骨軟化症
原因不明の腰や股関節の痛みに、悩んでいませんか。年のせいだと諦めてしまうその症状、実は「骨軟化症」という病気のサインかもしれません。骨が弱くなる病気といえば骨粗鬆症が有名ですが、骨軟化症は骨の「量」ではなく「質」が低下し、骨が十分に硬くなれず、やわらかくなってしまう病気です。
主な原因はビタミンDやリンといった栄養素の不足で、放置すると骨の変形や歩行困難につながることも。この記事では、骨粗鬆症との違いから、検査、治療法までを詳しく解説します。ご自身の体の不調の原因を知り、適切な対策を始めるためのヒントがここにあります。
骨軟化症の概要
骨軟化症とは、骨の「質」が低下してしまう病気です。 骨が作られる過程で、カルシウムやリンといった材料が不足し、 骨が十分に硬くなれない状態を指します。
この病気は、骨の成長が終わった大人に起こるものを骨軟化症、 成長期の子どもに起こる場合は「くる病」と呼び分けられます。
骨軟化症と骨粗鬆症の違い
骨が弱くなる病気としてよく知られる骨粗鬆症とは原因が異なります。
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病名 |
原因 |
骨の状態 |
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骨軟化症 |
骨の「質」の問題 ミネラルが不足し、 骨が十分に硬くならない |
やわらかく、しなるような骨 |
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骨粗SOMPOう症 |
骨の「量」の問題 骨密度が低下し、 骨の量が減ってしまう |
スカスカで折れやすい骨 |
骨軟化症の診断では、骨シンチグラフィという画像検査を行います。 この検査で「スーパースキャン」という特徴的な所見が見られることがあります。 これは、検査薬が骨全体に強く集まって見える状態です。
複数の研究をまとめた信頼性の高い分析によると、 骨軟化症の患者さん全員に、この所見が見られたという報告もあります。 しかし、スーパースキャンは前立腺がんなど他の病気でも見られるため、 専門医による総合的な判断が不可欠です。
骨軟化症の種類
骨軟化症と一言で言っても、原因によっていくつかの種類に分けられます。 なぜ骨が十分に硬くなれないのか、その根本的な原因を突き止めることが、 適切な治療法を選択するための第一歩となります。
主な種類は、大きく分けて以下の3つです。
- ビタミンDの作用不足によるもの 骨を作る上で欠かせないビタミンDが不足したり、 体内でうまく働かなかったりすることが原因の、最も一般的なタイプです。 ビタミンDは、食事から摂るカルシウムを骨に沈着させる役割を持ちます。
- リンの不足によるもの(低リン血症性) 血液中の「リン」というミネラルの濃度が低くなることで起こるタイプです。 リンはカルシウムと共に、骨の硬さを作る重要な材料の一つです。 腎臓の病気などで、リンが尿へ過剰に排出されることが原因になります。
- 薬剤によるもの 他の病気の治療で使われる特定のお薬の副作用として、 骨が硬くなる過程(石灰化)が妨げられることで発症するタイプです。
これらの原因をまとめたのが、以下の表です。
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種類 |
主な原因 |
体の中で起きていること |
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ビタミンDの作用不足 |
ビタミンDの不足、 吸収不良、作用の低下 |
骨の材料を固める 「接着剤」が足りない状態 |
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低リン血症性 |
腎臓の問題などで リンが体から過剰に失われる |
骨を作るための 重要な「材料」が足りない状態 |
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薬剤性 |
特定の薬の副作用 |
骨が硬くなる過程自体が 邪魔されてしまう状態 |
このように、骨軟化症には様々な顔があり、原因によって治療法も異なります。 気になる症状があれば、まずは医療機関で原因を特定することが重要です。
骨軟化症の原因
骨がやわらかくなってしまう骨軟化症は、いくつかの原因で起こります。 骨を丈夫で硬い状態に保つための仕組みが、うまく働かなくなることが、 根本的な問題です。
主な原因は、次の3つに大きく分けられます。
- ビタミンDの不足や作用の低下
- リンの不足(低リン血症)
- 特定の薬剤の影響
ビタミンDの不足や作用の低下
最も多い原因は、ビタミンDが不足したり、体内でうまく働かなくなったりすることです。 ビタミンDは、食事で摂ったカルシウムを骨にしっかり定着させる、 いわば「接着剤」のような大切な役割を担っています。
ビタミンDが不足する背景には、以下のような要因があります。
- 日光を浴びる機会の不足
- ビタミンDは、太陽の紫外線を浴びることで私たちの皮膚でも作られます。
- 屋内で過ごす時間が極端に長いと、十分に作られません。
- 食事からの摂取不足
- 魚類やきのこ類など、ビタミンDを多く含む食品の摂取が少ない状態です。
- 吸収不良
- 胃や腸の病気などが原因で、食事からビタミンDをうまく吸収できません。
また、ビタミンDは骨だけでなく、全身の健康にも深く関わっています。 近年の研究では、高齢者がビタミンDを補給することで、 心筋梗塞といった心血管系の病気のリスクが低減する可能性が示されました。 骨の健康を守ることは、体全体の健康維持にもつながるのです。
その他の原因
ビタミンD以外にも、骨を弱くしてしまう原因があります。
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原因の種類 |
具体的な内容 |
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リンの不足 |
骨のもう一つの重要な材料である「リン」が、腎臓の病気などが原因で、体の中から過剰に排出されてしまう状態です。 |
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薬剤の影響 |
