仮面ぶどう膜炎の概要
仮面ぶどう膜炎とは、その名の通り別の病気が、 ぶどう膜炎という「仮面」をかぶっている状態です。 目のかすみや、虫が飛んでいるように見える飛蚊症など、 症状が一般的なぶどう膜炎と非常によく似ています。
そのため、最初はぶどう膜炎として治療されることが多いです。 しかし、その正体は目の中の炎症ではありません。 多くの場合、体のどこかにできたがんが原因となっています。 ぶどう膜炎の治療を続けても良くならない場合は注意が必要です。
隠れている病気の正体
仮面ぶどう膜炎の原因となる代表的な病気は以下の通りです。
- 血液のがんである悪性リンパ腫が、
- 目の中に発生したものです。
- ある調査では、ぶどう膜炎全体の約2.5%を、
- この病気が占めていたという報告もあります。
- 肺がんや乳がんなど、他の場所にできたがんが、
- 目に移動(転移)してきた状態です。
本物のぶどう膜炎は炎症が原因なので、炎症を抑える治療が中心です。 例えば、手術の際に目の中を洗う液の温度を低くすると、 術後の炎症を抑えられる可能性があるという研究もあります。 しかし、仮面ぶどう膜炎は原因が異なるため、 このような治療では改善せず、原因の病気への治療が必要です。
仮面ぶどう膜炎の種類
仮面ぶどう膜炎は、その裏に隠れている病気によって、 いくつかの種類に分けられます。
本物のぶどう膜炎も、炎症が起きる場所によって分類されます。 仮面ぶどう膜炎は、これらの炎症と見た目がよく似ているため、 見分けることが難しいのです。
代表的な種類をいくつか紹介します。
- 血液のがんである「悪性リンパ腫」が、
- 目の中に発生したものです。
- 仮面ぶどう膜炎の中で、最も代表的な種類です。
- ある調査では、ぶどう膜炎全体の約2.5%を、
- この病気が占めていたという報告もあります。
- 肺がんや乳がんなど、体の他の場所にできたがんが、
- 血液の流れに乗って目に移動(転移)してきた状態です。
- 主に皮膚にできる「ほくろのがん」として知られています。
- まれに目の中にできることがあり、原因の一つとなります。
お子さんの場合は、大人とは原因となる病気が少し異なります。 網膜にできる「網膜芽細胞腫」や、白血病などが代表的です。
これらの病気は、通常のぶどう膜炎の治療では改善しません。 特に、目の奥に炎症が起きる後部ぶどう膜炎は、 もともと薬に反応しにくいことがあります。 そのため、治療を続けても症状が良くならない場合は、 仮面ぶどう膜炎を疑い、原因を突き止めることが重要です。
仮面ぶどう膜炎の原因
仮面ぶどう膜炎の原因は、一般的なぶどう膜炎とは全く違います。 ウイルスや体の免疫システムの異常が原因ではありません。 その正体は、目にできた「がん」などの悪性の病気なのです。
主な原因には、次のような病気が隠れていることがあります。
- 眼内悪性リンパ腫 体を守る血液の細胞「リンパ球」が、がんになった病気です。 このがん細胞が目の中に広がると、炎症のように見えます。 ある調査では、ぶどう膜炎と診断された方の約2.5%が、 この病気が原因だったという報告もあります。
- 転移性眼内腫瘍 肺がんや乳がんなど、体の他の場所にできたがんが、 血液の流れに乗って目に移動(転移)してきた状態です。
お子さんの場合は、原因となる病気が大人と少し異なります。 「網膜芽細胞腫」という目のがんや、白血病などが原因になります。
また、お子さんでは関節の病気に伴ってぶどう膜炎が起こることも。 このタイプのぶどう膜炎は、薬を止めると再発しやすいです。 実際に、治療を中止すると68%もの患者さんで再発した、 という研究結果も報告されています。
だからこそ、治療を続けても症状が良くならないときは、 仮面ぶどう膜炎の可能性を考えることが非常に大切です。
仮面ぶどう膜炎の症状
仮面ぶどう膜炎の症状は、普通の目の病気とよく似ています。 そのため、最初は気づきにくいことも少なくありません。 しかし、その裏には重大な病気が隠れている可能性があります。 次のようなサインを見逃さないようにしましょう。
主な初期症状
初期にあらわれやすい症状には、以下のようなものがあります。 なんだか見えにくいな、と感じたら注意が必要です。
- すりガラスを通して見ているように、視界がぼやけます。
- 全体的にピントが合わないような感覚です。
- 目の前に虫やゴミのような黒い点が浮かんで見えます。
- 視線を動かすと、一緒に追いかけてくるように感じます。
- 以前より、太陽の光や照明をまぶしく感じやすくなります。
これらの症状は、片方の目だけに現れることもあります。 また、両目に現れたり、左右交互に出たりする場合もあります。
進行した場合の症状
病気が進むと、視力そのものに影響が出ることがあります。 特に、物を見る中心部分「黄斑(おうはん)」に水がたまる、 「黄斑浮腫」という状態が続くと注意が必要です。
ある研究では、この黄斑浮腫が改善せずに続いたり、 一度よくなっても再発したりすると、 視力が下がってしまう可能性が示されています。 症状を放置すると、視力低下につながるリスクがあるのです。
また、仮面ぶどう膜炎の大きな特徴として、 通常のぶどう膜炎治療で使うステロイド薬が効きにくい点があります。 治療を続けても症状が良くならない場合は、ご相談ください。
仮面ぶどう膜炎の検査・診断
仮面ぶどう膜炎は、見た目が普通のぶどう膜炎とそっくりです。 そのため、診断は簡単ではなく、慎重に進める必要があります。 一般的なぶどう膜炎治療を続けても良くならない場合に、 この病気の可能性を考えて、詳しい検査を行っていきます。
目の状態を詳しく調べる検査
