13トリソミー症候群

およそ5,000人に1人の割合で起こるとされる「13トリソミー症候群」。かつては、約80%にみられる重い心臓の病気などから、長く生きることは難しいと考えられてきました。もしご自身のお子さんがこの病気の可能性を告げられたら、深い不安に襲われるかもしれません。

しかし、その常識はここ数十年の医療の進歩で大きく変わりつつあります。心臓手術をはじめとする適切な治療により、元気に過ごせる期間が延びる可能性が示されているのです。この病気は、決してご両親のせいではなく、偶然に起こるものだとわかっています。

この記事では、13トリソミー症候群の最新の知見に基づき、その症状や治療の選択肢を解説します。病名だけで判断せず、希望を探すための一助となれば幸いです。

13トリソミー症候群の概要

人の体は「染色体」という設計図をもとに作られます。 13トリソミー症候群は、13番目の設計図が通常2本のところ、生まれつき3本あることで起こる病気です。 設計図が1枚多いために、体のさまざまな部分に特徴的な症状があらわれます。

この病気が発生する頻度は、およそ5,000人から12,000人に1人の割合といわれています。 染色体が原因となる病気の中では、比較的起こりやすいものの一つです。

以前は、重い心臓の病気をともなうことが多く、長く生きることが難しいと考えられていました。 しかし、ここ数十年の医療の進歩により、その考え方は大きく変わりつつあります。

心臓の手術をはじめ、適切な治療を行うことで、以前よりも元気に過ごせる期間が長くなることが、複数の研究で示されています。

そのため、病名だけで治療方針を決めつけることは、倫理的にも正しくありません。 お子さん一人ひとりの状態を丁寧に見ながら、ご家族と医師がよく話し合い、一番良い方法を一緒に考えていくことが何よりも大切です。

13トリソミー症候群の種類

13トリソミー症候群は、設計図である13番染色体の増え方によって、大きく3つの種類に分けられます。 どの種類かによって、症状のあらわれ方や遺伝との関係が少し変わることがあります。

  • 標準型(フルトリソミー)
    体のすべての細胞で、13番の設計図がまるごと1本多く、3本になっている状態です。 13トリソミー症候群の約80%を占める、最も多い種類になります。 多くは卵子や精子が作られる過程で偶然に起こるため、遺伝が原因ではありません。
  • モザイク型
    設計図が3本ある細胞と、正常な2本の細胞が体の中に混ざりあっている状態です。 正常な細胞の割合で症状のあらわれ方が変わり、個人差が大きいのが特徴です。 一般的には、標準型よりも症状が軽い傾向にあるといわれています。
  • 転座型
    13番の設計図の一部が、ほかの番号の設計図にくっついている状態です。 設計図の合計枚数は正常でも、13番の情報が多いことで症状があらわれます。 ご両親のどちらかが持つ染色体の特徴が、お子さんに受け継がれる場合があります。

種類(型)

特徴

割合の目安

標準型

すべての細胞で13番染色体が3本ある

約80%

モザイク型

正常な細胞と染色体が多い細胞が混在する

約5%

転座型

13番染色体の一部が他の染色体に付着している

約15%

以前は、どの種類でも長く生きることは難しいと考えられていました。 しかし、病名だけで治療をあきらめる考え方は、倫理的にも正しくありません。

近年の研究では、心臓の手術など適切な治療で、元気に過ごせる期間が延びる可能性が示されています。 どの種類であっても、一人ひとりの状態を丁寧にみて、ご家族と一緒に一番良い方法を考えていくことが大切です。

13トリソミー症候群の原因

13トリソミー症候群は、体の設計図である13番染色体が3本になることで起こります。 この染色体の数の変化は、ほとんどの場合、ご両親からの遺伝が原因ではありません。 主な原因は、卵子や精子が作られる過程で、偶然に起こるトラブルによるものです。

人の体は、お父さんとお母さんから設計図を1本ずつもらい、ペアで働きます。 しかし、卵子や精子ができる細胞分裂のときに、13番目の設計図がうまく分かれないことがあります。 その結果、設計図が2本入った卵子や精子ができてしまうのです。

この設計図が2本ある卵子や精子が受精すると、赤ちゃんの13番染色体は合計3本になります。 この現象は、お母さんの年齢が上がると少し起こりやすくなるといわれています。 しかし、どの年齢のお母さんにも起こる可能性があり、生活習慣などが原因ではありません。

実は、受精の段階で染色体の数が変わること自体は、それほど珍しいことではありません。 多くの場合、赤ちゃんはうまく育たず、妊娠の早い時期に自然に流産となります。 13トリソミーは、そのような染色体異常の中でも、出産まで至ることがあるものの一つです。

