二次性貧血
「なんだか体がだるい」「めまいがよくする」…もしかして貧血かな?そう感じた時、「鉄分不足のせいだろう」と自己判断していませんか?実は、あなたの貧血は、体の中に隠れた別の病気が原因で起こる「二次性貧血」かもしれません。
二次性貧血は、単なる栄養不足ではなく、他の病気が引き金となって生じる貧血です。放置してしまうと、脳や腎臓といった大切な臓器に深刻なダメージを与えるリスクも。この記事では、見過ごされがちな二次性貧血の正体から、その多様な種類、具体的な原因、そして最新の治療法までを詳しく解説します。あなたの体のSOSを見逃さず、健康な毎日を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。
二次性貧血の概要
わたしたちの体の中にある「赤い血」(赤血球)は、全身に酸素を運ぶ大切な役割をしています。この赤い血が足りなくなってしまう状態が「貧血」です。 貧血と聞くと、多くの人は「鉄分が足りなくなる貧血」を思い浮かべるかもしれません。しかし、二次性貧血は、体の中にある他の病気が原因で引き起こされる貧血なのです。 つまり、貧血そのものが病気というわけではありません。別の病気によって体が弱り、その影響で貧血になってしまうという特徴があります。
例えば、お子さんにも起こりうる「鎌状赤血球症」という病気をご存知でしょうか。この病気は、赤血球の形が異常になることで、体中の細い血管が詰まりやすくなります。 その結果、体のさまざまな部分に負担がかかり、貧血が起きやすくなるのです。具体的には、おしっこを作る大切な腎臓の働きが悪くなります。 これにより、「慢性腎臓病」という状態に進行するリスクが高まるのです。
二次性貧血の種類
貧血には、さまざまな原因によって起こる種類があります。私たちは、患者さんの貧血がどんな種類なのかをしっかり見極めることをとても大切にしています。その原因がわからなければ、適切な治療ができないからです。
主な二次性貧血の種類は、次のとおりです。
- 鉄欠乏性貧血
- 体の中で鉄分が足りなくなることで、酸素を運ぶ大切なヘモグロビンがうまく作れなくなります。
- 胃や腸からの出血や、女性の場合は毎月の生理などが原因で起こることが多く、最もよく見られます。
- 慢性疾患に伴う貧血
- がんや長く続く炎症(体が慢性的に炎症を起こしている状態)など、別の病気があることで、体が鉄分を上手に使えなくなり、貧血になることがあります。
- 腎性貧血
- おしっこを作る腎臓の働きが悪くなると、赤血球を作るためのホルモンが不足して、貧血が起こりやすくなります。
- 腎臓は、私たちの血液をきれいにするだけでなく、赤血球を作るための指令を出す大切な役割も担っているのです。
- 溶血性貧血
- 何らかの原因で赤血球が普通よりも早く壊されてしまうことで起こる貧血です。
- 体の防御システムである免疫が間違って赤血球を攻撃してしまうことや、薬の副作用などが原因となることがあります。
- 骨髄の病気による貧血
- 骨の中にある「骨髄(こつずい)」という場所は、血液を作る工場のようなものです。
- この工場がうまく働かなくなってしまう病気(再生不良性貧血など)によっても貧血は起こります。
貧血には、上記のような病気が原因で起こるものだけでなく、遺伝子の影響で引き起こされるものもあります。例えば、「サラセミア」という種類の貧血は、遺伝子が原因で赤血球がうまく作れない病気です。この病気の中には、「非輸血依存性βサラセミア」という、輸血に頼らなくても生活できるタイプがあります。
最近の研究では、このタイプのサラセミアの患者さんに対して、「ルスパテルセプト」という新しいお薬が有効であることがわかってきました。このお薬を使うことで、体中に酸素を運ぶヘモグロビンの値が安定して増え、だるさや疲れといったつらい症状が長く改善することが報告されています。具体的には、ある研究では94.8%もの患者さんでヘモグロビン値が改善し、その効果は最長で約4.6年間も続くことが示されています。
もちろん、お薬には頭痛や骨の痛み、背中の痛みなどがまれに起こることもありますが、長期間にわたって安心して使えるお薬だと考えられています。もし貧血かなと思ったら、どんな種類の貧血なのかを私たち医師と一緒に知ることが、元気な生活を取り戻すための第一歩となるでしょう。
二次性貧血の原因
わたしたちの体の中で「貧血がある」と聞くと、多くの患者さんは「鉄分が足りないせいかな?」と思いがちです。しかし、二次性貧血は、貧血そのものが病気なのではなく、隠れている別の病気が原因で起こっています。医師である私たちが最も大切にしているのは、この「隠れた原因」をしっかりと見つけ出すことです。
