鼻炎

止まらないくしゃみや鼻水、しつこい鼻づまりに悩んでいませんか。鼻炎は誰にでも起こりうる身近な症状ですが、近年は特に子どものアレルギー性鼻炎が増加傾向にあります。ある調査では、2016年〜2022年に医師の診断を受けた小児の割合が約20%に達したとの報告もされています。

ひとくちに鼻炎といっても、その原因はウイルス感染からアレルギーまで多岐にわたります。この記事では、急性鼻炎やアレルギー性鼻炎といった主な種類ごとの原因・症状の違いから、医療機関で行われる検査、治療の選択肢までを詳しく解説します。

ご自身の症状がどのタイプにあてはまるかを知ることは、適切な対処への第一歩です。つらい毎日から抜け出すための具体的なステップを見つけるきっかけとして、ぜひ最後までお読みください。

鼻炎の概要

鼻炎とは、鼻の粘膜に炎症が起き、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどを引き起こす状態です。

私たちの鼻の粘膜は、吸い込んだ空気に含まれるウイルスやホコリなどを取り除き、適切な温度と湿度に調整する、いわば高機能なフィルターの役割を果たしています。

しかし、ウイルスや花粉といった原因物質が侵入すると、この粘膜が炎症を起こして腫れあがり、空気の通り道が狭くなります。その結果、鼻づまりによる息苦しさや不快感が生じ、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

鼻炎は誰にとっても無関係ではない病気といえますが、特に近年、子どものアレルギー性鼻炎は増加傾向にあることが指摘されています。
ある系統的レビューでは、医師にアレルギー性鼻炎と診断された小児の割合は全体で10.48%に達し、さらに2012年〜2015年の8.39%から2016年〜2022年には19.87%へと大きく上昇したことが報告されています※。

鼻炎の種類

ひとくちに鼻炎といっても、その原因や症状の続く期間はさまざまです。ご自身の症状がどの種類にあたるのかを把握することが、適切な対処への第一歩となります。

鼻炎は、主に「急性鼻炎」「慢性鼻炎」「アレルギー性鼻炎」の3つに大きく分けられます。このほかにも、特定の状況や物質が引き金となる鼻炎も存在します。

  • 急性鼻炎
    一般的に「鼻かぜ」と呼ばれるもので、ウイルスや細菌の感染によって鼻の粘膜に急性の炎症が起きた状態です。
  • 慢性鼻炎
    急性鼻炎が治りきらずに長引いたり、炎症を繰り返したりすることで、鼻の症状が慢性化した状態を指します。
  • アレルギー性鼻炎
    花粉やハウスダストなど、特定のアレルギー原因物質(アレルゲン)を吸い込むことで起こる鼻炎です。私たちの体は、アレルゲンが侵入すると免疫グロブリンE(IgE)という抗体をつくって体を守ろうとしますが、この免疫システムが過剰に反応してしまうのがアレルギー性鼻炎の正体です※。原因物質によって、さらに2つのタイプに分かれます。
  • 季節性アレルギー性鼻炎:スギやヒノキなどの花粉が原因となり、特定の季節にだけ症状が現れます。
  • 通年性アレルギー性鼻炎:ダニやホコリ、カビなどが原因で、一年を通して症状がみられます。
  • その他の鼻炎
    上記以外にも、下記のようなさまざまな原因による鼻炎があります。
  • 職業性鼻炎:特定の職業環境で、原因となる物質にさらされることで発症します。例えば、漁師の方が日常的に扱う魚介類やカニなどがアレルゲンとなり、鼻炎を引き起こすことも報告されています※。
  • 血管運動性鼻炎:はっきりとしたアレルゲンがなく、温度差やタバコの煙、精神的ストレスといった刺激に鼻の血管が過剰に反応して起こります。
  • 薬剤性鼻炎:市販の点鼻薬(血管収縮薬)の使いすぎなどが原因で、かえって鼻の粘膜が腫れてしまうこともあります。

代表的な鼻炎の種類と、その原因・特徴を下記にまとめました。

大分類

種類

主な原因

特徴

急性鼻炎

ー

ウイルス、細菌

・いわゆる「鼻かぜ」

・急に発症する

慢性鼻炎

ー

急性鼻炎の慢性化など

鼻の症状が長期間続く

アレルギー性鼻炎

季節性

スギ、ヒノキなどの花粉

特定の季節に症状が出る

通年性

ダニ、ハウスダスト、カビなど

一年を通して症状が出る

その他の鼻炎

職業性鼻炎

職場環境の特定の物質(魚介類など)