一部のてんかんの薬や、アルミニウムを含む胃薬などが、骨が硬くなる過程(石灰化)を妨げることがあります。 |
このように骨軟化症の原因は一つではなく、生活習慣から病気、 普段飲んでいるお薬まで多岐にわたります。 気になる症状があれば、原因を特定するためにも専門の医療機関にご相談ください。
骨軟化症の症状
骨軟化症は、骨がやわらかくなる病気ですが、 初期の段階では、はっきりとした症状が出ないことも多いです。
しかし、病気が進行すると、骨や筋肉からSOSのサインが現れます。 ご自身の体の変化に気づくことが、早期発見の第一歩になります。
1. 体のあちこちに現れる「骨の痛み」
最も代表的な症状は、体のさまざまな部分に生じる痛みです。 鋭い痛みではなく、どこが痛いのかはっきりしないのが特徴です。
- 痛む場所 腰や背中、股関節、ひざ、足の骨など、 特に体重を支える部分に痛みを感じることが多いです。 中でも股関節の痛みは、よく見られるサインの一つです。
- 痛みの特徴 「ズーンと重い」「場所を特定しにくい」といった、 広範囲に広がるような鈍い痛みが続く傾向にあります。
病気が進行すると、わずかな衝撃で骨にひびが入ることもあります。 そうなると、骨折による強い痛みを感じるようになります。
2. 力が入りにくくなる「筋力の低下」
骨軟化症の影響は、骨だけでなく筋肉にも及びます。 足やおしりの筋力が低下することで、日常の動作が難しくなります。
- 歩き方が不安定になる おしりの筋肉が弱ることで、体を左右に揺らしながら歩く、 「あひる歩行」と呼ばれる特徴的な歩き方が見られる場合があります。
- つらくなる動作 立ち上がったり、階段を上ったりする動作が、 以前よりもつらく感じられるようになります。
3. 見た目にも現れる「骨の変形」
症状が長く続くと、骨そのものが体の重みに耐えられなくなります。 その結果、骨が変形してしまうことがあります。
背骨が圧迫されて骨折し、身長が縮んでしまうこともあります。 また、背中が丸く曲がったり(後弯:こうわん)、 横に曲がったり(側弯:そくわん)する変化も見られます。
これらの症状に心当たりがあれば、自己判断せずに、 一度、専門の医療機関へ相談することが大切です。
骨軟化症の検査・診断
骨の痛みや筋力低下といった症状から骨軟化症が疑われる場合、 診断を確定するために、いくつかの検査を組み合わせて行います。 主に「血液検査」と「画像検査」で、体の状態を詳しく調べます。
1. 血液検査
血液検査では、骨の健康状態に関わる数値を詳しくチェックします。 骨を作る材料や、骨の作り変えのバランスが崩れていないかを確認し、 診断の重要な手がかりを探します。
- カルシウム・リン 骨の硬さを作るための、主成分となるミネラルです。 骨軟化症では、これらの数値が基準より低くなることがあります。
- アルカリホスファターゼ(ALP) 骨が新しく作られる(骨代謝)ときに高くなる酵素です。 骨が弱くなっているのを補おうとして、過剰に働いているサインです。
- ビタミンD 食事で摂ったカルシウムの吸収を助ける大切な栄養素です。 体内のビタミンDが不足していないかを確認します。
2. 画像検査
血液検査とあわせて、骨そのものの状態を画像で直接確認します。 これにより、骨に起きている変化を視覚的に捉えることができます。
- 単純X線(レントゲン)検査 全身の骨を撮影し、骨軟化症に特徴的な所見を探します。 骨の表面に垂直に見られる「ルーサー帯」という、 小さな骨折線が診断の大きな手がかりになります。
- 骨シンチグラフィ 全身の骨の代謝が活発な部分を一度に調べる検査です。 骨軟化症では、骨全体で薬の取り込みが強くなる、 「スーパースキャン」という特徴的なパターンを示すことがあります。
複数の研究をまとめた信頼性の高い分析によると、 骨軟化症の患者さん全員に、この所見が見られたという報告もあります。 しかし、この所見は前立腺がんや胃がんでも見られるため、 他の検査結果とあわせた総合的な判断が非常に重要です。
骨軟化症の治療
骨軟化症の治療は、原因を正確に突き止めることから始まります。 治療の目標は、骨が本来の硬さを取り戻せるようにすることです。 そのために、原因に応じた適切な方法で治療を進めていきます。
原因に合わせた治療法の選択
治療の基本は、骨を丈夫にするために不足している栄養素を補い、 骨が硬くなるのを邪魔している原因を取り除くことです。 原因ごとに、以下のような治療法が選ばれます。
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原因の種類 |
主な治療法 |
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ビタミンDの不足 |
体内ですぐに使える形の「活性型ビタミンD」というお薬を飲みます。あわせて、食事の改善や適度な日光浴も大切です。 |
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リンの不足 |
リンを補うお薬と、リンの吸収を助ける活性型ビタミンDのお薬を一緒に使います。 |
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お薬が原因 |
原因となっているお薬の中止や変更を検討します。自己判断はせず、必ず医師に相談してください。 |
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腫瘍が原因 |
手術で原因の腫瘍を取り除くことが根本的な治療法です。手術が難しい場合は、お薬による治療を行います。 |
骨の治療が全身の健康にもたらす影響
治療の要となるビタミンDは、骨以外にも良い影響があるかもしれません。 オーストラリアで行われた、約2万人の高齢者を対象にした研究がヒントになります。
この研究では、ビタミンDを定期的に補給したグループで、 心筋梗塞といった心臓や血管の病気が少なくなる傾向が見られました。 このことから、骨の治療が全身の健康につながる可能性も考えられます。
治療を安全に進めるために
治療中は、お薬の効果や副作用を確認することが非常に重要です。 定期的に血液や尿の検査を行い、体の状態を詳しくチェックします。 その結果をもとに、一人ひとりに合ったお薬の量に調整していきます。





