偽痛風

ある日突然、ひざや手首などの関節が赤く腫れあがり、耐えがたいほどの激痛に襲われる…。その症状から、多くの人が「痛風」を思い浮かべるかもしれません。しかし、それは痛風とよく似た、まったく別の病気「偽痛風」のサインである可能性があります。

その名の通り「偽(にせ)の痛風」と呼ばれるこの病気は、尿酸が原因の痛風とは異なり、「ピロリン酸カルシウム」という物質の結晶が関節にたまることで発症します。特に高齢の方に多く、糖尿病や甲状腺の病気といった他の疾患が関連していることも指摘されています。

この記事では、痛風と間違われやすい偽痛風の正体について、原因から症状、正しい診断・治療法までを詳しく解説します。そのつらい痛みの原因を正しく理解し、適切な対処法を見つけるためにお役立てください。

偽痛風の概要

ある日突然、ひざや手首などの関節が赤く腫れあがり、 激しい痛みに襲われることがあります。 これが「偽痛風(ぎつうふう)」でみられる症状です。

名前がよく似ている「痛風」と間違えられやすい病気ですが、 痛みを引き起こす原因物質が全く異なります。 「偽(にせ)」という名前は、痛風ではない、という意味です。

病名

原因となる結晶

偽痛風

ピロリン酸カルシウムという物質の結晶

痛風

尿酸という物質の結晶

偽痛風の正式な病名は、原因物質の名前から 「ピロリン酸カルシウム沈着症(CPPD)」と言います。 関節のクッションである軟骨やその周りの組織に、 ピロリン酸カルシウムの結晶が少しずつたまります。 この結晶が何かのきっかけで関節内に散らばると、 体を守る細胞が異物と判断して攻撃を開始し、 急な炎症と激しい痛みにつながるのです。

この病気は、特に高齢の方に多く見られる傾向があります。 原因はまだ完全には解明されていませんが、 加齢や遺伝的な要因が関係すると考えられています。 その他、体の代謝異常や過去の関節のケガなども、 発症に関与している可能性が指摘されています。

偽痛風の種類

「偽痛風」という呼び名は、実は病気の正式な名前ではありません。 ピロリン酸カルシウム沈着症(CPPD)という病気が引き起こす、 代表的な症状の一つを指す言葉です。

この病気は、症状の現れ方によっていくつかの種類に分かれます。 結晶がたまっていても症状が出ない場合もあれば、 激しい痛みを引き起こす場合もあるなど、非常に多彩です。

ピロリン酸カルシウム沈着症は、主に以下のタイプに分けられます。

種類(タイプ)

主な症状の特徴

急性関節炎(偽痛風発作)

ある日突然、ひざや手首などの関節に激しい痛みや腫れ、熱っぽさが現れます。数日から数週間で自然に落ち着きますが、何度も繰り返すことがあります。

慢性関節炎

関節リウマチのように、複数の関節でじわじわと痛みが続きます。特に朝起きた時に関節が動かしにくい「朝のこわばり」を感じることがあります。

変形性関節症を伴うもの

関節の軟骨がすり減る変形性関節症に、結晶の沈着が加わるタイプです。関節の変形が進み、慢性的な痛みを引き起こすことがあります。

無症状

レントゲン検査でたまたま結晶が見つかるものの、痛みや腫れなどの自覚症状がまったくないタイプです。今は無症状でも、将来発作を起こす可能性があります。

このように、同じ病気でも症状の出方は人によってさまざまです。 研究によると、この病気は高齢の方に多く、 どちらかといえば男性にやや多い傾向があるとも言われています。

症状がないからといって安心はできません。 気づかないうちに関節の中で結晶がたまっている可能性もあるのです。

偽痛風の原因

偽痛風は、関節の中にピロリン酸カルシウムという結晶がたまることで、激しい痛みを引き起こします。 では、なぜこの結晶が関節にたまってしまうのでしょうか。 その詳しい仕組みはまだ研究の途中ですが、複数の要因が重なって発症すると考えられています。

主な要因としては、年齢を重ねることや、血縁のあるご家族に同じ病気の方がいるといった遺伝的な要因が挙げられます。 また、過去のケガや手術で傷ついた関節は、結晶がたまりやすい環境になることがあります。

特に注意したいのが、他の病気との関連です。 体の代謝(栄養をエネルギーに変える働き)に関わる病気があると、偽痛風を発症しやすくなることが知られています。 研究でも、糖尿病や甲状腺の病気などが、関節の症状と深く関わることが報告されています。

