知的能力障害

「もしかして、うちの子は発達がゆっくりなのかな…」周りの子と比べて不安になったり、子育てに悩んだりしていませんか?「知的能力障害」と聞くと、少し身構えてしまうかもしれません。ですが、これは病気ではなく、その子ならではの「発達の特性」です。大切なのは、レッテルを貼ることではなく、その子に本当に必要なサポートを見つけてあげることです。

実は、診断で最も重視されるのは、知能検査の点数ではありません。お友達との関わり方や、自分の気持ちを伝える様子など、日々の生活の中にある「サイン」を理解することが何よりも重要だと考えられています。この記事では、知的能力障害の正しい知識はもちろん、ご家庭でできる関わり方のヒントまで、専門的な情報を分かりやすく解説します。お子さんの可能性を最大限に引き出すための第一歩を、ここから始めてみませんか。

知的能力障害の概要

知的能力障害は、生まれつきや子どもの頃にわかる発達の特性です。 以前は「精神遅滞」と呼ばれていましたが、今は使われていません。 これは特定の病気とは違い、2つの側面で手助けが必要な状態です。

  1. 考える力(知的機能)に手助けが必要 物事を理解したり、計画したり、問題を解決するのが少し苦手です。
  2. 生活する力(適応行動)に手助けが必要 日常生活や社会で過ごすために必要なスキルに難しさがあります。

生活する力は、主に次の3つの分野で考えられます。

  • お勉強のスキル(概念的領域) 読み書きや計算、お金や時間を理解することなどです。
  • お友達とのスキル(社会的領域) お話をしたり、ルールを守ったり、相手の気持ちを考えることです。
  • 身の回りのスキル(実際的領域) 食事や着替え、健康管理や安全を守ることなどです。

診断は知能検査の点数だけで決まるわけではありません。 これらの生活の様子を総合的に見て判断することが大切です。 特に、痛みや不調をうまく言葉で伝えられないことがあります。 研究でも、表情や行動から痛みを評価する必要性が示されています。 そのため、周りの人が表情や行動の変化に気づくことが重要です。

知的能力障害の種類

知的能力障害は、必要な手助けの度合いによって分けられます。 これは「考える力」と「生活する力」を総合的に見て判断します。 決して誰かにレッテルを貼るためではありません。 その子に合ったサポートを見つけるための大切なものさしです。

一般的に、知的能力障害は以下の4つの区分に分けられます。 これはあくまで、サポートの必要性を考える上での目安です。

分類

特徴と必要な手助けのめやす

軽度

・学校の勉強で、読み書きや計算に少し手助けが必要です。

・日常のおしゃべりはできますが、複雑な話は苦手かもしれません。

・周りのサポートがあれば、身の回りのことや仕事もできます。

中等度

・簡単な言葉でのコミュニケーションが中心になります。

・食事や着替えなど、毎日の生活で手助けが必要です。

・継続的なサポートがあれば、地域で穏やかに生活できます。

重度

・言葉で気持ちを伝えることが難しい場合が多いです。

・身の回りのこと全般に、たくさんの手助けが必要になります。

・常に見守りや専門的なケアがあると安心です。

最重度

・言葉を話すことが、ほとんど難しい状態です。

・生活のすべての場面で、手厚いサポートが必要です。

・生涯にわたって、丁寧なケアが大切になります。

この分類は、知能検査の数値だけで決まるものではありません。 大切なのは、数字でその子を判断しないことです。 一人ひとりの得意なことや苦手なことをしっかり見つめます。 その子に合った手助けを考えることが何よりも重要です。

知的能力障害の原因

知的能力障害の原因は、一つだけではありません。 いろいろなことが複雑に関係していると考えられています。 原因がはっきりと特定できないことも、実は少なくありません。

原因は、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときから、 生まれた後までの、あらゆる時期に考えられます。 主な原因は、時期によって大きく3つに分けられます。

1. 生まれる前の原因 赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる間に起こるものです。

  • 遺伝子や染色体の変化 体の設計図である遺伝子の情報や染色体に変化がある場合です。 代表的なものにダウン症候群などがあります。
  • お母さんの健康状態 妊娠中にお母さんの栄養が足りなかったり、 風疹などの病気にかかったりすることが影響する場合があります。
  • 外部からの影響 アルコールや一部の薬、体に良くない物質などが、 お腹の赤ちゃんの発達に影響を与えることもあります。
  • 脳の発達の問題 脳が作られる途中で、何らかの問題が起きることです。

2. 生まれるときの原因 赤ちゃんが生まれる前後に起こるトラブルが原因になる場合です。

  • 酸素不足 出産時に、赤ちゃんに十分な酸素が届かない状態です。 脳が正常に働くためには、たくさんの酸素が必要です。
  • 早く生まれたこと 予定日よりかなり早く、体が未熟な状態で生まれることです。

