ぶどう膜炎
眼の痛み、かすみ目、視力低下が続き、「ぶどう膜炎かもしれない」と不安を感じていませんか? ぶどう膜炎は、眼の内部に炎症が起こる病気で、適切な治療が遅れると重い視力障害を招く可能性もあります。特に、全身に特別な病気が見当たらない「特発性」の場合、80%もの患者さんで両眼に病変が認められ、約8割で視力障害が報告されており、注意が必要です。
この記事では、ぶどう膜炎の基本的な知識から、多様な原因、具体的な症状、そして検査・診断、治療方法までを詳しく解説します。
本記事を通じて、ぶどう膜炎への理解を深め、ご自身の症状に合わせた適切な対応を検討する一助となるでしょう。
ぶどう膜炎の概要
ぶどう膜炎は、眼の内部にある「ぶどう膜」という組織に炎症が起きる病気です。眼の痛み、かすみ目、視力低下などを引き起こし、適切な治療が遅れると、重い視力障害を招く可能性もあるため注意が必要です。
ぶどう膜は、眼を構成する虹彩(こうさい)、毛様体(もうようたい)、脈絡膜(みゃくらくまく)という3つの部位の総称です。これらは、光の量を調節したり、眼に栄養を供給したりするなど、眼が正常に機能するために欠かせない重要な組織です。これらいずれかの部位、あるいは全体に炎症が起こるとぶどう膜炎と診断されます。
ぶどう膜炎の炎症は、片眼だけでなく両眼に症状が現れることも少なくありません。特に視力低下は、ぶどう膜炎の患者さんに多く見られる症状の一つです。全身に特別な病気がない「特発性」のぶどう膜炎では、両眼に症状が出やすく、視力障害を起こしやすいことが報告されています※。
この病気は、眼だけの問題と思われがちですが、実際には全身の病気と深く関連しているケースも多くあります。例えば、自己免疫疾患である乾癬(かんせん)や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)を持つ患者さんが、ぶどう膜炎を合併することが知られています。
特に、原因不明の慢性的な腰痛があり、ぶどう膜炎を患っている場合は、軸性脊椎関節炎(じくせいせきついかんせつえん)という関節の病気が隠れている可能性もあります。このような場合は、リウマチ専門医への受診も検討する必要があるといえます※。
ぶどう膜炎が進行すると、以下のようなさまざまな合併症を引き起こすことがあります。
・網膜血管炎(もうまくけっかんえん):網膜の血管に炎症が起こる状態です。
・嚢胞様黄斑浮腫(のうほうようおうはんふしゅ):網膜の中心部分である黄斑(おうはん)がむくみ、視力低下を招く状態です。この合併症に対しては、非ステロイド系の薬剤を眼に注射する治療法なども検討されることがあります※。
ぶどう膜炎は、その原因や症状が多岐にわたるため、初期段階で正確な診断を受け、適切な治療を始めることが極めて重要です。
ぶどう膜炎の種類
ぶどう膜炎は、炎症が起こる眼の部位やその原因により、大きく分けて複数の種類があります。これらの分類を理解することは、適切な診断と効果的な治療方針を立てる上で欠かせません。
ぶどう膜炎は、主に炎症が起こる部位によって次のように分類されます。
・前部ぶどう膜炎:虹彩(こうさい)や毛様体(もうようたい)に炎症が起き、眼の痛みや充血、まぶしさ、かすみなどの症状が出やすいとされます。
・中間部ぶどう膜炎:毛様体扁平部(へんぺいぶ)や硝子体(しょうしたい)に炎症が起きるもので、視界に黒い点や糸くずのようなものが見える飛蚊症(ひぶんしょう)が主な症状です。
・後部ぶどう膜炎:脈絡膜(みゃくらくまく)や網膜に炎症が起き、視力低下や視野の異常を引き起こしやすいタイプです。網膜血管炎もこの一種といえます。
・汎(はん)ぶどう膜炎:ぶどう膜全体に炎症が及ぶ状態です。