主な原因は、大きく分けて次の3つが考えられます。
- 体の外への出血
- 思わず「えっ」と思うかもしれませんが、血液が体から外に出てしまうことです。
- 大きなケガや手術で一度に多くの血液を失うこともあれば、胃や腸からのわずかな出血が長く続くこともあります。
- 例えば、胃潰瘍や痔などが原因となる場合です。
- 女性の場合は、毎月の生理(月経)が長く続いたり、量が多かったりすることも原因になります。
- 体から鉄分が失われ、酸素を運ぶ大切な赤血球がうまく作れなくなってしまうのです。
- 栄養の不足と体の使い方の問題
- 特に鉄分が足りなくなる「鉄欠乏性貧血」は、二次性貧血の原因でもよく見られます。
- 若い世代だけでなく、特に高齢者の方では、食事からの鉄分の吸収力が弱くなったり、体が鉄分を上手に使えなくなったりすることがあります。
- 長く続く腎臓の病気(慢性腎臓病)など、他の病気があることで、体の中で鉄分を上手に利用できなくなり、貧血になることもあります。
- これにより、新しい赤血球がうまく作られず、全身に酸素が届きにくくなります。
- 体のほかの病気や遺伝的な体質
- 貧血は、実は深刻な病気のサインであることがあります。
- おしっこを作る腎臓の働きが悪くなると、赤血球を作るための大切なホルモンが足りなくなり、貧血が起こりやすくなります。
- がんや、リウマチなどの体に炎症が続く病気、感染症なども、赤血球の寿命を短くしたり、血液を作る工場である骨髄(こつずい)の働きを妨げたりして貧血を引き起こします。
- また、生まれつきの遺伝子の影響で貧血になることもあります。
- 例えば、β(ベータ)サラセミアという病気では、遺伝子の影響で赤血球がうまく作れません。
- この病気で貧血が長く続くと、体にさまざまな問題が起こる可能性があります。
- 鎌状赤血球症という別の病気では、赤血球の形が異常になり、壊れやすくなります。
- この病気のお子さんは、大人になる前に腎臓の機能が悪くなるリスクがあることも分かっています。
- おしっこが濃くならない、夜におねしょをしてしまう(夜尿症)、血圧が高くなる(高血圧)、おしっこにタンパクが出てしまう(アルブミン尿)といった症状にも注意が必要です。
貧血は、単なる体のだるさではありません。体の奥に隠れた病気が「SOS」を出しているサインかもしれないのです。私たちと一緒に、その原因をしっかりと見つけていきましょう。
二次性貧血の症状
体の中の「赤い血」(赤血球)が足りなくなる貧血は、体がSOSを出している大切なサインです。貧血の症状は、単に「体がだるい」だけではありません。貧血そのものによって起こる症状と、貧血を引き起こしている病気によって起こる症状の2つがあります。
まず、酸素を運ぶ赤い血が足りなくなると、体は酸素不足になってしまいます。その結果、次のような症状が現れることがあります。
- からだがだるい、疲れやすい
- 少し動くだけで疲れてしまいます。
- 顔色が青白い
- 唇の裏や手のひらを見ると、元気な時よりも白っぽく見えます。
- 心臓がドキドキする、息が切れる
- 階段を上るなど、少し運動しただけで動悸や息切れを感じることが増えます。
- めまいや立ちくらみがする
- 急に立ち上がった時に、くらっとすることがあります。
これらの症状は、あなたの体が酸素を求めている証拠です。
次に、貧血の「原因となっている病気」によっては、さらに注意が必要な症状が出ることがあります。特に、脳や腎臓といった大切な臓器に影響が出ることがあります。
- 脳への影響に気づくサイン
- 理由もなく頭痛が続いたり、集中力が続かず、物忘れが多くなったりすることがあります。
- 特に小学生のお子さんの場合、急に学校の成績が下がることがあります。これは、脳の中で気づかないうちに小さなトラブル(無症候性脳梗塞)が起きているサインかもしれません。鎌状赤血球症という貧血のお子さんでは、このような脳のトラブルがよく見られることが分かっています。
- 腎臓への影響に気づくサイン
- また、夜におねしょが増える、血圧が高くなる、おしっこにタンパク質が混じる(アルブミン尿)といった症状は、腎臓に大きな負担がかかっているサインです。特に鎌状赤血球症のお子さんでは、幼い頃から腎臓が悪くなるリスクがあるため、注意が必要です。
貧血の症状は、体からの「元気がないよ」というメッセージです。もし上記のような症状に気づいたら、自己判断せずに私たち医師に相談してください。症状の裏に隠れた原因を見つけることが、元気な毎日を取り戻す第一歩となります。