まず、目の中に隠れた異常を見つけるための検査を行います。 診断を確定させるために、複数の検査を組み合わせることが大切です。
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検査の種類
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内容
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精密眼底検査
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瞳孔を開く目薬を使い、目の奥(眼底)を観察します。<br>隅々まで見て、異常がないかを丁寧に確認する基本の検査です。
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生検と病理検査
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目の中にあるゼリー状の物質(硝子体)などを少し採取します。<br>その組織を顕微鏡で調べ、がん細胞がないか直接確認します。
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特殊な検査
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採取した組織を使い、がん細胞に特徴的な遺伝子変化を調べます。<br>また、特定のタンパク質の濃度(IL-10など)も測定します。
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全身の状態を調べる検査
仮面ぶどう膜炎の原因は、他の臓器にあることも少なくありません。 そのため、目だけでなく体全体の検査も非常に重要になります。 頭部のMRI検査で脳への広がりがないかを確認したり、 全身のPET検査で他の場所に原因が隠れていないかを探します。
治療への反応の違いも手がかりに
治療に対する反応の違いも、診断の大きなヒントになります。 例えば、お子さんの関節の病気が原因のぶどう膜炎では、 治療を止めると68%の患者さんで再発したという研究報告があります。 しかし、この場合、治療を再開すれば再び症状は落ち着きました。
このように、本物のぶどう膜炎は薬に反応することが多いです。 一方、仮面ぶどう膜炎は、がんが原因のため、 通常のぶどう膜炎治療では症状が改善しにくいのが特徴です。 この反応の違いを見極めることが、正確な診断につながります。
仮面ぶどう膜炎の治療
仮面ぶどう膜炎の治療で最も大切なのは、原因の病気を治すことです。 ぶどう膜炎という仮面の下には、がんが隠れていることが多いためです。 そのため、全身に対する治療が治療の中心となります。
治療は眼科だけでなく、がんの専門家とチームを組んで進めます。 「全身の治療」と「目の症状を和らげる治療」を同時に行います。
全身の治療:原因へのアプローチ
原因となっている「がん」そのものを治療します。 がんの種類や体の状態に合わせて、専門の医師が治療法を決めます。
- 抗がん剤というお薬を使い、がん細胞が増えるのを抑えます。
- 病気の部分に特別な光(放射線)をあて、がん細胞を壊します。
目の治療:症状へのアプローチ
全身の治療と並行して、目に出ている症状を抑える治療も重要です。 目の炎症を直接抑えることで、視力を守ることを目指します。
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治療法
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内容
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お薬の注射
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目の炎症を直接抑えるため、お薬を目の中に注射します。<br>・抗がん剤(メトトレキサートなど)<br>・ステロイド薬(デキサメタゾンインプラントなど)<br> 炎症を抑えるお薬を、目の中にゆっくり溶ける形で置きます。<br>・シロリムス<br> 目の濁りを改善し、視力を維持する効果が期待されるお薬です。<br> 目のかたさ(眼圧)への影響が少ないという研究報告もあります。
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放射線療法
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目にできたリンパ腫などに対して、放射線をあてる治療です。<br>がん細胞に直接働きかける効果が期待できます。
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合併症への対応
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ぶどう膜炎が原因で白内障になった場合は手術を行います。<br>その際に冷たいお水で目を洗いながら手術を行うと、<br>手術後の炎症を和らげられるという研究結果もあります。
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どの治療法を組み合わせるかは、原因や患者さん一人ひとりの状態次第です。 主治医とよく相談し、納得できる治療法を選んでいきましょう。