また、原因によって「感染性」と「非感染性」に分けることもできます。感染性ぶどう膜炎は、ウイルスや細菌、真菌などが原因で起こるもので、非感染性ぶどう膜炎は、全身の免疫疾患やアレルギーなどが関連することが多いです。
特に、後部ぶどう膜炎の一部である網膜血管炎は、その原因や特徴から、国際的な研究によって以下の4つのカテゴリーに分類されています※。これらのカテゴリーは、それぞれ異なる特徴や合併症の発生率を持っています。
分類 | 特徴と関連性 | 合併症と発生率
二次性網膜血管炎 | ・全身の病気(全身疾患)に関連して発症します。 | ・嚢胞様黄斑浮腫(32%) ・新生血管緑内障(24%)の発生率が高い傾向です。
症候性網膜血管炎 | ・全身の病気ではないものの、特定の眼の症状や症候群に伴って発症します。 | ・網膜虚血(76%) ・硝子体出血(46%)が特徴です。
特発性網膜血管炎 | ・全身の病気や眼の症候群が特に見当たらない場合に発症します。 | ・両側性病変(80%) ・視力障害(79%)の割合が最も高いです。
多原因性網膜血管炎 | ・上記の複数のサブカテゴリーの特徴を合わせ持ちます。 ・地理的な差異が認められ、眼内構造の炎症はアジアでは64%、ヨーロッパでは29%で認められます。
ここで挙げた合併症には、以下のような状態があります。
・網膜虚血(もうまくきょけつ):網膜への血流が悪くなる状態です。
・硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ):眼の中の大部分を占める透明なゲル状の組織(硝子体)に出血が起こる状態です。
・嚢胞様黄斑浮腫(のうほうようおうはんふしゅ):網膜の中心にある黄斑(おうはん)という部分がむくむ状態です。
・新生血管緑内障(しんせいけっかんりょくないしょう):眼の中に異常な血管が増えることで、眼圧が上昇し緑内障を引き起こす状態です。
なお、網膜血管炎のすべての種類で、両眼に症状が現れたり、視力が低下したりすることが一般的です※。
このように、ぶどう膜炎の種類を特定することは、病気の進行を予測し、より効果的な治療へとつなげるために極めて重要です。気になる症状がある場合は、早めに眼科を受診し、専門医に相談してください。
ぶどう膜炎の原因
ぶどう膜炎は、その原因が多岐にわたりますが、主に体内で起こる「感染」や、免疫システムの「自己免疫反応」が挙げられます。その他、目の外傷や、さまざまな検査でも原因が特定できない「特発性」のケースもあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
感染症
ぶどう膜炎の原因が感染症の場合、細菌やウイルス(ヘルペスウイルスなど)、真菌、寄生虫といった病原体が、目に炎症を引き起こします。これらの病原体は、全身のどこかで感染を起こし、その炎症がぶどう膜に波及してぶどう膜炎を発症させることもあります。原因となる病原体によって適切な治療法が異なるため、的確な診断が求められます。
自己免疫疾患
自己免疫疾患とは、本来体を守るはずの免疫システムが何らかの理由で誤作動を起こし、自分自身の正常な組織を攻撃してしまう病気です。ぶどう膜炎も、このような免疫の誤作動によって引き起こされることがあります。
自己免疫疾患によるぶどう膜炎は、目の炎症が単独で起こる場合と、全身の病気の一部として現れる場合があります。全身の病気が関連する場合の代表例を下記に示します。
・関節リウマチ
・サルコイドーシス
・軸性脊椎関節炎(じくせいせきついかんせつえん):関節の病気の一種で、強直性脊椎炎(きょうちょくせいせきついえん)や乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)などが含まれます。
