お子さんの成長が周りの子より早いと、「元気に育っている証拠」と嬉しく感じるかもしれません。しかし、もしその著しい成長に加えて、言葉の発達がゆっくりだったり、お顔つきに特徴が見られたりする場合、それは「ソトス症候群」のサインである可能性があります。
ソトス症候群は、およそ1万4,000人に1人の割合でみられる遺伝性の疾患で、国の指定難病のひとつです。原因の約95%はご両親からの遺伝ではなく、誰にでも起こりうる偶然の遺伝子変化によるものとされています。この記事では、ソトス症候群の具体的な症状や原因、そして一人ひとりに合わせた治療やサポート体制について詳しく解説します。
ソトス症候群の概要
ソトス症候群は、生まれつきの遺伝子の変化によって、体の成長や発達に特徴があらわれる病気です。1964年に報告されたことからこの名前がついており、以前は「脳性巨人症」と呼ばれることもありました。
この病気には、主に次の3つの大きな特徴があります。
- 体の成長が早い(過成長) 生まれた時から、同じ年齢のお子さんの平均的な大きさと比べて、身長や頭のサイズがとても大きい傾向にあります。
- 特徴的なお顔つき おでこが広くて前に出ている、あごがとがっている、目が少し離れている、といった特徴がみられます。
- 発達がゆっくり 言葉を話し始めたり、歩き始めたりするのがゆっくりになるなど、発達に遅れがみられることがあります。
ソトス症候群は、およそ1万4,000人に1人の割合でみられると報告されています。日本では、医療費の助成を受けられる「指定難病」のひとつに定められています。症状のあらわれ方は一人ひとり異なり、心臓や腎臓の病気、背骨が曲がる(側弯症)、けいれん発作などを伴うこともあります。そのため、それぞれの症状に合わせた丁寧な対応が必要です。
ソトス症候群の種類
ソトス症候群は、原因となる遺伝子の異常の仕方によって、主に2つのタイプに分けられます。私たちの体の設計図である「遺伝子」に、どのような変化が起きているかで分類されます。
診断では、遺伝学的検査という詳しい検査で、NSD1という遺伝子の状態を確認します。このNSD1遺伝子の異常の仕方によって、主に次の2つのタイプに分けられます。
- 欠失型(染色体微細欠失型) NSD1遺伝子だけでなく、その周りの遺伝子もまとめてなくなっている状態です。設計図が載っているページの一部が、破れてしまったようなイメージです。
- 変異型(遺伝子内変異型) 設計図のページはありますが、NSD1遺伝子という設計図の文字に間違いが起きている状態です。
この2つのタイプは、人種によって現れる割合が異なります。日本人では「欠失型」が約半数を占めるのに対し、日本人以外では「変異型」が多くみられます。
また、どちらのタイプかによって、症状の現れ方に少し違いが出ることがあります。
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タイプ
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特徴の傾向
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欠失型
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・体の大きな成長が、比較的目立たないことがあります。
・知的発達の遅れが、よりはっきりと現れる傾向があります。
・心臓や腎臓の病気を合併する可能性が少し高くなります。
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変異型
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欠失型と比べて、上記の症状の程度が比較的軽い傾向にあります。
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このように、遺伝子のどの部分にどのような変化が起きているかを知ることはとても大切です。それによって、将来注意すべきことや、必要なサポートを予測しやすくなるからです。
ソトス症候群の原因
ソトス症候群は、体の設計図である「遺伝子」の変化によって起こる病気です。 原因のほとんどは、5番染色体にあるNSD1遺伝子の異常であることがわかっています。 NSD1遺伝子は、体の成長などを調整する大切な司令塔の役割を担っています。
ソトス症候群の遺伝形式は「常染色体優性遺伝」という形式をとります。 これは、父親由来と母親由来の2つで1ペアの遺伝子のうち、片方に変化があるだけで症状が現れることを意味します。 しかし、ほとんどのケースはご両親からの遺伝ではなく、そのお子さんの代で偶然に起こる「突然変異」です。
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遺伝のケース
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割合
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説明
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突然変異
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約95%
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ご両親はソトス症候群ではなく、お子さんが生まれる過程で偶然に遺伝子が変化するケースです。これは誰にでも起こりうる自然な現象であり、ご両親のせいではありません。
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親からの遺伝
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約5%
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ご両親のどちらかがソトス症候群で、その遺伝子を受け継ぐケースです。この場合、お子さんに遺伝する確率は50%となります。
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患者さんの約9割でNSD1遺伝子の変化が見つかります。 しかし、残りの約1割の方では、この遺伝子に変化が見つからないこともあります。 その場合は、「NFIX遺伝子」など他の遺伝子が関係している可能性も考えられており、現在も研究が進められています。
ソトス症候群の症状
ソトス症候群の症状は、一人ひとり異なります。 しかし、多くのお子さんに共通して見られる、3つの大きな特徴があります。
- 体の成長が早い(過成長)
- 特徴的なお顔つき
- 発達がゆっくり進む
これらの特徴は、ソトス症候群の診断を考える上で重要な手がかりとなります。
1. 体の成長が早い(過成長)
生まれた時から、身長や頭のサイズが平均より大きい傾向があります。 特に生まれてから数年の成長スピードがとても速いのが特徴です。 レントゲンを撮ると、骨の成長が実際の年齢より進んでいることもあります。 ただし、大人になると身長は平均的な範囲に落ち着くことも少なくありません。
2. 特徴的なお顔つき
お顔つきには、特に1歳から6歳ごろにはっきりと現れる特徴があります。 成長とともにお顔つきは少しずつ変化していきます。
- 頭の形 おでこが広くて前に出ており、面長(おもなが)に見えることがあります。
- あごの形 あごの先がとがっているように見えます。
- 髪の毛 髪の生え際が少し後ろにあるように見えることがあります。
