合指症(合趾症)
生まれてきた大切なお子さんの指が隣とくっついている「合指症(合趾症)」。ご両親は大きな不安を感じるかもしれませんが、これは決して珍しいことではありません。実は、生まれつきの手足の特徴は、心臓の病気に次いで2番目に多いと報告されているのです。
なぜ指はくっついてしまうのか、皮膚だけなのか骨まで影響があるのか、そして、いつどのような治療をすればよいのか。多くの疑問が頭をよぎることでしょう。
この記事では、合指症(合趾症)の根本的な原因から、手術を中心とした具体的な治療法、手術後のケアまでを詳しく解説します。正しい知識を得て、お子さんのための最適な選択をするための一歩として、ぜひご一読ください。
合指症(合趾症)の概要
合指症(ごうししょう)や合趾症(ごうししょう)は、生まれつき隣り合う指がくっついている状態を指します。「合指症」は手の指、「合趾症」は足の指に使われる言葉です。
赤ちゃんが生まれつき持つ体の特徴の中でも、手足に関するものは、心臓の病気に次いで2番目に多いと報告されています。このように、手足の生まれつきの異常は決して珍しいものではありません。その中でも合指症(合趾症)は、指の数が多い「多指症」に次いでよく見られます。
手では中指と薬指の間、足では人差し指と中指の間に起こることが多いです。くっつき方には、主に2つのタイプがあります。
- 皮膚性(ひふせい) 皮膚だけが水かきのようにくっついている状態です。
- 骨性(こつせい) 皮膚だけでなく、中の骨までくっついている状態です。
お母さんのお腹の中で手足がつくられるとき、初めは一枚の板のような形です。そこから指と指の間が自然に分かれていき、5本の指が完成します。この「分かれる」というステップが計画どおりに進まないと、指がくっついたまま生まれてくるのです。
近年の研究では、体の設計図である「遺伝子」の情報が、手足の形に関わることがわかってきました。実際に、指の形に関わる特定の遺伝子の変化が原因となるケースも報告されています。
多くの場合、合指症(合趾症)は単独で見られ、他に心配な病気はありません。しかし、まれに他の病気の一つの症状として現れることもあるため、専門の医師による詳しい診察が大切になります。
合指症(合趾症)の種類
合指症(合趾症)は、指がどのようにくっついているかによって、いくつかの種類に分けられます。この分類は、どのような治療計画を立てるかを決める上で、とても大切な情報になります。
主に、くっついている部分の違いによって、2つのタイプに分けられます。
皮膚性合指(趾)症
皮膚や、その下にあるお肉のような柔らかい組織だけがくっついている状態です。 指と指の間の「みずかき」が、通常よりも指先のほうまで伸びているような見た目です。 このタイプでは、中の骨はそれぞれ独立しています。
骨性合指(趾)症
皮膚や柔らかい組織だけでなく、中の骨までしっかりとくっついている状態です。 皮膚性のタイプと比べると、骨まで影響が及んでいるため、やや複雑な状態といえます。
この2つの違いを、下の表にまとめました。
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種類 |
つながっている部分 |
特徴 |
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皮膚性合指(趾)症 |
皮膚・やわらかい組織 |
骨はそれぞれ分かれている |
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骨性合指(趾)症 |
皮膚・やわらかい組織・骨 |
中の骨までつながっている |
また、近年の研究では、体の設計図である遺伝子の変化が関係する可能性もわかってきました。例えば、LMBR1やHOXD13といった特定の遺伝子の変化が、発症に関わる場合があると報告されています。
しかし、多くの場合、なぜ起こるのかはっきりとした原因はわかりません。どのタイプかを正確に知り、適切な治療につなげるために、まずは専門の医師に相談することが大切です。
合指症(合趾症)の原因
赤ちゃんがお腹のなかで大きくなる過程で、手や足の指がつくられます。 このとき、何が原因で指がくっついてしまうのでしょうか。
はじめ、赤ちゃんの手や足は、うちわのような平たい形をしています。 そこから指が分かれるために、とても不思議な現象が起こります。 指と指の間になるはずだった細胞が、計画的に消えていくのです。 この仕組みによって、きれいに5本の指が形づくられます。
合指症(合趾症)は、この細胞が消えるプログラムが計画どおりに進まなかったときに起こります。 近年の研究では、体の設計図である「遺伝子」の働きが、このプログラムに関わっていることがわかってきました。
- 遺伝子の変化 海外の研究では、手足の形づくりに関わる特定の遺伝子に、わずかな変化が起こることが原因の一つと報告されています。
- LMBR1
- GJA1
- HOXD13