特に、乾癬(かんせん)や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)を抱えていて、さらに原因不明の慢性的な腰痛がある方は注意が必要です。ぶどう膜炎が、実は軸性脊椎関節炎の症状の一つとして現れている可能性も考えられます※。
ある研究では、乾癬や急性前部ぶどう膜炎、炎症性腸疾患を持ち、原因不明の慢性腰痛がある患者さんについて、軸性脊椎関節炎の診断における特徴が調査されました。その結果、筋骨格系の臨床的な症状だけでは軸性脊椎関節炎かどうかを判別することが難しい場合があるため、MRI検査が診断に有用であることが示されています※。
また、HLA-B27という遺伝子を持つ患者さんでは、軸性脊椎関節炎と診断される確率が高いことも分かっています※。もし、上記のような症状に心当たりのある場合は、眼科だけでなく、関節の病気を専門とするリウマチ専門医の診察も検討することをおすすめします※。
外傷
目に物理的な衝撃を受けたり、傷を負ったりすることも、ぶどう膜炎の原因となります。例えば、スポーツ中の事故や転倒などで目に強い衝撃が加わった際、その刺激がぶどう膜に炎症を引き起こすことがあります。
不明(特発性)
さまざまな検査を行っても、最終的にぶどう膜炎の原因が特定できないケースも少なくありません。このような場合は「特発性ぶどう膜炎」と診断されます。原因は不明であっても、炎症を抑えるための治療はしっかりと行われます。
ぶどう膜炎は、原因によって治療法が大きく変わります。目の症状だけでなく、全身の状態も含めて詳しく調べることが、適切な診断と効果的な治療へとつながる重要なステップといえるでしょう。
ぶどう膜炎の症状
ぶどう膜炎は、眼の見え方や痛みだけでなく、体のさまざまな部位に症状が現れることがあります。これらの症状は、急に始まることもあれば、ゆっくりと現れてくることもあるのが特徴です。
眼の症状
ぶどう膜炎は、眼の内部で炎症が起こることで、多くの眼の症状を引き起こします。主な眼の症状は、次のとおりです。
・視力低下
炎症が網膜や視神経、あるいは黄斑(おうはん:網膜の中心にある最も大切な部分)に及ぶと、視力が低下し、物が見えづらくなります。特に、網膜血管炎の患者さんでは、多くの方が視力低下を訴えます※。
・かすみ目(霧視)
眼の中にある硝子体(しょうしたい:眼の大部分を占めるゼリー状の組織)に炎症細胞や混濁が生じると、視界全体に霧がかかったようにぼんやりと見えます。
・まぶしさ(羞明)
眼の炎症が強い場合、光がいつもよりまぶしく感じられ、目を開けていられないほどの不快感を覚えることがあります。これは、瞳孔(どうこう:いわゆる「ひとみ」)の動きに関わる部分に炎症がある場合に生じやすい症状です。
・目の痛みや充血
眼の奥に痛みを感じたり、白目が赤くなったりします。特に前部ぶどう膜炎など、眼の前面に近い部分に炎症がある場合に顕著に現れることがあります。
・飛蚊症(ひぶんしょう)
視界の中に、小さな虫や糸くずのようなものが飛んでいるように見えます。これは、硝子体の中に炎症によって生じた細胞や、小さな出血が浮遊しているために起こります。
・ゆがんで見える(変視症)
物の形がゆがんで見えたり、真っ直ぐな線が曲がって見えたりします。これは、黄斑という網膜の中心部に炎症やむくみ(浮腫)が生じた際に起こりやすい症状です。
・両目に症状が現れる可能性
片方の目だけでなく、両方の目に症状が出ることが珍しくありません。特に、原因不明の特発性網膜血管炎の場合、80%もの患者さんで両目に病変が認められることが報告されています※。
進行すると起こり得る合併症
ぶどう膜炎の炎症が長く続いたり、適切に治療されなかったりすると、さらに重い視力障害につながる合併症を引き起こすことがあります。以下に主な合併症をまとめました。
・嚢胞様黄斑浮腫(のうほうようおうはんふしゅ)