3. 生まれた後の原因 成長の過程で起こる病気や事故などが原因です。

  • 脳の病気 髄膜炎や脳炎といった、脳がウイルスなどに感染する病気です。
  • 頭の大きなけが 交通事故などで頭に強い衝撃を受けることも原因になります。
  • 栄養の問題 成長に必要な栄養が、極端に足りない状態が続くことです。

例えば、原因の一つであるダウン症候群のある方には、 全身の筋力が弱い傾向があることが知られています。 最近の研究では、肥満が筋力低下に関係する可能性が示されました。 特に、握る力(握力)の低下と関連があることが報告されています。

このように、原因はとてもたくさんあります。 遺伝的なことが関係する場合もありますが、 「親から子へ必ず遺伝する」というわけではありません。

知的能力障害の症状

知的能力障害の症状は、その子の年齢や必要な手助けの度合いで様々です。 多くの場合、赤ちゃんの頃の言葉や運動の発達の遅れで気づかれます。

集団生活が始まると、周りとの違いがよりはっきりすることがあります。 お子さんの様子で、気になることはありませんか?

  • お勉強のこと 文字を読んだり、計算したりするのが少し苦手かもしれません。 時間やお金のような、目に見えないものを理解するのも難しいです。
  • お友達とのこと 相手の気持ちを想像したり、場の雰囲気を読んだりするのが苦手です。 そのため、年齢に合ったお友達関係を築くのに時間がかかることがあります。
  • 生活のこと 食事や着替えなど、身の回りのことを一人でするのが難しいです。 また、計画を立てて物事を進めることにも、手助けが必要になります。

自分の気持ちをうまく言葉にできないもどかしさから、 かんしゃくを起こしたり、時には手が出てしまったりすることもあります。

最近の研究では、つらい経験が心の傷(PTSD)として残りやすいこと、 そしてその心の傷が、行動の問題と関係している可能性も示されています。 これは、決してわがままではなく、心からのサインなのです。

知的能力障害の検査・診断

知的能力障害の診断は、テストの点数だけで決まるわけではありません。 その子をよく知るために、いろいろな情報を集めて総合的に判断します。 決してレッテルを貼るためではなく、ぴったりの手助けを見つけるためです。

お子さんの発達で気になることがある場合、次のような検査が行われます。

  • 考える力・発達の検査 パズルや質問に答えながら、記憶したり考えたりする力を調べます。 ウェクスラー式知能検査などが、よく使われるテストです。
  • 生活の力の評価 おうちの方に、普段の生活の様子を詳しくお聞きします。 言葉で気持ちをうまく言えない子のために、表情や行動の変化も、 とても大切な情報になります。 研究でも、心拍数などが痛みを評価する上で役立つとされています。
  • 体の検査 原因となる病気がないか、血液検査や脳のMRI検査などを行います。 体の発達を見るために、握る力を測る検査をすることもあります。 その際は、誰が測っても同じような結果になるように、 決められた手順で正確に行うことがとても重視されます。

これらの検査結果を総合的にみて、専門家チームが診断を確定します。 もし心配なことがあれば、まずはかかりつけ医や市の保健センター、 発達障害者支援センターなどに相談してみましょう。

知的能力障害 の治療

知的能力障害は、病気のように「治す」ものではありません。 その子が持っている力を最大限に伸ばすことが治療の中心です。 毎日をより豊かに過ごせるように「支援(療育)」を続けます。 支援は、その子の年齢や状態に合わせて計画的に行います。

支援は専門家チームで

一人の専門家だけでなく、様々なプロがチームを組みます。 ご本人とご家族を、いろいろな角度からサポートします。

  • 医療チーム かかりつけ医、小児科医、精神科医など
  • 心理チーム 臨床心理士など、心の専門家
  • リハビリチーム 理学療法士など、体の動きの専門家
  • 福祉チーム ソーシャルワーカーなど、生活の相談役
  • 教育チーム 学校の先生など

心の不調へのアプローチ

知的能力障害のある方は、気持ちを伝えるのが苦手なことがあります。 つらい経験から、心が疲れてしまうことも少なくありません。 うつ病や不安症、心の傷(PTSD)を抱えることがあります。

このような心の不調には、お薬やカウンセリングを行います。 特に、心の傷(PTSD)の治療法も進歩しています。 最近の研究では「EMDR療法」という専門的な治療が有効です。 これは特別な目の動きで、つらい記憶を和らげる方法です。 軽度の知的能力障害のある大人への研究で効果が示されました。

その子に合った支援を早くから始めることがとても大切です。 できることが増え、自信を持って生活できるようになります。