耳管開放症
自分の声が頭の中でワンワンと響いたり、呼吸音が「ゴーゴー」と大きく聞こえたり、耳が詰まった感じが続く。そんな不快な症状に悩まされていませんか? 周囲に理解されにくいこの感覚は、日常生活にも大きな支障をきたすことがあります。
その症状は、もしかしたら「耳管開放症」かもしれません。これは、耳と鼻の奥をつなぐ「耳管」が開きっぱなしになることで起こる病気です。研究報告によれば、その発症率は0.3%から7.0%とされ、決して珍しいものではありません。
急な体重減少やストレスが引き金になることもあり、原因が特定しにくいのも特徴です。この記事では、日本耳科学会が定める診断基準から具体的な治療法まで、耳管開放症の全貌を詳しく解説します。あなたの悩みの原因を解明し、解決への一歩を踏み出しましょう。
耳管開放症の概要
私たちの耳の奥と鼻の奥は、「耳管(じかん)」という細いくだでつながっています。この耳管は、耳の中の気圧を外の空気と同じに保つ大切な役割を持っています。
ふだん耳管は閉じていますが、つばを飲んだりあくびをしたりすると一瞬だけ開きます。この働きのおかげで、私たちは耳の気圧を調整しているのです。
しかし、耳管開放症になると、この耳管が常に開いたままになってしまいます。そのため、鼻の奥と耳の中の空間がつながりっぱなしの状態になるのです。
その結果、自分の声や呼吸の音が直接耳に響くといった不快な症状があらわれます。研究報告によると、この病気になる人の割合は0.3%から7.0%とされています。
原因は急な体重減少や妊娠のほかにも様々で、はっきりとした原因がわからないことも少なくありません。日本耳科学会が診断の基準を定めるなど、専門的な診断が必要な病気です。
耳管開放症の種類
耳管開放症は、診断の確からしさによって種類が分けられます。 これは、耳の専門家が集まる日本耳科学会が定めた基準です。 診断を丁寧に行うことで、治療の方針を正しく決められます。
診断では、主に次の3つのポイントをチェックします。
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診断のポイント |
具体的な内容 |
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1. 特徴的な症状があるか |
自分の声が頭に響いたり、呼吸の音が聞こえたり、耳が詰まった感じがしたりするかどうかを確認します。 |
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2. 症状が楽になる行動があるか |
頭を下げておじぎをしたり、横になったりすると、一時的に症状が楽になるかを確認します。 |
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3. お医者さんが見てわかる証拠があるか |
医師が耳の中を観察したり、特別な検査をしたりします。呼吸に合わせて鼓膜が動くなど、耳管が開いている証拠があるかを確認します。 |
これらのポイントがいくつ当てはまるかによって、以下のように分類されます。
- 確定診断された耳管開放症(definite PET) 上記の3つのポイントがすべて当てはまる場合です。 「間違いなく耳管開放症である」と診断された状態を指します。
- 耳管開放症の疑い(possible PET) 上記の3つのポイントのうち、2つが当てはまる場合です。 「耳管開放症の可能性が高い」と考えられる状態を指します。
このように診断の確かさを分類するのは、とても大切なことです。 一人ひとりの状態に合わせた、より適切な治療法を選ぶために行います。
耳管開放症の原因
耳管が開きっぱなしになる原因は、一つだけではありません。 いくつかの要因が重なって、症状が出ることが多いです。 研究報告によると、特に女性や思春期以降の人に起こりやすいとされています。
主な原因として、次のようなものが考えられています。
- 急激な体重減少 過度なダイエットや病気などで急に体重が落ちると、耳管の周りの脂肪も減ります。 この脂肪は、耳管を適切に閉じるためのクッションの役割を果たしています。 そのため、脂肪が減ることで耳管が開きやすくなってしまうのです。
- 体のバランスの変化 妊娠中や、ピルなどの女性ホルモン薬を使っているときは、体内のホルモンバランスが変化します。 この変化が、耳管の開け閉めの機能に影響を与えることがあります。
- ストレスや心身の疲れ 強いストレスや過労は、体の調子を自動で整える自律神経の働きを乱します。 自律神経が乱れると、耳管を閉じようとする筋肉の動きも悪くなり、耳管が開きやすくなります。
- 体の水分不足(脱水) 夏場に汗をたくさんかいたり、水分補給が足りなかったりすると体が脱水状態になります。 体の水分が不足することも、原因の一つと考えられています。
このように原因はさまざまですが、いろいろな検査をしてもはっきりとした原因が見つからないことも少なくありません。 最近では、新型コロナウイルス感染症の後遺症として発症する例も報告されています。
