橈骨頭骨折

転んで手をついてしまった」「肘が痛い、動かしにくい」そんな経験、ありませんか?

日常のふとした瞬間に起こりがちな「橈骨頭骨折」は、腕の骨折の中でも決して珍しくない、誰もが遭遇する可能性のあるけがの一つです。

この骨折は、肘の構造を複雑にする橈骨頭と呼ばれる部位に起こり、そのタイプによって痛みの度合いや治療法が大きく異なります。

この記事では、橈骨頭骨折の原因から、見過ごしがちな症状、さらには最新の研究に基づいた最適な治療の選択肢までを徹底解説。あなたの肘の不安を解消し、適切なケアへと繋げるための重要な情報を提供します。

橈骨頭骨折の概要

「橈骨頭骨折」とは、肘の関節を構成する腕の骨の一つである「橈骨(とうこつ)」という骨の、肘に近い丸い部分が折れてしまうけがです。 この骨折は、転んだときに手をついたり、肘を強くぶつけたりした際に、肘に強い力が加わることで起こりやすいとされています。 腕の骨折の中でも比較的よく見られるもので、誰もが日常生活で遭遇する可能性のあるけがの一つと言えるでしょう。

骨折のタイプは、患者さんによってさまざまです。 そのため、治療の方法も、骨折の状況や重さに応じて変わってきます。 大きく分けて、手術をせずにギプスなどで固定する「保存的治療」と、手術をして折れた骨を正しい位置に戻す「手術的治療」があります。

たとえば、骨のずれが少ない「安定型」の骨折(「メイソンタイプ2」などと呼ばれます)の場合です。 このタイプの骨折では、手術をせずに固定を行う保存的治療がよく選ばれます。 最近の研究によると、このような安定した骨折では、手術をしてもしなくても、最終的な肘の動きや痛みに大きな差はほとんどないことが分かっています。 さらに、手術をしない方が、手術に伴う体の負担やトラブル(合併症)が少なく、腕を内側にひねる動き(「回内(かいない)」といいます)もよりスムーズに回復しやすい、という良い結果も報告されています。 安定した骨折であれば、無理に手術をしなくても、十分に回復が期待できることが多いのです。

一方で、骨が大きくずれてしまったり、細かく砕けてしまったりする「重症型」の骨折(「メイソンタイプ3」などと呼ばれます)では、手術が必要になることがあります。 手術では、折れた骨を正しい位置に戻し、小さいネジのような「ヘッドレススクリュー」や、金属の板である「プレート」という器具を使って固定します。 最新の研究では、この「ヘッドレススクリュー」を使う方が、「プレート」を使う場合よりも、骨が早くくっつく傾向があることが示されています。 また、腕をひねる動き(回内・回外)も、より良い状態に回復しやすいという結果も出ています。 私たち医師は、患者さん一人ひとりの骨折の状態を詳しく検査し、最も適した治療方法を一緒に考えていきますので、まずは医療機関にご相談ください。

橈骨頭骨折の種類

「橈骨頭骨折」は、肘をぶつけたり転んで手をついたりすることで、肘の近くにある橈骨という骨の丸い部分が折れるけがです。この骨折は、一人ひとりの骨折の様子によって、いくつかの種類に分けられます。ご自身の骨折がどの種類に当てはまるかを知ることは、どんな治療が一番良いかを決める上で、とても大切なことになります。

私たち医師は、「メイソン分類」という方法を使って、骨折の度合いを判断しています。この分類は、大きく4つのタイプに分かれています。

  • タイプI(いちがた)
  • 骨にひびが入っただけで、骨がほとんどずれていない軽い骨折です。
  • 肘の動きは、あまり悪くならないことが多いでしょう。
  • タイプII(にがた)
  • 骨の一部が欠けていたり、少しだけずれていたりする骨折です。
  • 肘を動かすと痛みが出たり、少し動きにくさを感じたりすることがあります。
  • タイプIII(さんがた)
  • 骨がバラバラに砕けてしまったり、大きくずれてしまったりする重い骨折です。
  • 肘の関節が不安定になり、腕の動きがかなり制限されてしまいます。
  • タイプIV(よんがた)
  • タイプIIIのような重い骨折に加えて、肘の関節そのものが外れてしまう「脱臼」も一緒に起こっている状態です。