網膜の中心部である黄斑に、炎症によって血管から漏れ出した水分がたまり、むくみが生じる状態です。黄斑は物を見る上で最も重要な部分のため、むくむと著しい視力低下を招きます。非感染性のぶどう膜炎でも見られる合併症であり、この黄斑浮腫に対しては、非ステロイド系の薬剤を眼に注射する治療法が検討されることもあります※。
・網膜虚血(もうまくきょけつ)
網膜にある血管が炎症によって詰まったり、狭くなったりすることで、網膜への血流が悪くなる状態です。網膜に十分な血液が届かなくなると、網膜の細胞がダメージを受け、視機能が低下します。網膜血管炎の患者さんでよく見られる合併症です※。
・硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)
眼の中の硝子体に出血が起こる状態です。出血が起こると、急激に視界が悪くなったり、飛蚊症の症状が増えたりします。網膜血管炎の症状の一つです※。
・新生血管緑内障(しんせいけっかんりょくないしょう)
眼の中に異常な新しい血管が増えることで、眼圧が上昇し、視神経を圧迫して損傷させるタイプの緑内障です。視力や視野に深刻な影響を与える可能性があり、特定のぶどう膜炎のタイプで発生率が高いことがわかっています※。
目の症状にとどまらない全身との関連性
ぶどう膜炎は、時に「目の病気」としてだけでなく、全身の病気の一症状として現れることがあります。このため、目の症状だけでなく、体に現れる他のサインにも注意を払うことが大切です。
例えば、乾癬(かんせん)という皮膚の病気や、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患をお持ちの方が、ぶどう膜炎を合併することは珍しくありません。さらに、関節に炎症が起こる軸性脊椎関節炎(じくせいせきついかんせつえん)という病気が隠れている可能性もあります。特に、急性の前部ぶどう膜炎の患者さんで、原因がはっきりしない慢性的な腰痛がある場合、軸性脊椎関節炎が背景にあることが指摘されています※。
もし、目の症状に加えて、関節の痛み、原因不明の発熱、皮膚の異常、消化器の症状など、全身に気になる症状がある場合は、それらを眼科医に詳しく伝えるようにしましょう。適切な診断と治療のためには、目だけでなく全身の状態を総合的に把握することが不可欠といえます。
ぶどう膜炎の検査・診断
ぶどう膜炎の検査・診断は、眼の炎症の有無や程度、そしてその根底にある原因を特定し、患者さん一人ひとりに最適な治療方針を決めるために欠かせません。症状だけでなく、全身の状態を詳しく調べることで、より正確な診断へとつながります。
診断は、以下の検査を組み合わせて進められます。
・問診
・視力検査、眼圧検査
・細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査
・眼底検査
・光干渉断層計(OCT)
・蛍光眼底造影検査
・血液検査
・必要に応じたその他の検査(房水・硝子体検査、画像診断など)
それぞれの検査で何がわかるのか、具体的に見ていきましょう。
診察室での基本的な検査
問診
患者さんが感じる症状や、過去の眼の病気、アレルギー、そして全身の病歴について、詳しくお話を伺います。ぶどう膜炎は、眼だけの病気ではなく、全身のさまざまな病気の一症状として現れることが少なくありません。
たとえば、乾癬(かんせん)や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)をお持ちで、原因不明の慢性的な腰の痛みがある場合、軸性脊椎(せきつい)関節炎(体の中心軸にある関節に炎症が起こる病気)という関節の病気が隠れている可能性も考慮します。そのような場合は、リウマチ専門医への紹介を検討することもあります※。