仕事中に症状が悪化しやすい

血管運動性鼻炎

温度差、タバコの煙、ストレスなど

アレルギー以外の刺激で起こる

薬剤性鼻炎

市販の点鼻薬の使いすぎなど

薬の使用でかえって症状が悪化する

鼻炎の原因

鼻炎を引き起こすスイッチは、私たちの身の回りのいたるところに潜んでいます。原因は大きく「感染」「アレルギー」「アレルギー以外の要因」の3つに分類され、それぞれが単独、あるいは複雑に絡み合って不快な症状を引き起こします。

感染

一般的に「鼻かぜ」と呼ばれる急性鼻炎の多くは、ライノウイルスをはじめとするウイルスへの感染が引き金となります。その他、細菌やホコリなどが鼻の粘膜に付着することで、体を守ろうとする防御反応として急性の炎症が起こることもあります。

アレルギー

私たちの体内に侵入した特定の物質(アレルゲン)に対して、免疫システムが過剰に反応することで起こる鼻炎です。

アレルゲンには、一年を通して影響を及ぼすものと、特定の季節に集中するものがあります。

  • 通年性アレルゲン
    ダニ、ハウスダスト、カビ、ペットの毛やフケなど
  • 季節性アレルゲン
    スギ、ヒノキ、ブタクサといった植物の花粉

興味深いことに、アレルギー性鼻炎と肺がんの発生率には強い逆相関がある、つまりアレルギー性鼻炎を持つ人は肺がんになりにくい傾向がある、というメタアナリシスの結果が報告されています※。これは、アレルギーによって常に免疫システムが活性化している状態が、がん細胞を監視し、排除する働きにつながっている可能性を示唆しています。

アレルギー以外のさまざまな要因

アレルギー検査をしても原因が特定できない鼻炎は、アレルギー以外の要因が複雑に関わっていると考えられます。

  • 物理的・化学的刺激
    温度や湿度の急激な変化、タバコや線香の煙、香水などの強い香りといった刺激が、自律神経を介して鼻の血管を過敏にさせ、症状を引き起こすことがあります(血管運動性鼻炎)。
  • 職業環境
    働く環境に原因が潜んでいるケースもあります。例えば、漁業に従事する方は、日常的に扱うカニや魚介類に寄生するアニサキスなどがアレルゲンとなるだけでなく、冷たい空気や塩水といった物理的な刺激も鼻炎の引き金になることが報告されています※。
  • その他の要因
    降圧薬などの一部の薬剤や、市販の点鼻薬の長期使用が原因となる「薬剤性鼻炎」も少なくありません。また、妊娠や加齢に伴うホルモンバランスの変化、精神的なストレスや疲労なども、鼻の粘膜の状態に影響を与えることがあります。

鼻炎の症状

鼻炎の代表的な症状は「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」の3つですが、その原因によって症状の現れ方や他にどんな症状を伴うかが大きく異なります。

特にアレルギー性鼻炎では、鼻だけでなく目やのど、皮膚のかゆみといった症状が同時に現れるのが特徴です。
お子さんの場合、むずむずする「鼻のかゆみ」が主な症状になることも少なくありません※。実際、近年は子どものアレルギー性鼻炎と診断される割合が増加傾向にあるとの報告もあります※。

鼻炎の種類ごとに、特徴的な症状を下記に整理します。ご自身の状態と見比べてみてください。

鼻炎の種類

主な症状

アレルギー性鼻炎

・水のようにサラサラした透明な鼻水

・一度出ると止まらない連発するくしゃみ

・しつこい鼻づまり

・目、のど、皮膚などのかゆみ

急性鼻炎(鼻かぜ)

・はじめは透明、次第に粘り気のある黄色い鼻水へ変化

・のどの痛み、発熱、頭痛、だるさといった全身症状

慢性鼻炎

・常にどちらかの鼻が詰まっている感じ

・においを感じにくくなる(嗅覚低下)

・頭が重い、口呼吸になりやすい

症状の程度も、鼻炎の状態を知るための重要な手がかりです。
例えば、くしゃみや鼻をかむ回数が1日に20回を超える、あるいは一日中ずっと鼻が詰まって口呼吸になっているような状態は「最重症」と判断されることがあります。