関連が考えられる病気

なぜ偽痛風と関係があるのか

甲状腺・副甲状腺の病気

カルシウムの量を調節するホルモンのバランスが崩れ、結晶ができやすくなるためです。

ヘモクロマトーシス

体の中に鉄分が異常にたまってしまう病気で、この過剰な鉄分が関節に影響を与えます。

糖尿病

血糖値が高い状態が続くと、体の中で炎症が起きやすくなります。この状態が、結晶による炎症をさらに悪化させる可能性があります。

このように、偽痛風はひとつの原因だけで起こるわけではありません。 背景にある病気をきちんと管理することが、偽痛風の予防にもつながる大切なポイントです。 気になる関節の痛みがあれば、早めに医師へ相談しましょう。

偽痛風の症状

偽痛風の症状は、ある日突然、何の前触れもなくやってきます。 関節にたまったピロリン酸カルシウムの結晶が炎症を引き起こし、 まるで強く打ち付けたかのような激しい痛みが現れるのが特徴です。

この急な痛みは「偽痛風発作」と呼ばれ、主に以下の症状がみられます。

  • 関節の激しい痛み ズキズキとした拍動性の、耐えがたいほどの痛みが特徴です。
  • 関節の腫れと赤み 見た目にもわかるほどパンパンに腫れ上がり、皮膚が赤くなります。
  • 熱っぽさ(熱感) 炎症を起こしているため、患部に触れると明らかに熱く感じます。
  • 関節の動きの制限 強い痛みと腫れによって、関節を曲げ伸ばしするのが困難になります。

これらの症状は、ひざの関節に最も多くみられます。 しかし、手首や足首、肩、ひじといった他の大きな関節や、 時には複数の関節で同時に発作が起こることもあります。

この激しい症状は数日から数週間で自然に落ち着くことが多いです。 しかし、一度治まっても安心はできず、何度も繰り返す可能性があります。 我慢せず、早めに医療機関を受診し、適切な診断を受けることが大切です。

偽痛風の検査・診断

突然の激しい関節の痛みで、何が起きたのかと不安になりますよね。 偽痛風の診断では、まず詳しい症状の聞き取りから始まります。 痛風など、非常によく似た症状の病気と見分けることが重要です。 そのため、いくつかの検査を組み合わせて慎重に原因を調べます。

診断の決め手となるのは、関節の中にたまった液体を調べる検査です。

  • 関節液検査 炎症を起こした関節に細い針を刺し、液体を少しだけ抜きます。 この液体を顕微鏡で見て、偽痛風の原因である結晶を探します。 この検査で結晶が見つかれば、偽痛風であると確定できます。

関節の状態を画像で確認することも、診断の大きな助けになります。 研究でも、特に超音波検査の有用性が報告されています。

  • 画像検査
  • レントゲン検査 関節の軟骨に、ピロリン酸カルシウムの結晶が白い線のように 写ることがあります。これを「軟骨石灰化」と呼びます。
  • 超音波(エコー)検査 レントゲンより詳しく関節や結晶の状態を観察できます。 ひざだけでなく、恥骨結合部など珍しい場所の診断にも有効です。
  • 血液検査 体の中で起きている炎症の強さを確認するために行います。 他の病気の可能性がないかを調べるのにも役立ちます。 ただし、この検査だけで偽痛風と診断することはできません。

これらの検査結果を総合的に判断し、診断を確定させていきます。 正確な診断こそが、適切な治療への第一歩となるのです。

偽痛風の治療

偽痛風の激しい痛みは、本当につらいものですよね。 治療の目標は、まずこの痛みや腫れを和らげることです。 残念ながら、今の医療では関節にたまった結晶そのものを 溶かしてなくすお薬は、まだ見つかっていません。

そのため、治療は症状を抑える「対症療法」が中心です。 特に、急に強い痛みが起きた発作の時期には、 何よりもまず炎症を鎮めることが最優先されます。

■ 急な痛みがあるときの主な治療法

急な発作に対しては、主に以下の治療法を組み合わせます。 どの治療を選ぶかは、症状の強さや患者さんの体の状態を 総合的にみて、医師が慎重に判断します。

治療法

安静と冷却

痛みのある関節をなるべく動かさず、安静にします。

患部を冷やすことで、炎症と痛みを和らげます。

薬物療法

炎症を抑えるために、お薬の力を借ります。

【お薬の種類】

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) 一般的に「痛み止め」と呼ばれるお薬です。 偽痛風の治療で、まず最初に検討されます。
  • コルヒチン 痛風発作のお薬として有名ですが、偽痛風が引き起こす 炎症を抑える目的で使われることもあります。
  • ステロイド薬 炎症を抑える力が非常に強いお薬です。 痛みが特にひどい場合や、他の薬が使えない場合に選択します。 関節の中に直接注射する方法と、飲み薬として使う方法があります。

痛みが落ち着いた後も、治療は終わりではありません。 再発を防ぐためには、背景にある病気(甲状腺の病気など)の 管理がとても重要になります。 より良い治療法の開発に向けた基礎研究も世界中で進められています。 自己判断で様子を見たりせず、まずは医療機関で相談しましょう。