視力検査、眼圧検査
ぶどう膜炎では、炎症が視機能に影響を及ぼし、視力低下を訴える患者さんが多くいらっしゃいます※。また、炎症によって眼圧が上がることもあり、緑内障のリスクを高めることがあります。これらの基本的な検査で、眼の状態を客観的に把握することが可能です。
細隙灯顕微鏡検査
眼の前面、具体的には角膜(くろめ)や虹彩(こうさい)、毛様体(もうようたい)といった部分の炎症を詳細に観察する検査です。この検査では、角膜と虹彩の間を満たす房水(ぼうすい)中に、炎症によって生じた細胞やタンパク質がどれくらいあるかを確認します。これにより、炎症の活動性や種類を判断する手がかりを得られます。
眼底検査
瞳孔(どうこう:ひとみ)を開く目薬を点眼し、眼の奥、つまり網膜や硝子体(しょうしたい)、視神経の状態を詳しく調べる検査です。特に、網膜の血管に炎症が起きる網膜血管炎では、両眼に症状が出たり、視力が低下したりすることが多く見られます。また、網膜の血流不足(網膜虚血)や、硝子体出血、黄斑(おうはん)のむくみ(黄斑浮腫)、さらには新生血管緑内障といった合併症が起こっていないかを確認することは、治療方針を立てる上で非常に重要です※。
光干渉断層計(OCT)
光の干渉を利用して、網膜の中心部にある黄斑の断面を精密に画像化する検査です。黄斑は物を見るために最も大切な部分であり、ここにむくみ(浮腫)が生じると、著しい視力低下を招きます。OCT検査は、特に非感染性のぶどう膜炎によって生じる嚢胞(のうほう)様黄斑浮腫の有無やその程度を客観的に評価するのに役立ちます※。黄斑の状態を正確に把握できるため、治療の効果判定にも用いられます。
蛍光眼底造影検査
腕の静脈から特別な蛍光色素を注射し、眼底の血管に色素が流れていく様子を連続して撮影する検査です。この検査により、ぶどう膜炎による炎症の活動範囲や、網膜の血管に異常がないか、血液の流れが滞っていないかといった、眼底の微細な変化を詳細に調べることができます。治療が必要な病変を見つける上で非常に有用な検査です。
全身との関連を調べる検査
血液検査
全身の病気がぶどう膜炎の原因となっている可能性がある場合に、血液検査を行います。この検査では、体内の炎症反応の有無、特定の自己抗体(自分の体を攻撃してしまう物質)、そしてHLA-B27などの遺伝子型を調べることが可能です。特に、HLA-B27という遺伝子型が陽性である場合、軸性脊椎関節炎と関連するぶどう膜炎の診断につながることもあります※。
必要に応じたその他の検査
・房水・硝子体検査
眼の房水や硝子体を少量採取し、細菌やウイルスなどの感染、あるいは悪性細胞の有無を直接的に調べることがあります。原因が特定しにくい感染症などが疑われる場合に検討されます。
・画像診断
全身の病気が疑われる場合、X線、CT、MRIといった画像診断を行うことがあります。特に、全身疾患として軸性脊椎関節炎が強く疑われる際には、MRIが診断に非常に有用であり、より正確な診断に貢献すると考えられています※。
ぶどう膜炎の診断は、これらの多角的な検査を通じて、眼の状態だけでなく、全身の健康状態まで見極めることから始まります。それぞれの検査結果を総合的に判断することで、病気の原因を特定し、患者さんにとって最適な治療計画を立てることが可能になります。
ぶどう膜炎の治療
ぶどう膜炎の治療は、炎症を抑え、眼の組織がこれ以上ダメージを受けるのを防ぎ、結果として視機能を維持・改善することを目的としています。原因や炎症のタイプ、病気の重さによって治療方法は異なりますが、主に薬物療法が中心となります。必要に応じて外科的な治療も検討されることがあります。
薬物療法
ぶどう膜炎の薬物療法では、炎症の程度や原因に合わせてさまざまな薬が使われます。
・ステロイド剤