骨折の種類によって、治療方法は大きく変わります。例えば、骨のずれが少ない「安定型」のタイプIやタイプIIの骨折では、手術をせずにギプスなどで固定する「保存的治療」が選ばれることが多いです。最近の研究では、このような安定した「メイソンタイプII」の骨折の場合、手術をする治療としない治療を比べても、最終的な肘の動きや痛みには大きな違いがほとんどないことが分かっています。

さらに、手術をしない方が、腕をひねる動き(「回内」といいます)がより良くなりやすく、手術による体の負担やトラブル(合併症)も少ないという報告もあります。そのため、現在の研究結果に基づくと、孤立した安定型のタイプII骨折では、保存的治療がより推奨される選択肢の一つとして考えられています。

一方、タイプIIIのように骨が大きくずれたり、細かく砕けたりする重い骨折では、手術が必要になることがほとんどです。手術では、折れた骨を正しい位置に戻し、小さいネジのような「ヘッドレススクリュー」や、金属の板である「プレート」という器具を使って固定します。

最新の研究では、「ヘッドレススクリュー」を使った方が「プレート」を使った場合よりも、骨が早くくっつく傾向が見られています。また、腕をひねる動き(回内・回外)もより良い状態に回復しやすいことが示唆されています。手術時間や入院期間、肘の曲げ伸ばしの動き、その他の合併症の起きやすさには、両者の間で大きな違いはなかったとされています。

ご自身の骨折がどのタイプなのか、そしてどの治療法が一番合っているのかは、担当の医師とよく話し合って決めることが大切です。不安なことや疑問に思うことは、遠慮せずに質問してくださいね。

橈骨頭骨折の原因

「橈骨頭骨折」は、皆さんの肘の近くにある骨が折れるけがです。まさか自分が、と思うかもしれませんね。しかし、普段の生活の中で誰もが経験する可能性がある事故が原因で起こることがほとんどです。私たち医師が診る中で、この骨折の主な原因は大きく分けて二つあります。

一つ目は、転んだときに手をつくことです。

  • 私たち人間は、転びそうになると無意識に手を出して体を支えようとします。
  • これは、頭や顔を守ろうとする大切な体の働きです。
  • しかし、この「手をつく」動作が、時には肘に大きな負担をかけてしまいます。
  • 特に、腕がピンと伸びた状態で手をついた場合、地面からの強い衝撃が手首、そして肘へとまっすぐに伝わってしまうのです。
  • 体重や転んだ勢いが加わることで、肘の橈骨頭という丸い部分に集中して力がかかり、骨折につながってしまいます。
  • 例えば、階段で足を踏み外したり、自転車に乗っていてバランスを崩したり、雨や雪で滑りやすい場所で転倒したりする際に起こりやすいでしょう。

二つ目は、スポーツ中の外傷です。

  • スポーツをしている時に、肘を強くぶつけたり、激しく転倒して手をついたりすることでも骨折することがあります。
  • 特に、ラグビーやバスケットボールなど、体と体がぶつかり合うようなコンタクトスポーツでは、瞬間的に強い衝撃が肘に加わることがあります。
  • このようなスポーツ中に、腕を伸ばした状態で地面に手をついたり、直接肘を強打したりすると、骨折のリスクが高まります。

普段の生活の中では意識しないかもしれませんが、肘の関節はとても複雑な動きをします。そのため、予期せぬ形で強い力が加わると、骨がその力に耐えきれずに折れてしまうことがあるのです。原因を知ることで、少しでも「もしかしたら危ないかも」と意識し、転倒や事故を予防するきっかけにしていただけると幸いです。もし、肘に強い痛みや腫れを感じたら、迷わずに医療機関を受診してくださいね。

橈骨頭骨折の症状

「橈骨頭骨折」は、転んだりぶつけたりした後、肘にいくつかのサインが現れるけがです。 もしあなたが肘を強く打ち、次のような症状を感じているなら、骨折している可能性があります。 私たち医師は、患者さんの訴える症状から骨折の可能性を疑い、詳しく検査を進めていきます。

