舌がん

なかなか治らない口内炎を、いつものことだと放置していませんか?その症状、実はお口にできるがんで最も多い「舌がん」のサインかもしれません。舌がんは口腔がん全体の約6割を占め、患者数は年々増加傾向にあります。60代が発症のピークですが、20代や30代でかかることもあり、決して他人事ではない病気です。

しかし、舌がんは早期発見できれば5年後の生存率が90%以上と、治る可能性が非常に高いがんでもあります。重要なのは、見過ごしがちな初期のサインに気づけるかどうかです。この記事では、舌がんのセルフチェック方法から原因、そして治療法までを詳しく解説します。手遅れになる前に、ご自身の体を守るための正しい知識を身につけましょう。

舌がんの概要

舌がんは、お口の中にできる「口腔がん」の一種です。 口腔がんの中では最も多く、全体の約6割を占めています。

舌の前から3分の2、鏡で大きく口を開けた時に見える範囲に できるのが特徴です。 男性に多く、60代で発症のピークを迎えますが、 20代や30代の若い世代でもかかることがある病気です。 舌がんを含む口腔がんの患者さんは年々増える傾向にあり、 決して珍しい病気ではありません。

しかし、舌がんは早く見つけることができれば、 治る可能性が非常に高いがんでもあります。 早期の段階で発見・治療された場合、 5年後に生存している方の割合は90%以上と報告されています。

治療は手術でがんを取り除くことが中心となります。 その際に最も重要になるのが、がんを完全に取りきることです。 手術では、がんの周りにある健康な組織も少し広めに切除し、 目に見えないがん細胞を残さないようにします。 多くの研究で、切り取った組織の「切り口」から がん細胞までの距離が5mm以上あると、 再発のリスクが低くなると示されています。 この距離を「切除断端距離」と呼び、 その後の経過を予測する重要な指標となります。 そのため、早期発見だけでなく、 精密な治療計画を立てることがとても大切になるのです。

舌がんの種類

舌がんは、がん細胞がもともと体のどの部分の細胞だったか、 その「出身地」によっていくつかの種類に分けられます。 がんの出身地を正確に突き止めることが、 適切な治療法を選ぶための非常に重要な第一歩となります。

舌がんのほとんどは「扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん」です。

  • 扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん) 舌の表面をおおっている、粘膜の細胞(扁平上皮細胞)が がんになったものです。 舌がんだけでなく、口の中にできるがんの9割以上が この扁平上皮がんにあたります。

ごくまれに、扁平上皮がん以外の種類の舌がんもあります。

  • 肉腫(にくしゅ) 舌の粘膜の下にある、筋肉や脂肪、血管といった部分から 発生するがんです。
  • 唾液腺がん(だえきせんがん) 唾液(つば)を作るための小さな組織が舌の中にもあり、 その組織から発生するがんです。

どの種類のがんかを確定するためには、組織の一部を採って 顕微鏡で詳しく調べる「病理組織検査」が必要です。 がんの種類によって進行の仕方や治療法が異なるため、 この最初の診断が治療計画全体の土台となるのです。

がんの種類

発生する場所

特徴・割合

扁平上皮がん

舌の表面をおおう粘膜

最も多いタイプです。

舌がんの9割以上を占めます。

肉腫

粘膜の下にある筋肉や脂肪

まれに発生します。

唾液腺がん

唾液(つば)を作る組織

まれに発生します。

舌がんの原因

舌がんがなぜできるのか、そのはっきりとした原因は まだ完全にはわかっていません。 しかし、舌がんになりやすくなるいくつかの「危険因子」が あることが研究で明らかになっています。

特に重要なのが、舌への「慢性的な刺激」です。 これは、長い間ずっと舌に刺激が加わり続ける状態を指します。 この刺激は、大きく次の2つに分けられます。

  • 化学的な刺激
  • 喫煙 タバコの煙に含まれる多くの有害物質が、 舌の粘膜を繰り返し傷つけます。 お口にできるがんの約8割は、 タバコが関係していると言われています。
  • 飲酒 お酒(アルコール)も、舌の粘膜にダメージを与えます。 特に、喫煙と飲酒の両方の習慣があると、 がんになるリスクはさらに高まります。
  • 機械的な刺激
  • 合わない入れ歯や詰め物 サイズが合っていなかったり、欠けていたりするものが、 舌の同じ場所に当たり続けることで刺激になります。
  • 尖った歯 虫歯で欠けてしまった歯や、傾いて生えている歯が、 舌の粘膜を傷つけることも原因の一つです。

このほか、口の中が不衛生な状態であることや、 がんになる可能性のある病気(前がん病変)も危険因子です。 代表的な前がん病変である「白板症(はくばんしょう)」は、 舌の粘膜が白くなるもので、その約10%が将来がんになると 報告されており、注意深い経過観察が必要です。

