チャージ症候群

およそ2万人に1人の割合で発症するとされる「チャージ症候群」。この少し聞き慣れない病名は、実は体の様々な部分に現れる6つの特徴的な症状の頭文字から名付けられています。

中でも特に注意が必要なのが心臓の病気です。ある研究では患者さんの約76.6%に合併が見られると報告されており、実に6割以上の方が、いのちを守るための心臓手術を必要とするとも言われています。

この記事では、チャージ症候群とはどのような病気なのか、その特徴的な症状や原因、そして専門家チームによって行われる治療法について詳しく解説します。

チャージ症候群の概要

チャージ症候群は、生まれつき体の様々な部分に特徴が現れる、遺伝子の変化が関係する病気です。 およそ2万人に1人の割合で生まれると言われており、日本では毎年30人から50人ほどのお子さんが診断されます。

この病気の大きな特徴として、心臓の病気を合併しやすいことが挙げられます。 ある研究では、チャージ症候群の患者さんのうち約76.6%の方に、生まれつきの心臓の病気が見られると報告されています。

特に合併しやすい心臓の病気

  • 動脈管開存症
  • 赤ちゃんの時に自然に閉じるはずの血管が開いたままの状態です。
  • 心室中隔欠損症
  • 心臓の部屋を仕切る壁に穴が開いている状態です。
  • 心房中隔欠損症
  • 心室中隔欠損症と同様に、心臓の壁に穴が開いています。
  • ファロー四徴症
  • 4つの特徴的な異常が合わさった、複雑な心臓の病気です。

こうした心臓の病気により、患者さんの6割以上が心臓の手術を必要とします。 心臓の問題や、食べ物をうまく飲み込めない摂食障害は、その後の経過に大きく影響する重要な要素です。 そのため、赤ちゃんの頃からの注意深い観察と専門的な治療が大切になります。 症状は全身に現れる可能性があり、まだ診断されていない方もいると考えられています。

チャージ症候群の種類

チャージ症候群という名前は、この病気でよく見られる特徴の頭文字から作られています。 最近では原因となる遺伝子の名前から、「CHD7関連疾患」と呼ばれることも増えてきました。

具体的には、以下の6つの英語の頭文字を組み合わせたものです。

頭文字

英語表記

日本語での意味

かんたんな説明

C

Coloboma

コロボーマ(目の異常)

目の黒い部分が鍵穴のように見えたり、一部が見えにくかったりします。

H

Heart defects

心臓の異常

生まれつき心臓の壁に穴が開いていたり、血管の形が違ったりします。

A

Atresia of choanae

後鼻孔閉鎖症

鼻の奥がふさがっていて、鼻での呼吸がしづらい状態です。

R

Retarded growth and development

成長や発達のおくれ

体の成長や言葉の発達などが、周りの子と比べてゆっくり進みます。

G

Genital abnormalities

性器の異常

男の子や女の子の体の大事な部分の形や成長に特徴が見られます。

E

Ear anomalies

耳の異常

耳の形が変わっていたり、音が聞こえにくかったりします(難聴)。

これらの症状がすべて現れるわけではなく、どの症状が出るかや、その程度は一人ひとり違います。

中でも「H」の心臓の異常は、特に注意が必要な症状です。 ある研究報告によると、チャージ症候群の患者さんの約76.6%が、心臓の病気を合併します。 そのため、患者さんの6割以上が心臓の手術を必要とするとも言われています。

心臓の病気と、食べ物をうまく飲み込めない問題は、その後の経過に大きく影響します。 だからこそ、早い段階で専門の医師に相談し、適切な治療を始めることがとても大切です。

チャージ症候群の原因

チャージ症候群は、体の設計図である「遺伝子」の変化によって起こる病気です。 私たちの体の中には、設計図をしまっておく本棚のような「染色体」があります。 その8番目の本棚にあるCHD7(シーエイチディーセブン)という遺伝子が原因です。

CHD7遺伝子は、お母さんのお腹の中で赤ちゃんが成長する過程でとても重要です。 体全体のいろいろな部分を正しく作るための「監督さん」のような役割をしています。 この監督さんの働きが生まれつき弱いと、チャージ症候群の特徴的な症状が現れます。

チャージ症候群と診断された方のうち、約7割でこのCHD7遺伝子の変化が見つかります。 この遺伝子の変化は、ご両親から受け継がれることは少なく、ほとんどの場合、赤ちゃん自身の成長の過程で偶然に起こるものです。

チャージ症候群の原因まとめ

  • 原因となる遺伝子
  • CHD7遺伝子
  • 遺伝子の場所
  • 8番染色体という設計図の本棚にあります。
  • 遺伝子の役割
  • 体の様々な部分を正しく作るための「監督さん」です。
  • 体に起こること
  • 監督の働きが弱いため、体のあちこちに特徴が現れます。

特に心臓や、食べ物の飲み込みに関わる部分の形成に影響が出やすいことが分かっています。 そのため、心臓の病気と摂食障害は、その後の経過に大きく関わる重要な問題です。

チャージ症候群の症状

チャージ症候群では、体の様々な場所に特徴的な症状が現れます。 その名前の由来となった、6つの主な症状を見ていきましょう。 ただし、これらの症状がすべて現れるわけではなく、組み合わせや程度は一人ひとり異なります。