- 目 目が少し離れていて、目じりがやや下がっているように見えます。
3. 発達がゆっくり進む
言葉を話したり、歩いたりといった発達がゆっくり進む傾向があります。 知的発達にも遅れがみられることがありますが、その程度は人それぞれです。 また、人とのコミュニケーションに特徴がみられることもあります。 ある研究では、約2割の方に自閉スペクトラム症の症状がみられたと報告されています。
その他にみられることがある症状
上記の3つの特徴以外にも、全身にさまざまな症状が現れることがあります。 症状の現れ方やその程度には、大きな個人差があるのがこの病気の特徴です。
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分類
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具体的な症状の例
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けいれん発作
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熱が出たときに起こる「熱性けいれん」を含むけいれんがみられます。
報告によると、約4人に1人(26.1%)の割合で起こることがあります。
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心臓の異常
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生まれつき心臓に異常がみられることがあります。
(例:心房中隔欠損、動脈管開存症など)
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骨や関節の異常
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・背骨が横に曲がる「側弯症(そくわんしょう)」
・関節がやわらかい
・扁平足(へんぺいそく)
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生まれたばかりのころの症状
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・黄疸(おうだん)
・ミルクをうまく飲めない(哺乳不良)
・血糖値が低くなる(新生児低血糖)
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その他の体の異常
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・腎臓や尿路の異常
・目の異常(斜視など)
・耳のトラブル(中耳炎を繰り返すなど)
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このように、ソトス症候群ではさまざまな症状がみられる可能性があります。 そのため、定期的な診察で全身の状態を丁寧に確認していくことが大切です。
ソトス症候群の検査・診断
ソトス症候群の診断は、お子さんの成長の様子や特徴を、 専門の医師が丁寧に診察することから始まります。 そして、診断をより確かなものにするために、 必要に応じて遺伝子の検査などを組み合わせて進められます。
診察では、ソトス症候群によくみられる、 いくつかの特徴的なサインがあるかを確認します。 遺伝子の検査で異常が見つからなくても、 以下の4つの特徴がすべて当てはまる場合は、 ソトス症候群と診断されることがあります。
【ソトス症候群の診断の目安】
- 乳幼児期の大きな頭(大頭症)
- 乳幼児期の速い成長(過成長)
- 特徴的なお顔つき
- おでこが広くて前に出ている
- 目が少し離れている
- あごがとがっている など
診断を確定するためには、血液を使った遺伝学的検査が行われます。 この検査では、ソトス症候群の主な原因とされる、 「NSD1遺伝子」という設計図に変化がないかを詳しく調べます。 この遺伝子に病気の原因となる変化が見つかると、診断が確定します。
また、ソトス症候群では心臓や腎臓などに、 他の病気を合併することがあるため、それらを調べる検査も大切です。
- 心臓の超音波(エコー)検査
- 腎臓の超音波(エコー)検査
- 頭のMRI検査
お子さんのことで気になることがあれば、 まずはかかりつけの小児科の先生や、 専門の医療機関に相談することが第一歩です。
ソトス症候群の治療
ソトス症候群の原因である遺伝子の働きを、 元に戻すような根本的な治療法はまだありません。 しかし、それぞれの症状を和らげたり、 生活しやすくするためのサポート方法はたくさんあります。 これを「対症療法」と呼びます。
症状のあらわれ方は一人ひとり違うため、 治療もオーダーメイドで進められます。 小児科医が中心となり、さまざまな専門家がチームを組んで、 お子さんとご家族を長期的に支えていきます。
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症状の種類
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具体的な治療・サポート内容
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発達の遅れ
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・体を上手に動かす練習(理学療法)
・手先を器用に使う練習(作業療法)
・言葉やコミュニケーションの練習(言語聴覚療法)
このような専門的なサポート(療育)を、早い時期から始めることが大切です。
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けいれん発作
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けいれんを予防するお薬(抗てんかん薬)を使って、発作が起きないようにコントロールしていきます。
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心臓や腎臓の病気
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定期的な検査で状態を確認し、必要に応じてお薬や手術で治療します。例えば、尿の逆流が見られる場合は、感染を防ぐためのお薬を飲むこともあります。
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背骨の曲がり(側弯症)
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成長に合わせて背骨の状態を定期的にチェックします。曲がりが進むようであれば、コルセットのような装具をつけたり、手術を考えたりします。
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頭の大きさ
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検査で脳の水の部屋(脳室)が大きくても、多くは問題のない「停止性水頭症」です。すぐに手術が必要になることは少ないので、過度に心配する必要はありません。
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このように、お子さんの成長の段階に合わせて、 その時々に最も合った治療や支援を継続していくことが大切です。 気になることがあれば、いつでもチームの専門家に相談しましょう。