炎症を強力に抑えるために用いられる薬です。点眼薬として直接眼に差したり、内服薬として飲んだり、眼の周囲に注射したり、さらには眼の内部、硝子体(しょうしたい:眼の内部の大部分を占めるゼリー状の組織)に直接注射したりと、多くの投与経路があります。
ステロイド剤は非常に有効ですが、長期にわたる使用や大量の投与は、緑内障や白内障などの合併症や、全身的な副作用を引き起こす可能性があります。そのため、医師は副作用に十分注意しながら、患者さんの状態を慎重に見極めて治療を進めていきます。服用中や使用中に気になる症状があれば、ためらわずに医師に相談することが大切です。
・免疫抑制剤
ステロイド剤だけでは炎症が十分に抑えられない場合や、ステロイドの量を減らしたい場合に、免疫抑制剤が使われることがあります。メトトレキセート(MTX)やミコフェノレートモフェチル(MMF)などが代表的な薬剤です。
これらの代謝拮抗薬(たいしゃきっこうやく)は、体の過剰な免疫反応を抑えることで、炎症を鎮める効果が期待できます。しかし、フルドーズ(最大用量)で服用すると、一部の患者さんで吐き気や倦怠感、肝機能障害といった耐え難い副作用が出ることがあります※。
ある研究によると、副作用のために薬の量を減らした場合でも、治療効果が大きく損なわれることはなく、むしろ有害事象(体への不都合な反応)が改善する可能性が示されています※。そのため、医師の判断のもと、患者さんの状態や副作用の状況に合わせて薬の量が調整されることもあります。免疫抑制剤の使用中は、副作用の有無をチェックするため、定期的な血液検査などが必要です。
・生物学的製剤
既存の治療法では効果が見られにくい、難治性のぶどう膜炎に対しては、生物学的製剤が用いられることがあります。これは、特定の炎症を引き起こす物質の働きをピンポイントで抑えることで、より効果的に炎症をコントロールすることを目指す新しいタイプの薬です。
・非ステロイド系抗炎症薬
炎症を抑える目的で、点眼薬や内服薬として使われることがあります。特に、ぶどう膜炎の合併症である嚢胞様黄斑浮腫(のうほうようおうはんふしゅ)の治療では、非ステロイド系の薬剤を眼に直接注射する「硝子体(しょうしたい)内注射」が有効な治療選択肢です※。
具体的には、ベバシズマブ、ラニビズマブ、インフリキシマブ、メトトレキセート、ジクロフェナクといった薬剤が使われます※。これらの注射によって、黄斑(おうはん:網膜の中心部で、最も視力に関わる大切な部分)のむくみが改善し、それに伴って視力の回復が期待できる場合があります※。
外科的治療
ぶどう膜炎の主な治療は薬物療法ですが、病気が進行して合併症が起こった場合には、外科的な手術が必要になることがあります。
・白内障手術
ぶどう膜炎の炎症によって白内障が進行し、視力低下が著しい場合に行われる手術です。白内障は、眼の中のレンズ(水晶体)が白く濁る病気を指します。
・緑内障手術
ぶどう膜炎によって眼圧(眼の硬さ)が上昇し、薬だけでは眼圧を適切にコントロールできない場合に行う手術です。緑内障は、眼圧の上昇などにより視神経が障害され、視野が狭くなる病気をいいます。
・硝子体手術
眼の内部の硝子体に炎症による濁り(硝子体混濁)がひどく、視界が妨げられる場合や、網膜剥離(もうまくはくり)などの重い合併症が起きた場合に検討される手術です。濁りを取り除いたり、網膜を元の位置に戻したりします。
ぶどう膜炎の治療は、しばしば長い期間にわたります。病状を安定させ、大切な視機能を守るためには、根気強く治療を続けることが不可欠です。自己判断で薬の量を変更したり、服用をやめたりすると、病状が急激に悪化したり、再発したりするリスクが高まります。必ず主治医の指示に従い、不安なことや気になる症状、副作用があれば、どんな些細なことでも速やかに相談してください。