二次性貧血の検査・診断
貧血は、体からの大切なサインです。もし「貧血かな?」と感じたら、まずは医療機関を受診してください。私たち医師が、あなたの体の状態をしっかり確認し、適切な検査を行います。
貧血があるかどうか、そしてどんな種類の貧血なのかを知るために、一番初めに行うのが「血液検査」です。血液検査では、主に次の3つのことを調べます。
- ヘモグロビンという「赤い色素」の量
- この赤い色素は、酸素を運ぶ大切な役割をしています。
- 赤い血(赤血球)の数
- 体の中に赤い血がどれくらいあるかを見ます。
- 赤い血の大きさや形
- 赤い血が小さすぎたり、大きすぎたり、形がおかしいなどがないかを確認します。 これらの数値を見ることで、「赤い血が足りているか」「どんな原因で貧血になっているのか」を、おおよそ知ることができます。
二次性貧血の場合、血液検査で貧血が見つかっただけでは終わりではありません。貧血を引き起こしている「隠れた病気」を見つけ出すことが、とても大切になります。なぜなら、二次性貧血は、がんや胃潰瘍、子宮筋腫など、別の病気が原因で起こる貧血だからです。
この隠れた原因を探すために、さらに詳しい検査が必要になります。例えば、
- 胃や腸からの出血が疑われる場合
- 胃カメラや大腸カメラを使って、消化管の中を直接調べます。
- 女性の方で生理の量が多いなど婦人科系の病気が疑われる場合
- 婦人科で診察や超音波検査を行うことがあります。
- 腎臓の働きが悪い、甲状腺の病気、体が炎症を起こしている病気などが疑われる場合
- それぞれ専門的な検査を行い、原因を特定していきます。
特に高齢者の方では、体に必要な「鉄分」が足りなくなることで貧血になる方が多く見られます。鉄分が不足した状態(鉄欠乏)は、単に疲れやすいだけでなく、体全体の調子を悪くすることもあります。元気な生活を長く続けるためにも、貧血の原因を丁寧に調べることがとても重要です。もし、経口の鉄剤が飲みにくい、体に合わないという方には、点滴で鉄分を補う方法も検討されます。この静脈内鉄剤は、効果的に鉄分を体に届け、ヘモグロビン値を改善し、生活の質を高める効果が報告されています。私たち医師は、一人ひとりの患者さんに合わせて、最適な検査と治療法を見つけるお手伝いをいたします。
二次性貧血の治療
二次性貧血は、体の中に隠れている別の病気が原因で起こる貧血です。そのため、治療で一番大切なのは、この「隠れた原因」を見つけ出し、しっかり治すことなのです。私たち医師は、患者さんの原因に合わせた最適な治療法を一緒に考えます。
たとえば、胃や腸からの出血が貧血の原因であれば、まずその出血を止めるための治療を行います。また、飲んでいるお薬の副作用によって貧血が起きている場合は、そのお薬の種類や量を見直すことが必要です。
貧血の中で一番多い「鉄欠乏性貧血」の場合には、体に足りなくなった鉄分を補う治療が中心となります。はじめは口から飲む鉄のお薬を使いますが、人によっては胃の不快感や吐き気、便秘などの副作用が出ることがあります。また、体質によっては鉄分がうまく吸収されない方もいらっしゃいます。
もし口からのお薬を続けるのが難しい場合でも、諦める必要はありません。点滴で直接鉄分を体に入れる「静脈内鉄剤」という治療法があります。この方法は、特にご高齢の方にとって、安全でとても効果的な選択肢です。点滴で鉄分を補給すると、血液の赤い色素である「ヘモグロビン」の値が効果的に上がります。さらに、体の元気や日常生活の質も改善し、輸血が必要になる状況を減らせることもわかっています。
さらに、貧血の治療は日々新しくなっています。遺伝子の影響で赤血球がうまく作れない「非輸血依存性βサラセミア」という種類の貧血の場合、最近では「ルスパテルセプト」という新しいお薬が注目されています。このお薬は、体中の酸素を運ぶヘモグロビンの値を安定して増やす効果が期待できます。ある研究では、94.8%もの患者さんでヘモグロビン値が改善し、だるさや疲れといったつらい症状が、最長で約4.6年間も長く改善することが報告されています。頭痛や骨の痛み、背中の痛みなどの副作用がまれに起こることもありますが、長期間安心して使えるお薬だと考えられています。
私たちは、患者さん一人ひとりの貧血の原因や体の状態を詳しく見極めます。そして、お子さんからご高齢の方まで、それぞれの患者さんに最も合った治療法を一緒に見つけ、元気な毎日を応援します。貧血は、体からの大切なサインです。一緒に原因を解決し、笑顔で過ごせるように治療を進めていきましょう。