耳管開放症の症状
耳管が開きっぱなしになると、とても不快な症状があらわれます。 日常生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。 ご自身の状態と比べられるように、主な症状をまとめました。
特に多くの方が訴えるのは、「耳が詰まった感じ(耳閉感)」です。 ある調査では、患者さんの88%がこの症状を経験しています。 次いで、「自分の声が頭の中で響く(自声強聴)」も多く見られます。
【耳管開放症の症状チェックリスト】
- ☐ 自分の声が、頭の中でワンワンと響くように聞こえる (自声強聴:じせいきょうちょう)
- ☐ 耳が水に入った時のように、ボーッと詰まった感じがする (耳閉感:じへいかん)
- ☐ 「ゴーゴー」「スーハー」という自分の呼吸音が大きく聞こえる
- ☐ キーン、ジーといった耳鳴りがする
- ☐ 音が聞こえにくい、または、こもって聞こえる
- ☐ 周りの音が割れたり、響いたりして聞こえる
- ☐ 体がふわふわするような、めまいの感覚がある
これらの特徴的な症状は、日本耳科学会が定める診断基準にも含まれます。 診断の際に、医師がとても重要視するポイントなのです。
また、症状の出方にも面白い特徴があります。 おじぎをするように頭を下げたり、横になったりすると、一時的に症状が楽になることがあります。 これは、頭の位置を変えることで耳管の周りの血流が変化し、開きっぱなしだった耳管が少し狭くなるためです。
ただし、症状が重い場合は姿勢を変えても症状が軽くならないこともあります。 気になる症状があれば、専門の医療機関に相談しましょう。
耳管開放症の検査・診断
耳管開放症の診断は、まず問診から丁寧に行います。 患者さんから症状について詳しくお聞きすることが、診断の第一歩です。 いつから症状があるか、特に横になると楽になるかなどを確認します。
その後、耳の中を観察したり、いくつかの検査を組み合わせたりします。 これらを総合的に判断して、診断を確定していきます。
【主な検査方法】
- 鼓膜の観察 鼻で深く息をしてもらい、呼吸に合わせて鼓膜が動くかを確認します。 耳管が開いていると、鼻の奥の空気圧が直接耳に伝わるためです。
- 聴力検査 音が聞こえにくいといった症状がないかを調べます。 耳の詰まった感じが、他の病気によるものでないかを見分けます。
- ティンパノメトリー 鼓膜の動きやすさを調べる検査です。 耳管の働きを評価するのに役立ちます。
- 耳管機能検査 耳管の開き具合を直接評価する、より専門的な検査です。 診断を確実なものにするために行います。
【診断の基準】
診断には、専門家が集まる日本耳科学会が定めた基準を用います。 この基準は、診断をより正確にするために作られたものです。 主に、以下の3つの項目が当てはまるかどうかをチェックします。
- 自分の声が響く、呼吸音が聞こえるなどの特徴的な症状があるか
- お辞儀をしたり横になったりして、症状が楽になるか
- 呼吸に合わせて鼓膜が動くなど、医師がみてわかる証拠があるか
これらの項目がいくつ当てはまるかによって、診断の確かさが決まります。 3つすべてが当てはまる場合は「確実な耳管開放症」と診断されます。 2つ当てはまる場合は「耳管開放症の疑い」と判断します。
このように丁寧に診断することで、一人ひとりの状態に合った治療法を選べます。 必要に応じて、CT検査や血液検査を行うこともあります。
耳管開放症の治療
耳管開放症の治療は、症状の重さや原因によって変わります。 まずは体に負担の少ない方法から、段階的に進めていくのが基本です。 治療は大きく分けて2つのステップがあります。
ステップ1:体を切ったりしない、やさしい治療(保存的治療)
はじめに、手術をしない方法で症状を和らげることを目指します。 生活の中でできる工夫や、お薬を使った治療が中心です。
- 生活習慣の見直し 急な体重減少が原因なら、栄養バランスの良い食事を心がけます。 また、体の水分が不足しないよう、こまめな水分補給も大切です。
- お薬を使った治療 漢方薬を飲むこともあります。 「加味帰脾湯(かみきひとう)」などが使われますが、一人ひとりの体質に合わせてお薬を選びます。
- 鼻からの処置 生理食塩水という特別な塩水を鼻からスプレーすることもあります。 これは耳管の入り口を潤して、開きっぱなしの状態を少しだけ改善させるためです。
ステップ2:手術による治療(外科的治療)
やさしい治療を6ヶ月以上続けても良くならない場合に検討します。 日常生活に大きな影響が出るほど症状が重いときも、手術を考えます。
- 耳管ピン挿入術 「小林プラグ」とも呼ばれる、シリコンでできた小さな栓(せん)を耳管に入れる手術です。 この栓が耳管を優しくふさぐことで、開きっぱなしになるのを防ぎます。 この方法は日本で開発され、なかなか治らない耳管開放症への有効な治療法とされています。
どの治療法を選ぶかは、あなたの体の状態によって異なります。 まずは専門のお医者さんとよく相談して、自分に合った治療計画を立てることが大切です。