設計図の数が変わることは、体の様々な部分の作られ方に影響を及ぼします。 しかし、これはあくまで偶然に起こる出来事であり、ご両親のせいでは決してありません。 ご自身を責める必要はまったくないということを、どうか覚えておいてください。

13トリソミー症候群の症状

13トリソミー症候群では、体の様々な部分に特徴があらわれます。 設計図が1枚多い影響は全身に及ぶため、症状は多岐にわたります。 しかし、どのような症状がどの程度あらわれるかは個人差が大きいです。

【見た目にあらわれる特徴】

体の外側からわかる特徴として、以下のようなものがあります。

  • 頭・顔
    小さな頭(小頭症)や、小さな眼、唇や上あごがわれている口唇口蓋裂、低い位置にある耳などが見られます。
  • 手足
    指が重なっていたり、指の数が多かったりすることがあります。また、かかとが丸くなく、突き出ていることも特徴です。

【体のなかに起こる病気(合併症)】

体の内部にも、生まれつきの病気(合併症)を伴うことが多いです。

  • 心臓の病気
    約80%のお子さんに、心臓の壁に穴があく心室中隔欠損症などの病気が見られます。これは最も多い合併症です。
  • 脳の異常
    脳が左右にうまく分かれない全前脳胞症などが見られ、けいれん発作の原因になることもあります。
  • 呼吸の問題
    呼吸が一時的に止まってしまう無呼吸発作を起こしやすい傾向があります。

これらの症状は、重い神経の発達の遅れを伴うことが少なくありません。 歴史的に、治療は難しいと考えられてきた側面もあります。 しかし、近年の複数の研究では、早期の死亡が避けられないわけではないことが示されています。

心臓手術などの適切な治療で、元気に過ごせる時間が増えるお子さんもいます。 重い障がいがあっても、良好な生活の質を保つこともあります。 病名だけで判断せず、一人ひとりの状態に合わせたケアを考えることが大切です。

13トリソミー症候群の検査・診断

13トリソミー症候群の診断は、生まれる前と後の両方で行われます。 お母さんのお腹の中にいるときの検査を「出生前検査」といいます。

出生前の検査

出生前検査には、大きく分けて2つの種類があります。 まず可能性を調べる検査をして、必要なら診断を確定する検査に進みます。

検査の種類

主な検査方法

可能性を調べる検査

(非確定検査)

・NIPT(お母さんの血液検査)

・母体血清マーカー検査

診断を確定させる検査

(確定検査)

・羊水検査

・絨毛検査

検査で注意すべきこと

NIPTなどの血液検査で陽性となっても、確定ではありません。 まれに、胎盤にだけ設計図が3本ある細胞が集まっていることがあります。 これを「胎盤限定モザイシズム」と呼びます。

この場合、赤ちゃん自身の設計図は正常なため羊水検査は陰性になります。 しかし、胎盤の働きが影響を受け、赤ちゃんの成長が遅れることがあります。 お母さんが重い妊娠高血圧腎症になったという研究報告もあります。 そのため、羊水検査で異常がなくても慎重な経過観察が大切です。

出生後の検査

赤ちゃんが生まれた後、体の特徴からこの病気が疑われることがあります。 その際は、赤ちゃんの血液を採って設計図を詳しく調べます。 この染色体検査によって、最終的な診断が確定します。

13トリソミー症候群の治療

13トリソミー症候群の体の設計図そのものを治す、根本的な治療法はまだありません。 そのため治療は、お子さんにあらわれる症状を和らげる「対症療法」が中心になります。

かつてこの病気は、長く生きることが難しいと考えられてきました。 そのため、積極的な治療は適切ではないとされ、基本的なケアにとどまることもありました。 しかし、近年の研究ではその考え方が大きく変わりつつあります。

早期に亡くなることが必ずしも避けられないわけではないことが、複数の研究で示されています。 重い障がいがあっても、良好な生活の質を保ちながら過ごすお子さんもいます。

対象となる症状

治療法の一例

呼吸が苦しい

・人工呼吸器によるサポート

・気管切開、酸素療法など

栄養がとりにくい

・鼻からのチューブ

・胃ろう(お腹から直接栄養を送る方法)など

心臓の病気など

・お薬による治療

・外科的な手術など

特に心臓の手術は、ご家族にとって大きな選択の一つです。 最近の研究では、心臓手術を行うことで入院中に亡くなる確率が下がり、1年後の生存率や退院できる可能性が高まることが報告されています。

どのような治療を行うかは、病名だけで判断するべきではありません。 積極的な治療だけでなく、痛みや苦しさを和らげる「コンフォートケア」という選択肢もあります。 お子さんの状態を丁寧に見ながら、すべての選択肢についてご家族が納得できるまで話し合い、一緒に一番良い方法を決めていくことが何よりも大切です。