  • C:コロボーマ(目の異常)
  • 目の黒い部分などが生まれつき欠けている状態で、ほぼ全ての方に見られます。
  • 物が見えにくい、見える範囲が狭いなどの症状が出ることがあります。
  • 上の方が見えにくいため、あごを上げて物を見ようとするお子さんもいます。
  • H:心臓の異常
  • ある研究では、約76.6%の方に生まれつきの心臓の病気が見られると報告されています。
  • 心臓の部屋を仕切る壁に穴が開いていたり、血管の形が違ったりする病気が多いです。
  • 命に関わることもあり、患者さんの6割以上が心臓の手術を必要とします。
  • A:後鼻孔閉鎖(鼻の異常)
  • 鼻の奥が骨や膜でふさがっており、鼻で息をするのが難しい状態です。
  • このため、ミルクをうまく飲めないなどの「哺乳障害」が起こりやすくなります。
  • R:成長や発達のおくれ
  • 身長が伸びにくい、言葉の発達がゆっくりなど、成長に遅れが見られます。
  • その程度には個人差がありますが、ほとんどの方に見られる症状の一つです。
  • G:性器の異常
  • 男の子では精巣が正しい位置になかったり、女の子では陰唇が小さかったりします。
  • 約7割の方に見られる症状で、成長とともにホルモンの問題が出ることもあります。
  • E:耳の異常
  • 耳の形が変わっているだけでなく、音の聞こえにくさ(難聴)を伴うことが多いです。
  • 左右で耳の形が違うこともあり、中耳炎を繰り返しやすい傾向もあります。

これら以外にも、食べ物をうまく飲み込めない「嚥下障害」や、顔の筋肉の動きに左右差が出る「顔面神経麻痺」など、様々な症状が現れることがあります。 特に心臓の病気と食べ物の飲み込みに関する問題は、その後の経過に大きく影響する重要な要素です。 そのため、専門の医師による早い段階での詳しい検査と治療がとても大切になります。

チャージ症候群の検査・診断

チャージ症候群の診断は、専門の医師が体の様々な特徴を丁寧に確認することから始まります。 チェックリストを使い、当てはまる症状をパズルのように組み合わせて総合的に判断します。

診断には、以下の3つのグループに分けられた症状が用いられます。

チャージ症候群の診断チェックリスト

  • 必ず見られる3つの特徴
  • 耳の形が特徴的で、音が聞こえにくい(難聴)
  • まわりの子と比べて身長が低い
  • 言葉などの発達がゆっくり進む
  • 重要な特徴(大症状)
  • 目の異常(コロボーマ)
  • 鼻や口の異常(後鼻孔閉鎖や口蓋裂)
  • 顔の動きに左右差がある(顔面神経麻痺)
  • その他の特徴(小症状)
  • 心臓の病気
  • 食道や気管の異常
  • 性器の異常

これらのうち、「必ず見られる3つの特徴」がすべて当てはまるお子さんで、「大症状が2つ以上」などの組み合わせを満たす場合に、チャージ症候群の可能性が高いと診断されます。

診断をより確実にするために、血液を使った「遺伝子検査」が行われることもあります。 この検査では、体の設計図であるCHD7遺伝子に変化がないかを調べます。 チャージ症候群と診断された方のうち、約7割でこの遺伝子の変化が見つかります。

特に、小症状に含まれる「心臓の病気」はとても重要です。 ある研究では、チャージ症候群の患者さんの約76.6%に、生まれつきの心臓の病気が見られると報告されています。 そのため、診断の早い段階で心臓の詳しい検査を行うことが、その後の治療方針を決める上で大切になります。

チャージ症候群の治療

チャージ症候群そのものをなくすお薬は、残念ながらまだありません。 そのため、あらわれている一つひとつの症状を和らげることが治療の中心です。 患者さんが過ごしやすい環境を、ご家族と一緒に整えることを目指します。

体の様々な場所に症状があらわれるため、多くの専門家がチームで治療します。 小児科、耳鼻咽喉科、眼科、心臓の専門家などが連携し、支えていきます。

いのちを守るための初期治療

生まれてすぐの時期は、いのちに関わる問題への対応が最優先です。 特に心臓の病気と呼吸の問題は、その後の経過に大きく影響します。

  • 心臓の病気 ある研究報告によると、チャージ症候群の患者さんの約76.6%に、生まれつき心臓の病気が見つかります。 そのため患者さんの6割以上が心臓の手術を必要とします。 心臓の病気と食べ物の飲み込みの問題は、その後の経過を左右する重要な要素です。 命に関わることもあるため、早期の検査と治療計画がとても大切になります。
  • 呼吸の問題 鼻の奥がふさがっていること(後鼻孔閉鎖)などで、呼吸が苦しくなることがあります。 その場合は、空気の通り道を確保するための手術(気管切開など)を検討します。

成長を支える長期的なサポート

いのちの危険が落ち着いてからは、長期的な視点で成長と発達を支えます。 一人ひとりの状況に合わせて、以下のようなサポートを行います。

サポートの種類

具体的な内容

食事のサポート

うまく飲み込めない場合は、鼻からのチューブや、お腹に作った小さな入り口(胃ろう)から栄養をとります。

聞こえのサポート

聞こえにくい場合は、早い時期から補聴器を使い、ことばの発達をうながします。

見え方のサポート

見えにくい場合は、眼鏡を使ったり、見やすいように周りの環境を整えたりします。

成長・発達のサポート

成長ホルモンのお薬や、体の発達をうながすリハビリなど、継続的な支援を行います。

治療の目標は、患者さんとご家族が困っていることを医療スタッフと話し合い、安心して健やかに成長できる環境を一緒に作っていくことです。