり、あごを胸につけられなくなる ・光を異常にまぶしく感じたり、音に敏感になったりする
- 赤ちゃんに見られる特別なサイン 言葉で伝えられない赤ちゃんの変化を見逃さないでください。 ・何をしても泣き止まないほど、機嫌が悪い ・ぐったりして、ミルクやおっぱいの飲みが悪い ・頭のてっぺん(大泉門)がパンと張ってふくらむ
多くのウイルス性髄膜炎は、数週間で自然に回復へ向かいます。 特に原因として最も多いエンテロウイルスの場合、心配は少ないです。 デンマークで行われた大規模な研究でも、その点が示唆されています。
この研究によると、エンテロウイルス性髄膜炎にかかっても、 その後の学習や発達に関する障害のリスクは高まらないと報告されました。 ただし、症状だけで重い細菌性髄膜炎と見分けるのは困難です。 気になる症状があれば、自己判断せず速やかに医療機関を受診してください。
ウイルス性髄膜炎の検査・診断
ウイルス性髄膜炎が疑われる場合、いくつかの検査を行います。 かぜとは違う症状の原因を正確に突き止めるためです。 診察では、症状を詳しく伺い、首の硬さなどを確認します。
診断で最も重要になるのが「腰椎穿刺(ようついせんし)」です。 背中に細い針を刺し、脳と脊髄を包む液体を少し採取します。 この液体は「髄液(ずいえき)」と呼ばれ、病気の情報が隠されています。
髄液を調べることで、次のようなことがわかります。
- 白血球の数と種類 ウイルスと戦う「リンパ球」という細胞が増えているか調べます。
- タンパク質や糖の量 炎症がどれくらい強いのか、その程度を評価します。
- 原因ウイルスの特定 PCR法という特別な検査で、原因ウイルスの遺伝子を探し出します。
また、症状が似ている他の病気と見分けることも重要です。 例えば、神経サルコイドーシスという病気も似た症状を示します。 このような病気との区別に役立つのが、特別な物質(バイオマーカー)です。
最近の研究では、髄液中の「sIL-2R」という物質が注目されています。 この物質の量を測ることで、診断の精度を高める助けになります。 必要であれば、頭のCTやMRI検査で脳の状態も確認します。 これらの検査結果を総合的に判断し、診断を確定させます。
ウイルス性髄膜炎の治療
ウイルス性髄膜炎の治療の基本は、体をしっかり休ませることです。 ウイルスと戦う体の力を、最大限にサポートすることが目的になります。 多くの場合、安静にしていれば自然に回復へと向かいます。
基本となる治療「対症療法」
原因ウイルスに直接効く薬は少ないため、治療の中心は対症療法です。 対症療法とは、今出ているつらい症状を和らげる治療のことです。 体力の消耗を防ぎ、体がウイルスに打ち勝つのを助けます。
- 十分な休養 体をしっかり休ませて、ウイルスと戦うための体力を温存します。
- 水分補給 脱水にならないよう、こまめに水分を摂ることが大切です。 食事が難しい場合は、点滴で水分や栄養を補給することもあります。
- お薬による治療 熱や頭痛には解熱鎮痛薬、吐き気には吐き気止めなどを使います。
原因ウイルスに応じた特別な治療
一部のウイルスが原因の場合は、そのウイルスに効く薬を使います。 そのため、原因ウイルスを特定することがとても重要になります。
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原因ウイルスの種類 |
使われる薬の例 |
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単純ヘルペスウイルス |
抗ウイルス薬(アシクロビルなど) |
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水痘・帯状疱疹ウイルス |
抗ウイルス薬(アシクロビルなど) |
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インフルエンザウイルス |
抗インフルエンザ薬 |
治療を始める前に、症状が似ている他の病気との見極めが重要です。 例えば、神経サルコイドーシスという炎症が起きる病気もあります。 このような病気と見分けるために、検査が役立ちます。
最近の研究では、髄液中の「sIL-2R」という物質が注目されています。 この物質の量を測ることで、診断の精度を高める助けになります。 正しい診断が、適切な治療を選ぶための第一歩となるのです。
症状が重い場合や、合併症の心配がある場合は入院が必要です。 ほとんどの方は数週間で回復しますが、自己判断で様子を見ないでください。 必ず医師の診察を受け、指示に従うようにしましょう。