日常生活に支障を感じるほどのつらい症状がある場合は、我慢せずに医療機関へご相談ください。

鼻炎の検査・診断

つらい鼻の症状、その原因を突き止めるための第一歩が、丁寧な診察と的確な検査です。鼻炎の診断は、主に「問診」「鼻の中の診察」「アレルギー検査」という流れで進められます。

まずは問診で、患者さんのお話をじっくりと伺います。
いつからどのような症状があるのか、症状が出やすい時間帯や季節、生活環境、これまでにかかった病気など、診断のヒントになる情報を詳しくお聞かせください。

次に、鼻鏡や内視鏡(カメラ)を使って、鼻の内部を直接観察します。
ここでは、鼻の粘膜がどの程度腫れているか、粘膜の色はどうか、鼻水はサラサラしているかネバネバしているか、鼻ポリープ(鼻茸)がないかなどを細かくチェックし、鼻炎の種類を推測していきます。

そして、アレルギー性鼻炎が疑われる場合には、原因物質(アレルゲン)を特定するための検査を追加で行うことがあります。

  • 血液検査(特異的IgE抗体検査)
    採血によって、特定のアレルゲン(スギ、ダニ、ハウスダストなど)に対して体が作る「IgE抗体」というタンパク質の量を調べる検査です。どの物質に、どのくらい強くアレルギー反応を起こす可能性があるのかを客観的な数値で把握できます。
  • 鼻汁好酸球(びじゅうこうさんきゅう)検査
    鼻水を少量採取し、その中に含まれる白血球の一種「好酸球」の割合を顕微鏡で確認します。アレルギー反応が起きていると、この好酸球が増える傾向があります。
  • 皮膚テスト
    原因と疑われるアレルゲンのエキスを皮膚に少しだけ付けて、赤みやかゆみなどの反応が出るかを見る検査です。

これらの検査と並行して、くしゃみや鼻づまりといった症状が日常生活にどの程度影響しているかを詳しく評価することも、治療方針を決めるうえで非常に重要です。客観的な評価は、のちの治療効果を正確に判断するための大切な指標にもなります※。

特に近年、お子さんのアレルギー性鼻炎は増加傾向にあり、医師に診断された小児の割合は2016年〜2022年には19.87%に達したとの報告もあります※。気になる症状があれば、ぜひ一度ご相談ください。

鼻炎の治療

鼻炎の治療は、まずつらい症状を抑える薬物療法を基本とし、原因や症状の重さに応じて体質改善を目指す治療法や手術などを組み合わせて進めます。

治療の土台となるのは、症状を和らげるための薬物療法です。
主に、アレルギー反応を引き起こす物質の働きをブロックする「抗ヒスタミン薬」の飲み薬や、鼻の粘膜の炎症そのものを直接抑え込む「点鼻ステロイド薬」が使われます。細菌感染が疑われる場合には、抗生物質が処方されることもあります。

アレルギー性鼻炎で、より根本的な改善を目指す場合には「アレルゲン免疫療法」も有力な選択肢です。
これは、原因となるアレルゲン(スギ花粉やダニなど)を少量ずつ体内に取り入れることで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー反応そのものを起こしにくくする治療法です。3年以上の継続が必要ですが、長期にわたって症状を軽くしたり、薬の量を減らしたりする効果が期待できます。

これらの治療で効果が十分でない場合には、レーザーで鼻の粘膜を焼き、アレルギー反応を起こしにくくする手術などが検討されることもあります。

また、治療は西洋医学的なアプローチに限りません。
例えば、アレルギー性鼻炎のお子さんに対して西洋薬と漢方薬を併用したところ、鼻のかゆみが和らぎ、再発率が低下したという研究報告があります※。

このほかにも、鼻の粘膜に特殊な光を当てる「低レベルレーザー療法」という選択肢もあります。症状を緩和する可能性が示されていますが、その有効性についてはまだ研究の途中であり、今後のさらなる検証が待たれるところです※。

いずれの治療と並行しても重要になるのが、セルフケアです。
アレルゲンをこまめに掃除して取り除く、生理食塩水で鼻うがいをしてアレルゲンやウイルスを洗い流すといった日々の工夫も、症状をコントロールするうえで大きな助けになります。

ご自身の症状やライフスタイルに合った治療法を見つけるためにも、まずは専門医にご相談ください。