- TP63
多くの場合、ご両親やご親族に同じ症状の方がいなくても、偶然に起こる「単発的」なものです。 しかし、ごくまれに、ご家族のなかで受け継がれる遺伝性のものや、他の生まれつきの特徴とあわせて症状が出る「症候群性」の場合もあります。
このように、原因は一つではなく、様々な要因が考えられています。 手足の生まれつきの特徴は、心臓の病気に次いで2番目に多く、決して珍しいことではありません。
合指症(合趾症)の症状
合指症(合趾症)では、隣り合う指がくっついて生まれてきます。 どの指の間で、どのくらい深くくっついているかは人それぞれです。
見た目の特徴は、くっつき方のタイプによって分けることができます。
- くっつき方のタイプ 皮膚や爪といった柔らかい部分だけがくっついている「皮膚性」と、中の骨までくっついている「骨性」があります。
- くっついている範囲 指の間の「みずかき」が少し深いだけの軽いものから、指先まで完全にくっついているものまで様々です。
多くの場合、物をつかむ、歩くといった日常の動きに困ることはありません。 しかし、指を大きく広げるピアノの演奏や、ボールをしっかり握るような動きは、やりにくさを感じることがあります。
また、手術で指を分けた後も、注意して経過を見ることが大切です。 海外の研究でも、手術後の変化が手の機能や見た目に大きく影響することが指摘されています。
- 瘢痕拘縮(はんこんこうしゅく) 手術のきずあとが硬くなり、指の動きを邪魔してしまう状態です。
- ウェブクリープ 手術で作った指の間の「みずかき」が、時間とともにだんだん浅くなってしまう現象を指します。
これらの変化は、指の動きにくさにつながる可能性があるため、治療後の重要な観察ポイントとなります。
合指症(合趾症)の検査・診断
合指症(合趾症)の診断は、多くの場合、生まれてすぐの赤ちゃんの見た目(視診)から始まります。 医師が指や足のゆびの状態をていねいに見て、どの指がどのくらいくっついているかを確認します。
しかし、見た目だけではわからない、とても大切な情報があります。 それは、皮膚の下にある「骨」までくっついているかどうかです。 この状態を正確に知るために、レントゲン(X線)検査を行います。
【レントゲン検査で確認するポイント】
- 骨のつながり方 皮膚だけでなく骨もつながる「骨性」かを確認します。 骨がくっついていると、手術計画がより慎重になります。
- 骨や関節の状態 指の骨の形や数、関節に他の異常がないかを調べます。
これらの検査は、今後の治療、特に手術の方法や時期を決めるために欠かせません。 診断では、手術後の指の動きや見た目を良くすることも考えます。
海外の研究でも、手術後のきずあとが問題になることが指摘されています。 例えば、きずあとが硬くなり指の動きを邪魔する「瘢痕拘縮(はんこんこうしゅく)」が挙げられます。 また、指の間の「みずかき」が浅くなる「ウェブクリープ」という状態も起こりえます。
これらの変化は手の機能に影響するため、診断の時からきずあとがどうなるかを予測します。 そして、将来の生活を見据えた最適な治療計画を立てていくのです。
合指症(合趾症)の治療
合指症(合趾症)の治療は、手術が基本となります。 手術の目的は、指が本来持っている動きを取り戻し、見た目も自然な形に近づけることです。 お子さんの成長に合わせて、最適な計画を立てていきます。
手術は、お子さんが活発に手や足を使うようになる前の、1歳から2歳までに行うのが一般的です。 この時期は、体の回復が早く、手術後の新しい指の感覚や動きに自然と慣れていきやすいという利点があります。
手術の主な流れは、以下のようになります。
- 指の分離とみずかきの形成 まず、くっついている指を、神経や血管を傷つけないよう丁寧に分けます。 そして、指の皮膚の一部をパズルのように動かす「皮弁術(ひべんじゅつ)」という方法で、自然な形の指のまた(みずかき)を作ります。
- 皮膚の移植(植皮術) 指を分けると、側面などの皮膚が足りなくなります。 その部分には、体の他の場所から取った皮膚を移植します。 一般的には、見た目や質感が似ている足首の内側から皮膚をいただくことが多いです。
手術では、きずあとが将来の指の動きを邪魔しないよう、細心の注意を払います。 海外の研究でも、手術後の「瘢痕拘縮(はんこんこうしゅく)」というきずのひきつれや、作ったみずかきが浅くなる「ウェブクリープ」が、手の機能や見た目に大きく影響することが指摘されています。
これを防ぐため、きずをまっすぐに縫うことは避けます。 まっすぐなきずは、皮膚が伸びにくく、ひきつれの原因になりやすいためです。 そこで、きずをジグザグに縫う「Z形成術」などの工夫を行い、指を動かしてもつっぱりにくい状態を目指します。
手術後は2〜3週間ほどギプスで手を保護します。 退院後も、ご自宅で指の間にスポンジを挟む圧迫療法など、丁寧なケアを続けることが、きれいな指を保つためにとても大切になります。