これらの危険因子を避けることは、がんの予防に直結します。 また、もし舌がんになったとしても、治療成績に関わってきます。 危険因子が少ない健康な口内環境は、 より良い治療結果につながる大切な土台となるのです。

舌がんの症状

舌がんのサインは、はじめは痛みを感じないことも多いです。 そのため、ただの口内炎だと思って見過ごされがちです。 しかし、この「痛みがない」という点が、 発見を遅らせる原因にもなるため注意が必要です。 早期発見のためには、舌のささいな変化を見逃さないことが、 なによりも大切になります。

特に、次のようなサインが2週間以上続く場合は要注意です。 鏡を使って、ご自身の舌を隅々までチェックしてみましょう。 普通の口内炎は、通常1~2週間ほどで自然に治っていきます。

【舌がんを見逃さないためのセルフチェック】

  • 治りにくい口内炎やできもの 舌の縁(ふち)や裏側、表面にできた口内炎が、 2週間経っても治らない、または大きくなっている。
  • 粘膜の色の変化 舌の一部が、こすっても取れない白い膜でおおわれている。 または、ビロードのように赤くなっている部分がある。
  • 舌のしこりや硬さ 舌の表面はなめらかですが、触ってみて、 中にコリコリとした硬い部分がある。
  • しみる感じ 食べ物や飲み物が、いつも同じ場所にだけしみる。
  • 舌の動きにくさ 舌がもつれる感じがして、ろれつが回りにくくなった。
  • 原因不明の出血 歯磨きなどの軽い刺激で、特定の場所から血がにじむ。

初期の段階では痛みがないこともありますが、 がんが進行すると、症状ははっきりしてきます。 持続する痛みや食事の際の強い痛み、出血、 そして強い口臭などが現れるようになります。

症状を放置してしまうと、がんが大きくなり、 治療の際に舌を大きく切除する必要が出てくるかもしれません。 「ただの口内炎」と自己判断せず、気になるサインが 2週間以上続く場合は、耳鼻咽喉科や歯科・口腔外科へ 早めに相談することが非常に重要です。

舌がんの検査・診断

舌に気になる症状がある場合、まずは耳鼻咽喉科や歯科、 口腔外科を受診しましょう。 舌がんの診断は、いくつかの検査を丁寧に進めて確定します。

1. 視診と触診 まず医師が口の中を直接見て、できものの色や形、 大きさを確認します(視診)。 次に手袋をした指で舌や首の周りを直接触り、 しこりの硬さや深さ、広がりを調べます(触診)。 首のリンパ節の腫れは、がんの転移を知る大切な情報です。

2. 画像検査 がんの広がりや深さ、転移がないかを詳しく調べる検査です。 体の内部を写真のように写し出して、詳しく観察します。

– CT検査・MRI検査 がんが舌のどの深さまで達しているか、 周りの組織やあごの骨に広がっていないかを立体的に見ます。

– 超音波(エコー)検査 主に首のリンパ節にがんが転移していないかを調べます。

3. 病理組織検査(生検) がんの診断を確定させるために、最も重要な検査です。 がんが疑われる部分の組織をほんの少しだけ切り取り、 顕微鏡で詳しく調べてがん細胞の有無を確認します。

この検査は、手術でがんを取り除いた後にも重要な役割を 果たします。 手術では、目に見えないがん細胞を残さないように、 がんの周りの健康な組織も少し広めに切り取ります。

そして、切り取った組織の端(断端)にがん細胞が 残っていないかを、顕微鏡で厳密に調べます。 多くの研究で、がん細胞から安全な距離が5mm以上あると、 再発のリスクが低くなると示されています。 この距離を確保することが、治療の成功に大きく関わります。

舌がんの治療

舌がんの治療は、がんの進み具合や体の状態を考えて、 最適な方法を組み合わせて行います。 治療の大きな柱は、次の3つです。

  • 手術(外科療法)
  • 放射線治療
  • 薬物療法(抗がん剤治療)

この中で、舌がん治療の中心となるのが「手術」です。 手術の最も大切な目標は、がん細胞を完全に取り除くことです。 目に見えないがん細胞を残さないように、 がんの周りにある健康な組織も少し広めに切り取ります。

このとき重要になるのが「切除断端距離」という考え方です。 これは、切り取った組織の端から、がん細胞までの 安全な距離のことを指します。 多くの研究を分析した報告によると、この安全な距離が 5mm以上あると、再発のリスクが低くなるとされています。 そのため、手術ではこの距離をしっかり確保することが、 治療の成功につながる鍵となります。

放射線治療は、高いエネルギーを持つ光線をがん細胞にあてて 破壊する治療法です。 手術が難しい場合や、手術後の再発を防ぐために行われます。 薬物療法は、抗がん剤というお薬を使い、 手術や放射線治療の効果を高める目的で併用されます。

どの治療法を選ぶかは、専門の医師と十分に話し合い、 納得した上で決めていくことが何よりも大切です。