化膿性骨髄炎

「骨がばい菌に感染する」―この恐ろしい病気が、化膿性骨髄炎です。原因は、私たちの皮膚にもいる身近な黄色ブドウ球菌などですが、ひとたび骨にまで感染が及ぶと、ときに命を脅かす深刻な事態に発展します。

特に背骨に感染が起こる化膿性脊椎炎は、適切な治療が遅れると死亡率が最大で20%にものぼるという衝撃的な報告もあります。急な高熱やズキズキとした激しい痛みは、もしかしたら体からの危険なSOSサインかもしれません。

この記事では、化膿性骨髄炎の知られざる原因や症状、そして死亡率や再発率を下げるとされる最新の治療法までを詳しく解説します。ご自身の体を守るための正しい知識を、ぜひここで手に入れてください。

化膿性骨髄炎の概要

化膿性骨髄炎とは、細菌が骨の中に入り込んでしまい、 骨の組織で炎症を起こしてしまう病気のことです。 簡単に言うと「骨がばい菌に感染した状態」です。

原因となる細菌で最も多いのは黄色ブドウ球菌です。 この菌は、私たちの皮膚の表面などにもいる身近な菌ですが、 傷口などから体の中に入り、骨にまで達すると重い感染症を引き起こします。

この病気は、進行の仕方によって大きく2つのタイプに分けられます。

  • 急性骨髄炎 急に高熱や強い痛みなどの症状があらわれ、 細菌によって骨がもろくなったり、壊されたりする状態です。
  • 慢性骨髄炎 急性の状態が長引いてしまったものです。 壊れてしまった骨(死骨)の周りに、 新しい骨ができてしまう状態を指します。

化膿性骨髄炎は、ときに命を脅かすこともある病気です。 特に背骨に起こる化膿性脊椎炎では、 死亡率が最大で20%にものぼるという報告もあります。

そのため、早期に適切な治療を受けることが非常に大切です。 ある研究では、患者さんの状態によっては、 抗生物質による治療だけでなく、早い段階で手術を行うことが検討されます。 早期の手術は、お薬だけの治療と比べて、 死亡率や再発率を下げ、入院期間も短くできる可能性が示されています。

化膿性骨髄炎の種類

化膿性骨髄炎は、病気の進み方によって大きく2つの種類に分けられます。 急に症状があらわれる「急性」と、それが長引いてしまう「慢性」です。 どちらのタイプかによって、症状や治療法が大きく変わってきます。

急性骨髄炎

急に症状があらわれるタイプです。 ばい菌が骨の中に入り込み、急激に炎症が広がり骨を壊していきます。 主な特徴は以下のとおりです。

  • 突然の症状 39℃以上の高い熱や、強い寒気、だるさなどを感じます。
  • 激しい痛み ばい菌に感染した手足などが激しく痛み、動かすのがつらくなります。

このタイプは、なるべく早く診断して治療を始めることが非常に重要です。 早期に適切な治療ができれば、慢性化するのを防げる可能性が高まります。

慢性骨髄炎

急性骨髄炎が長引いたり、一度治ったように見えて再発を繰り返すタイプです。 症状が落ち着いている期間と、悪化する期間を繰り返します。

  • 死骨(しこつ)の形成 感染によって死んでしまった骨(死骨)ができてしまいます。
  • 瘻孔(ろうこう)からの排膿 皮膚に「瘻孔」という穴があき、そこから膿が出続けることがあります。

特に、背骨に感染が起こる化膿性脊椎炎は、命に関わることもある病気です。 ある研究では、適切な治療が遅れると死亡率が高まることがわかっています。 手術をしない場合の死亡率が13%だったのに対し、 早期に手術をした場合は8%まで下がったという報告もあります。 早期の手術は、再発のリスクを下げ、入院期間を短くできる可能性も示されています。

種類

特徴

主な症状

急性骨髄炎

急に発症し、骨が壊される

高熱、激しい痛み、腫れ

慢性骨髄炎

長期化し、症状を繰り返す

死んだ骨(死骨)ができる、膿が出る穴(瘻孔)

このように、化膿性骨髄炎は進行の仕方で状態が大きく異なります。 どちらのタイプであっても、専門の医療機関で診断を受け、 適切な治療をうけることがとても大切です。

化膿性骨髄炎の原因

化膿性骨髄炎は、骨に細菌が入り込むことで起こる病気です。 特に背骨に起こる「化膿性脊椎炎」は、よく見られるタイプです。

原因となる細菌で最も多いのは「黄色ブドウ球菌」です。 この菌は、私たちの皮膚や鼻の中などにもいる身近な菌です。 普段は悪さをしませんが、体の抵抗力が落ちると感染症を引き起こします。

細菌が骨の中に入るルートは、主に次の3つに分けられます。

  • 血液の流れに乗って感染(血行性感染) 体の他の場所の感染が原因です。例えば、のどの炎症や おできなどから菌が血管に入り、骨にたどり着きます。 特に骨の端は血の流れが遅いため、菌が住み着きやすいのです。
  • ケガによって直接感染(外傷性感染) 骨が折れて皮膚を突き破るような大きなケガ(開放骨折)や、 骨の手術の際に、傷口から細菌が直接骨に入り感染します。
  • 周りからの感染の広がり(蔓延性感染) 骨のすぐ近くで起きた感染が、骨にまで広がってしまう状態です。 例えば、指先の化膿(ひょうそ)を放置すると、指の骨にまで及びます。