まず、強い痛みを感じることがほとんどです。 骨折した直後から、肘のあたりがズキズキと痛み出します。 特に腕を動かそうとすると、その痛みがさらに増す傾向にあります。 じっとしている時でも、重たいものを持ち上げたり、力を入れたりすると、痛みが強くなるでしょう。 骨のずれが少ない軽い骨折でも、骨には大きな衝撃が加わっています。 そのため、我慢できないほどの痛みが続くことがあります。

次に、骨折した部分の周りが腫れてきます。 肘がパンパンに腫れて、熱を持っているように感じるかもしれません。 これは、骨折したことで体の中で炎症が起きているサインです。 さらに、時間が経つにつれて、皮膚の下で血が出て青あざ(内出血)ができることもあります。 あざは、骨折から数日経ってから、肘だけでなく腕の方に広がって現れることもあります。

そして、肘を動かしにくくなることも重要な症状です。 腕をまっすぐに伸ばしたり、完全に曲げたりするのが難しくなります。 特に、手のひらを上や下に向ける動作が、スムーズにできなくなることが多いです。

これは医学用語で「回内(かいない)」や「回外(かいがい)」と呼びます。 橈骨頭という骨は、肘の「ねじる」動きにとても大切な役割を果たしています。 そのため、骨が折れて正しい位置からずれると、関節の動きが阻害されてしまうのです。

これらの症状は、骨折の重さによって現れ方が異なります。 例えば、骨に小さなヒビが入っただけの軽い骨折であれば、痛みがそこまで強くないこともあります。 しかし、骨がバラバラに砕けてしまっているような重い骨折の場合は、 肘が大きく腫れてしまい、ほとんど動かせなくなることもあります。

もし、これらの症状に心当たりがある場合は、決して無理をしないでください。 できるだけ早く整形外科を受診することが大切です。 早期に適切な診断と治療を受けることは、とても重要です。 肘の機能をしっかりと回復させるためにも、早めの受診をおすすめします。

橈骨頭骨折の検査・診断

肘の痛みや動きにくさで、「もしかして骨折かも」と不安に感じていませんか。もし、肘をぶつけたり転んで手をついたりした後に、このような症状がある場合は、できるだけ早く整形外科を受診することが大切です。私たち医師は、皆さんの不安な気持ちに寄り添いながら、正確な診断を行い、適切な治療へとつなげていきます。

まず、病院に到着すると、医師が皆さんの状態を詳しくお聞きする「問診」を行います。

  • いつ、どのようにしてけがをしたのか
  • どんな症状が、いつから出ているのか
  • どのような動きで痛みが強くなるのか

など、具体的な状況を教えていただきます。これらは、骨折の可能性やけがの程度を推測する上で、非常に重要な情報となります。

次に、医師は皆さんの肘の関節を実際に動かしたり、優しく触ったりする「触診」を行います。

  • 肘のどの部分が特に痛むのか
  • 腫れはどの程度なのか
  • 腕を動かせる範囲はどうか

などを丁寧に確認します。骨が折れていると、特定の場所に強い痛みを感じたり、肘を曲げ伸ばしたり、手のひらを上や下に向ける動き(回内・回外)が制限されたりすることが多いです。

診断のために最も基本となるのは、X線(レントゲン)検査です。

  • この検査は、骨折の有無を明らかにするためのものです。
  • 骨がどのくらいずれているか(転位の程度)や、骨折がいくつに分かれているかなど、骨の状態を詳しく確認できます。
  • 橈骨頭骨折には「メイソン分類」という分類方法があり、この分類は、その後の治療方法を決める上で非常に大切な情報となります。

X線検査だけでは判断が難しい場合や、より詳しい情報が必要な場合には、CT検査やMRI検査を行うこともあります。

  • CT検査では、骨の細かい構造を立体的に見ることができます。
  • X線ではわかりにくい小さな骨折や骨のかけらまで確認できます。
  • 骨折の状態をより詳細に把握し、手術が必要な場合の計画を立てるのに役立ちます。
  • MRI検査は、骨だけでなく、肘の周りにある筋肉やじん帯、軟骨といったやわらかい組織の状態を評価するのに優れています。
  • 骨折以外の部分に損傷がないかを確認することができます。
  • これにより、肘全体のけがの状況を総合的に判断し、適切な治療方針を決定する上で重要な情報となります。