このように原因は様々ですが、体の抵抗力が落ちた時が危険です。 身近な菌が原因でも、特に背骨に感染が及ぶ化膿性脊椎炎は、 命に関わることもあり、注意が必要な病気です。

化膿性骨髄炎の症状

化膿性骨髄炎の症状は、急にあらわれる「急性」と、長く続く「慢性」で大きく異なります。 これは、骨の中で細菌がどのように活動しているかを示す、体からの危険信号です。 ご自身の状態と見比べ、早めに気づくことがとても大切になります。

急な高熱と激痛がサイン「急性骨髄炎」

急性の場合は、症状が突然あらわれるのが特徴です。 骨の中で細菌が急激に増え、体が強く反応している状態を示します。

  • 全身にあらわれる症状 寒気をともなう39℃以上の高熱や、ぐったりするほどの強いだるさを感じます。 これは細菌が血液に入り込む「毒血症」という状態が原因です。
  • 痛みのある場所にあらわれる症状 骨の特定の部分がズキズキと脈打つように激しく痛みます。 痛みのあまり、腕や脚を動かせなくなることも少なくありません。 また、その場所は赤く腫れて熱っぽくなり、押すと特に強く痛みます。

これらの症状は、体からのSOSサインです。 特に背骨に感染が起こる化膿性脊椎炎では、治療が遅れると命に関わることもあります。

治りにくい傷と繰り返す痛み「慢性骨髄炎」

急性期の治療がうまくいかなかったり、気づかずに時間が経ったりすると慢性化します。 症状が落ち着いている時期と、悪化する時期を繰り返すのが特徴です。

  • 繰り返す痛みや熱 普段は強い症状がなくても、体の抵抗力が落ちたときなどに、 急に痛みや腫れ、熱がぶり返すことがあります。
  • 膿(うみ)が出続ける 皮膚に「瘻孔(ろうこう)」というトンネルのような穴ができて、 そこから膿が出続けることがあります。
  • 骨や皮膚の変化 長期間にわたると、骨が変形したり、 周辺の皮膚が硬くなったり、色が黒ずんだりします。

慢性化すると、細菌が骨の中にしぶとく残り、治療が難しくなります。 ある研究では、お薬だけの治療では再発率が21%にものぼると報告されています。 気になる症状があれば決して放置せず、できるだけ早く医療機関を受診してください。

化膿性骨髄炎の検査・診断

化膿性骨髄炎を疑った場合、骨の中で何が起きているかを知る検査が必要です。 原因を正確に突き止め、一人ひとりに合った治療法を選ぶために行います。 問診や診察で体の状態を確認した上で、主に以下の検査を組み合わせます。

血液検査

体の中でばい菌との戦いが起きているか、その激しさを調べる検査です。

  • 白血球数やCRP値 炎症が起きると増える物質の量を測り、感染の有無や程度を評価します。 これらは、体がばい菌と戦っていることを示す大切なサインです。
  • 血液培養 血液の中に原因となる細菌がいないかを直接調べます。 もし細菌が見つかれば、どの抗生物質が効くかを調べる手がかりになります。

画像検査

骨やその周りの組織が、どのようなダメージを受けているかを詳しく見ます。

  • X線(レントゲン)検査 骨の形が壊れたり変形したりしていないかを確認する基本的な検査です。 ただし、病気が始まってすぐの段階では、異常が見つからないこともあります。
  • CT検査 レントゲンより詳しく骨の状態を観察できます。 骨を輪切りにしたような画像で、小さな骨の破壊も見つけ出せます。
  • MRI検査 骨の中(骨髄)や周りの筋肉の炎症を、詳しく見るのに非常に有効です。 病気のかなり早い段階から、異常を発見できるのが大きな特徴です。

これらの検査結果から診断を確定します。 ある研究では、早期診断と治療がその後の経過を大きく左右すると示されました。 特に背骨の感染症では、早期の手術により死亡率が13%から8%に低下し、 再発率も21%から15%に下がったという報告もあります。 正確な診断は、命を救い、入院期間を短くすることにもつながるのです。

化膿性骨髄炎の治療

化膿性骨髄炎の治療は、骨に入り込んだ細菌を退治し、 骨が壊れてしまうのを食い止めることが一番の目的です。 治療法は病気の状態によりますが、主に2つの柱で進められます。

  • お薬での治療(薬物療法) 治療の基本は、原因となっている細菌を攻撃する「抗生物質」です。 血液検査などで原因菌を特定し、その菌に最も効果のある薬を選びます。 点滴や飲み薬で、十分な期間しっかりと治療を続けることが大切です。
  • 手術での治療 お薬だけでは治らない時や、状態が悪い場合は手術を検討します。
  • 手術が必要になる主なケース
  • 骨の中に膿が溜まっている
  • 感染で骨の一部が死んでしまった(死骨)
  • 病気が長引き、膿が出るトンネル(瘻孔)ができた

特に症状が重い場合や、背骨に感染が起きた「化膿性脊椎炎」では、 近年の研究で、早期の手術が非常に有効であることがわかってきました。 複数の研究をまとめた信頼性の高い報告によると、 お薬だけの治療に比べて、早期に手術を受けた患者さんの方が、 死亡率が13%から8%に、再発率も21%から15%に低下したとされています。 さらに、入院期間も平均で約1週間短くなるという結果でした。

治療法は、患者さんの体の状態や病気の進み具合をみて総合的に判断します。 急性期はお薬が中心、慢性期は手術が必要になることが多くなります。 ご自身の状態に合った最善の治療法を、医師とよく相談して決めましょう。