これらの検査を通じて、私たち医師は皆さんの骨折の状態を正確に判断します。そして、一人ひとりの患者さんに最も適した治療計画を一緒に考えていきます。検査結果については、医師から丁寧な説明がありますので、疑問に思うことや不安な点は、遠慮せずに質問してください。早期に正確な診断を受けることが、肘の機能をしっかりと回復させるための第一歩となります。

橈骨頭骨折の治療

橈骨頭骨折の治療方法は、患者さん一人ひとりの骨折の様子や、どんな生活を送りたいかによって大きく変わります。私たち医師は、皆さんの状態を詳しく診察し、一番良い治療法を一緒に考えていきます。治療法は大きく分けて二つの方法があります。

  • 保存的治療
  • 手術をせずにギプスや包帯で固定し、自然に骨がくっつくのを待つ治療です。
  • 手術的治療
  • 手術で骨折した部分を正しい位置に戻し、金具で固定する治療です。

1. 保存的治療

骨のずれが少ない軽い骨折、例えば「メイソンタイプ2」と呼ばれるような骨折では、手術をしない「保存的治療」が選ばれることが多いです。最近の研究で、このような安定した骨折の場合、手術をする治療と比べても、普段の腕の動きや痛みに大きな違いがないことがわかっています。むしろ、保存的治療の方が、腕を内側にひねる動き(「回内」といいます)がよりスムーズになる傾向があります。さらに、手術による体の負担や、手術後に起こる可能性のあるトラブル(合併症)が少ないことも報告されています。そのため、現在の研究結果からは、安定したメイソンタイプ2の骨折では、保存的治療がよりおすすめできる選択肢の一つと考えられます。

保存的治療では、次のような方法で回復を目指します。

  • ギプスや包帯による固定
  • 折れた骨がずれないようにしっかりと固定します。
  • 安静の指示
  • 骨折した腕をできるだけ動かさないようにして、骨がくっつくのを助けます。
  • 痛み止めなどの薬
  • 痛みを和らげ、安心して休めるようにします。
  • リハビリテーション
  • 骨がくっついた後、肘の動きを元に戻すために、段階的にリハビリを行います。

2. 手術的治療

骨が大きくずれてしまったり、細かく砕けてしまったりして、肘の関節が不安定になってしまうような重い骨折、例えば「メイソンタイプ3」と呼ばれる骨折では、手術が必要となることがほとんどです。手術では、折れた骨を元の正しい位置に戻し、小さなネジや金属の板を使って固定します。

手術で使われる主な固定器具は二つあります。

  • ヘッドレススクリュー(HSs)
  • 骨の中に完全に埋め込むことができる小さなネジです。
  • プレート
  • 骨の表面に沿わせて固定する金属の板です。

最新の研究では、メイソンタイプ3の骨折を固定する際に、ヘッドレススクリュー(HSs)を使った方が、プレートを使った場合よりも骨が早くくっつく傾向があることが示されています。また、術後の肘をねじる動き(「回内」や「回外」といいます)も、ヘッドレススクリューを使った方がより良い状態になる可能性が示唆されています。ただし、手術時間や入院期間、肘の曲げ伸ばしの動き、その他のトラブルが起きる確率には、両者の間で大きな違いがないことも分かっています。プレート固定も治療の選択肢の一つですが、特定の機能評価の点数がわずかに低いという結果もあります。この差が、日常生活にどれほど影響するかは、患者さんの感じ方によっても異なります。より大規模な研究でさらに詳しく調べる必要もあると考えています。

手術後の回復に向けては、次のようなことが大切です。

  • 適切な固定
  • 手術で固定した部分を保護するために、一時的に装具などを使うことがあります。
  • 早期のリハビリ
  • 医師や理学療法士の指示に従い、早い段階から肘を少しずつ動かす練習を始めます。
  • これは、肘が固まってしまうのを防ぐために非常に重要です。

どの治療法が皆さんにとって一番良いのかは、骨折のタイプや皆さんの年齢、普段の生活、そしてどんな活動をしたいかによって異なります。不安なことや疑問に思うことがあれば、どんな小さなことでも遠慮なく医師に相談してください。私たちは皆さんが安心して治療を受け、できるだけ早く日常生活に戻れるように、全力でサポートしていきます。